恋の和歌 20選【現代語訳】付き

桜草の白い花

人に恋する気持ちというものは、昔も今もあまり変わりがないないように感じられます。

というのは、1000年以上も前の平安時代に詠まれた和歌を読んだときなどに、それらに込められた恋の想いに強い共感を持てるからです。

和歌で使われた言葉や表現は変化しても、人の心の働きは変わりようがないのかもしれません。

このページには、「恋の和歌」と呼ぶにふさわしいものを集めてみました。これらは、恋をしている人の切ない気持ちを見事に表現しているものばかりなので、是非ともじっくりと鑑賞してみて下さい。

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目次

恋の和歌 20選

恋について詠まれた和歌を 20首集めて、歌の文字の五十音順に並べました。

なお、それぞれの歌に現代語訳を付けましたが、これは私の意訳であることをお断りしておきます。一般的な解釈、通釈とは異なるものもあることを何卒ご了承ください。

 

秋風に かきなす琴の声にさへ はかなく人の恋しかるらむ

【現代語訳】

秋風の中、かき鳴らす琴の音にさえ、(どうして)はかなくも(あの)人が恋しくなるのだろうか

【作者】壬生忠岑(みぶのただみね)

【採録】古今和歌集(こきんわかしゅう)、忠岑集

【補足】忠岑は三十六歌仙の一人です。

 

あさましや こは何事のさまぞとよ 恋せよとても生むまれざりけり

【現代語訳】

情けないなあ、これは何という有様なのだ。「恋せよ」と(言われて)生まれたのではないのに…

【詞書】恋歌人々よみけるによめる

【作者】源俊頼(みなもとのとしより、しゅんらい)

【採録】金葉和歌集(きんようわかしゅう)

【補足】俊頼の和歌は、勅撰和歌集に 200首以上が入集しています。

 

あぢきなし 我が身にまさる物やあると 恋せし人をもどきしものを

【現代語訳】

やり切れないものだ、(かつて私は)「自分の命に勝るものがあるか」と恋をしている人を非難したものだが…

【作者】曾禰好忠(そねのよしただ)

【採録】後拾遺和歌集(ごしゅういわかしゅう)

【補足】好忠は中古三十六歌仙の一人です。

 

天つ空 とよのあかりに見し人の なほ面影のしひて恋しき

【現代語訳】

宮中の「とよのあかり(豊明)」で見た人の、いまだに面影がむしょうに恋しい

【詞書】左大将朝光五節舞姫奉りけるかしづきを見て、遣はしける

【作者】藤原公任(ふじわらのきんとう)

【採録】新古今和歌集(しんこきんわかしゅう)

【補足】

「とよのあかり(豊明=豊明節会)」は宮中の宴席で、舞姫が五節舞(ごせちのまい)を舞いました。「かしづき」とは、世話をする人のことです。

 

いつとなく 心そらなる我が恋や 富士の高嶺にかかる白雲

【現代語訳】

いつとは限らず上の空になってしまう私の恋… 富士の高嶺(たかね)にかかっている白い雲(のような)…

【作者】相模(さがみ)

【採録】後拾遺和歌集、定家八代抄

【補足】相模は平安時代中期の女流歌人です。

富士山の山頂の雪と雲

 

思ひかね なほ恋路にぞ帰りぬる 恨みはすゑも通らざりけり

【現代語訳】

(恋の)思いに耐えられず、また恋の路(みち)に帰ってきてしまった。恨みは最後まで通せないなあ…

【作者】俊恵(しゅんえ)

【採録】千載和歌集(せんざいわかしゅう)

 

君恋ふる 心はそらに天の原 かひなくてゆく月日なりけり

【現代語訳】

あなたを恋する心は上の空で、どうにもならずに過ぎゆく月日ですねえ

【作者】中務(なかつかさ)

【採録】金葉和歌集

【補足】中務は平安時代中期の女流歌人です。

 

きみにより 思ひならひぬ世の中の 人はこれをや恋といふらむ

【現代語訳】

あなたによって「思い」というものを学びました。世の中の人は、これを恋というのでしょう

【作者】在原業平(ありわらのなりひら)

【採録】続古今和歌集(しょくこきんわかしゅう)

【補足】業平は平安時代前期の歌人・貴族で、六歌仙三十六歌仙の一人です。

 

黒髪の 乱れもしらずうちふせば まづかきやりし人ぞ恋しき

【現代語訳】

黒髪の乱れるのもかまわず横になれば真っ先に、(この髪を)かき上げた人が恋しくなるのです

【作者】和泉式部(いずみしきぶ)

【採録】後拾遺和歌集、定家八代抄

【補足】和泉式部は平安時代中期の女流歌人で、中古三十六歌仙女房三十六歌仙の一人です。

 

