桜の和歌といえば… を100首集めました
日本では、桜はとても馴染みが深い、美しい春の花です。
春といえば桜を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。また桜には、花が開いているときだけでなく、散っていくときにも心を動かされるものがあります。
そして、古くから桜は和歌をはじめとした文学作品にも多く詠み込まれてきました。
このページには、「桜の和歌」といえるような、歌のなかに「櫻、桜、さくら」が含まれているものを集めてみました。いずれもその光景が目に浮かぶような歌ばかりですので、是非これらを味わってみて下さい。
目次
- 1 桜の和歌 100選
- 1.1 浅茅原 主なき宿の桜花 心やすくや風に散るらん
- 1.2 あしひきの 山桜花日並べて かく咲きたらばいたく恋ひめやも
- 1.3 あだなれど 桜のみこそ旧里の 昔ながらの物には有りけれ
- 1.4 あらしやは 咲くより散らす桜花 すぐるつらさは日数なりけり
- 1.5 いその神 ふるの山べの桜花 うへけむ時を知る人ぞなき
- 1.6 いつも見し 松の色かは初瀬山 さくらにもるる春のひとしほ
- 1.7 いにしへの 奈良の都の八重桜 けふ九重ににほひぬるかな
- 1.8 いにしへの 人に見せばやさくらばな たれもさこそは思ひおきけめ
- 1.9 いま桜 咲きぬと見えて薄ぐもり 春に霞める世のけしきかな
- 1.10 色まがふ まことの雲やまじるらむ まつは櫻の四方の山のは
- 1.11 少女子(おとめご)が かざしの桜咲きにけり 袖振る山にかかる白雲
- 1.12 おもかげに 色のみのこる桜花 いく世の春をこひむとすらん
- 1.13 面影に 恋ひつつ待ちしさくら花 さけば立ちそふ嶺のしらくも
- 1.14 かざしをる 道行き人の袂まで さくらににほふきさらぎのそら
- 1.15 霞立つ 山のあなたの桜花 思ひやりてや春をくらさむ
- 1.16 風ならで 心とをちれさくら花 うきふしにだにおもひおくべく
- 1.17 消えずとも あすは雪とや櫻花 くれゆく空をいかがとどめむ
- 1.18 木のもとは 見る人しげし櫻花 よそにながめて我は惜しまむ
- 1.19 君まさば まづぞをらまし桜花 風のたよりにきくぞかなしき
- 1.20 今日のためと 思ひて標めしあしひきの 峰の上の櫻かく咲きにけり
- 1.21 雲のうへの かすみにこむるさくら花 又たちならぶ色を見ぬ哉
- 1.22 九重に にほひをそふるさくら花 いく千代春にあはむとすらん
- 1.23 ことしより 春知りそむる桜花 ちるといふ事はならはざらなん
- 1.24 ことならば さかずやはあらぬ櫻花 みる我さへにしづ心なし
- 1.25 これやこの 音にききつる雲珠桜 鞍馬の山に咲けるなるべし
- 1.26 さかざらむ 物とはなしにさくら花 おもかげにのみまだき見ゆらん
- 1.27 桜色に 衣は深く染めて着む 花の散りなむのちの形見に
- 1.28 桜狩 雨は降りきぬおなじくは 濡るとも花の影に隠れむ
- 1.29 桜散る 木の下風は寒からで 空に知られぬ雪ぞ降りける
- 1.30 さくら花 主をわすれぬ物ならば 吹き来む風に事づてはせよ
- 1.31 櫻花 今盛りなり難波の海 おしてる宮にきこしめすなへ
- 1.32 桜花 今ぞ盛りと人は言へど 我れは寂しも君としあらねば
- 1.33 櫻花 思ふあまりに散ることの 憂きをば風におほせつるかな
- 1.34 桜花 けふよく見てむくれ竹の ひとよのほどに散りもこそすれ
- 1.35 桜ばな こころに散らぬ色ながら いくたび春をうらみ来ぬらむ
- 1.36 桜花 底なる影ぞ惜しまるゝ 沈める人の春と思へば
- 1.37 さくら花 ちりぬる風のなごりには 水なきそらに浪ぞたちける
- 1.38 桜花 時は過ぎねど見る人の 恋ふる盛りと今し散るらむ
