菅原道真の和歌30首を一気読みしましょう 【神社一覧】付き
菅原道真の名前は有名で、日本人なら誰でも知っているといってもよいでしょう。
今でこそ学問・受験の神様として慕われていますが、平安時代には「怨霊」や「祟り」というような言葉が付いてまわったという話もあります。
しかし、百人一首にも選ばれたほどの道真の和歌には、大いに注目して評価するべきでしょう。
その和歌をまとめて読むことによって、左遷という目にあってもなお京の都に思いをはせた菅原道真の心に触れることができるでのではないでしょうか。
目次
- 1 菅原道真について
- 2 菅原道真の和歌
- 2.1 こちふかば 匂ひおこせよ梅の花 あるじなしとて春な忘れそ
- 2.2 君がすむ 宿のこずゑのゆくゆくと 隠るるまでにかへりみしやは
- 2.3 天(あま)つ星 道も宿りもありながら 空にうきても思ほゆるかな
- 2.4 あめの下 のがるる人のなければや 着てし濡衣(ぬれぎぬ)ひるよしもなき
- 2.5 秋風の 吹き上げにたてる白菊は 花かあらぬか浪のよするか
- 2.6 このたびは 幣(ぬさ)もとりあへず手向山(たむけやま) もみぢの錦神のまにまに
- 2.7 松の色は 西ふく風やそめつらむ 海のみどりを初入(はつしほ)にして
- 2.8 草葉には 玉とみえつつわび人の 袖の涙の秋のしら露
- 2.9 谷ふかみ 春のひかりのおそければ 雪につつめる鶯の声
- 2.10 ふる雪に 色まどはせる梅の花 鶯のみやわきてしのばむ
- 2.11 道の辺の 朽ち木の柳春くれば あはれ昔と偲ばれぞする
- 2.12 あしびきの こなたかなたに道はあれど 都へいざといふ人ぞなき
- 2.13 天の原 あかねさし出づる光には いづれの沼かさえのこるべき
- 2.14 月ごとに ながると思ひしますかがみ 西の海にもとまらざりけり
- 2.15 霧たちて 照る日のもとは見えずとも 身はまどはれじ寄る辺ありやと
- 2.16 花とちり 玉とみえつつあざむけば 雪ふる里ぞ夢に見えける
- 2.17 老いぬとて 松はみどりぞまさりける 我が黒髪の雪のさむさに
- 2.18 筑紫にも 紫おふる野辺はあれど 無き名かなしぶ人ぞきこえぬ
- 2.19 かるかやの 関守にのみ見えつるは 人もゆるさぬ道べなりけり
- 2.20 海ならず たたへる水の底までに きよき心は月ぞてらさむ
- 2.21 彦星の ゆきあひを待つかささぎの 門とわたる橋を我にかさなむ
- 2.22 流れ木と 立つ白波と焼く塩と いづれかからきわたつみの底
- 2.23 さくら花 ぬしをわすれぬものならば 吹き来む風に言伝てはせよ
- 2.24 水ひきの 白糸はへておる機(はた)は 旅の衣にたちやかさねむ
- 2.25 ひぐらしの 山路をくらみ小夜ふけて 木この末ごとに紅葉てらせる
- 2.26 雁がねの 秋なくことはことわりぞ かへる春さへ何かかなしき
- 2.27 まどろまず ねをのみぞなく萩の花 色めく秋はすぎにしものを
- 2.28 ながれゆく 我は水屑(みくづ)となりはてぬ 君しがらみとなりてとどめよ
- 2.29 夕されば 野にも山にも立つけぶり 歎きよりこそ燃えまさりけれ
- 2.30 梅の花 紅(べに)の色にも似たるかな 阿呼がほほにつけたくぞある
- 3 菅原道真を祭神とする神社
- 3.1 弘前天満宮
- 3.2 盛岡天満宮
- 3.3 榴岡天満宮
- 3.4 小白川天満神社
- 3.5 曽根田天満宮
- 3.6 亀戸天満宮(亀戸天神)
- 3.7 湯島天満宮(湯島天神)
- 3.8 北野神社
- 3.9 深志神社
- 3.10 小松天満宮
- 3.11 加納天満宮
- 3.12 上野天満宮
- 3.13 鞍掛神社
- 3.14 長岡天満宮
- 3.15 北野天満宮
- 3.16 桃山天満宮
- 3.17 大阪天満宮
- 3.18 仁和寺氏神社
- 3.19 菅原神社
- 3.20 八雲神社
- 3.21 藤森神社
- 3.22 菅原天満宮
- 3.23 和歌浦天満宮
- 3.24 北野天満神社
- 3.25 尾長天満宮
- 3.26 防府天満宮
- 3.27 潮江天満宮
- 3.28 太宰府天満宮
- 3.29 福良天満宮
- 3.30 藤川天神(菅原神社)
菅原道真について
菅原道真は、平安時代の貴族で学者、政治家、歌人として名を残しました。
九州の大宰府へ左遷された 2年後に亡くなりましたが、死後に天変地異が多発したため「天神様」と恐れられました。
