鮟鱇の俳句 30選 -あんこう-
鮟鱇(あんこう)は栄養価が高い魚で、寒い真冬の時期の鮟鱇鍋はとても好まれている料理です。
そして、「鮟鱇」「鮟鱇鍋」などは俳句において冬の季語でもあり、多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、「鮟鱇」が詠まれた俳句を多く集めました。寒さが厳しい冬の雰囲気に満ちた作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 鮟鱇の俳句 30選
- 1.1 朝市の 鮟鱇よべの 肴なり
- 1.2 鮟鱇と 一対一の 一句なり
- 1.3 鮟鱇に 大手ひろげて 枯るるかな
- 1.4 鮟鱇に 力いつぱい 出刃包丁
- 1.5 鮟鱇の 顎の残る 鉤を見き
- 1.6 鮟鱇の 大口あいて 笑ふ哉
- 1.7 鮟鱇の 口あけて居る 霰かな
- 1.8 鮟鱇の 口が裂けても 言へぬなり
- 1.9 鮟鱇の 口から下がる 臓腑かな
- 1.10 鮟鱇の 口ばかりなり 流しもと
- 1.11 鮟鱇の 肝は食はずよ 年忘
- 1.12 鮟鱇の 首切られ且つ 腹裂かれ
- 1.13 鮟鱇の 愚にして咎は なかりけり
- 1.14 鮟鱇の 強つくばりの 口許よ
- 1.15 鮟鱇の 吊るし切りとは いたましや
- 1.16 鮟鱇の 泣き寝入りして 買はれけり
- 1.17 鮟鱇の 髭もて持たれ 値ぎらるる
- 1.18 鮟鱇の 骨まで凍てて ぶち切らる
- 1.19 鮟鱇の よだれの先が とまりけり
- 1.20 鮟鱇の 襤褸の中の 骨太し
- 1.21 鮟鱇も 河豚も喰ふなり 年の暮
- 1.22 鮟鱇も わが身の業も 煮ゆるかな
- 1.23 鮟鱇や 口をひらけバ 肝を見る
- 1.24 鮟鱇や 鼠小僧を 泊めし家
- 1.25 あんかうや 孕み女の 釣るし斬り
- 1.26 鮟鱇を煮て 面白き話せん
- 1.27 鮟鱇を ふりさけ見れば 厨かな
- 1.28 賣れ殘る 鮟鱇買へと 勸めけり
- 1.29 能登の海 鮟鱇あげて 浪平ら
- 1.30 昼行燈 鮟鱇向きを 変へにけり
鮟鱇の俳句 30選
「鮟鱇」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
どうぞ、ごゆっくりとご鑑賞下さい。
朝市の 鮟鱇よべの 肴なり
【作者】百合山羽公(ゆりやま うこう)
【補足】「肴」の読み方は「さかな(魚や肉のような食物、酒を飲むときにいっしょに食べるもの)」です。
鮟鱇と 一対一の 一句なり
【作者】鈴木真砂女(すずき まさじょ)
鮟鱇に 大手ひろげて 枯るるかな
【作者】斎藤 玄(さいとう げん)
鮟鱇に 力いつぱい 出刃包丁
【作者】鈴木真砂女
【補足】出刃包丁(でばぼうちょう)は和包丁の一つで、単に「出刃(でば)」と呼ばれることもあります。魚を捌く(さばく)ための包丁ですが、現代では肉を切るためにも用いられています。
鮟鱇の 顎の残る 鉤を見き
【作者】八木林之介(やぎ りんのすけ)
【補足】顎(あぎと)とは「あご」のことです。「鉤」の読み方は「かぎ」です。
鮟鱇の 大口あいて 笑ふ哉
【作者】寺田寅彦(てらだ とらひこ)
【補足】句末の「哉(かな)」は、詠嘆の意を表現します。
鮟鱇の 口あけて居る 霰かな
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【補足】「霰」の読み方は「あられ」です。
