クリスマスの俳句 70選 -聖夜- 【有名俳人の名作から厳選】
年の暮れも押し詰まってきて迎えるクリスマスは、私たちが子供の頃から楽しみにしてきた楽しい行事です。
日本では昭和以降に年中行事として広く普及してゆき、「クリスマス」「聖夜」「聖樹」などが季語として数多くの俳句作品に詠み込まれてきました。
このページには、クリスマスについて詠まれた俳句の中から 70句を集めました。クリスマスの光景が目の前に広がり、クリスマス特有の気持ちにしてくれるような作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 クリスマスの俳句 70選
- 1.1 紅き燈に 聖樹の雪が 紅くなる
- 1.2 新らしき 褞袍を着るや クリスマス
- 1.3 ありあまる 日向をイヴに つづかしめ
- 1.4 腕時計 柱時計も 聖夜告ぐ
- 1.5 饂飩屋台 横丁にいて クリスマス
- 1.6 かたくなに 吾が額つかず クリスマス
- 1.7 鐘鳴る間 庭をありくや 降誕祭
- 1.8 花舗の燈や 聖誕祭の 人通る
- 1.9 くすりやの 聖樹見てより 道闇く
- 1.10 靴下が くの字に吊られ クリスマス
- 1.11 クリスマスイヴぎりぎりの 飾りつけ
- 1.12 クリスマスイヴの橋燈 青冴えて
- 1.13 クリスマスイヴの月よと 妻言へり
- 1.14 クリスマス 馬小屋ありて 馬が住む
- 1.15 クリスマス 海のたけりの 夜もすがら
- 1.16 クリスマスカード消印 までも讀む
- 1.17 クリスマスカードの加奈陀 花の国
- 1.18 クリスマス 胡桃の樹肌 あたたかに
- 1.19 クリスマスケーキの薔薇は 砂糖です
- 1.20 クリスマス 近づく雪の こよひまた
- 1.21 クリスマスツリー地階へ 運び入れ
- 1.22 クリスマスツリーに愛の 雪の家
- 1.23 クリスマスツリーのともし 残し寝る
- 1.24 クリスマス とは静けさの 中にこそ
- 1.25 クリスマスの 少女唄ひて 蜜柑選る
- 1.26 クリスマス 指美しき 囚徒をり
- 1.27 胡桃など 割つてひとりゐ クリスマス
- 1.28 降誕祭 睫毛は母の 胸こする
- 1.29 ここに酸素 湧く泉あり クリスマス
- 1.30 子供がちに クリスマスの人 集ひけり
- 1.31 この出逢ひ こそクリスマスプレゼント
- 1.32 ゴブランの 大壁懸や クリスマス
- 1.33 指弾して 聖樹の銀の 鐘鳴らず
- 1.34 七面鳥 皿にひともり 聖樹航く
- 1.35 猩々木 挿して近づく クリスマス
- 1.36 聖樹にて 雪青くなり 紅くなり
- 1.37 聖樹に燈 最も篤信 祖母ぎみは
- 1.38 聖夜灯り 水のごとくに 月夜かな
- 1.39 聖夜眠れり 頸やはらかき 幼な子は
- 1.40 聖夜はや 紅をおびゆく 星得たり
- 1.41 中国の 茶の淹れらるる クリスマス
- 1.42 塔の上の 鐘動き鳴る クリスマス
- 1.43 長崎に 雪めづらしや クリスマス
- 1.44 なつかしの 夕日を待てり 大聖樹
- 1.45 八人の 子供むつまし クリスマス
- 1.46 一家族 母うら若く 聖樹立つ
- 1.47 ひと待てば 聖夜の玻璃に 意地もなし
- 1.48 一人来て ストーブ焚くや クリスマス
- 1.49 東の 星の光や クリスマス
- 1.50 夫人の手 つめたかりけり クリスマス
- 1.51 頁剪り はなつをわれの 聖夜とす
- 1.52 へろへろと ワンタンすする クリスマス
- 1.53 ほんものゝ 樅は嵐や クリスマス
- 1.54 孫の聖夜 紙雛めきて 紙天使
- 1.55 ましろなる 神父の髯や クリスマス
- 1.56 貧しけれども クリスマスの夜 父ありぬ
- 1.57 満天に 不幸きらめく 降誕祭
- 1.58 明滅の なき一つ灯の 聖樹かな
- 1.59 物くれる 阿蘭陀人や クリスマス
- 1.60 山は雪 ならむ深々 聖菓切る
- 1.61 雪かゝる 聖樹の憲に 驢馬の鈴
- 1.62 雪国に 来て雪をみず クリスマス
- 1.63 雪になるはずがかく晴れ クリスマス
- 1.64 雪の上に 星降る夜半や クリスマス
- 1.65 雪の戸の 堅きを押しぬ クリスマス
- 1.66 雪降りて 蕪村忌にして クリスマス
- 1.67 雪道や 降誕祭の 窓明り
- 1.68 らふそくの 燃えゆくはたのし クリスマス
- 1.69 ローソクを 飾るだけでも クリスマス
- 1.70 わらべらに 寝ねどき過ぎぬ クリスマス
クリスマスの俳句 70選