現在では、学問の神様、受験の神様として親しまれる存在となっています。
梅の花がとても美しいです
菅原道真の和歌
菅原道真の歌からは、京から西へ流されたことへの悲しみ、それでもなお止まぬ都への思いが強く感じられます。
それらの歌のうち30首を選び、現代語訳を付けました。
なお、この現代語訳は私の意訳であることをお断りしておきます。何卒ご了承ください。
こちふかば 匂ひおこせよ梅の花 あるじなしとて春な忘れそ
【現代語訳】
東からの風が吹いたら、匂いを寄越してくれよ、梅の花。主がいないからといって、春を忘れるなよ。
(拾遺和歌集 1006)
君がすむ 宿のこずゑのゆくゆくと 隠るるまでにかへりみしやは
【現代語訳】
あなたの住んでいる宿の木の梢を、遠ざかりながら、やがて隠れてしまうまで何度も振り返って見たものです。
(拾遺和歌集 351)
天(あま)つ星 道も宿りもありながら 空にうきても思ほゆるかな
【現代語訳】
天の星のように、道も宿もありながら、空に浮かんでいるような思いがすることだなあ。
(拾遺和歌集 479)
あめの下 のがるる人のなければや 着てし濡衣(ぬれぎぬ)ひるよしもなき
【現代語訳】
雨が降る天の下では、逃れる人がいないから、着ていた濡れ衣が乾くわけないのだろうか。
(拾遺和歌集 1216)
秋風の 吹き上げにたてる白菊は 花かあらぬか浪のよするか
【現代語訳】
秋風が吹き上げている吹上の浜に立っている白菊は、花なのかそうではないのか、白波が寄せているのか。
(古今和歌集 272)
このたびは 幣(ぬさ)もとりあへず手向山(たむけやま) もみぢの錦神のまにまに
【現代語訳】
この旅は、御幣(ごへい)の用意もせずに手向山に来ましたが、錦のような紅葉を、どうぞ神様の御心のままになさってください。
(古今和歌集 420)
松の色は 西ふく風やそめつらむ 海のみどりを初入(はつしほ)にして
【現代語訳】
松の色は、西から吹く風が染めたのだろうか。海の碧(みどり)を初入の染料にして。
(続古今和歌集 690)
草葉には 玉とみえつつわび人の 袖の涙の秋のしら露
【現代語訳】
草の葉にあれば玉に見えても、世をはかなんで寂しく暮らす人の袖では涙だ、秋の白露よ。
(新古今和歌集 461)
谷ふかみ 春のひかりのおそければ 雪につつめる鶯の声
【現代語訳】
谷が深いので春の光が届くのも遅いため、鶯の声も雪に包まれている。
(新古今和歌集 1441)
ふる雪に 色まどはせる梅の花 鶯のみやわきてしのばむ
【現代語訳】
降っている雪と色を見間違えるような梅の花を、鶯だけは見分けているのだろう。
(新古今和歌集 1442)
道の辺の 朽ち木の柳春くれば あはれ昔と偲ばれぞする
【現代語訳】
道端の朽ちた柳の木も、春になれば、ああ昔の姿はと思い出されることだ。
(新古今和歌集 1449)
あしびきの こなたかなたに道はあれど 都へいざといふ人ぞなき
【現代語訳】
山のあちらこちらに道はあるけれど、さあ都へと言う人はいない。
(新古今和歌集 1690)
天の原 あかねさし出づる光には いづれの沼かさえのこるべき
【現代語訳】
あかね色に射し始める陽の光に当たれば、どの沼といえども氷ったまま残ってはいられないだろう。
(新古今和歌集 1691)
月ごとに ながると思ひしますかがみ 西の海にもとまらざりけり
【現代語訳】
月が出るたびに流れていくと思っていた真澄鏡(ますかがみ)も、西の海に留まってはいなかった。
(新古今和歌集 1692)
霧たちて 照る日のもとは見えずとも 身はまどはれじ寄る辺ありやと
【現代語訳】
霧が立ちこめて、日が射す方向は見えなくても、 身を寄せる所はあるかと迷わされないようにしよう。
(新古今和歌集 1694)
花とちり 玉とみえつつあざむけば 雪ふる里ぞ夢に見えける
【現代語訳】
雪が花の散るように降り、玉のように見えたりして目をあざむくから、雪の降る故郷を夢で見てしまった。
(新古今和歌集 1695)
老いぬとて 松はみどりぞまさりける 我が黒髪の雪のさむさに
【現代語訳】
老いたといっても松の緑の色が素晴らしい。私の黒髪には雪のようなものが混じり寒々としているというのに。
(新古今和歌集 1696)
筑紫にも 紫おふる野辺はあれど 無き名かなしぶ人ぞきこえぬ
【現代語訳】
筑紫にも紫色におおわれた野辺はあるけれど、名前もないことを悲しむ人の声は聞こえない。
(新古今和歌集 1697)
