大根の俳句 70選 -だいこん- 【有名俳人の名作から厳選】
大根は品種が多く調理法も豊富なため、私たちの食卓に欠かすことができない野菜ということができるでしょう。様々な食の場面で利用されるので、とても馴染みのある食材です。
また「大根」は、俳句においては冬の季語として多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、大根が詠まれた俳句を数多く集めてみました。生活の中の大根のある光景が目に浮かぶような作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 大根の俳句 70選
- 1.1 あはれなり 大根畑の 梅一木
- 1.2 あま水に 大根の芽の 沈みけり
- 1.3 争ひて 尾張大根 乾く日ぞ
- 1.4 いつまでも 大根洗ひ 見る子かな
- 1.5 初ひ女房 大根洗ひ 積み事始め
- 1.6 うつし世を かなしみゐたる 大根煮て
- 1.7 鶯の 大根畑に 初音かな
- 1.8 おでん種 臼の大根を たばさみぬ
- 1.9 街道に 大根洗ふ 大盥
- 1.10 かがやかに 大根洗ふ はるかかな
- 1.11 風の日も 妻の執心 大根洗ふ
- 1.12 肩出して 大根青し 時雨雲
- 1.13 川二つ 流れ大根 洗ひをり
- 1.14 屹と立つ 大根おろし 鳥渡る
- 1.15 口当りに 洗ひたてたる 大根かな
- 1.16 啓勢の 生ま大根を 児がかじる
- 1.17 さればいの 泥によごれつ ひく大根
- 1.18 しぐるゝや 野寺四面の 大根畑
- 1.19 霜のつく ほり大根を 貰ひけり
- 1.20 すこやかに 頭寒足熱 大根汁
- 1.21 蘿葡(すずしろ)と 呼べば大根 すらりとす
- 1.22 声誉求めぬ 人ぞ大根 乗り出して
- 1.23 大根買ふ 輪切りにすると 決めてをり
- 1.24 大根煮る にほひの湯気が 岨路へ
- 1.25 大根が 一番うまし 牡丹鍋
- 1.26 大根が 煮えてもっとも 短き日
- 1.27 大根で 団十郎する 子供かな
- 1.28 大根に 実の入る旅の 寒さかな
- 1.29 大根に 簑着せて寝ぬ 霜夜かな
- 1.30 大根抜く 掴みどころは みな同じ
- 1.31 大根の 青き頭や 神無月
- 1.32 大根の 洗はれつゝや 長さ増す
- 1.33 大根の いのち出てゐる 土の上
- 1.34 大根の 形よき葉に 旭さし
- 1.35 大根の 貴賤を問はず 堆し
- 1.36 大根の 供養のあとの 法話かな
- 1.37 大根の 白さ目立ちて 年の暮
- 1.38 大根の 白さを風の もたらせし
- 1.39 大根の 大根になる 時雨哉
- 1.40 大根の 土出し肩に 日当れる
- 1.41 大根の 野が丘となり 野となりし
- 1.42 大根の 太々し又 白々し
- 1.43 大根の やたらと辛し 虻の昼
- 1.44 大根は 手が抜けるやう 重たさよ
- 1.45 大根を 洗ふ地靄の 濃かりけり
- 1.46 大根を 洗ふ手に水 従へり
- 1.47 大根を 刻む刃物の 音つゞく
- 1.48 大根を 隣りの壁に かけにけり
- 1.49 大根を 煮つゝそゞろに 冬はじめ
- 1.50 大根を 抜きたる跡と して残る
- 1.51 大根を ひつさげ婆子の 腰は弓
- 1.52 大根を 水くしやくしやに して洗ふ
- 1.53 谷底へ 帰る人々 大根負ひ
- 1.54 道祖神 二股大根 嘉したまふ
- 1.55 どの枝にも 大根かけられ さるなかせ
- 1.56 流れゆく 大根の葉の 早さかな
- 1.57 ぬきん出て 夕焼けてゐる 大根かな
- 1.58 野の池や 大根あらへる 今日の波
- 1.59 はつしぐれ 大根おろしに 甘味かな
- 1.60 ひげなくて 色の白さや 秋大根
- 1.61 人妻は 大根ばかりを ふくと汁
- 1.62 ひもろぎや 旧正月の かけ大根
- 1.63 二股の をかしの大根は 神にささぐ
- 1.64 踏むは踏み 大根漬の 雲衲等
- 1.65 冬来れば 大根を煮る たのしさあり
- 1.66 冬めきて 大根の葉の 流るる日
- 1.67 故郷の 大根うまき 亥子かな
- 1.68 乾大根 遠き田水が 月泛べ
- 1.69 道くさの 草にはおもし 大根かな
- 1.70 武者ぶりの 髭つくりせよ 土大根
大根の俳句 70選
大根が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
