竹取物語の冒頭とあらすじを、あらためて読んでみませんか
竹取物語は、「かぐや姫」の話として誰もが知っているのではないでしょうか。私も小さい頃に絵本で読んだ記憶があります。
やがて帰らなければならない月を見て泣いているかぐや姫の姿が、子供心に悲しく感じられました。
このページでは、冒頭の部分を原文で、以降はあらすじを追って、竹取物語をあらためて確認してみることにしましょう。
目次
竹取物語の冒頭
まずは、竹取の翁がかぐや姫を見つけて育てていくという、物語の冒頭部分をみていきましょう。原文とあわせて、現代語訳も付しておきます。
【原文】
今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。
野山にまじりて竹を取りつつ、
よろづのことに使ひけり。
名をば、さぬきの造となむ言ひける。その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。
あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光りたり。
それを見れば、三寸ばかりなる人、
いとうつくしうてゐたり。翁言ふやう、
「我、朝ごと夕ごとに見る竹の中に
おはするにて、知りぬ。
子となり給ふべき人なめり」
とて、手にうち入れて家へ持ちて来ぬ。妻の嫗に預けて養はす。
うつくしきことかぎりなし。
いと幼ければ籠に入れて養ふ。竹取の翁、竹を取るに、
この子を見つけてのちに竹取るに、
節を隔ててよごとに金ある竹を
見つくること重なりぬ。
かくて翁やうやう豊かになりゆく。
以下、【現代語訳】です。
今では昔のことになりましたが、
竹取の翁という者がいました。
野山に入っては竹を取ってきて
いろいろなことに使っていました。
名前をさぬきの造といいました。
(ある時)竹の中に、根元の光る竹が一本ありました。
不思議に思って、近寄って見ると、筒の中が光っています。
その中を見ると、三寸くらいの人が
とても可愛らしく座っていました。
翁が言うには、
「私が朝と夕に見る竹の中に
いらっしゃるのでわかった。
(私の)子となるべき人のようだ。」
そして、手のひらに入れて家に持ち帰りました。
妻の嫗に預けて育てさせました。
可愛らしいことこの上ありません。
とても小さいので籠に入れて育てます。
竹取りの翁は、竹を取るのですが、
この子を見つけた後に竹を取ると、
節と節の間すべてに金が入っている竹を
見つけることが重なりました。
こうして翁はしだいに豊かになっていくのでした。
竹取物語のあらすじ
次に、物語のあらすじをみていきましょう。少し詳しめのあらすじにしてあります。
かぐや姫の成長
この子供は、すくすくと大きくなってゆき、3ヶ月ほどすると立派な大人になりました。容貌の美しいことはこの世のものとは思えず、翁はこの子を見ると、気分が悪く苦しいのもやみ、腹立たしいことも収まりました。
翁は竹を取ることも長くなり、有力者となっていきました。そして、この子がとても大きくなったので名前を付けました。なよ竹のかぐや姫としたのです。
この後 3日間、宴をひらいてとても盛大に遊びました。
5人の求婚者
世間の男たちは皆、このかぐや姫に恋い焦がれ、心が惑うようにkなりました。中にはあきらめる人もいましたが、それでも言い寄ったのは次の 5人でした。
- 石作の皇子
- 車持の皇子
- 右大臣阿倍御主人
- 大納言大伴御行
- 中納言石上麻呂足
この 5人は、かぐや姫の家に行ったり、手紙を送ったりなどしましたが、なかなか思うようにはなりませんでした。
この様子をみて、翁は 5人のうちの一人と結婚することを、かぐや姫に勧めます。これに対してかぐや姫は、深い心の内がわからなくては結婚するのは難しい、5人の中で見たいと思う物を見せてくれた人に仕えたいと言いました。
いつものように集まった 5人に、翁はかぐや姫との話を伝えると、彼らは承知しました。
かぐや姫は次のように、見たいものを 5人にそれぞれ割り当てました。
- 仏の御石の鉢 ‐ 石作の皇子
- 蓬莱の木の枝 ‐ 車持の皇子
- 火鼠の皮衣 ‐ 右大臣阿倍御主人
- 竜の頸の五色の珠 ‐ 大納言大伴御行
- 燕の子安貝 ‐ 中納言石上麻呂足
これらはいずれも難題だったので、翁が 5人にこれを伝えると、嫌になって皆帰ってしまいました。
難題1 仏の御石の鉢
石作の皇子は、「仏の御石の鉢」を天竺へ取りに行くとかくや姫に伝えました。しかし実際には、大和の国の山寺にあった鉢をかぐや姫に見せました。
かぐや姫は、鉢に光が宿っていないので、これをつき返しました。皇子は鉢を捨てて、歌を詠んで送りました。これに対して、かぐや姫は歌を返しもせず、何も聞き入れませんでした。
難題2 蓬莱の珠の枝
車持の皇子は、珠の枝を取りに行くとかぐや姫の家に伝え、仕える人々からは見送りを受けました。しかし、旅だったと人には思わせておいて3日ほどすると舟で戻ってきました。
そして、鍛冶職人 6人を集めて、珠の枝を作らせました。かぐや姫の言うとおりに作り上げると、それを持ってかぐや姫を訪ねます。