鮟鱇の 口が裂けても 言へぬなり
【作者】安住 敦(あずみ あつし)
鮟鱇の 口から下がる 臓腑かな
【作者】内藤鳴雪(ないとう めいせつ)
【補足】臓腑(ぞうふ)とは、「内臓、臓物(ぞうもつ)、はらわた」のことです。
鮟鱇の 口ばかりなり 流しもと
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
【補足】流しもと(流し元)とは、台所の流しがある場所のことをいいます。
鮟鱇の 肝は食はずよ 年忘
【作者】安住 敦
鮟鱇の 首切られ且つ 腹裂かれ
【作者】鈴木真砂女
【補足】「且つ」の読み方は「かつ」です。
鮟鱇の 愚にして咎は なかりけり
【作者】村上鬼城(むらかみ きじょう)
【補足】「咎」の読み方は「とが(=罪、あやまち、しくじり)」です。
鮟鱇の 強つくばりの 口許よ
【作者】高澤良一(たかざわ よしかず)
【補足】強(ごう)つくばり(=業突張り)とは、欲張りで強情なことをいいます。「口許」の読み方は「くちもと」です。
鮟鱇の 吊るし切りとは いたましや
【作者】鈴木真砂女
【補足】吊るし切りとは、アンコウなどの魚の下あごに縄を通して、吊るした状態でさばくことをいいます。アンコウは、大きな個体になると俎板(まないた)の上で捌く事は難しいので、この方法が用いられます。
鮟鱇の 泣き寝入りして 買はれけり
【作者】堀口星眠(ほりぐち せいみん)
鮟鱇の 髭もて持たれ 値ぎらるる
【作者】加藤秋邨(かとう しゅうそん)
鮟鱇の 骨まで凍てて ぶち切らる
【作者】加藤秋邨
鮟鱇の よだれの先が とまりけり
【作者】阿波野青畝(あわの せいほ)
鮟鱇の 襤褸の中の 骨太し
【作者】能村登四郎(のむら としろう)
【補足】襤褸(らんる)とは、いわゆる「ぼろ」のことです。
鮟鱇も 河豚も喰ふなり 年の暮
【作者】寺田寅彦
【補足】「河豚」の読み方は「ふぐ」です。
鮟鱇も わが身の業も 煮ゆるかな
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
【補足】業(ごう)とは、人によって行われる善悪の行為、前世の善悪の行為によって現世で受ける報いのことをいいます。
鮟鱇や 口をひらけバ 肝を見る
【作者】松瀬青々(まつせ せいせい)
鮟鱇や 鼠小僧を 泊めし家
【作者】長谷川かな女(はせがわ かなじょ)
【補足】鼠小僧(ねずみこぞう)は江戸時代後期の盗賊で、後に義賊(ぎぞく)として伝説化されました。
あんかうや 孕み女の 釣るし斬り
【作者】夏目漱石(まつめ そうせき)
【補足】「あんかう」は「あんこう(鮟鱇)」の旧仮名遣いによる表記です。孕み女(はらみおんな)とは、お腹に子供を宿している女性、妊婦のことです。
鮟鱇を煮て 面白き話せん
【作者】清水基吉(しみず もときち)
鮟鱇を ふりさけ見れば 厨かな
【作者】宝井其角(たからい きかく)
【補足】「」とは、遠くを仰ぎ見る、はるかかなたを見上げることをいいます。「厨」の読み方は「くりや(=料理をする所、台所)」です。
賣れ殘る 鮟鱇買へと 勸めけり
【作者】正岡子規
【補足】「賣」「殘」「勸」は、それぞれ「売」「残」「勧」の旧字体です。
能登の海 鮟鱇あげて 浪平ら
【作者】前田普羅(まえだ ふら)
昼行燈 鮟鱇向きを 変へにけり
【作者】高澤良一
【補足】昼行燈(ひるあんどん)とは、昼間に灯す行燈のことですが、ぼんやりしている人・役に立たない人をあざけっていうときにも使われる言葉です。
関 連 ペ ー ジ