百人一首の「夏の歌」 4首  - 夏の夜は…、ほととぎす… -

青葉の樹木と五重塔

百人一首に収められた歌の中で、四季のうち夏について詠まれたものは最も少なく 4首を数えるのみです。

しかし、いずれも印象的なものばかりです。特に持統天皇の「春過ぎて…」の歌は誰でもが知っているほど有名で、百人一首といえばこの和歌を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

今回は、百人一首の歌から「夏の歌」を集めました。これらの名作を是非ともゆっくりと鑑賞してみて下さい。

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百人一首の「夏の歌」

 

春過ぎて 夏来にけらし白妙の 衣ほすてふ天の香具山

夏の青空と緑の山々

【現代語訳】

春が過ぎて夏が来たらしい。真白な衣を干すという天の香具山に…

【歌番号】2

【作者】持統天皇(じとうてんのう)

【採録】新古今和歌集(わかしゅう)、定家八代抄(わかしゅう)など

【補足】

持統天皇は第41代の女性天皇で、天智天皇(てんちてんのう=中大兄皇子:なかのおおえのおうじ)の第二皇女です。歌人の柿本人麻呂(かきのもとの ひとまろ)は、個人的に天皇から庇護(ひご)を受けていたといわれています。

歌中の「てふ」は「といふ(と言う)」の詰まった形で、「~といわれている」の意となります。 

なお、奈良の香具山(かぐやま)は大和三山(やまとさんざん)の一つで、他は畝傍山(うねびやま)と耳成山(みみなしやま)です。天から降ってきた山であるとの伝承もある山々です。

百人一首、新古今和歌集には上の歌が残されていますが、万葉集のものは以下のように少し違いがあります。

春過ぎて夏来たるらし白妙の衣干したり天のかぐ山
(原文:春過而 夏來良之白妙能 衣乾有天之香來山)

あえて違いが際立つように現代語訳をすれば、こちらは「春が過ぎて夏が来るらしい。真白な衣が干してある(から)、天の香具山に」となるでしょう。

また、鎌倉時代の歌学書『古来風躰抄(こらいふうていしょう)』には、次のように記されています。

春過ぎて 夏ぞ來ぬらし白妙の 衣かはかすあまのかぐ山

【派生歌】

いつしかと 衣ほすめりかげろふの 夏きにけらし天のかご山
 (藤原隆季:ふじわらのたかすえ)

 

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夏の夜は まだ宵ながらあけぬるを 雲のいづこに月やどるらむ

夜明けの山々

【現代語訳】

夏の夜はまだ宵だと思ううちに明けてしまったけれど、雲の何処に月は宿っているのだろうか

【歌番号】36

【作者】清原深養父(きよはらのふかやぶ)

【採録】古今和歌集(こきんわかしゅう)、新撰和歌集(しんせんわかしゅう)など

【補足】

作者は平安時代中期の貴族、歌人、中古三十六歌仙の一人に数えられています。紀貫之、凡河内躬恒らと交流があり、琴の名手であったといわれています。

この歌の詞書は次のように記されています。

月のおもしろかりける夜、暁がたによめる

「暁がた」は夜明けに近い頃をいうので、歌中の「まだ宵ながら」は「まだ宵のうちだと思っていると(いつの間にか)」といったニュアンスになります。

【派生歌】

夏の夜は 雲のいづくにやどるとも わがおもかげに月はのこさむ
 (藤原良経:ふじわらのよしつね)

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ほととぎす 鳴きつる方をながむれば ただありあけの月ぞ残れる

夜明けの空と月

【現代語訳】

時鳥が鳴いた方を眺めると、ただ有明の月だけが(空に)残っている

【歌番号】81

【作者】徳大寺実定(とくだいじ さねさだ)、小倉百人一首では「後徳大寺左大臣」

【採録】千載和歌集(せんざいわかしゅう)、定家八代抄など

【補足】

作者は平安時代末から鎌倉時代にかけての公家、歌人です。祖父の徳大寺実能が「徳大寺左大臣」といわれていたため、実定は「徳大寺左大臣」と呼ばれました。

この歌の詞書は次の通りです。

暁聞時鳥(あかつきに ほととぎすを聞く)といへる心をよみ侍りける

「ほととぎす」から「有明の月」へ、耳にしたものから目にするものへの感覚の変化を意識させる歌で、ほととぎすを詠んだ作品の中でも古くから名作と評価されてきました。

【派生歌】

ほととぎす 鳴きつる雲をかたみにて やがてながむる有明の空
 (式子内親王:しきしないしんのう)

 

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風そよぐ ならの小川の夕ぐれは みそぎぞ夏のしるしなりける

夏の小川

【現代語訳】

風がそよぐ「ならの小川」の夕暮れは、禊(みそぎ)こそが夏のしるしなのだなあ

【歌番号】98

【作者】藤原家隆(ふじわらのいえたか、かりゅう)、小倉百人一首では「従二位家隆」

【採録】新勅撰和歌集など

【補足】

家隆は鎌倉時代初期の公卿、歌人で、『新古今和歌集』の撰者の一人です。生涯で詠んだ歌は六万首にも及ぶといわれています。

「なら(楢)の小川」は京都の上賀茂神社の境内にあり、大祓式(おおはらいしき、年2回)ではこの川に罪穢(つみけがれ)を祓うための人形が流されます。

この歌は、上賀茂神社の夏越大祓式(=禊、6月末)の風景が詠まれています。

【本歌】

夏山の ならの葉そよぐ夕暮れは ことしも秋の心地こそすれ
(源頼綱)

みそぎする ならの小川の川風に 祈りぞわたる下に絶えじと
(八代女王)

【派生歌】

風わたる ならの小河の夕すずみ みそぎもあへずなつぞながるる
 (小沢蘆庵:おざわろあん)

 


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