皇子は旅の途中で様々な困難に遭いながらも、ようやく蓬莱の山にたどり着き、ようやく珠の枝を手に入れたという話を翁にしました。翁はこれをきいて、とても感動して歌まで詠みました。
そうこうしていると、6人の男たちが現れました。持参した手紙によると、皇子の依頼で作り上げた珠の枝は、嫁がれるであろうかぐや姫のご要望によるものと聞いているので、このお屋敷に報酬を頂戴しようと参りましたとのことでした。
作り物とわかったので珠の枝を返すと、皇子は眠ったり、立ったり座ったりしていて、日が暮れてしまうとそっと出ていってしまいました。
かぐや姫は職人たちに多くの褒美を与えると、喜んで帰っていきました。その帰り道で、車持の皇子は褒美を取り上げて、逃げ失せてしまいました。
皇子は恥ずかしさのあまり深い山へ入ってしまい、役人や仕えている者が探しましたが、ついに見つけることができませんでした。
難題3 火鼠の皮衣
右大臣阿部御主人は、唐の王慶という人物から財力にまかせて「火鼠の皮衣」なるものを購入します。そして、阿部御主人は、これをかぐや姫の家に持参します。
皮衣が本物であれば焼けないはずというかぐや姫の言葉から、実際に火をつけてみると、めらめらと焼けてしまいました。
大臣はこれを見ると、顔色が草の葉のようになってしまい、やがて帰ってしまいました。
難題4 竜の頸の珠
大納言の大伴御行は、家来たちに竜の頸の五色の珠を持ってくるように命じました。
無理な命令に家来たちが主人を非難するなか、大納言はかぐや姫のために美しい家を建てたり、ものと妻たちとは別れて一人暮らしをし始めました。
やがて待ちきれなくなった大納言は、自ら探しに海に出ました。
すると、疾風が吹いて世界は暗くなり、舟に波が打ちつけ、雷が落ちかかります。船頭は、竜を殺そうとするためにこうなるのだから、神に祈るようにと言います。
大納言が泣きながら、今後は竜の毛一本たりとも動かさないと千度ほど誓って言いうと、ようやく雷が鳴り止みました。
やっとの思いで家に帰った大納言は、かぐや姫を「大盗人」と呼び、家に近づくなと命じました。
難題5 燕の子安貝
中納言の石上麻呂足は、燕の子安貝を手に入れるために足場を組んだりしますが、なかなか上手くいきません。
ある日、燕が巣を作っているのを見かけると、大納言自らが籠にのって吊り上げられ、燕の巣の様子を窺いました。巣に手を入れて何かを握った大納言が「下してくれ」というと、人々が引き過ぎたために綱は切れてしまい、彼は仰向けのまま落ちてしまいました。
大納言が握っていた手を広げてみると、握っていたのは燕の古い糞でした。
それ以来、大納言は身も心も弱っていきました。これを聞いたかぐや姫が見舞いに歌を届けると、大納言は返歌を書き終えて、息絶えてしまいました。
帝の求愛
かぐや姫の容貌の美しさは帝の耳にも入り、見てくるように内待に命じます。しかし、かぐや姫は何を言われても内待と対面しようとしませんでした。
内持が帰って帝にこのことを申し上げると、次はかぐや姫を宮仕えさせようとします。
翁に官位を与える条件を付けますが、これにもかぐや姫は応じず、「宮仕えに出せば、死ぬつもりです」とまで言いました。
帝は狩りを名目に翁の家に行幸し、かぐや姫と面会します。あまりの美しさに連れていこうと御輿を寄せると、かぐや姫は影になってしまいました。帝が連れて帰ることをあきらめると、かぐや姫はもとの姿に戻りました。
それからも帝は、かぐや姫のことが気にかかり、ただ一人で暮らすようになりました。やがて、帝とかぐや姫は手紙のやり取りをするようになりました。
かぐや姫が月へ
それから三年ほどして、かぐや姫が月を見て物思いにふけるようになりました。翁の「月をご覧になるな」との言葉には、「どうして月を見ないでいられましょうか」と答ます。
そして、やはり月が出ると思い悩んだり、泣いたりなどしていました。八月十五日頃に月が出ると、かぐや姫は人目もはばからずに泣きました。
そしてついに、今月の十五日には月に帰らなければならないことを告げました。これを聞いた翁は泣きわめきました。
かぐや姫は、悲しい限りだけれど、どうしても帰ることになると言いました。
そして、翁は帝に護衛の人々を依頼して、月からの使者を捕えようとします。帝はこれを聞き入れて、十五日に二千人の人を翁の家に配置しました。
夜の十二時頃になると、あたりは昼のような明るさになり、空から人が雲にのって降りてきました。家の内外の人々は、戦おうとすることができませんでした。
やがて、翁もかぐや姫が帰ることを認めざるを得ませんでした。一緒に連れていって欲しいといって泣き伏せる翁に、かぐや姫は手紙と着物を脱いで残しました。
さらに、帝には手紙と天人が持参した不死の薬を献上するように託しました。
天の羽衣を着せられたかぐや姫は、思い悩むことがなくなってしまい、車に乗って百人ほどの天人とともに、天に昇ってしまいました。
富士の山
その後、翁と嫗は血の涙を流すほど思い惑いましたが、どうしようもありませんでした。薬も飲まず、起き上がりもしないで、ついに病に臥せってしまいました。
一方、手紙と不死の薬を受け取った帝は、天に近いとされる駿河の国の山の頂上で、これらを火で燃やすよう命じました。
その山は「富士の山」と名づけられ、その煙が今でも雲の中へと立ち上っていると言い伝えられています。