勅撰和歌集 21のまとめ 【八大集の覚え方】付き
日本では古くから、「万葉集(まんようしゅう)」をはじめとして数多くの和歌集が編集されてきました。この中に「勅撰和歌集」といわれる 21の歌集があります。
これらは 500年以上にもわたって編集が行われてきたもので、和歌の歴史ともいえるものです。
このページでは、その勅撰和歌集についてみていくことにしましょう。
勅撰和歌集とは?
勅撰和歌集(ちょくせんわかしゅう)とは、天皇や上皇(じょうこう=皇位を譲った天皇の尊号、「院(いん)」も同じ)の命によって編纂された和歌集のことをいいます。
これらには、古今和歌集(905年)から新続古今和歌集(1439年)までの 21の歌集があります。
1 | 古今和歌集 | 三代集 | 八代集 | 二十一代集 |
2 | 後撰和歌集 | |||
3 | 拾遺和歌集 | |||
4 | 後拾遺和歌集 | |||
5 | 金葉和歌集 | |||
6 | 詞花和歌集 | |||
7 | 千載和歌集 | |||
8 | 新古今和歌集 | |||
9 | 新勅撰和歌集 | 十三代集 | ||
10 | 続後撰和歌集 | |||
11 | 続古今和歌集 | |||
12 | 続拾遺和歌集 | |||
13 | 新後撰和歌集 | |||
14 | 玉葉和歌集 | |||
15 | 続千載和歌集 | |||
16 | 続後拾遺和歌集 | |||
17 | 風雅和歌集 | |||
18 | 新千載和歌集 | |||
19 | 新拾遺和歌集 | |||
20 | 新後拾遺和歌集 | |||
21 | 新続古今和歌集 | |||
- | 新葉和歌集 | 準勅撰集 |
- 1~3 を三代集といいます。
- 1~8 を八代集といいます。
- 9~21 を十三代集といいます。
- 1~21 をまとめて二十一代集といいます。
- 南北朝時代に南朝で編集された新葉和歌集は準勅撰集とされています。
勅撰和歌集 21 【一覧】
1 古今和歌集
【読み方】こきんわかしゅう
【下命者】醍醐天皇
【撰者】凡河内躬恒、紀貫之、紀友則、壬生忠岑
【巻数】20巻
【歌数】1100首
【成立】905年~(912年頃との説あり)
【補足】略して「古今集(こきんしゅう)」ともいいます。枕草子(まくらのそうし)によれば、当時の貴族にとって古今和歌集を暗唱することが教養とされていました。
【代表的な歌人】
- 紀貫之 102首
- 凡河内躬恒 60首
- 紀友則 46首
- 壬生忠岑 36首
- 素性法師 36首
- 在原業平 30首
2 後撰和歌集
【読み方】ごせんわかしゅう
【下命者】村上天皇
【撰者】大中臣能宣、紀時文、清原元輔、坂上望城、源順
【巻数】20巻
【歌数】1425首
【成立】不明(951年下命)
【補足】撰者の歌を含まないのが特徴です。
【代表的な歌人】
- 紀貫之 81首
- 伊勢 72首
- 藤原の兼輔 24首
3 拾遺和歌集
【読み方】しゅういわかしゅう
【下命者】花山院
【撰者】花山院(藤原長能、源道済という説あり)
【巻数】20巻
【歌数】1351首
【成立】1005~1007年
【補足】和歌所が置かれませんでした。
【代表的な歌人】
- 紀貫之 107首
- 柿本人麻呂 104首
- 大中臣能宣 59首
- 清原元輔 48首
- 平兼盛 39首
4 後拾遺和歌集
【読み方】ごしゅういわかしゅう
【下命者】白河天皇
【撰者】藤原通俊
【巻数】20巻
【歌数】1218首
【成立】1086年
【補足】当時は批判的な評価もありました。
【代表的な歌人】
- 和泉式部 67首
- 相模 39首
- 赤染衛門 32首
- 能因法師 31首
- 伊勢大輔 26首
5 金葉和歌集
【読み方】
【下命者】白河院
【撰者】源俊頼
【巻数】10巻
【歌数】665首(広く流布した二度本は 650首)
【成立】1125
【補足】略して「金葉集(きんようしゅう)」ともいいます。三度目の奏覧(そうらん)でようやく納められたので、初度本、二度本、三奏本と 3つの伝本があります。