「クリスマス」「聖夜」「聖樹」などが詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
なお、これらは俳句において冬の季語とされます。
季語 |
意 味 |
聖夜 | クリスマスイヴ 12/24の夜 |
聖樹 | クリスマスツリー |
生誕祭 降誕祭 |
クリスマス |
聖菓 | クリスマスケーキ |
紅き燈に 聖樹の雪が 紅くなる
【作者】山口誓子(やまぐち せいし)
【補足】「紅き燈」の読み方は「あかきひ」です。
新らしき 褞袍を着るや クリスマス
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
【補足】褞袍(どてら)とは、着物より少し長めで、ゆったり仕立てて、綿を入れた広袖(ひろそで)のものをいいます。防寒・寝巻用の和服で、丹前(たんぜん)とも呼ばれます。
ありあまる 日向をイヴに つづかしめ
【作者】平畑静塔(ひらはた せいとう)
【補足】「日向」の読み方は「ひなた」です。
腕時計 柱時計も 聖夜告ぐ
【作者】阿波野青畝(あわの せいほ)
【補足】「告ぐ」の読み方は「つぐ(=知らせるの意)」です。
饂飩屋台 横丁にいて クリスマス
【作者】長谷川かな女(はせがわ かなじょ)
【補足】「饂飩」の読み方は「うどん」です。
かたくなに 吾が額つかず クリスマス
【作者】竹下しづの女(たけした しづのじょ)
【補足】「吾が額(わがぬか)」は「私の額(ひたい)」の意味です。この句は、どうしてもクリスマスを受け入れることができない作者の心境を詠んだものと解します。
鐘鳴る間 庭をありくや 降誕祭
【作者】前田普羅(まえだ ふら)
【補足】クリスマスはイエス・キリストの降誕を祝う祭で、次の句のように「生誕祭」とも呼ばれます。
花舗の燈や 聖誕祭の 人通る
【作者】大野林火(おおの りんか)
【補足】花舗(かほ)とは、花屋・花店のことです。
くすりやの 聖樹見てより 道闇く
【作者】山口青邨(やまぐち せいそん)
【補足】「闇く」の読み方は「くらく」です。
靴下が くの字に吊られ クリスマス
【作者】阿波野青畝
クリスマスイヴぎりぎりの 飾りつけ
【作者】右城暮石(うしろ くれいし)
クリスマスイヴの橋燈 青冴えて
【作者】佐藤鬼房(さとう おにふさ)
【補足】「冴えて」の読み方は「さえて」です。
クリスマスイヴの月よと 妻言へり
【作者】星野麥丘人(ほしの ばくきゅうじん)
クリスマス 馬小屋ありて 馬が住む
【作者】西東三鬼(さいとう さんき)
【補足】日本では、「イエス・キリストは馬小屋で生まれた」と言われることが多くみられます。
クリスマス 海のたけりの 夜もすがら
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
【補足】「夜もすがら」は「夜どおし、一晩中」という意味です。
クリスマスカード消印 までも讀む
【作者】後藤夜半(ごとう やはん)
【補足】「讀」は「読」の旧字体です。
クリスマスカードの加奈陀 花の国
【作者】阿波野青畝
【補足】「加奈陀」の読み方は「カナダ」です。
クリスマス 胡桃の樹肌 あたたかに
【作者】三橋鷹女(みつはし たかじょ)
【補足】「胡桃」「樹肌」の読み方は、それぞれ「くるみ」「きはだ、こはだ」です。
クリスマスケーキの薔薇は 砂糖です
【作者】日野草城
【補足】「薔薇」の読み方は「ばら」です。
クリスマス 近づく雪の こよひまた
【作者】山口青邨
クリスマスツリー地階へ 運び入れ
【作者】中村汀女(なかむら ていじょ)
クリスマスツリーに愛の 雪の家
【作者】松瀬青々(まつせ せいせい)
クリスマスツリーのともし 残し寝る
【作者】稲畑汀子(いなはた ていこ)
クリスマス とは静けさの 中にこそ
【作者】稲畑汀子
クリスマスの 少女唄ひて 蜜柑選る
【作者】萩原麦草(はぎわら ばくそう)
【補足】「選る」の読み方は「よる(=選ぶの意)」です。
クリスマス 指美しき 囚徒をり
【作者】飯田龍太(いいだ りゅうた)
【補足】囚徒(しゅうと)とは、刑務所につながれている者、囚人のことをいいます。
胡桃など 割つてひとりゐ クリスマス
【作者】山口青邨
降誕祭 睫毛は母の 胸こする
【作者】中村草田男(なかむら くさたお)
【補足】「睫毛」の読み方は「まつげ」です。
ここに酸素 湧く泉あり クリスマス
【作者】石田波郷(いしだ はきょう)
子供がちに クリスマスの人 集ひけり
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【補足】「子供がち」は、子供が(大人よりも)多いことを意味します。