- 1.39 櫻花 とくちりぬともおもほえず 人の心ぞ風もふきあへぬ
- 1.40 さくら花 春くははれる年だにも 人の心にあかれやはせぬ
- 1.41 櫻ばな 待ち出づる春のうちをだに こふる日多くなど匂ふらむ
- 1.42 さくら花 みかさの山のかげしあれば 雪とふれどもぬれじとぞ思ふ
- 1.43 さくら花 わがやどにのみありと見ば なきものくさはおもはざらまし
- 1.44 さざ浪や 志賀の都はあれにしを 昔ながらの山ざくらかな
- 1.45 里あれぬ 庭の櫻もふりはてて たそがれ時をとふ人もなし
- 1.46 白雲と まがふさくらにさそはれて 心ぞかかる山のはごとに
- 1.47 白雲と 見えつる物を桜花 今日は散るとや色異になる
- 1.48 白雲と 峯のさくらは見ゆれども 月のひかりはへだてざりけり
- 1.49 高砂の 尾上の桜さきにけり 外山の霞立たずもあらなむ
- 1.50 高砂の 松とみやこにことづてよ 尾上のさくらいまさかりなり
- 1.51 たぐひなき 思ひ出羽のさくらかな うすくれなゐの花のにほひは
- 1.52 立田山 見つつ越え来し櫻花 散りか過ぎなむ我が帰るとに
- 1.53 たづねば やしのぶのおくの桜花 風にしられぬ色やのこると
- 1.54 ちはやぶる 神世のさくら何ゆゑに 吉野の山を宿としめけむ
- 1.55 千代までの 大宮人のかざしとや 雲ゐのさくらにほひそめけむ
- 1.56 ちるを見で 歸る心や櫻花 むかしにかはるしるしなるらむ
- 1.57 つらきかな うつろふまでに八重桜 とへともいはで過ぐる心は
- 1.58 つらきかな などて櫻ののどかなる 春の心にならはざりけむ
- 1.59 つれもなき 人に見せばやさくら花 風に随ふ心よわさを
- 1.60 中なかに をしみもとめじわれならで 見る人もなき宿のさくらは
- 1.61 なべてにぞ をしみもせまし櫻花 思へば何のちぎりなるらむ
- 1.62 匂へども しる人もなき桜花 ただひとり見て哀れとぞ思ふ
- 1.63 花桜 今年ばかりと見しほどに 八十歳までにもなりにけるかな
- 1.64 花見にと むれつつ人の来るのみぞ あたら桜のとがにはありける
- 1.65 春霞 たなびく山の桜花 うつろはむとや色かはりゆく
- 1.66 春霞 たなびく山の桜花 見れどもあかぬ君にもあるかな
- 1.67 春雨の ふるは涙かさくら花 散るを惜しまぬ人しなけれは
- 1.68 ひさしかれ あだに散るなと桜花 かめにさせれどうつろひにけり
- 1.69 一目見し 君もやくると櫻花 けふは待ちみてちらばちらなん
- 1.70 深草の 野辺の桜し心あらば 今年ばかりは墨染に咲け
- 1.71 古(ふ)りにけり 昔を知らばさくら花 ちりの末をもあはれとはみよ
- 1.72 ふりはつる 身にこそまたね桜花 うへおく宿の春なわすれそ
- 1.73 ふるさとに 咲くとわびつるさくら花 ことしぞ君に見えぬべらなる
- 1.74 佛には 桜の花を奉れ わが後の世を人とぶらはば
- 1.75 待ち来つる 八上のさくら咲きにけり 荒くおろすな三栖の山風
- 1.76 見てのみや 人にかたらむ桜花 手ごとに折りて家づとにせん
- 1.77 みやこ辺は なべてにしきとなりにけり さくらををらぬ人しなければ
- 1.78 深山木(みやまぎ)の そのこずゑともみえざりし さくらは花にあらはれにけり
- 1.79 みよしのの 高嶺のさくら散りにけり 嵐もしろき春のあけぼの
- 1.80 み吉野の 山べにさけるさくら花 雪かとのみぞあやまたれける
- 1.81 見る人も なき山ざとのさくら花 外のちりなん後ぞさかまし
- 1.82 見わたせば 春日の野辺に霞たち 咲きにほへるは桜花かも
- 1.83 もろともに あはれと思へ山桜 花よりほかに知る人もな
