春の和歌 20選 【現代語訳】付き

桃色の桜の花

春を代表する風物といえば、やはり桜になるでしょうか。艶やかに美しく咲きながらも、あっという間に散ってしまうはかなさもあり、古くから日本人の心をとらえてきました。

また、桜よりも古くから愛されてきた花として梅があります。そして、これらは数多くの歌に詠み込まれてきました。

今回は、春の和歌と呼ぶにふさわしいものを集めました。これらはいずれも春らしい雰囲気に満ちあふれたものなので、是非とも味わってみて下さい。

スポンサーリンク

 

目次

春の和歌について

桜、梅、鶯などのように、春に関する風物などが詠まれている和歌を 20首を選び、五十音順に並べました。春という季節が持つ美しさを見事に表現したものばかりですので、是非チェックしてみて下さい。

なお、それぞれの歌には現代語訳を付けましたが、これは私の意訳であることをお断りしておきます。一般的な解釈、通釈とは異なるものもあることを何卒ご了承ください。

スポンサーリンク

※いわゆる「有名な和歌」と言われているものは下のページで選びましたので、そちらも是非ご覧になってみてください。

⇒ 有名な和歌 ベスト20首 【保存版】

 

春の和歌 20選

 

朝夕に 花待つころは思ひ寝の 夢のうちにぞ咲きはじめける

【現代語訳】朝夕に花(が開くの)を待つ頃は、(それを)思いながら寝て(見た)夢の中で咲き始めるのだった

【作者】崇徳院(すとくいん)

【採録】千載和歌集(せんざいわかしゅう)

【補足】「思い寝」を「恋人のことを思いながら」の意に解釈することもできます。

 

 

鶯の 谷よりいづる声なくは 春来ることを誰か知らまし

【現代語訳】鶯(うぐいす)が谷から出て鳴く声が無ければ、春が来たことを誰が知るだろうか

【作者】大江千里(おおえのちさと)

【採録】古今和歌集(こきんわかしゅう)

【補足】かつて鶯は、冬には谷に籠っていて、春になると出てくると考えられていました。

 

 

梅の花 あかぬ色香もむかしにて おなじかたみの春の夜の月

【現代語訳】梅の花の飽きることのない色や香りも昔のままで、同じように思い出となる春の夜の月

【作者】藤原俊成女(ふじわらのとしなりのむすめ)

【採録】新古今和歌集(しんこきんわかしゅう)

 

 

思ひ寝の 心やゆきて尋ぬらむ 夢にも見つる山桜かな

【現代語訳】思いながら寝て、心が行って訪ねたのだろうか。夢に見た山桜よ

【作者】藤原清輔(ふじわらのきよすけ)

【採録】続千載和歌集(しょくせんざいわかしゅう)

 

 

桜色に 衣はふかく染めて着む 花の散りなむのちのかたみに

【現代語訳】桜色に衣(ころも)は深く染めて着よう。花が散ってしまった後の思い出(の品)に

【作者】紀有朋(きのありとも)

【採録】古今和歌集

【補足】「桜色(さくらいろ)」は、ほのかに赤い色をいいます。

河津桜

 

 

さくら花 春くははれる年だにも 人の心に飽かれやはせぬ

【現代語訳】桜花よ、春が(ひと月)加わった年でさえ、人の心に飽きられるまでは咲かないのか

あるいは

桜花よ、春が(ひと月)加わった今年だけでもせめて、人の心が満足するくらい咲いてくれないか

【作者】伊勢(いせ)

【採録】古今和歌集

【補足】「春くははれる」とは、閏月(うるうづき)があったことを意味します。

 

 

咲けば散る 咲かねば恋し山桜 思ひたえせぬ花のうへかな

【現代語訳】咲けば散ってしまう、咲かなければ(咲くのが)恋しい山桜。思いが絶えない花のことよ

【作者】中務(なかつかさ)

【採録】拾遺和歌集(しゅういわかしゅう)

【補足】「山桜」の題で詠まれた歌です。

 

 

たれこめて 春のゆくへもしらぬまに 待ちし桜もうつろひにけり

【現代語訳】家に籠って春の行方も知らないうちに、待っていた桜も散っていってしまった

【作者】藤原因香(ふじわらのよるか)

【採録】古今和歌集

【補足】「たれこめて(垂れ籠めて)」とは、簾(すだれ)を下して部屋に籠るという意味です。

 

 