この出逢ひ こそクリスマスプレゼント
【作者】稲畑汀子
ゴブランの 大壁懸や クリスマス
【作者】吉武月二郎(よしたけ つきじろう)
【補足】コブランとは、フランスのゴブラン工場で作られた織物のこと(=コブラン織:コブランおり)のことです。
指弾して 聖樹の銀の 鐘鳴らず
【作者】山口誓子
【補足】指弾(しだん)とは、つまはじきすることをいい、転じて、非難することを意味します。
七面鳥 皿にひともり 聖樹航く
【作者】橋本多佳子(はしもと たかこ)
【補足】「航く」の読み方は「ゆく(いく)」です。
猩々木 挿して近づく クリスマス
【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)
【補足】猩々木(しょうじょうぼく)の通名は「ポインセチア」で、「クリスマスフラワー」と呼ばれることもあります。
聖樹にて 雪青くなり 紅くなり
【作者】山口誓子
聖樹に燈 最も篤信 祖母ぎみは
【作者】及川 貞(おいかわ てい)
【補足】篤信(とくしん)とは、信仰のあついことをいいます。
聖夜灯り 水のごとくに 月夜かな
【作者】 飯田蛇笏(いいだ だこつ)
【補足】「灯り」の読み方は「あかり」です。
聖夜眠れり 頸やはらかき 幼な子は
【作者】森 澄雄(もり すみお)
【補足】「頸」の読み方は「くび」です。
聖夜はや 紅をおびゆく 星得たり
【作者】阿波野青畝
中国の 茶の淹れらるる クリスマス
【作者】後藤夜半
【補足】「淹れらるる」の読み方は「いれらるる」です。
塔の上の 鐘動き鳴る クリスマス
【作者】松本たかし(まつもと たかし)
長崎に 雪めづらしや クリスマス
【作者】富安風生(とみやす ふうせい)
なつかしの 夕日を待てり 大聖樹
【作者】平畑静塔
八人の 子供むつまし クリスマス
【作者】正岡子規
一家族 母うら若く 聖樹立つ
【作者】 後藤夜半
【補足】「一家族」の読み方は「ひとかぞく」です。
ひと待てば 聖夜の玻璃に 意地もなし
【作者】桂 信子(かつら のぶこ)
【補足】玻璃(はり)とは、ガラスのことです。
一人来て ストーブ焚くや クリスマス
【作者】前田普羅
東の 星の光や クリスマス
【作者】日野草城
夫人の手 つめたかりけり クリスマス
【作者】日野草城
頁剪り はなつをわれの 聖夜とす
【作者】桂 信子
【補足】「頁剪り」の読み方は「ページきり」です。
へろへろと ワンタンすする クリスマス
【作者】秋元不死男(あきもと ふじお)
ほんものゝ 樅は嵐や クリスマス
【作者】久米正雄(くめ まさお)
【補足】樅(もみ)は、マツ科の常緑高木です。
孫の聖夜 紙雛めきて 紙天使
【作者】中村草田男
【補足】「紙雛」の読み方は「かみびな」です。
ましろなる 神父の髯や クリスマス
【作者】富安風生
【補足】「髯」の読み方は「ひげ」です。
貧しけれども クリスマスの夜 父ありぬ
【作者】長谷川かな女
満天に 不幸きらめく 降誕祭
【作者】西東三鬼
明滅の なき一つ灯の 聖樹かな
【作者】高浜年尾(たかはま としお)
物くれる 阿蘭陀人や クリスマス
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
【補足】「阿蘭陀」の読み方は「オランダ」です。
山は雪 ならむ深々 聖菓切る
【作者】百合山羽公(ゆりやま うこう)
雪かゝる 聖樹の憲に 驢馬の鈴
【作者】飯田蛇笏
【補足】「驢馬」の読み方は「ろば」です。
雪国に 来て雪をみず クリスマス
【作者】久保田万太郎
雪になるはずがかく晴れ クリスマス
【作者】久保田万太郎
【補足】「かく(斯く、是く)」は「このように、この通りに」という意味です。
雪の上に 星降る夜半や クリスマス
【作者】寺田寅彦(てらだ とらひこ)
【補足】夜半(よわ、やはん)とは、夜中・真夜中のことをいいます。
雪の戸の 堅きを押しぬ クリスマス
【作者】水原秋桜子(みずはら しゅうおうし)
【補足】「堅き」の読み方は「かたき」です。
雪降りて 蕪村忌にして クリスマス
【作者】富安風生
【補足】俳人・与謝蕪村(よさ ぶそん)の忌日(きにち=命日)は、旧暦 12月25日です。
雪道や 降誕祭の 窓明り
【作者】杉田久女(すぎた ひさじょ)
らふそくの 燃えゆくはたのし クリスマス
【作者】山口青邨
ローソクを 飾るだけでも クリスマス
【作者】稲畑汀子
わらべらに 寝ねどき過ぎぬ クリスマス
【作者】山口誓子
【補足】「寝ねどき」の読み方は「いねどき」です。
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