屏風の俳句 30選 -びょうぶ-
屏風は「風を防ぐ」という意味を持ち、部屋や生活をする空間の仕切りとして使われてきました。しかし、単なる道具であることにとどまらず、芸術品として扱われることも多くみられます。
そして、「屏風」は俳句において冬の季語でもあり、多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、屏風が詠まれた俳句を多く集めました。屏風が置かれた日本らしい雰囲気に満ちた作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 屏風の俳句 30選
- 1.1 秋風の 屏風の蔭の 産湯かな
- 1.2 雨の雁 ひとり屏風の 月を見る
- 1.3 一双の 秘蔵と見ゆる 屏風かな
- 1.4 一雙の 屏風の源氏物語
- 1.5 今消ゆる 夕日をどつと 屏風かな
- 1.6 宇治に来て 屏風に似たる 茶つみかな
- 1.7 奥の間へ 祭屏風の 松つづき
- 1.8 垣間見や 屏風ものめく 家の内
- 1.9 風音の 屏風の内に 聞えけり
- 1.10 蚊をとらふ 眼が金屏の 剥落に
- 1.11 曲水を 繞らす雛の 屏風かな
- 1.12 くらがりに 七賢人の 屏風かな
- 1.13 句を作る 屏風の陰や 年忘
- 1.14 傾城は 屏風の萩に 旅寐哉
- 1.15 ちりかゝる むしろ屏風の もみち哉
- 1.16 月落ちて 雲の屏風を 星の閨
- 1.17 はしか子に 古りし屏風を とり出だし
- 1.18 初雪に さらりと鷹の 屏風かな
- 1.19 ははそはの 習はれし絵の 屏風かな
- 1.20 貼りまぜの 屏風や失せし 友の句も
- 1.21 一声や 屏風倒れて 子規
- 1.22 屏風立て 紅梅殿と 申しつつ
- 1.23 屏風ほし 老の望の 外になし
- 1.24 襖の絵より 目を移す 屏風の絵
- 1.25 ふるさとや 屏風へだてて 舸子と寝る
- 1.26 見馴れたる 物静かなる 屏風かな
- 1.27 身に入むと 立てし屏風の 巡錫図
- 1.28 向きかへて ふたゝび眠る 屏風かな
- 1.29 山と水 花と鳥ある 屏風かな
- 1.30 遺言は 句屏風逆さに 立てぬこと
屏風の俳句 30選
屏風が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
どうぞ、ごゆっくりとご鑑賞下さい。
秋風の 屏風の蔭の 産湯かな
【読み】あきかぜの びょうぶのかげの うぶゆかな
【作者】野村喜舟(のむら きしゅう)
【補足】産湯とは、生まれた時にその子を入浴させること、またその湯のことをいいます。
雨の雁 ひとり屏風の 月を見る
【作者】正岡子規(まさおか しき)
一双の 秘蔵と見ゆる 屏風かな
【作者】後藤夜半(ごとう やはん)
【補足】屏風二つが対になって成立しているものを「一双(いっそう)」と数えます。
一雙の 屏風の源氏物語
【作者】高橋淡路女(たかはし あわじじょ)
【補足】「雙」は「双」の旧字体で、「一雙(いっそう)」は前の句の「一双」と同じです。
今消ゆる 夕日をどつと 屏風かな
【作者】山口青邨(やまぐち せいそん)
宇治に来て 屏風に似たる 茶つみかな
【作者】上島鬼貫(うえじま おにつら)
奥の間へ 祭屏風の 松つづき
【作者】皆吉爽雨(みなよし そうう)
垣間見や 屏風ものめく 家の内
【作者】飯田蛇笏(いいだ だこつ)
風音の 屏風の内に 聞えけり
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
蚊をとらふ 眼が金屏の 剥落に
【作者】古舘曹人(ふるたち そうじん)
【補足】金屏(きんびょう、きんぺい)とは、金屏風(きんびょうぶ)のことです。剥落(はくらく)とは、はげて落ちることをいいます。
曲水を 繞らす雛の 屏風かな
【作者】尾崎紅葉(おざき こうよう)
【補足】曲水(きょくすい)とは、庭園などを曲がりくねって流れる水のことです。「繞らす」「雛」の読み方は、それぞれ「めぐらす」「ひな」です。
くらがりに 七賢人の 屏風かな
【作者】山口誓子(やまぐち せいし)
【補足】七賢人(=竹林の七賢:ちくりんのしちけん)とは、以下の中国・三国時代の七人のことをいいます。
- 阮籍(げんせき):思想家
- 阮咸(げんかん):文人
- 嵆康(けいこう):文人
- 山濤(さんとう):文人
- 向秀(しょうしゅう):文人
- 劉伶(りゅうれい):文人
- 王戎(おうじゅう):政治家・軍人
句を作る 屏風の陰や 年忘
【読み】くをつくる びょうぶのかげや としわすれ
【作者】山口青邨
傾城は 屏風の萩に 旅寐哉
【読み】けいせいは びょうぶのはぎに たびねかな
【作者】正岡子規
【補足】傾城とは、美女、あるいは遊女のことをいいます。
ちりかゝる むしろ屏風の もみち哉
【作者】正岡子規
月落ちて 雲の屏風を 星の閨
【作者】正岡子規
【補足】閨(ねや)とは寝室のことです。
はしか子に 古りし屏風を とり出だし
【作者】京極杞陽(きょうごく きよう)
初雪に さらりと鷹の 屏風かな
【作者】椎本才麿(しいのもと さいまろ)
ははそはの 習はれし絵の 屏風かな
【作者】後藤夜半
貼りまぜの 屏風や失せし 友の句も
【作者】及川 貞(おいかわ てい)
【補足】「貼りまぜ」とは、いろいろな書画などを貼り合わせることをいいます。
一声や 屏風倒れて 子規
【作者】正岡子規
【補足】「子規」の読み方は「ほととぎす(他に時鳥、杜鵑、不如帰などとも表記されます)」です。作者は病んで喀血した自分自身を、鳴いて血を吐くといわれるホトトギスにたとえて雅号(がごう=本名の他につける風流な別名)としました。
屏風立て 紅梅殿と 申しつつ
【作者】後藤夜半
【補足】紅梅殿(こうばいでん)は、平安時代の貴族・菅原道真(すがわらのみちざね)の邸宅の名称です。
屏風ほし 老の望の 外になし
【作者】鈴木花蓑(すずき はなみの)
襖の絵より 目を移す 屏風の絵
【作者】後藤夜半
【補足】「襖」の読み方は「ふすま」です。
ふるさとや 屏風へだてて 舸子と寝る
【作者】木村蕪城(きむら ぶじょう)
【補足】舸子(かこ)とは、「船をあやつる人、ふなのり、かじとり」のことをいいます。
見馴れたる 物静かなる 屏風かな
【作者】後藤夜半
身に入むと 立てし屏風の 巡錫図
【読み】みにしむと たてしびょうぶの じゅんしゃくず
【作者】亀井糸游(かめい しゆう)
【補足】巡錫とは、僧が各地をめぐり歩いて教えを広めることです。
向きかへて ふたゝび眠る 屏風かな
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
山と水 花と鳥ある 屏風かな
【作者】後藤夜半
遺言は 句屏風逆さに 立てぬこと
【作者】京極杞陽
【補足】「遺言」の読み方は「ゆいごん」です。
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