梅の和歌 20選 【現代語訳】付き

枝垂梅

現代の俳句などで「花」といえば桜を指しますが、奈良時代の和歌などで「花」といった場合には梅のことを意味していました。

万葉集においては、梅の歌は桜の歌のおよそ 3倍ほども収録されています。桜の花に注目が集まり、「花=桜」という認識に変化し始めたのは平安時代になってからのことでした。

今回は、梅の和歌と呼ぶにふさわしいものを集めました。これらはいずれも梅が持つ雰囲気に満ちあふれたものなので、是非とも味わってみて下さい。

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目次

梅の和歌について

梅の花、梅の香などのように、梅に関するものが詠まれている和歌を 20首を選び、五十音順に並べました。梅の持つ美しさを見事に表現したものばかりですので、是非チェックしてみて下さい。

菅原道真が梅の花について詠んだ歌については、こちらに 3首が含まれていますので、あわせてご覧になって下さい。

⇒ 菅原道真の和歌 30首

なお、それぞれの歌には現代語訳を付けましたが、これは私の意訳であることをお断りしておきます。一般的な解釈、通釈とは異なるものもあることを何卒ご了承ください。

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梅の和歌 20選

 

朝まだき おきてぞ見つる梅の花 夜のまの風のうしろめたさに

【現代語訳】朝早く起きて見た梅の花、夜の間の風が気になっていて

【作者】元良親王(もとよししんのう)

【採録】拾遺和歌集(しゅういわかしゅう)

 

 

梅が香を 夢の枕にさそひきて さむる待ちける春の山風

【現代語訳】梅の香りを夢見ていた枕元に運んで、目覚めるのを待っていた春の山風

【作者】源実朝(みなもとのさねとも)

 

 

梅の香を 君によそへてみるからに 花のをり知る身ともなるかな

【現代語訳】梅の香りを貴方に結び付けて(梅の花を)みるから、花の(咲く)時期を知る身となったのです

【作者】和泉式部(いずみしきぶ)

【採録】和泉式部続集(いずみしきぶぞくしゅう)

【補足】和泉式部は中古三十六歌仙、女房三十六歌仙の一人です。

 

 

梅の花 折ればこぼれぬ我が袖に にほひ香うつせ家づとにせむ

【現代語訳】梅の花は折ればこぼれ散ってしまう。(私に)匂いを移してくれ、みやげものにしたいから

【作者】素性法師(そせいほうし)

【採録】後撰和歌集(ごせんわかしゅう)

【補足】「家づと」とは、我が家に持って帰るみやげもののことをいいます。

 

 

梅の花 かばかりにほふ春の夜の やみは風こそうれしかりけれ

【現代語訳】梅の花がこれほどに匂う春の夜の闇夜には、風が(吹いているのが)うれしいものだ

【作者】藤原顕綱(ふじわらのあきつな)

【採録】後拾遺和歌集(ごしゅういわかしゅう)

【補足】「かばかり(これほどにの意)」と「香ばかり」が掛かっています。

桃色の梅の花

 

 

君とこそ 春来ることも待たれしか 梅も桜もたれとかは見む

【現代語訳】あなたと(一緒であれば)こそ春が来るのを待たれたのに、梅も桜も誰と(一緒に)見ればよいのでしょう

【作者】赤染衛門(あかぞめえもん)

【採録】赤染衛門集(あかぞめえもんしゅう)

【補足】赤染衛門が夫を失った後に読んだ歌です。

 

 

暮ると明くと 目かれぬものを梅の花 いつの人まにうつろひぬらむ

【現代語訳】日暮れ、夜明けと目を離さなかったのに、梅の花はいつ、人が見ていないうちに変わってしまったのだろう

【作者】紀貫之(きのつらゆき)

【採録】古今和歌集(こきんわかしゅう)

 

 

来ぬ人に よそへて見つる梅の花 散りなむ後のなぐさめぞなき

【現代語訳】来ない人に結び付けて見ていた梅の花、散ってしまった後の慰めはないのです

【作者】藤原定頼(ふじわらのさだより)

【採録】新古今和歌集(しんこきんわかしゅう)

 

 