ちりぬれば 匂ひばかりを梅の花 ありとや袖に春かぜの吹く

【現代語訳】散ってしまえば匂いだけとなる梅の花。(まだ花が)あるかのように袖に春風が吹く

【作者】藤原有家(ふじわらのありいえ)

【採録】新古今和歌集

 

 

ながめする みどりの空もかき曇り つれづれまさる春雨ぞふる

【現代語訳】眺めていた青い空も一面が暗くなって、つれづれな(=物憂い)春雨が降っている

【作者】藤原俊成(ふじわらのとしなり、しゅんぜい)

【採録】玉葉和歌集(ぎょくようわかしゅう)

【補足】古くに使われている「みどり」は、現代の緑色から藍色(少し緑がかった暗い青)までを指していました。

スポンサーリンク

 

 

浪のおとの けさからことにきこゆるは 春のしらべやあらたまるらむ

【現代語訳】波の音が今朝から異なって聞こえるのは、春の調べが改まったからだろうか

【作者】安倍清行(あべのきよゆき)

【採録】古今和歌集

【補足】詞書(ことばがき)には「からことといふ所にて、春の立ちける日よめる」とあります。

 

 

はかなさを ほかにもいはじ桜花 咲きては散りぬあはれ世の中

【現代語訳】はかなさを他には例えようもない桜花。咲いては散ってしまう、ああ人の世は…

【作者】徳大寺実定(とくだいじさねさだ)

【採録】新古今和歌集

 

 

花にあかぬ 嘆きはいつもせしかども 今日のこよひに似る時はなし

【現代語訳】(桜の)花に飽きることなく嘆くのはいつもしてきたけれども、今日、今宵に似ている時は無かった

【作者】在原業平(ありわらのなりひら)

【採録】新古今和歌集

 

 

春来れば まづ咲く宿の梅の花 香をなつかしみ鶯ぞ鳴く

【現代語訳】春が来れば真っ先に咲く(私の)家の梅の花。香りを懐かしんで鶯が鳴いている

【作者】源実朝(みなもとのさねとも)

【補足】山上憶良(やまのうえのおくら)の次の歌の本歌取(ほんかどり=有名な古歌の一部を取り入れる作った歌)です。

春されば まづ咲く屋戸の梅の花 独り見つつや春日暮らさむ

 

 

春来れば 宿にまづさく梅の花 きみがちとせのかざしとぞみる

【現代語訳】春が来れば真っ先に咲く(私の)家の梅の花。(それを)あなたの千歳(ちとせ)の(祝いの)飾りのように見えます

【作者】紀貫之(きのつらゆき)

【採録】古今和歌集

【補足】この歌も、前出の憶良の歌の本歌取です。

桃色の梅の花

 

 

春の野に すみれ摘みにと来こし我ぞ 野をなつかしみ一夜寝にける

【現代語訳】春の野にすみれ摘みにやって来た私は、野を懐かしんで一晩過ごしてしまった

【作者】山部赤人(やまべのあかひと)

【採録】万葉集

【補足】この歌は古今集仮名序(かなじょ)に挙げられています。

 

 

春の苑 紅にほふ桃の花 したでる道に出で立つ乙女

【現代語訳】春の苑(その)に紅に色づいた桃の花。(その)下に照らされた道に出て立っている乙女

【作者】大伴家持(おおとものやかもち)

【採録】万葉集

 

 

吹く風の さそふにほひをしるべにて 行方さだめぬ花の頃かな

【現代語訳】吹く風の誘う匂いを案内にして、行く先を決めない(で歩く)花の頃…

【作者】後嵯峨院(ごさがのいん)

【採録】続拾遺和歌集(しょくしゅういわかしゅう)

 

 

藤の花 かぜ吹かぬよはむらさきの 雲たちさらぬところとぞ見る

【現代語訳】藤の花、風が吹かない夜は紫の雲が立ち去らないように見える

【作者】藤原敏行(ふじわらのとしゆき)

【採録】秋風和歌集(しゅうふうわかしゅう)

【補足】むらさき(紫)の雲は、古来より「めでたいしるし」とされてきました。

 

 

山桜 たちのみかくす春霞 いつしかはれて見るよしもがな

【現代語訳】山桜を、立ち込めて隠してしまう春霞、いつかは晴れて(山桜を)見たいものだ

【作者】光孝天皇(こうこうてんのう)

【採録】新勅撰和歌集(しんちょくせんわかしゅう)

スポンサーリンク


サブコンテンツ

このページの先頭へ