【代表的な歌人】
- 源俊頼 31首
- 源経信 26首
- 藤原公実 23首
- 藤原顕季 30首
6 詞花和歌集
【読み方】しかわかしゅう
【下命者】崇徳院
【撰者】藤原顕輔
【巻数】10巻
【歌数】415首
【成立】1151年
【補足】略して「詞花集(しかしゅう)」ともいいます。二条天皇の下命による続 詞花和歌集(しょくしかわかしゅう)は、天皇の崩御により私撰集として完成しました。
【代表的な歌人】
- 曾禰好忠 17首
- 和泉式部 16首
- 大江匡房 13首
7 千載和歌集
【読み方】せんざいわかしゅう
【下命者】後白河院
【撰者】藤原俊成(二男の定家も編纂に加わったといわれています)
【巻数】20巻
【歌数】1288首
【成立】1188年
【補足】略して「千載集(せんざいしゅう)」ともいいます。後白河院の指摘によって、俊成が自分の歌を加える改訂を行いました。
【代表的な歌人】
- 源俊頼 52首
- 藤原俊成 36首
- 藤原基俊 26首
- 崇徳院 23首
- 俊恵 22首
8 新古今和歌集
【読み方】しんこきんわかしゅう
【下命者】後鳥羽院
【撰者】寂蓮、藤原有家、藤原家隆、藤原定家、藤原雅経、源通具
【巻数】20巻
【歌数】1978首
【成立】1205年
【補足】略して「新古今集(しんこきんしゅう)」ともいいます。後鳥羽院も親撰を行なって深く関わりました。
【代表的な歌人】
- 西行 94首
- 慈円 91首
- 藤原良経 79首
- 藤原俊成 72首
- 式子内親王 49首
9 新勅撰和歌集
【読み方】しんちょくせんわかしゅう
【下命者】後堀河天皇
【撰者】藤原定家
【巻数】20巻
【歌数】1374首
【成立】1235年
【補足】宇治川集とも呼ばれます。
【代表的な歌人】
- 藤原家隆 43種
- 九条良経 36首
- 藤原俊成 35首
- 西園寺公経 30首
- 慈円 27首
- 源実朝 25首
10 続後撰和歌集
【読み方】しょくごせんさかしゅう
【下命者】後嵯峨院
【撰者】藤原為家
【巻数】20巻
【歌数】1377首
【成立】1251年
【補足】藤原為家の自筆の伝本があり、重要文化財に指定されています。
【代表的な歌人】
- 藤原定家 43首
- 西園寺実氏 34首
- 後鳥羽院 29首
- 藤原良経 29首
- 藤原俊成 28首
11 続古今和歌集
【読み方】しょくこきんわかしゅう
【下命者】後嵯峨院
【撰者】葉室光俊、藤原家良、藤原為家、藤原基家、藤原行家、
【巻数】20巻
【歌数】1915首
【成立】1265年
【補足】歌風が多様で統一性に欠けるという評価があります。
【代表的な歌人】
- 宗尊親王 67首
- 西園寺実氏 61首
- 藤原定家 56首
- 後嵯峨院 54首
- 後鳥羽院 49種
12 続拾遺和歌集
【読み方】しょくしゅういわかしゅう
【下命者】亀山院
【撰者】藤原為氏
【巻数】20巻
【歌数】1459首
【成立】1278年
【補足】撰者の藤原為氏の歌は、勅撰和歌集に 200首以上が入首しています。
【代表的な歌人】
- 藤原為家 43首
- 後嵯峨院 33首
- 藤原定家 29首
- 西園寺実氏 28首
- 藤原俊成 22首
13 新後撰和歌集
【読み方】しんごせんわかしゅう
【下命者】後宇多院
【撰者】二条為世
【巻数】20巻
【歌数】1607首
【成立】1303年
【補足】津守氏の歌が多いことから「津守集」とも呼ばれることがあります。
【代表的な歌人】
- 藤原定家 32首
- 藤原為家 28首
- 藤原為氏 28首
- 西園寺実兼 27種
- 後嵯峨院 25首
14 玉葉和歌集
【読み方】ぎょくようわかしゅう
【下命者】伏見院
【撰者】京極為兼
【巻数】20巻
【歌数】2800首
【成立】1312年
【補足】玉葉和歌集には、21の勅撰和歌集の中で最も多くの歌が収められています。
【代表的な歌人】
- 伏見院 93首
- 藤原定家 69首
- 西園寺実兼 60首
- 京極為子 60首
- 藤原俊成 59首
