「お洒落」の意味と由来は何? お酒は関係ない?
私は「お洒落(おしゃれ)」の漢字を「酒(さけ)」だと思い込み、長年そのまま使い続けてきました。
ところが、本当は「洒ぐ(すすぐ=水できれいにする)」という漢字だったことが分かりました。
最初に間違えて覚えると、なかなか直らないので、気をつけなければいけません。
そこで、このページでは「お洒落」の意味や由来について調べてみました。
「洒落」の意味とは?
「洒落(しゃれ)」には、次のような意味があります。
- あか抜けた様子、気のきいた様子をしていること
- 面白味のある語呂合わせや地口(じぐち)
- たわむれごと、冗談ごと
1.の意味で使う場合は、頭に「お」を付けて、お洒落やおしゃれとすることが多いですね。
「お洒落な身なり」、「おしゃれな髪型」というような使い方です。
お洒落・おしゃれは、「ハイカラ」に置き換えても不自然ではありませんね。
ハイカラについては、こちらをご覧ください。
⇒ ハイカラのもとの意味
2.の場合は「駄」を付けて、駄洒落(だじゃれ)ということが多いですね。
3.の場合は、「洒落にならない」、「洒落が通じない」といったように、そのまま使います。
しかし、「洒落」を「しゃらく」と読むと、意味合いが少し違ってきます。
この場合は、「気質がさっぱりしていて、物事にこだわらない様子」をあらわします。
夏目漱石の小説『三四郎』では、主人公の心理描写にも「……無邪気にもみえる。洒落でもある。」といったように、「洒落(しゃらく)」が使われています。
私がこの小説を初めて読んだときは、「しゃらく」と読めなかったので、おしゃれの意味だと思っていました。
この「洒落(しゃらく)」は、中国の北宋末期の説話集『大宋宣和遺事(だいそうせんないじ)』の中にみられる言葉です。
胸中洒落にして 光風清月の如し
という文章で、「心に何のわだかまりもなく、何事にも執着しない様子」を表現しています。
なお、大宋宣和遺事は伝奇小説『水滸伝(すいこでん)』の素材となっています。
「洒落(しゃれ)」の由来とは?
「洒落(しゃれ)」の由来については、いくつかの説がありますが、そのうちで代表的なものをみてみましょう。
晒れる
「晒れる(される)」の意味は、日光や風に当たって色が変わる(落ちる)ことです。
この「され」が「しゃれ」に変化したというものです。
これは、先に述べた「あか抜けた様子、気のきいた様子をしていること」という意味 になりますね。
「晒」のかわりに「曝」という字を使って、「曝れる(される)」とすることもあります。
戯れる
「戯れる(ざれる)」には、「ふざける、たわむれる」という意味と、「風情(ふぜい)、趣がある」という意味があります。
この「ざれ」が「しゃれ」に変化したというものです。
また、濁った音のまま「じゃれ」となったものは、現代でも「猫がじゃれる」というように使われていますね。
この 2つのうち、「晒れる」の漢字の偏(へん)が「ひへん」であるのが、私としては少し納得いかないのですが…
江戸時代の「洒落」と「いき」
江戸時代の「洒落」という言葉は、現代で使われている意味とは少しニュアンスが違うように感じます。
- 洒落本(しゃれぼん) - 江戸時代中期の大衆文学で、遊郭を舞台にしたものが多い
- 洒落女(しゃれおんな) - 遊女のこと
- 洒落風(しゃれふう) - 宝井其角(たからいきかく=松尾芭蕉の弟子)がおこした俳諧の流派
このような使い方をしています。
現代の「おしゃれ、シャレ」に意味が近いのは、むしろ「いき(意気)」ではないかと私は考えます。
いきは、江戸時代における美意識の一つで
- 身なりや振るまいが洗練されていて、「かっこいい」と感じられること
- 人情に通じていること
- 遊びかたを知っていること
と表現できます。
人の外面にかぎらず、内面をもあらわすことができる、とても良い言葉だと思います。
まとめ
- 「洒落」をしゃらくと読むと、「気質がさっぱりしていて、物事にこだわらない」といった意味になります。
- 江戸時代に、現代の「おしゃれ」に通じる意味をもった「いき」という言葉が使われはじめました。