酒坏に 梅の花浮け思ふどち 飲みての後は散りぬともよし

【現代語訳】盃(さかずき)に梅の花を浮かべて思いにふける者どうし、飲み終わった後は散ってしまうのもよい

【作者】大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)

【採録】万葉集(まんようしゅう)

【補足】「酒坏」の読みは「さかづき」です。

 

 

咲きしより かねてぞをしき梅の花 ちりのわかれは我が身と思へば

【現代語訳】咲いたときから前もって(散るのが)惜しまれる梅の花、散って別れるのは我が身のように思う

【作者】源 実朝

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にほひもて 分かばぞ分かむ梅の花 それとも見えぬ春の夜の月

【現代語訳】匂いで区別すればわかるでしょうが、梅の花は春の夜の月の下では見えないのです

【作者】大江匡房(おおえのまさふさ)

【採録】千載和歌集(せんざいわかしゅう)

 

 

ねやちかき 梅のにほひに朝な朝な あやしく恋のまさる頃かな

【現代語訳】寝屋の近くの梅の匂いに、朝が来るたびにひどく恋の心持ちが増していくことだ

【作者】能因法師(のういんほうし)

【採録】後拾遺和歌集

 

 

花の色は 雪にまじりて見えずとも 香をだににほへ人の知るべく

【現代語訳】花の(白い)色は雪に混じって見えなくても、香りだけは人に知れるように匂ってくれ

【作者】小野篁(おののたかむら)

【採録】古今和歌集

【補足】詞書(ことばがき)に「梅の花に雪のふれるをよめる」とあり、梅の花について詠んでいることがわかります。

 

 

春の夜の 闇はあやなし梅の花 色こそ見えね香やは隠るる

【現代語訳】春の夜の闇には彩(あや=いろどり)がない。(しかし)梅の花は色こそ見えないが香りは隠れてしまうだろうか(いや、そのようなことはない)

【作者】凡河内躬恒(おうしこうちのみつね)

【採録】古今和歌集

【補足】「あやなし」は「よくわからない」といった意味も持っています。

 

 

雪のうへに 照れる月夜に梅の花 折りて贈らむ愛はしき児もがも

【現代語訳】雪の上に月が照る夜に、梅の花を折って贈りたいものだ、もし愛しい人がいれば

【作者】大伴家持(おおとものやかもち)

【採録】万葉集

【補足】「月夜」の読みは「つくよ」です。

白い梅の花と青空

 

 

雪ふれば 木ごとに花ぞ咲きにける いづれを梅とわきて折らまし

【現代語訳】雪が降ってそれぞれの木に花が咲いた。どれを梅と(梅の花に見える雪と)区別して折ろうか

【作者】紀友則(きのとものり)

【採録】古今和歌集

【補足】「木ごと」は「木(き)」と「毎(ごと)」を合わせたものであり、『梅』をあらわしていると解釈する節もあります。

 

 

我が岡に 盛りに咲ける梅の花 残れる雪をまがへつるかも

【現代語訳】私の(住んでいる)岡に盛んに咲いた梅の花。残った雪を(梅の花と)間違えたのだなあ

【作者】大伴旅人(おおとものたびと)

【採録】万葉集

 

 

我が背子に 見せむと思ひし梅の花 それとも見えず雪の降れれば

【現代語訳】私の(愛しい)人に見せようと思っていた梅の花。(しかし、どれが)それとも見えない、雪が降っっているので

【作者】山部赤人(やまべのあかひと)

【採録】万葉集

【補足】背子(せこ)とは、夫や恋人を意味する言葉です。

 

 

我が園に 梅の花散る久かたの 天より雪の流れ来るかも

【現代語訳】私たちの(庭)園に梅の花が散っている。天から雪が流れ落ちているのだろうか。

【作者】大伴旅人

【採録】万葉集

【補足】「久かたの」は「天」などに掛かる枕詞(まくらことば)です。

 

 

我妹子が 植ゑし梅の木見るごとに 心咽せつつ涙し流る

【現代語訳】私の妻が植えた梅の木を見るたびに、胸が一杯になって涙が流れる

【作者】大伴旅人

【採録】万葉集

【補足】我妹子(わぎもこ)とは、妻や恋人を意味する言葉です。

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