なお、大根は冬の季語です。
それでは、次の一句からみていきましょう。
大根引 大根で道を 教へけり
【読み】だいこひき だいこでみちを おしえけり
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
あはれなり 大根畑の 梅一木
【作者】正岡子規(まさおか しき)
あま水に 大根の芽の 沈みけり
【作者】中 勘助(なか かんすけ)
争ひて 尾張大根 乾く日ぞ
【作者】中村汀女(なかむら ていじょ)
【補足】尾張大根(おわりだいこん)は、愛知の尾張地方で江戸時代から栽培された大根で、宮重大根(みやしげだいこん)、方領大根(ほうりょうだいこん)などの品種があります。
いつまでも 大根洗ひ 見る子かな
【作者】中村汀女
初ひ女房 大根洗ひ 積み事始め
【作者】及川 貞(おいかわ てい)
【補足】「初い(うい、うぶい)」とは、「世間ずれしていない、ういういしい」ことを意味します。
うつし世を かなしみゐたる 大根煮て
【作者】細見綾子(ほそみ あやこ)
【補足】うつし世(=現し世)とは、(目に見える)この世のことをいいます。
鶯の 大根畑に 初音かな
【作者】内藤鳴雪(ないとう めいせつ)
【補足】初音(はつね)とは、その年初めて鳴く声のことです。
おでん種 臼の大根を たばさみぬ
【作者】高澤良一(たかざわ よしかず)
【補足】「臼」の読み方は「うす」です。「たばさむ」とは、手で挟んで持ったり、脇に挟んで持つことをいいます。
街道に 大根洗ふ 大盥
【作者】富安風生(とみやす ふうせい)
【補足】「盥」の読み方は「たらい」です。
かがやかに 大根洗ふ はるかかな
【作者】山口青邨(やまぐち せいそん )
風の日も 妻の執心 大根洗ふ
【作者】相馬遷子(そうま せんし)
【補足】執心(しゅうしん)とは、ある事・に強く引かれて、心がそれから離れないことをいいます。
肩出して 大根青し 時雨雲
【作者】前田普羅(まえだ ふら)
【補足】時雨(しぐれ)とは、降ったり止んだりする小雨のことをいいます。
川二つ 流れ大根 洗ひをり
【作者】京極杞陽(きょうごく きよう)
屹と立つ 大根おろし 鳥渡る
【作者】秋元不死男(あきもと ふじお)
【補足】「屹(きつ)」とは、山などが高くそびえ立つことを意味します。
口当りに 洗ひたてたる 大根かな
【作者】野村喜舟(のむら きしゅう)
啓勢の 生ま大根を 児がかじる
【作者】右城暮石(うしろ ぼせき)
【補足】啓蟄(けいちつ)は、二十四節気の一つです。
【関連】 二十四節気とは?
さればいの 泥によごれつ ひく大根
【作者】水田正秀(みずた まさひで)
【補足】「さればいの(=さればいな)」は、主に女性が相手の言葉に答える語で、「そうですね」といった意味となります。
しぐるゝや 野寺四面の 大根畑
【作者】藤野古白(ふじの こはく)
【補足】野寺(のでら)とは、山寺に対して野中にある寺のことをいいます。
霜のつく ほり大根を 貰ひけり
【作者】松瀬青々(まつせ せいせい)
【補足】「貰ひけり」の読み方は「もらいけり」です。
すこやかに 頭寒足熱 大根汁
【作者】山口青邨
【補足】「大根汁」の読み方は「だいこじる」です。
蘿葡(すずしろ)と 呼べば大根 すらりとす
【作者】加藤楸邨(かとう しゅうそん)
【補足】「すずしろ」は春の七草の一つに数えられています。
声誉求めぬ 人ぞ大根 乗り出して
【作者】香西照雄(こうざい てるお)
【補足】声誉(せいよ)とは、良い評判のことです。
大根買ふ 輪切りにすると 決めてをり
【作者】波多野爽波(はたの そうは)
大根煮る にほひの湯気が 岨路へ
【作者】中村草田男(なかむら くさたお)
【補足】岨路(そばみち、そわみち)とは、けわしい道のことをいいます。
大根が 一番うまし 牡丹鍋
【作者】右城暮石
【補足】牡丹鍋(ぼたんなべ)とは、イノシシの肉を用いた鍋料理のことで、猪鍋(ししなべ)とも呼ばれます。
大根が 煮えてもっとも 短き日
【作者】橋 閒石(はし かんせき)
大根で 団十郎する 子供かな
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
【補足】団十郎(だんじゅうろう)は歌舞伎役者の名称で、荒々しいこと、乱暴なこと、暴れっ子のことをいう場合もあります。
大根に 実の入る旅の 寒さかな
【作者】斯波園女(しば そのめ)
大根に 簑着せて寝ぬ 霜夜かな
【作者】村上鬼城(むらかみ きじょう)
