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正岡子規の短歌 100選 -春・夏・秋・冬ー

藤の花

正岡子規の作品というと、どうしても俳句に目が行きがちになりますが、短歌にも味わい深いものが数多くあります。

子規は万葉集を評価する一方で、古今和歌集に対しては否定的です。このことは、子規の短歌を読む上で常に意識しておきたいポイントだと私は考えます。

このページでは、正岡子規の短歌をじっくりと鑑賞していきましょう。

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目次

正岡子規の短歌 100

正岡子規の短歌の中から 100首を選んで、春・夏・秋・冬に分けました。短歌の数は次の通りです。

  • 春 … 40首
  • 夏 … 25首
  • 秋 … 25首
  • 冬 … 10首

 


  春  


 

朝日さす 寐ざめの窓に影見えて 花ふみちらし鶯のなく

 

 

敦盛の 墓弔へば花もなし 春風春雨播州に入る

平安時代の武将・平敦盛(たいらのあつもり)の首塚は兵庫の須磨寺(すまでら)にあります。古くにこの地は播磨(はりま)、播州(ばんしゅう)と呼ばれていました。

 

 

いちはつの 花咲きいでて我が目には 今年ばかりの春行かんとす

イチハツはアヤメ科の多年草で、アヤメ類の中で一番最初に花が咲くことから「一初」と名付けられました。

 

 

いつのよの 庭のかたみぞ賤が家の 垣根つづきに匂ふ梅が香

賤が家(しずがや)とは、粗末な住居を表現する言葉です。古くには身分が低い人の住む家のことを意味しました。

 

 

鶯の ねぐらやぬれんくれ竹の 根岸の里に春雨ぞふる

根岸(ねぎし)は東京の地名で、晩年の子規の住居である子規庵(しきあん)は現在も保存・公開されています。

 

 

美しき 鳥飛び去つて暮れぬ日の 春雨細し青柳の門

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梅残り 椿つぼめる賤が家の 垣根にそひて曲り曲り行く

 

 

うらうらと 春日さしこむ鳥籠の 二尺の空に雲雀鳴くなり

 

 

売れ残る 雛やものを思ふらん 十軒店の春の夜の雨

十軒店(じっけんだな)は東京の地名です。かつては桃の節句に「雛市」が開かれ、内裏雛や禿人形などが売られました。

 

 

岡の上に 天凌き立つ御佛の 御肩にかかる花の白雲

「凌き」の読みは「しのき(しのぎ)」です。

 

 

瓶にさす 藤の花ぶさ一ふさは かさねし書の上に垂れたり

「瓶」「書」の読みは、それぞれ「かめ」「ふみ」です。

 

 

くれなゐの 二尺伸びたる薔薇の芽の 針やはらかに春雨のふる

 

 

紅梅の 咲く門とこそ聞きて来し 根岸の里に人尋ねわびつ

紅梅

 

 

小夜ふけて 櫻が岡をわが行けば 櫻曇りの薄月の暈

小夜(さよ)は「夜」と同義です。

 

 

白きにはえ 赤きににほふ遠里の 櫻の色に絵かきは惑ふ

 

 

その昔 ありし二人のはらからが 摘みのこしけん痩わらびかも

「はらから」とは「きょうだい」のことです。同じ母親から生まれた兄弟姉妹が語源です。

 

 

太鼓打つ 雛は桃にぞ隠れける 笛吹雛に櫻散るなり

 

 

玉づさの 君の使は紫の 菫の花を持ちて来(こ)しかも

「玉づさの」は「使」「妹」に掛かる枕詞(まくらことば)です。

 

 

たらちねの うなゐ遊びの古雛の 紅あせて人老いにけり

「うなゐ」は幼い子供のことです。

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月てらす 梅の木の間にたたずめば わが衣手の上に影あり

衣手(ころもで)とは、着物の袖、袂(たもと)のことをいいます。

 

 

東京は 春まだ寒き雛祭 梅のさかりに桃の花を売る

 

 

ともし火の もとに長ぶみ書き居れば 鶯鳴きぬ夜や明けぬらん

 

 

菜の花に 日は傾きて夕雲雀 しきりに落る市川の里

 

 

ぬばたまの 闇に梅が香聞え来て 躬恒が歌に似たる夜半かも

「ぬばたまの」は「黒」「夜」「髪」「夕」「宵」などに掛かる枕詞です。

 

 

春雨の しのぶが岡にぬれてさく 櫻をいづる傘の上の花

「しのぶが岡(忍岡)」は東京・上野(うえの)の周辺を指します。

 

 

