夏の和歌 20選 【現代語訳】付き

月と夜空

穏やかだった春が終わり、憂鬱な梅雨が明けると、暑さとともにやって来る夏。暑さが厳しくなって疲れも感じるようになりますが、秋風が吹く頃になると、去ってゆく夏に何故か寂しさを感じてしまいます。

今回は、夏の和歌と呼ぶにふさわしいものを集めました。これらはいずれも夏らしい雰囲気に満ちあふれたものばかりなので、是非とも鑑賞してみて下さい。

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目次

夏の和歌について

万葉集をはじめとして、古今和歌集、金葉和歌集などから、夏に関する風物などが詠まれている和歌を 20首を選び、五十音順に並べました。夏という季節が持つ風景などを見事に表現したものばかりですので、是非チェックしてみて下さい。

なお、それぞれの歌には現代語訳を付けましたが、これは私の意訳であることをお断りしておきます。一般的な解釈、通釈とは異なるものもあることを何卒ご了承ください。

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※いわゆる「有名な和歌」と言われているものは下のページで選びましたので、そちらも是非ご覧になってみてください。

⇒ 有名な和歌 ベスト20首 【保存版】

 

夏の和歌 20選

 

うき草を 雲とやいとふ夏の池の 底なる魚も月をながめば

【現代語訳】浮草を雲と(思って)嫌うのか、夏の池の底にいる魚も月を眺めるときに

【作者】源頼政(みなもとのよりまさ)

【採録】頼政集(よりまさしゅう)

 

 

卯の花の 過ぎば惜しみか霍公鳥(ほととぎす) 雨間(あまま)も置かずこゆ鳴きわたる

【現代語訳】卯の花が(散って)過ぎていくのを惜しんでいるのか、ほととぎすが雨の間も休まずに、ここから(あちらへと)鳴いている

【作者】大伴家持(おおとものやかもち)

【採録】万葉集(まんようしゅう)

【補足】「ほととぎす」は霍公鳥のほかにも、次のように様々な漢字で書き表されます。

  • 不如帰
  • 霍公
  • 郭公
  • 子規
  • 杜鵑
  • 杜宇
  • 田鵑
  • 蜀魂

 

 

風ふけば 蓮の浮き葉に玉こえて 涼しくなりぬ日ぐらしの声

【現代語訳】風が吹いて蓮(はす)の浮いた葉に(露の)玉がころがって涼しくなった。蜩(ひぐらし)の声も(聞こえ)…

【作者】源俊頼(みなもとのとしより、しゅんらい)

【採録】金葉和歌集(きんようわかしゅう)

 

 

曇りなき 青海(あおみ)の原をとぶ鳥の かげさへしるくてれる夏かな

【現代語訳】曇りのない青い海原を飛ぶ鳥の姿さえはっきりと照らす夏…

【作者】曾禰好忠(そねのよしただ)

【採録】好忠集(よしさだしゅう)

 

 

恋しけば 形見にせむと我が屋戸に 植ゑし藤波今咲きにけり

【現代語訳】恋しいときの思い出(の品)にしようと私の家に植えた藤の花が、今咲いている

【作者】山部赤人(やまべのあかひと)

【採録】万葉集

藤の花

 

 

下くぐる 水に秋こそかよふらし 掬(むす)ぶ泉の手さへ涼しき

【現代語訳】(地の)下を潜る(くぐる)に秋が行き来しているらしい。泉(の水)をすくう手さへ涼しいから

【作者】中務(なかつかさ)

【採録】新千載和歌集(しんせんざいわかしゅう)

 

 

橘(たちばな)の 花散る里のほととぎす 片恋しつつ鳴く日しぞ多き

【現代語訳】橘の花が散る里のほととぎすは、(散った花に)片思いしながら鳴く日が多い

【作者】大伴旅人(おおとものたびと)

【採録】万葉集

 

 

夏と秋と 行きかふ空のかよひ路は かたへすずしき風や吹くらむ

【現代語訳】夏と秋が行きかう空の路(みち)は、片方が涼しい風が吹くのだろうか

【作者】凡河内躬恒(おうしこうちのみつね)

【採録】古今和歌集(こきんわかしゅう)

【補足】詞書(ことばがき)には「みな月のつごもりの日よめる」とあります。

 

 

夏の夜の 月待つほどの手すさみに 岩もる清水いくむすびしつ

【現代語訳】夏の夜の月(が出るのを)を待つ間の手遊びに、岩から漏れる清水を幾度すくっただろう

【作者】藤原基俊(ふじわらのもととし)