かるかやの 関守にのみ見えつるは 人もゆるさぬ道べなりけり
【現代語訳】
刈萱(かるかや)の関守(せきもり)に見えたのは、人が許さないような道を歩んだからなのだなあ。
(新古今和歌集 1698)
海ならず たたへる水の底までに きよき心は月ぞてらさむ
【現代語訳】
月は、海の水の底まで照らすように、清らかな私の心も照らし出してくれるだろう。
(新古今和歌集 1699)
彦星の ゆきあひを待つかささぎの 門とわたる橋を我にかさなむ
【現代語訳】
彦星が(織姫と)会うのを待つという、鵲(かささぎ)の渡す橋を私に貸してくれ。
(新古今和歌集 1700)
流れ木と 立つ白波と焼く塩と いづれかからきわたつみの底
【現代語訳】
流れついた木と、風で立てられた白波と、漁師にに焼かれる塩では、どれが辛いだろう。いや、海の底にいるような私だろう。
(新古今和歌集 1701)
さくら花 ぬしをわすれぬものならば 吹き来む風に言伝てはせよ
【現代語訳】
桜の花よ、主を忘れないならば、吹いて来る風で言伝(ことづて)をしてくれよ。
(後撰和歌集 57)
水ひきの 白糸はへておる機(はた)は 旅の衣にたちやかさねむ
【現代語訳】
麻の白糸を伸ばして織った布は、旅の衣として裁って縫い、重ねて着よう。
(後撰和歌集 1356)
ひぐらしの 山路をくらみ小夜ふけて 木この末ごとに紅葉てらせる
【現代語訳】
ひぐらしの山道が暗いので、夜が更けてからは、月が梢ごとに紅葉を照らしている。
(後撰和歌1357)
雁がねの 秋なくことはことわりぞ かへる春さへ何かかなしき
【現代語訳】
雁が秋に鳴くのは当然ことだ。しかし、帰るべき春に鳴ているのは何と悲しいことか。
(続後撰和歌集 57)
まどろまず ねをのみぞなく萩の花 色めく秋はすぎにしものを
【現代語訳】
まどろみもせずに泣いている。萩の花が色が美しい秋は過ぎ去ってしまったのだなあ。
(続後撰和歌集 1088)
ながれゆく 我は水屑(みくづ)となりはてぬ 君しがらみとなりてとどめよ
【現代語訳】
流されてゆく私は水の中の屑のようになってしまいました。主君よ、柵(しがらみ)となってお止めください。
(大鏡)
夕されば 野にも山にも立つけぶり 歎きよりこそ燃えまさりけれ
【現代語訳】
夕方になると、野にも山にも立ち上る煙。嘆きによって、いっそう燃え上がるのだ。
(大鏡)
梅の花 紅(べに)の色にも似たるかな 阿呼がほほにつけたくぞある
【現代語訳】
梅の花の色は、紅の色に似ている。阿呼(あこ=菅原道真の幼名)の頬につけてみたいなあ。
(5歳のときに詠んだ歌といわれています)
菅原道真を祭神とする神社
菅原道真を祭神(さいじん)とする神社は、全国に12,000以上あるといわれています。
その中の、ほんの一部ですが紹介いたします。
弘前天満宮
青森県弘前市西茂森 1-1-34
盛岡天満宮
岩手県盛岡市新庄町 5-43
榴岡天満宮
宮城県仙台市宮城野区榴ヶ岡 23
小白川天満神社
山形県山形市小白川町 3-4-6
曽根田天満宮
福島県福島市天神町 9-11
亀戸天満宮(亀戸天神)
東京都江東区亀戸 3-6-1
湯島天満宮(湯島天神)
東京都文京区湯島 3-30-1
北野神社
東京都文京区春日 1-5-2
深志神社
長野県松本市深志 3-7-43
小松天満宮
石川県小松市天神町 1
加納天満宮
岐阜県岐阜市加納天神町 4-1
上野天満宮
愛知県名古屋市千種区赤坂町 4-89
鞍掛神社
愛知県豊橋市岩崎町字森下 77番
長岡天満宮
京都府長岡京市天神 2-15-13
北野天満宮
京都府京都市上京区馬喰町御前通今小路上ル
桃山天満宮
京都府京都市伏見区御香宮門前町 173番
大阪天満宮
大阪府大阪市北区天神橋 2-1-8
仁和寺氏神社
大阪府寝屋川市仁和寺本町 4-11-29
菅原神社
大阪府寝屋川市池田中町 31-13
八雲神社
大阪府守口市八雲北町 2-15-1
藤森神社
大阪府摂津市鳥飼西 2-1-1
菅原天満宮
奈良県奈良市菅原東町 518
和歌浦天満宮
和歌山県和歌山市和歌浦西 2-1-24
北野天満神社
兵庫県神戸市中央区北野町 3-12-1
尾長天満宮
広島県広島市東区山根町 33-16
防府天満宮
山口県防府市松崎町 14-1
潮江天満宮
高知県高知市天神町 19-20
太宰府天満宮
福岡県太宰府市宰府 4-7-1
福良天満宮
大分県臼杵市福良 211
藤川天神(菅原神社)
鹿児島県薩摩川内市東郷町藤川
関 連 ペ ー ジ