【補足】「簑」の読み方は「みの」です。霜夜(しもよ)とは、霜がおりる寒い夜のことをいいます。
大根抜く 掴みどころは みな同じ
【作者】能村登四郎(のむら としろう)
【補足】「掴みどころ」の読み方は「つかみどころ」です。
大根の 青き頭や 神無月
【作者】野村喜舟
【補足】神無月(かんなづき)は、旧暦10月の異称です。
大根の 洗はれつゝや 長さ増す
【作者】岸風三楼(きし ふうさんろう)
大根の いのち出てゐる 土の上
【作者】飯田龍太(いいだ りゅうた)
大根の 形よき葉に 旭さし
【作者】高澤良一
大根の 貴賤を問はず 堆し
【作者】古舘曹人(ふるたち そうじん)
【補足】「堆し」の読み方は「うづたかし」です。
大根の 供養のあとの 法話かな
【作者】 野村泊月(のむら はくげつ)
大根の 白さ目立ちて 年の暮
【作者】右城暮石
大根の 白さを風の もたらせし
【作者】右城暮石
大根の 大根になる 時雨哉
【作者】江左尚白(えさしょうはく)
大根の 土出し肩に 日当れる
【作者】星野立子(ほしの たつこ)
大根の 野が丘となり 野となりし
【作者】阿波野青畝(あわの せいほ)
大根の 太々し又 白々し
【作者】相生垣瓜人(あいおいがき かじん)
大根の やたらと辛し 虻の昼
【作者】石川桂郎(いしかわ けいろう)
【補足】「辛し」「虻」の読み方は、それぞれ「からし」「あぶ」です。
大根は 手が抜けるやう 重たさよ
【作者】右城暮石
大根を 洗ふ地靄の 濃かりけり
【作者】柴田白葉女(しばた はくようじょ)
【補足】地靄(じもや)とは、低い位置に立ち込める靄のことをいいます。
大根を 洗ふ手に水 従へり
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
【補足】「従へり」の読み方は「したがえり」です。
大根を 刻む刃物の 音つゞく
【作者】山口誓子(やまぐち せいし)
大根を 隣りの壁に かけにけり
【作者】村上鬼城
大根を 煮つゝそゞろに 冬はじめ
【作者】山口誓子
【補足】「そぞろに(漫ろ)」は「何ということもなく、漫然と」という意味です。
大根を 抜きたる跡と して残る
【作者】岸風三楼
大根を ひつさげ婆子の 腰は弓
【作者】川端茅舎(かわばた ぼうしゃ)
【補足】「婆子」の読み方は「ばばあ」です。
大根を 水くしやくしやに して洗ふ
【作者】高浜虚子
谷底へ 帰る人々 大根負ひ
【作者】福田蓼汀(ふくだ りょうてい)
道祖神 二股大根 嘉したまふ
【作者】山口青邨
【補足】道祖神(どうそじん)とは、道端にあって行く人を疫病や悪霊から守る神のことです。
どの枝にも 大根かけられ さるなかせ
【作者】羽部洞然(はぶ どうねん)
流れゆく 大根の葉の 早さかな
【作者】高浜虚子
ぬきん出て 夕焼けてゐる 大根かな
【作者】中田瑞穂(なかだ みずほ)
野の池や 大根あらへる 今日の波
【作者】水原秋桜子(みずはら しゅうおうし)
はつしぐれ 大根おろしに 甘味かな
【作者】大野林火(おおの りんか)
【補足】「甘味」の読み方は「かんみ」です。
ひげなくて 色の白さや 秋大根
【作者】村上鬼城
人妻は 大根ばかりを ふくと汁
【作者】榎本其角(えのもと きかく)
【補足】ふくと汁(河豚魚汁)とは、フグを用いた汁物のことをいいます。
ひもろぎや 旧正月の かけ大根
【作者】吉岡禅寺洞(よしおか ぜんじどう)
【補足】ひもろぎ(神籬)とは、神道において神社や神棚以外の場所で祭祀を行う場合、神を迎えるための依り代(よりしろ)となるもののことです。
二股の をかしの大根は 神にささぐ
【作者】山口青邨
踏むは踏み 大根漬の 雲衲等
【作者】河野静雲(こうの せいうん)
【補足】雲衲(うんのう)とは、修行僧や雲水のことです。
冬来れば 大根を煮る たのしさあり
【作者】細見綾子
冬めきて 大根の葉の 流るる日
【作者】山口青邨
故郷の 大根うまき 亥子かな
【作者】正岡子規
【補足】亥子(いのこ)とは、旧暦10月の最初の「亥(い)」の日のことで、この日に行なう行事のことをいう場合もあります。
乾大根 遠き田水が 月泛べ
【作者】松村蒼石(まつむら そうせき)
【補足】「泛べ」の読み方は「うかべ」です。
道くさの 草にはおもし 大根かな
【作者】加賀千代女(かがの ちよじょ)
武者ぶりの 髭つくりせよ 土大根
【作者】与謝蕪村(よさ ぶそん)
【補足】「土大根」の読み方は「つちおおね」で、ダイコンのことです。
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