【わびさび】の意味をあらためて考えてみましょう!
わびさび、侘び寂びとは何か?
「わび」と「さび」は別のものなのか?
別であれば、それぞれの意味と違いは…
日本で生まれ育ったならば、知っていて当然なのかもしれません。
しかし、説明しようとすると簡単にはいかないのではないでしょうか。
このページでは、そんな「わびさび」について、考えていくことにしましょう。
わびさびとは?
現代では、『わびさび』は一つの言葉のように使われていますね。
しかし、本来は「わび」と「さび」は別の言葉です。
これらは、どちらも日本特有の美意識といえます。
この二つの言葉の意味は、似ている面があります。
ですから、きっちりと「この場合はこちらの言葉」というような区別ができないことも多いのです。
また、時代によって意味合いが少しずつ変わってきた歴史があります。
そのために、現代ではわびさびが一語で使われるようになりました。
よく「わびさびの世界」というような使い方をみかけますよね。
また、日本語が持つ「あいまいさ」も関わってくるので、「わび」と「さび」の境界がはっきりしないのです。
そうはいっても、「なんとなくわかる」というままでは困ってしまいます。
そこで、まずは「さび」の持つ意味から考えていきましょう。
さびとは?
さびは、寂、寂び、然びとも表わされます。
一般的な定義としては
『閑寂のなかで自然に感じられる、奥深く豊かな美しさ』
といったものが多いですね。
これでは少しあいまいなので、2つの具体例をあげましょう。
- 古くなった書物を味わい深いものとして見る
これは、中世に吉田兼好(よしだけんこう)が著わしたとされる「徒然草(つれづれぐさ)」にある記述内容です。
この頃にはすでに、ものが朽ちたり枯れたりした様子に美を見出す意識がありました。
そして、この美意識は俳諧(はいかい)、能楽(のうがく=能と狂言)、俳句へと浸透していきました。 - 動かさない石の表面に生えたコケを、石の内部から出でくるものと見立てる
戦前の物理学者、随筆家、俳人である寺田 寅彦(てらだ とらひこ)によれば、「古いものの内側からにじみ出てくるような、外装などに関係しない美しさのこと」ということになります。
つまり、簡単に言ってしまえば、さびとは『古びたものから感じられる美しさ』ということになります。
わびとは?
わびは、侘、侘びとも表わされ
『貧粗・不足のなかに心の充足をみいだそうとする意識』
というのが、もともとの意味でした。
侘に関する記述は、「万葉集(まんようしゅう)」の時代からあるとされています。
そして、侘の意識は室町時代の「茶の湯」と結びついて発達し、江戸時代の千利休(せんのりきゅう)や松尾芭蕉(まつおばしょう)によって確立されました。
簡単に言えば、わびとは『不足しているものから感じられる美しさ』ということになります。
明治・大正期の思想家である岡倉天心(おかくらてんしん)の著書「茶の本」の中にある「imperfect(=不完全な、不十分な)」という言葉が侘をよく表現していると言われています。
日本人の美意識
西洋の美意識(びいしき=人が美しいと感じる心のはたらき)は、華やかなもの、対称的なもの、人工的なものがもつ美しさが中心にあります。
これに対して、日本の美意識は自然なもの、朽ち果てゆくものがもつ美しさを基本としてきました。
この美意識をあらわしたのが、「わび」と「さび」という言葉です。
とても日本らしくて深みのあるこの言葉と、その心を大切にしていきたいものです。
まとめ
- 現代では、「わび」と「さび」をひとまとめにした「わびさび」という言葉で語られるようになりました。
- わびとは『不足しているものから感じられる美しさ』をいいます。
- さびとは『古びたものから感じられる美しさ』をいいます。
- わびとさびは日本人がもつ美意識をあらわしています。
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