お地蔵さんにはどのような意味があるのですか?
お寺の境内、墓地の入り口や墓地内、あるいは道ばたなど、お地蔵さんはいろいろなところで見かけます。
でもよく考えてみると、どのような意味があるのか、なぜ赤いよだれかけや前掛けをしているのかなど、わからないことがあります。
このページでは、お地蔵さんの名前の由来、よだれかけや前掛けをしている理由、なぜ道ばたで多く見られるのかかなどについてまとめました。
お地蔵さんの本当の名前は?
一般的には、親しみのこもった「お地蔵さん」、「お地蔵様」という名前で呼ばれていますね。しかし、本当の名前は『地蔵菩薩(じぞうぼさつ)』といいます。
これは、古代のアジアで使われていたサンスクリット語から来ています。
サンスクリット語は、梵語(ぼんご)ともいいます。梵語の文字である梵字(ぼんじ)は卒塔婆などに書かれているもので、位牌の最初の文字の「ア字」も梵字の一つです。
このサンスクリット語の『クシティ・ガルバ』を意訳したものです。
クシティは「大地」、ガルバは「胎内、子宮」という意味です。これらから『地蔵』という日本語の言葉がつくられたのです。
また、菩薩とは「仏教で修行をする者」のことをいい、サンスクリット語では『ボーディ・サットバ』といいます。
菩薩は、日本では広く信仰の対象とされてきていて
- 観音(かんのん)菩薩:母性的なイメージが投影されています
- 弥勒(みろく)菩薩:はるか未来で人々を救うとされています
- 普賢(ふげん)菩薩:女性にあつく信仰されてきました
- 文殊(もんじゅ)菩薩:知恵をつかさどるとされています
- 妙見(みょうけん)菩薩:北極星を神格化しています
などは聞き覚えがある菩薩の名前といえるでしょう。
お地蔵さんと「よだれかけ」の関係は?
お地蔵さんは、「よだれかけ」、「前掛け」、「頭巾(ずきん)」をしているものが多く、赤い色のものが多くみられます。
これは、お地蔵さんが子供を守ってくれるので、自分の子供が元気に育つようにとの願いをこめて「よだれかけ」やお供物を納めるのです。
お地蔵さんが子供を守ってくれることに関係する話には、江戸時代から伝わっている「賽(さい)の河原」というものがあります。
簡単にまとめると、次のような話になります。
小さいうちに亡くなってしまった子供が、賽の河原(三途の川の岸辺)で父や母のために(徳をつむために)石を積み上げています。
そこへ鬼がやって来て、子供がせっかく積み上げた石の塔を崩してしまいます。
すると、地蔵菩薩があらわれて子供を救ってくれます。
この話からも、お地蔵さんの子供にやさしいイメージが伝わってきます。
また、よだれかけなどの色が赤いのは、赤ちゃん・赤ん坊と言うように子供に通じる、生命の起源である太陽の色、魔除けの力があることなどから選ばれたものです。
そして、子供を守ってくれるだけではなく、あらゆる願い事を頼むことができるのも、お地蔵さんの人気につながっているのでしょう。
次のような、いろいろなお地蔵さんが各地にありますね。
- とげ抜き地蔵
- 子安地蔵
- 子育て地蔵
- 身代わり地蔵
- しばり地蔵、しばられ地蔵
- 水子地蔵
お地蔵さんと道祖神
最初に述べたように、お地蔵さんはいろいろな場所にありますし、その数はかなりのものです。
しかし、観音様や他の菩薩にこれほど多いものはありません。一体どのような理由があるのでしょうか。
これは、道祖神(どうそしん、どうそじん)と関係しています。
道祖神は、自然の石や石像・石碑で、いわば道ばたの神様です。そして、民間の信仰の対象として多く安置されてきました。
この神様と仏教の世界の地蔵菩薩が結びついたために、いたるところに広まっていったのです。
そして、このようなお地蔵さんは、辻地蔵(つじじぞう)ともいわれます。近畿地方で盛んな行事である「地蔵盆(じぞうぼん)」は、辻地蔵が対象となっています。
まとめ
- お地蔵さんの正式な名前は、地蔵菩薩といいます。
- お地蔵さんのよだれかけには、子供の無事な成長を願う親の気持ちが込められています。
- お地蔵さんには、子供を守ってもらうことに限らず、あらゆる願い事を頼みます。
- お地蔵さんは、道祖神信仰と結びつくことによって、あらゆるところに広まっていきました。
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