- 1.84 もろともに 我しをらねば桜花 思ひやりてや春をくらさん
- 1.85 八重にほふ 軒端の櫻うつろひぬ 風よりさきに訪ふ人もがな
- 1.86 山峡に 咲ける桜をただ一目 君に見せてば何をか思はむ
- 1.87 山風に 桜吹きまき乱れなん 花のまぎれに君とまるべく
- 1.88 山桜 霞の間よりほのかにも 見てし人こそ恋しかりけれ
- 1.89 山ざくら をしむ心のいくたびか 散る木のもとに行きかへるらん
- 1.90 山守は いはばいはなん高砂の をのへの桜折りてかざさむ
- 1.91 雪とちる 比良のたかねの桜花 猶ふきかへせ志賀の浦かぜ
- 1.92 雪とのみ ふるだにあるを桜花 いかにちれとか 風のふくらん
- 1.93 吉野山 きえせぬ雪と見えつるは 峯つづきさく桜なりけり
- 1.94 よとともに 散らずもあらなむ桜花 あかぬ心はいつかたゆべき
- 1.95 世の中に たえてさくらのなかりせば 春の心はのどけからまし
- 1.96 世ゝふともわれ忘れめや桜花苔のたもとに散りてかゝりし
- 1.97 我が背子が 古き垣内の櫻花 いまだふふめり一目見に来ね
- 1.98 我が宿に 咲ける桜の花ざかり 千とせ見るとも飽かじとぞ思
- 1.99 わがやどの 桜の色はうすくとも 花のさかりはきてもをらなむ
- 1.100 をしまじよ 櫻ばかりの花もなし 散るべきための色にもあるらむ
桜の和歌 100選
浅茅原 主なき宿の桜花 心やすくや風に散るらん
【作者】恵慶(えぎょう)
あしひきの 山桜花日並べて かく咲きたらばいたく恋ひめやも
【作者】山部赤人(やまべのあかひと)
【補足】「あしひきの」は「山」などに掛かる枕詞(まくらことば)です。
あだなれど 桜のみこそ旧里の 昔ながらの物には有りけれ
【作者】紀貫之(きのつらゆき)
【補足】「旧里」の読み方は「ふるさと」です。
あらしやは 咲くより散らす桜花 すぐるつらさは日数なりけり
【作者】藤原定家(ふじわらのさだいえ)
いその神 ふるの山べの桜花 うへけむ時を知る人ぞなき
【作者】遍昭(へんじょう)
いつも見し 松の色かは初瀬山 さくらにもるる春のひとしほ
【作者】藤原定家
いにしへの 奈良の都の八重桜 けふ九重ににほひぬるかな
【作者】伊勢大輔(いせの たいふ)
いにしへの 人に見せばやさくらばな たれもさこそは思ひおきけめ
【作者】藤原定家
いま桜 咲きぬと見えて薄ぐもり 春に霞める世のけしきかな
【作者】式子内親王(しきしないしんのう)
色まがふ まことの雲やまじるらむ まつは櫻の四方の山のは
【作者】藤原定家
少女子(おとめご)が かざしの桜咲きにけり 袖振る山にかかる白雲
【作者】二条為氏(にじょうためうじ=藤原為氏)
おもかげに 色のみのこる桜花 いく世の春をこひむとすらん
【作者】平兼盛(たいらのかねもり)
面影に 恋ひつつ待ちしさくら花 さけば立ちそふ嶺のしらくも
【作者】藤原定家
かざしをる 道行き人の袂まで さくらににほふきさらぎのそら
【作者】藤原定家
霞立つ 山のあなたの桜花 思ひやりてや春をくらさむ
【作者】浄蔵(じょうぞう)
風ならで 心とをちれさくら花 うきふしにだにおもひおくべく
【作者】藤原定家
消えずとも あすは雪とや櫻花 くれゆく空をいかがとどめむ
【作者】藤原定家
木のもとは 見る人しげし櫻花 よそにながめて我は惜しまむ
【作者】西行(さいぎょう)
君まさば まづぞをらまし桜花 風のたよりにきくぞかなしき
【作者】源延光(みなもとののぶみつ)
今日のためと 思ひて標めしあしひきの 峰の上の櫻かく咲きにけり
【作者】大伴家持(おおとものやかもち)
雲のうへの かすみにこむるさくら花 又たちならぶ色を見ぬ哉
【作者】藤原定家
九重に にほひをそふるさくら花 いく千代春にあはむとすらん
【作者】藤原俊成(ふじわらのとしなり)
ことしより 春知りそむる桜花 ちるといふ事はならはざらなん
