「ありがたい」の意味と類語 20
普段は何気なく使っている言葉でも、その語源・由来を想像したり、「なぜこのような言い方をするのだろう」と考えると、すぐに答が見つからないことがあります。
例えば「ありがたい」という語の場合、まったく見当がつかないということはありませんが、しっかりとした確信はなかなか持てません。
そこで、このページでは「ありがたい」について、漢字の表記、語源、意味、類語などについて確認してみましょう。
「ありがたい」の漢字は?
まず、「ありがたい」の漢字の表記を確認しておきましょう。
- 有り難い
- 有難い
- 難有い
現代で目にするのは、この 3つの表記となります。1. と 2.は、送り仮名の「り」があるかないかの違いです。
3.については、明治時代の小説などを読んでいると目に触れることが多い表記です。次の小説家の作品では「難有い」となっているはずです。
- 森鴎外(もり おうがい)
- 夏目漱石(なつめ そうせき)
- 島崎藤村(しまざき とうそん)
- 泉鏡花(いずみ きょうか)
- 芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ)
「ありがたい」の語源は?
次に、語源をみていきましょう。これは、漢字の表記から想像されるように
あること(有ること/在ること)がむずかしい(難しい)
と考えられます。この対義語としては
- ありがちな(有り勝ちな)=よくあること
- ありふれた
- ありきたりな
などが挙げられるでしょう。
古くには、「ありがたい」は上に述べた「有ることが難しい」と近い意味で使われていました。いくつかの例をみていきましょう。
ありがたきもの。舅(しゅうと)にほめらるる婿(むこ)。
これは、平安時代中期の『枕草子(まくらのそうし)』にある文章です。ここでは、めったにない、めずらしいという意味で「ありがたい」が使われています。
世の中はありがたく、むつかしげなるものかな
『源氏物語(げんじものがたり)』の文章で、やはり平安時代中期のものです。生きにくい、生活しがたいという意味になります。
前車の轍を見ることは誠にありがたき習ひなりけんかし
南北朝時代の『神皇正統記(じんのうしょうとうき)』にある文章で、難しい、困難なという意味で使われています。
現代では、これらの意味で「ありがたい」が使われることはあまりなく、「めずらしい」「生きにくい」「難しい」のような言葉に置き換わっています。
「ありがたい」の意味は?
現代での「ありがたい」の意味は、次の3つに分けられます。
- 感謝の気持ちを持っているさま
- 物事が都合よく進んで嬉しいさま
- 尊い、もったいない
1. は「ありがたい申し出」「ありがたく頂戴いたします」などのように、人の好意や良い物事に恵まれたときなどに使われるもので、最も一般的です。
そして、感謝の気持ちを相手に伝える場合の言葉が、「ありがたい」の音便の「ありがとう」です。
2. は「ありがたいことに、雨がやんだ」「ありがたくない知らせが届いた」といった使われ方をします。
3. は「ありがたいお経」「ありがたいお言葉」のように使います。
1 ~ 3 は、次のようにとらえると自然に感じられますね。
有ることが難しい |
↓ |
めったにない、めずらしい |
↓ |
感謝、嬉しい、尊い |
「ありがたい」の類語 20
「ありがたい」の類語を、先の 1. 感謝、2. 嬉しい、3. 尊い に分けてみてみましょう。
1. 感謝 | 恩に着る |
感謝したい | |
感謝を感じる | |
好意的な | |
好ましい | |
助けになる | |
2. 嬉しい | 色好い |
幸いな | |
思いがけない | |
好都合な | |
願ってもない | |
耳よりな | |
喜ばしい | |
3. 尊い | 頭が下がる |
恐れ多い | |
後光が射している | |
神聖な | |
手を合わせたくなる | |
身にあまる | |
もったいない |