【採録】金葉和歌集

 

 

夏山の 影をしげみや玉ほこの 道行き人も立ちどまるらむ

【現代語訳】夏山の木陰(こかげ)が繁っているから、道を行く人も立ち止まるのだろうか

【作者】紀貫之(きのつらゆき)

【採録】拾遺和歌集(しゅういわかしゅう)

【補足】「玉ほこの」は「道」の枕詞(まくらことば)です。

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夏深き 杜(もり)の下陰(したかげ)風すぎて 梢をわたる日ぐらしの声

【現代語訳】夏深まった森の下陰を風がすぎてゆき、梢を渡る蜩(ひぐらし)の声もする

【作者】藤原忠良(ふじわらのただよし)

【採録】正治初度百首(しょうじしょどひゃくしゅ)

 

 

はちす葉の にごりにしまぬ心もて なにかは露を玉とあざむく

【現代語訳】蓮の葉は汚れに染まらない心がありながら、なぜ露を玉と欺くのか

【作者】僧正遍昭(そうじょうへんじょう)

【採録】古今和歌集

【補足】「はちす」は蓮(はす)の古い呼び名です。万葉集に、詠み人しらずの次の歌があります。

ひさかたの 雨も降らぬか蓮葉に 溜まれる水の玉に似たる見む

 

 

葉をしげみ 外山(とやま)の影やまがふらむ 明くるも知らぬひぐらしの声

【現代語訳】葉が繁って外山の影を(夜と)間違えているのだろうか、(夜が)明けたのも知らない(で鳴いている)蜩(ひぐらし)の声

【作者】藤原実方(ふじわらのさねかた)

【採録】新勅撰和歌集(しんちょくせんわかしゅう)

 

 

ほととぎす いたくな鳴きそひとり居て 寐(い)の寝らえぬに聞けば苦しも

【現代語訳】ほととぎすよ、そんなに鳴かないでくれ。一人で寝られない(でいる)のに、(鳴き声を)聞けば苦しいから

【作者】大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)

【採録】万葉集

【補足】万葉集には、弓削皇子(ゆげのみこ)の次の歌があります。

ほととぎす 無かる国にも行きてしか その鳴く声を聞けば苦しも

 

 

夢よりも はかなきものは夏の夜の 暁がたの別れなりけり

【現代語訳】夢よりも儚(はかな)いものは、夏の夜の明け方の別れであった

【作者】壬生忠岑(みぶのただみね)

【採録】後撰和歌集(ごせんわかしゅう)

【補足】拾遺和歌集に、詠み人しらずの次の歌があります。

夢よりも はかなきものはかげろふの ほのかに見えしかげにぞありける

夜明けの山々

 

 

宵のまに 身を投げはつる夏虫は 燃えてや人に逢ふと聞きけむ

【現代語訳】夜の間に(火の中に)身を投げて(命が)果てた夏虫は、燃えることで(愛しい)人に逢えると聞いたのだろうか

【作者】伊勢(いせ)

【採録】伊勢集

【補足】伊勢集には次の歌も含まれています。

夏虫の 身をも惜しまで魂(たま)しあらば 我もまねばむ人目もる身ぞ

 

 

よられつる 野もせの草のかげろひて 涼しくくもる夕立の空

【現代語訳】からまっている野一面の草が陰(かげ)になって、涼しく曇っている夕立の空

【作者】西行(さいぎょう)

【採録】新古今和歌集(しんこきんわかしゅう)

 

 

よろづ代に かはらぬものは五月雨の しづくにかをる菖蒲なりけり

【現代語訳】万代に(何代にわたっても)変わらないものは、五月雨(さみだれ)の雫(しずく)に(よって)香る菖蒲(しょうぶ)だなあ

【作者】源経信(みなもとのつねのぶ)

【採録】金葉和歌集

 

 

わがやどの 梢の夏になるときは 生駒の山ぞ見えずなりぬる

【現代語訳】私の家の梢が夏になる(=生い茂る)ときは、生駒(いこま)の山が見えなくなってしまう

【作者】能因法師(のういんほうし)

【採録】後拾遺和歌集

 

 

をしめども とまらぬ春もあるものを 言はぬにきたる夏衣かな

【現代語訳】惜しんでも止まらない春もあるのに、(何も)言わないのにやって来た夏、(そして)夏衣を着ているなあ

【作者】素性法師(そせいほうし)

【採録】新古今和歌集

 

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