【作者】紀貫之
ことならば さかずやはあらぬ櫻花 みる我さへにしづ心なし
【作者】紀貫之
これやこの 音にききつる雲珠桜 鞍馬の山に咲けるなるべし
【作者】 藤原定頼(ふじわらのさだより)
さかざらむ 物とはなしにさくら花 おもかげにのみまだき見ゆらん
【作者】凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)
桜色に 衣は深く染めて着む 花の散りなむのちの形見に
【作者】紀有朋(きのありとも)
桜狩 雨は降りきぬおなじくは 濡るとも花の影に隠れむ
【作者】詠み人しらず
桜散る 木の下風は寒からで 空に知られぬ雪ぞ降りける
【作者】紀貫之
さくら花 主をわすれぬ物ならば 吹き来む風に事づてはせよ
【作者】菅原道真(すがわらのみちざね)
櫻花 今盛りなり難波の海 おしてる宮にきこしめすなへ
【作者】大伴家持
桜花 今ぞ盛りと人は言へど 我れは寂しも君としあらねば
【作者】大伴池主(おおとものいけぬし)
櫻花 思ふあまりに散ることの 憂きをば風におほせつるかな
【作者】藤原俊成
桜花 けふよく見てむくれ竹の ひとよのほどに散りもこそすれ
【作者】坂上是則(さかのうえのこれのり)
桜ばな こころに散らぬ色ながら いくたび春をうらみ来ぬらむ
【作者】藤原定家
桜花 底なる影ぞ惜しまるゝ 沈める人の春と思へば
【作者】清原元輔(きよはらのもとすけ)
さくら花 ちりぬる風のなごりには 水なきそらに浪ぞたちける
【作者】紀貫之
桜花 時は過ぎねど見る人の 恋ふる盛りと今し散るらむ
【作者】詠み人しらず
櫻花 とくちりぬともおもほえず 人の心ぞ風もふきあへぬ
【作者】紀貫之
さくら花 春くははれる年だにも 人の心にあかれやはせぬ
【作者】伊勢(いせ)
櫻ばな 待ち出づる春のうちをだに こふる日多くなど匂ふらむ
【作者】藤原定家
さくら花 みかさの山のかげしあれば 雪とふれどもぬれじとぞ思ふ
【作者】詠み人しらず
さくら花 わがやどにのみありと見ば なきものくさはおもはざらまし
【作者】凡河内躬恒
さざ浪や 志賀の都はあれにしを 昔ながらの山ざくらかな
【作者】平忠度(たいらのただのり)
里あれぬ 庭の櫻もふりはてて たそがれ時をとふ人もなし
【作者】藤原定家
白雲と まがふさくらにさそはれて 心ぞかかる山のはごとに
【作者】藤原定家
白雲と 見えつる物を桜花 今日は散るとや色異になる
【作者】紀貫之
白雲と 峯のさくらは見ゆれども 月のひかりはへだてざりけり
【作者】待賢門院堀川(たいけんもんいんのほりかわ)
高砂の 尾上の桜さきにけり 外山の霞立たずもあらなむ
【作者】大江匡房(おおえのまさふさ)
高砂の 松とみやこにことづてよ 尾上のさくらいまさかりなり
【作者】藤原定家
たぐひなき 思ひ出羽のさくらかな うすくれなゐの花のにほひは
【作者】西行
立田山 見つつ越え来し櫻花 散りか過ぎなむ我が帰るとに
【作者】大伴家持
たづねば やしのぶのおくの桜花 風にしられぬ色やのこると
【作者】藤原定家
ちはやぶる 神世のさくら何ゆゑに 吉野の山を宿としめけむ
【作者】藤原定家
千代までの 大宮人のかざしとや 雲ゐのさくらにほひそめけむ
【作者】藤原定家
ちるを見で 歸る心や櫻花 むかしにかはるしるしなるらむ
【作者】西行
つらきかな うつろふまでに八重桜 とへともいはで過ぐる心は
【作者】惟明親王(これあきしんのう)
つらきかな などて櫻ののどかなる 春の心にならはざりけむ
【作者】藤原俊成
つれもなき 人に見せばやさくら花 風に随ふ心よわさを
【作者】西行
中なかに をしみもとめじわれならで 見る人もなき宿のさくらは
【作者】藤原定家
なべてにぞ をしみもせまし櫻花 思へば何のちぎりなるらむ
【作者】藤原定家
匂へども しる人もなき桜花 ただひとり見て哀れとぞ思ふ
【作者】慶政(けいせい)