春の夜の 衣桁に掛けし錦襴の ぬひの孔雀を照すともし火

衣桁(いこう)とは、部屋の中で衣類などを掛けておくための道具のことです。錦襴(きんらん)は錦(にしき=絹織物)の一種で、平金糸(ひらきんし)を横糸に加えて模様を織り出したものです。

衣桁

 

 

久方の 曇り払ひて朝日子の うららに照す山吹の花

朝日子(あさひこ)の「子(こ)」は親しみを表現する接尾語で、意味としては「朝日」と変わりがありません。

また、「久方の(ひさかたの)」は「天」「光」などに掛かる枕詞です。

 

 

人住まぬ いくさのあとの崩れ家 杏の花は咲きて散りけり

杏の読みは「あんず」です。

 

 

人も来ず 春行く庭の水に上に こぼれてたまる山吹の花

 

 

雲雀鳴く 空に星消え月落ちて 一筋赤く日上らんとす

 

 

笛の音の そことも知らず須磨の浦 夢路に似たる春の夜の月

夢路(ゆめじ)は夢、夢をみることと同義の言葉で、「夢の中で通る道」の意です。

 

 

古里の 御寺見めぐる永き日の 菜の花曇(ぐもり)雨となりけり

花曇の読みは「はなぐもり」です。

 

 

松の葉の 葉毎に結ぶ白露の 置きてはこぼれこぼれては置く

 

 

御社の 藤の花房長き日を はりこづくりの亀が首ふる

御社の読みは「みやしろ」です。

 

 

紫の 一本やいづれむさし野の 草むらがくれ菫咲く也

 

 

夕顔の 巻よむ春の夜は更けて 油乏しく灯消えんとす

「夕顔(ゆうがお)」は源氏物語 54帖のうちの第 4帖で、作中に登場する女性の通称です。

 

 

世の中は 悔いてかへらずたらちねの いのちの内に 花も見るべく

 

 

世の中は 常なきものと我が愛(め)づる 山吹の花散りにけるかも

「愛づる」の読みは「めづる」です。

 

我昔 住みにし跡を尋ぬれば 櫻茂りて人老いにけり

 

 

別れゆく 春のかたみと藤波の 花の長ふさ絵にかけるかも

藤の花

 

  


  夏  


 

赤き牡丹 白き牡丹を手折(たお)りけり 赤きを君にいで贈らばや

「贈らばや」は「贈りたいものだ」の意です。

 

 

足引の 山のしげみの迷ひ路に 人より高き白百合の花

「足引きの(あしひきの)」は「山」「峰」などに掛かる枕詞です。

 

 

家ごとに ふすぶる蚊遣(かやり)なびきあひ 墨田の川に夕けぶりたつ

 

 

落つる水の 細くわかれて涼しくも 風にゆらめく玉簾哉

 

 

清水の 音羽の瀧の音高み 涼しくふくる夏の夜半かな

 

 

くれなゐの 牡丹の花の咲きしより 庭の千草は色なかりけり

 

 

立ちおほふ 雲のひまより青空の わづかに見えて梅雨明けんとす

 

 

たまたまに 窓を開けば五月雨に ぬれても咲ける薔薇の赤花

 

 

天竺(てんじく)の 棕櫚(しゅろ)の葉団扇上海(しゃんはい)の 絹の絵団扇さまざまの世や

「天竺」「棕櫚」「上海」の読みは、それぞれ「てんじく(=インドの旧名)」「しゅろ(=ヤシ科の植物)」「しゃんはい」です。

 

 

とばり垂れて 君いまださめず紅の 牡丹の花に朝日さすなり

 

 

夏の日の 旅行く人の影たえて 那須野の原に夕立のふる

 

 

夏の夜の 月の光し清ければ 加茂の河原に人つどひけり

 

 

夏の夜の 月をすずしみひとり居る 裸に露の置く思ひあり

夜の月

 

 

何見ても 昔ぞ忍ぶ中んづく 隅田の夏の夕暮の月

 

 

ひぐらしの 谷中の杜(もり)の下陰を 涼みどころと茶屋立てにけり

 

 

見し夢の 名残も涼し檐のはに 雲ふきおこる明がたの山

檐の読みは「のき」で、「ひさし」と読むこともあります。

 

 

水とのみ 思ひしものを流れつる 瀧はわきたついでゆなりけり

 

 

峰となり 岩と木となり獅子となり 変化となりて動く夏雲

 

 

靄深く こめたる庭に下り立ちて 朝のすさびに杜若剪(き)る

靄の読みは「もや」です。

 

 

病む我を なぐさめがほに開きたる 牡丹の花を見れば悲しも

 