恋ひ恋ひて まれにうけひく玉章(たまづさ)を 置き失ひてまた歎くかな

【現代語訳】

恋し続けて、まれに受け取った手紙を(どこかへ)置き忘れて、また嘆くのだなあ

【詞書】返り事を失ふ恋

【作者】源頼政(みなもとのよりまさ)

【採録】頼政集

【補足】頼政は平安時代後期の公卿・歌人で、宇治平等院の戦いの中で自害しました。

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恋しさに 思ひ乱れて寝ぬる夜の ふかき夢路をうつつともがな

【現代語訳】

恋しさに思い乱れて寝た夜の、(愛情)深い夢を現実(のもの)としたいものだ

【作者】素性法師(そせいほうし)

【採録】新千載和歌集(せんせんざいわかしゅう)

【補足】素性法師は 三十六歌仙の一人です。

 

恋ひ死なば 鳥ともなりて君がすむ 宿の梢にねぐら定めむ

【現代語訳】

恋い焦がれて死んだならば鳥となって、あなたが住む家の梢(こずえ)にねぐらを定めましょう

【作者】崇徳院(すとくいん)

【採録】後葉和歌集(ごようわかしゅう)、続詞花和歌集(しょくしかわかしゅう)

 

恋すてふ わが名はまだき立ちにけり 人知れずこそ思ひそめしか

【現代語訳】

恋をしているという私の噂は早くも立ってしまった。人に知られず(ひそかに)思い始めたのに…

【作者】壬生忠見(みぶのただみ)

【採録】拾遺和歌集(しゅういわかしゅう)、古来風躰抄、定家八代抄、百人一首

【補足】この歌は百人一首にも収められています。

 

誰がために 君を恋ふらむ恋ひわびて 我はわれにもあらずなりゆく

【現代語訳】

誰のためにあなたに恋するのでしょう。恋わずらいをして、私は自分でなくなってゆきます

【作者】源順(みなもとのしたごう)

【採録】続後拾遺和歌集(しょくごしゅういわかしゅう)

【補足】順は三十六歌仙の一人です。

 

玉の緒の 絶えてみじかき命もて 年月ながき恋もするかな

【現代語訳】

玉の緒が(すぐに)絶えてしまう短い命をもって、年月の長い恋をするのだなあ

【作者】紀貫之(きのつらゆき)

【採録】後撰和歌集(ごせんわかしゅう)、定家八代抄

【補足】玉の緒とは、人の魂(たましい)と肉体を結び付ける紐(ひも=緒)、あるいは命のことを意味します。

枝垂れ桜

 

つらければ かくてやみなむと思へども 物忘れせぬ恋にもあるかな

【現代語訳】

つらいので、こうしてやめようとは思うけれども、物忘れ(など)しない恋であるなあ

【詞書】恨みおぼしめして久しう音せさせ給はぬ人に

【作者】花山院(かさんいん)

【採録】玉葉和歌集(ぎょくようわかしゅう)

【補足】花山天皇は 17歳で即位しましたが、在位は 2年に満たない期間でした。

 

冬の日を 春より長くなすものは 恋ひつつ暮らす心なりけり

【現代語訳】

冬の日を春より長くするものは、恋をしつつ暮らす心なのだなあ

【作者】藤原忠通(ふじわらのただみち)

【採録】千載和歌集

 

枕より また知る人もなき恋を 涙せきあへずもらしつるかな

【現代語訳】

枕よりほかには知る人もない恋を、涙をせき止められずに漏らして(=知られて)しまったなあ

【作者】平貞文(たいらのさだふみ)

【採録】古今和歌集

【補足】貞文は中古三十六歌仙の一人で、勅撰和歌集に 26首が入集しています。

 

夜とともに 行くかたもなき心かな 恋は道なきものにぞありける

【現代語訳】

夜(になる)とともに、行く場所もなくなる(私の)心… 恋には道がないものなのだなあ

【作者】藤原顕季(ふじわらのあきすえ)

【採録】千載和歌集

【補足】顕季の和歌は勅撰和歌集に 48首が入集しています。

 

夜もすがら 契りしことを忘れずは 恋ひむ涙の色ぞゆかしき

【現代語訳】

一晩中言い交わしたことをお忘れにならないならば、(後に私を)恋しがっての涙の色を知りたいものです

【詞書】一条院御時、皇后宮かくれたまひてのち、帳の帷(かたびら)の紐に結びつけられたる文を見つけたりければ、内にもご覧ぜさせよとおぼし顔に、歌三つ書き付けられたりける中に

【作者】藤原定子(ふじわらのていし)

【採録】後拾遺和歌集、百人秀歌、栄花物語、古来風躰抄、定家八代抄

【補足】

中宮(ちゅうぐう)・定子に仕えたのが、『枕草子(まくらのそうし)』を著した清少納言(せいしょうなごん)です。

京都御所の御簾

  


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