- 西行 57首
- 藤原為家 51首
15 続千載和歌集
【読み方】しょくせんざいわかしゅう
【下命者】後宇多院
【撰者】二条為世
【巻数】20巻
【歌数】 2143首
【成立】1320年
【補足】「玉葉和歌集」の撰者の地位をめぐって、二条為世は京極為兼と争って敗れました。
【代表的な歌人】
- 後宇多院 52首
- 西園寺実兼 51首
- 藤原為氏 42首
- 二条為世 36首
- 藤原俊成 29首
16 続後拾遺和歌集
【読み方】しょくごしゅういわかしゅう
【下命者】後醍醐天皇
【撰者】二条為定、二条為藤
【巻数】20巻
【歌数】1353首
【成立】1326年
【補足】続後拾遺和歌集には足利尊氏の歌も 1首収められています。
【代表的な歌人】
- 藤原為氏 23首
- 藤原為家 22首
- 二条為世 20首
- 藤原定家 20種
- 後宇多院 19首
17 風雅和歌集
【読み方】ふうがわかしゅう
【下命者】花園院
【撰者】光厳院
【巻数】20巻
【歌数】2211首
【成立】1349年
【補足】本来は「正風和歌集」と命名されるところだったともいわれています。
【代表的な歌人】
- 伏見院 85首
- 永福門院 68首
- 花園院 54首
- 京極為兼 52首
- 藤原為子 39首
18 新千載和歌集
【読み方】しんせんざいわかしゅう
【下命者】後光厳天皇
【撰者】二条為定
【巻数】20巻
【歌数】2365首
【成立】1359年
【補足】足利尊氏の執奏によって、後光厳天皇が綸旨(りんじ)を下しました。
【代表的な歌人】
- 二条為世 42首
- 二条為定 36首
- 伏見院 27首
- 後宇多院 25首
- 藤原為氏 25首
19 新拾遺和歌集
【読み方】しんしゅういわかしゅう
【下命者】後光厳天皇
【撰者】二条為明、頓阿(とんあ、とんな)
【巻数】20巻
【歌数】1920首
【成立】1364年
【補足】足利義詮の執奏により、後光厳天皇から綸旨が下りました。
【代表的な歌人】
- 二条為藤 27首
- 二条為世 24首
- 藤原定家 23首
- 藤原為家 22首
- 二条為定 20首
20 新後拾遺和歌集
【読み方】しんごしゅういわかしゅう
【下命者】後円融天皇
【撰者】二条為遠、二条為重
【巻数】20巻
【歌数】1554首
【成立】1384年
【補足】足利義満の執奏によって、後円融天皇が勅宣を下しました。
【代表的な歌人】
- 二条良基 29首
- 二条為定 28首
- 後円融天皇 24首
- 二条為重 23首
- 近衛道嗣 19首
21 新続古今和歌集
【読み方】しんしょくこきんわかしゅう
【下命者】後花園天皇
【撰者】飛鳥井雅世
【巻数】20巻
【歌数】2144首
【成立】1439年
【補足】足利義教の執奏によって、後花園天皇が勅宣を下しました。
【代表的な歌人】
- 飛鳥井雅縁 29首
- 九条良経 28首
- 後小松院 26首
- 藤原俊成 22首
- 藤原定家19首
新葉和歌集(準勅撰集)
【読み方】しんようわかしゅう
【下命者】長慶天皇
【撰者】宗良親王
【巻数】20巻
【歌数】1426首
【成立】1381年
【補足】略して「新葉集」ともいわれます。
【代表的な歌人】
- 後村上院 100首
- 宗良親王 99首
- 長慶天皇 52首
- 花山院家賢 52首
- 花山院師賢 49首
- 後醍醐天皇 46首
- 洞院公泰 45首
勅撰和歌集の覚え方 (八代集編)
ここでは、前述 1~8の「八代集」を覚えてみましょう。
1 | 古今和歌集 | 八代集 |
2 | 後撰和歌集 | |
3 | 拾遺和歌集 | |
4 | 後拾遺和歌集 | |
5 | 金葉和歌集 | |
6 | 詞花和歌集 | |
7 | 千載和歌集 | |
8 | 新古今和歌集 |
和歌集の最初の文字から語呂合わせをつくります。
古語(こ ご) 拾え、後に拾うは禁止(きん し) せ し
「し」が 2回出てきますが、『古今』で始まり『新古今』で終わることから、『詞花』と『新古今』を区別します。