 

夕立の 今かくるらんすまの浦の 小舟にさわぐ沖つ白波

 

 

夕立の はるる跡より月もりて 叉色かふる紫陽花の花

 

 

夕立は 隣の里や過ぎつらん 蝉吹き飛ばす椎の葉の風

 

 

わが庭の 垣根に生ふる薔薇の芽の 莟ふくれて夏は来にけり

 

 

若葉さす 市の植木の下陰に 金魚あきなふ夏は来にけり

緑の若葉

 

 


  秋  


 

秋風の ふくとも見しかむさしのの 尾花をわけて人の行く也

 

 

秋の夜を 書(ふみ)よみをれば離れ屋に 茶をひく音のかすかに聞ゆ

 

 

秋晴れに 野を飛びわたる鶴むらの いつまでも見ゆる空のさやけさ

「鶴むら」は「鶴の群れ(むれ)」と同義です。

 

 

朝な朝な 一枝折りて此の頃は 乏しく咲きぬ撫子(なでしこ)の花

「朝な朝な」の読みは「あさなさな」です。

 

 

あたたかき 日を端居して庭を見る 萩の芽長きこと二三寸

 

 

稲妻の ひらめく背戸の杉の木に 鳴神(なるかみ)落ちて雨晴れにけり

 

 

岩ふみて 落ちくる瀧を仰ぎ見れば 空にしられぬ霧ぞふりける

 

 

奥山に 淋しく立てるくれなゐの 木の子は人の命とるとふ

 

 

籠にもりて 柿おくりきぬ古里の 高尾の楓色づきにけん

「楓」の読みは「かえで」です。

 

 

君と我 二人かたらふ窓の外の もみぢの梢横日さす也

 

 

草枕 旅路かさねてもがみ河 行くへもしらず秋立ちにけり

 

 

来し方を かへりむすればはろばろと 海の彼方に雁鳴きわたる

岩礁と海の風景

 

 

椎の枝 楢の梢を吹きくだく 野分の風よ萩もあらばこそ

 

 

聖霊(しょうりょう)の 帰り路送る送り火の もえたちかぬる月あかりかな

 

 

露草の 朝露重み枝たれて 野川の泥によごれてぞ咲く

 

 

夏菊の 枯るる側より葉鶏頭の 紅深く伸び立ちにけり

 

 

野分せし 野寺の芭蕉ばらばらに ばらばらに裂けて露もたまらず

 

 

一桶の 水うちやめばほろほろと 露の玉散る秋草の花

 

 

もしほやく 畑もたえて須磨の浦に ただすみのぼる秋の夜の月

「もしほ」とは、塩を採るための海藻(かいそう)のことです。

 

 

望の夜は 恋しき人の住むといふ 月も面をながめつつ泣く

望の読みは「もち」で、満月のことをいいます。。

 

 

夕されば 波うちこゆる荒磯の 蘆のふし葉に秋風ぞ吹く

 

 

夜嵐の 名残もしるくうつむけに 倒れて咲けるおしろいの花

 

 

夜もすがら さわぐ野分の音絶えて 雨戸くれば垣なかりけり

 

 

わが憩ふ うしろの森に日は落ちて あたまの上に蜩の啼く

 

 

我が心 いぶせき時はさ庭べの 黄菊白菊我をなぐさむ

「いぶせし」は恋や待ち遠しさで気分が晴れない様子を表現する言葉です。

黄菊と白菊

 

 


  冬  


 

朝日さす 森の下道我が行けば ほつ枝下枝の雪落つる音

ほつ枝(上枝、秀つ枝)は「上の方の枝」のことをいい、下枝(しずえ)に対する言葉です。

 

 

新しき 庭の草木の冬ざれて 水盤(すいばん)の水に埃(ほこり)うきけり

 

 

折りてかざす 紅葉の枝に雫して しぐれの雨は猶霽れずけり

 

 

鉢に植ゑし ことぶき草のさち草の 花を埋めて雪ふりにけり

 

 

日にうとき 庭の垣根の霜柱 水仙にそひて炭俵敷く

 

 

吹きたまる 木の葉の上に山茶花の 花ちりこぼれしぐれふるなり

 

 

佛立つ 道のべ柳落葉して 供へし菊に時雨ふるなり

 

 

ましらふの 鷹据ゑて立つもののふの 笠に音してふる霰かな

霰の読みは「あられ」です。

 

 

もろこしの 女神がつけし白玉の かざしに似たる水仙の花

白い水仙の花

 

 

よき人を 埋めし跡の墓の石に 山茶花(さざんか)散りて掃く人もなし

 


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