破魔矢(はまや)とは何のためのものですか?
お正月に外出すると、破魔矢を手にしている人をよく見かけますが、縁起が良さそうでいいですね。
また、新年の挨拶に親戚の家へ行ったときに、床の間に破魔矢が飾ってあるのを見ると、お正月気分も一段と高まります。
この破魔矢は、字面からすると「魔除け」といった印象を受けますが、はたしてその通りなのでしょうか。少し関連することを含めてみていくことにしましょう。
破魔矢とは? どのような意味があるのですか?
日本では古くから、弓矢は狩猟のための道具としてはもちろんのこと、祈祷(きとう)や神事でも使われてきました。
現在でも神事として受け継がれているものに流鏑馬(やぶさめ)があります。
一方、厄除けの縁起物(えんぎもの)として、『破魔弓(はまゆみ)、破魔矢(はまや)』があるわけです。
破魔弓と破魔矢は、男の赤ちゃんの初正月(はつしょうがつ=生まれて初めて迎えるお正月)や初節句(はつぜっく=生まれて初めて迎える5月5日の節句)に贈る風習が現在でもあります。
女の赤ちゃんには、破魔弓と破魔矢ではなく、羽子板を贈ります。
【参考】羽子板を飾る時期
破魔矢の由来は?
破魔矢の由来は、正月の17日に宮中で行われていた射礼(じゃらい)という弓矢の競技であるといわれています。
この競技で使われた弓と矢は、それぞれ「はま弓」、「はま矢」と呼ばれていました。
「はま」は本来、競技の的(まと)を意味していて、「浜」の漢字が使われていました。後に、「はま」が「破魔」に通じるとして、「破魔弓」、「破魔矢」と表記されるようになったのです。
やがて時代が下ると、家や建物を新築するときの建前(たてまえ)の際に、小屋組(こやぐみ=屋根を支えるための骨組み、屋根裏の部分)には幣串(へいぐし)を奉納し、棟(むね)の上に破魔弓・破魔矢を立てるようになりました。
なお建前(たてまえ)は、立舞(たてまい)、棟上げ(むねあげ)、上棟式(じょうとうしき)ともいわれます。
そして近年では、その年の良運を射止める縁起物(えんぎもの)として、お寺や神社で授与されるようになっています。
破魔矢の置き方・飾り方は?
ガラスケースに入った破魔弓・破魔矢のセットであれば、床の間や破損の心配がない場所へ床置きするでしょうが、縁起物の破魔矢だけの場合が少し悩みます。
神棚や、専用の棚を設置できればよいでしょうが、現在の住宅事情からはなかなか難しいこともあるでしょう。
とはいっても、タンスの上に置きっぱなしでホコリにまみれてしまうというのも避けたいところです。
私の場合は、鴨居に金具を2つ目立たないように取り付けて、それに破魔矢を載せるようにしています。
また、「破魔矢立て」という商品(ギタースタンドのイメージです)も比較的安価で販売されていますので、設置スペースに困ったら検討してみてください。
鬼門の方向と破魔矢の向きの関係
先に述べた、家・建物の新築の際の建前(=立舞、棟上げ、上棟式)の場合は、破魔弓・破魔矢を鬼門(きもん)の方向に向けて立てます。
鬼門とは、「鬼が出入りをする方角」で北東とするのが一般的です。
では、お正月の縁起物の破魔矢の場合は、どの方向に向けるのでしょうか。
この向きについては、特にこだわる必要はないというのが私の考えです。それは、仮に方向を定めたとしても、その向きに必ず設置できるものではないという実情からくるものです。
また、「その時々の凶方向」や「逢魔(おうま)の方角」に向けるのが正式とされますが、はま弓・はま矢の由来から考えれば、矢の方向の重要性は低いはずです。
もし方向にこだわるのであれば、鬼門の方向をとるか、授与されるお寺や神社に確認して、その年の凶方向を教えてもらうのが良いでしょう。
破魔矢の処分はどうしたらよいですか?
お正月の縁起物としての破魔矢は、一年経ったら処分を考えるでしょうが、これは、迷うことはありません。
授与されたお寺や神社に返納するのが一番良い方法です。「授かったところへお返しする」ということです。
まとめ
- 破魔矢は、宮中で行われていた射礼(じゃらい)という競技で使われていた「はま矢」に由来します。
- 後に、家屋の新築時に行なわれる建前(たてまえ)で使われるようになり、近年ではお正月の縁起物として寺社で授与されるようになりました。
- 建前では、破魔矢を鬼門(きもん=北東の方角)に向けて立てるのが一般的です。
- お正月の縁起物としての破魔矢は、授与されたお寺や神社に返納しましょう。