花桜 今年ばかりと見しほどに 八十歳までにもなりにけるかな
【作者】源縁法師(げんえんほうし)
花見にと むれつつ人の来るのみぞ あたら桜のとがにはありける
【作者】西行
春霞 たなびく山の桜花 うつろはむとや色かはりゆく
【作者】詠み人しらず
春霞 たなびく山の桜花 見れどもあかぬ君にもあるかな
【作者】紀友則
春雨の ふるは涙かさくら花 散るを惜しまぬ人しなけれは
【作者】大伴黒主(おおとものくろぬし)
ひさしかれ あだに散るなと桜花 かめにさせれどうつろひにけり
【作者】紀貫之
一目見し 君もやくると櫻花 けふは待ちみてちらばちらなん
【作者】紀貫之
深草の 野辺の桜し心あらば 今年ばかりは墨染に咲け
【作者】上野峯雄(かんつけのみねお)
古(ふ)りにけり 昔を知らばさくら花 ちりの末をもあはれとはみよ
【作者】藤原俊成
ふりはつる 身にこそまたね桜花 うへおく宿の春なわすれそ
【作者】藤原定家
ふるさとに 咲くとわびつるさくら花 ことしぞ君に見えぬべらなる
【作者】藤原忠房(ふじわらのただふさ)
佛には 桜の花を奉れ わが後の世を人とぶらはば
【作者】西行
待ち来つる 八上のさくら咲きにけり 荒くおろすな三栖の山風
【作者】西行
見てのみや 人にかたらむ桜花 手ごとに折りて家づとにせん
【作者】素性法師(そせいほうし)
みやこ辺は なべてにしきとなりにけり さくらををらぬ人しなければ
【作者】藤原定家
深山木(みやまぎ)の そのこずゑともみえざりし さくらは花にあらはれにけり
【作者】源頼政(みなもとのよりまさ)
みよしのの 高嶺のさくら散りにけり 嵐もしろき春のあけぼの
【作者】後鳥羽天皇(ごとばてんのう)
み吉野の 山べにさけるさくら花 雪かとのみぞあやまたれける
【作者】紀友則(きのとものり)
見る人も なき山ざとのさくら花 外のちりなん後ぞさかまし
【作者】伊勢
見わたせば 春日の野辺に霞たち 咲きにほへるは桜花かも
【作者】柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)
もろともに あはれと思へ山桜 花よりほかに知る人もな
【作者】行尊(ぎょうそん)
もろともに 我しをらねば桜花 思ひやりてや春をくらさん
【作者】壬生忠見(みぶのただみ)
八重にほふ 軒端の櫻うつろひぬ 風よりさきに訪ふ人もがな
【作者】式子内親王
山峡に 咲ける桜をただ一目 君に見せてば何をか思はむ
【作者】大伴家持
山風に 桜吹きまき乱れなん 花のまぎれに君とまるべく
【作者】遍昭
山桜 霞の間よりほのかにも 見てし人こそ恋しかりけれ
【作者】紀貫之
山ざくら をしむ心のいくたびか 散る木のもとに行きかへるらん
【作者】周防内侍(すおうのないし)
山守は いはばいはなん高砂の をのへの桜折りてかざさむ
【作者】素性(そせい)
雪とちる 比良のたかねの桜花 猶ふきかへせ志賀の浦かぜ
【作者】藤原定家
雪とのみ ふるだにあるを桜花 いかにちれとか 風のふくらん
【作者】凡河内躬恒
吉野山 きえせぬ雪と見えつるは 峯つづきさく桜なりけり
【作者】詠み人しらず
よとともに 散らずもあらなむ桜花 あかぬ心はいつかたゆべき
【作者】平兼盛
世の中に たえてさくらのなかりせば 春の心はのどけからまし
【作者】在原業平(ありわらのなりひら)
世ゝふともわれ忘れめや桜花苔のたもとに散りてかゝりし
【作者】能因(のういん)
我が背子が 古き垣内の櫻花 いまだふふめり一目見に来ね
【作者】大伴家持
我が宿に 咲ける桜の花ざかり 千とせ見るとも飽かじとぞ思
【作者】平兼盛
わがやどの 桜の色はうすくとも 花のさかりはきてもをらなむ
【作者】詠み人しらず
をしまじよ 櫻ばかりの花もなし 散るべきための色にもあるらむ
【作者】藤原定家
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