ひらがなとカタカナの成り立ちは?

私たちは普段、「ひらがな」や「カタカナ」を、特別な意識をしないで使っています。しかし、それぞれの成り立ちとなると、あまり馴染みがないかもしれません。漢字がもとになっている、というのは何となく覚えているのですが…
そこで、このページでは、そのようなひらがなとカタカナの成り立ち、由来についてみていくことにしましょう。
ひらがなの成り立ち

ひらがな(平仮名)は、奈良時代を中心として使われていた借字(しゃくじ)に由来します。この借字とは、古代中国で発祥した漢字の音(おん)を借用して、日本語を書き表していたものです。
例えば、「ア」という音を表記するために、漢字が持つ意味は無視して「安」という文字を割り当てるのです。
このように使われていた漢字の草書体(そうしょたい=早く書けるように文字の一部を省略したもの)が、やがてひらがなへと変化しました。つまり、ひらがなは漢字から作られたものということができます。
なお、借字は次のような名前で呼ばれることもあります。
- 万葉仮名(まんようがな)
- 真仮名(まがな)
- 真名仮名(まながな)
- 男仮名(おとこがな)
それでは、漢字 ⇒ ひらがな の変化を見てみましょう。
次の表の赤い文字が変化している過程の文字です。文字の省略が進んだ借字は、ひらがなの前段階という意味で草仮名(そうがな)と呼ばれます。

[表は Wikipedia から引用]
上の表から、漢字 ⇒ひらがな の変化だけを抜き出したのが下の表になります。
| 安 ↓ | 以 ↓ | 宇 ↓ | 衣 ↓ | 於 ↓ |
| あ | い | う | え | お |
| 加 ↓ | 幾 ↓ | 久 ↓ | 計 ↓ | 己 ↓ |
| か | き | く | け | こ |
| 左 ↓ | 之 ↓ | 寸 ↓ | 世 ↓ | 曽 ↓ |
| さ | し | す | せ | そ |
| 太 ↓ | 知 ↓ | 川 ↓ | 天 ↓ | 止 ↓ |
| た | ち | つ | て | と |
| 奈 ↓ | 仁 ↓ | 奴 ↓ | 祢 ↓ | 乃 ↓ |
| な | に | ぬ | ね | の |
| 波 ↓ | 比 ↓ | 不 ↓ | 部 ↓ | 保 ↓ |
| は | ひ | ふ | へ | ほ |
| 末 ↓ | 美 ↓ | 武 ↓ | 女 ↓ | 毛 ↓ |
| ま | み | む | め | も |
| 也 ↓ | 由 ↓ | 与 ↓ | ||
| や | ゆ | よ | ||
| 良 ↓ | 利 ↓ | 留 ↓ | 礼 ↓ | 呂 ↓ |
| ら | り | る | れ | ろ |
| 和 ↓ | 為 ↓ | 恵 ↓ | 遠 ↓ | |
| わ | ゐ | ゑ | を | |
| 无 ↓ | ||||
| ん |
このようにして生まれたひらがなは、和歌、私的な文書、女性によって用いられるものとされ、女手(おんなで)とも呼ばれました。
これは、長く公的文書に用いられた万葉仮名を男仮名と呼ぶのと対照的です。
ひらがなを作ったのは空海(くうかい=平安時代初期の僧)であるという言い伝えがありますが、現在では俗説であると考えられています。
カタカナの成り立ち

カタカナ(片仮名)の由来も、ひらがなと同じく、奈良時代を中心として使われていた借字(しゃくじ)です。したがって、ひらがなもカタカナも漢字から作られたものということになります。
ただし、ひらがなが漢字の草書体から出来たのに対し、カタカナは漢字の文字の一部を取り出したものから出来ている点が違います。
例えば
- 「阿」の左側のこざとへんから「ア」
- 「伊」の左側のにんべんから「イ」
- 「宇」の上部のうかんむりから「ウ」
といったようにカタカナが作られています。
その他のカタカナについても、漢字 ⇒ ひらがな の変化を見てみましょう。由来する漢字がひらがなと異なるものは、ピンク色の文字にしました。漢字をよくみると、カタカナが隠れているのがわかります、
なお、表中の漢字とは違うものを由来とする説もあります。
| 阿 ↓ | 伊 ↓ | 宇 ↓ | 江 ↓ | 於 ↓ |
| ア | イ | ウ | エ | オ |
| 加 ↓ | 機 ↓ | 久 ↓ | 介 ↓ | 己 ↓ |
| カ | キ | ク | ケ | コ |
| 散 ↓ | 之 ↓ | 須 ↓ | 世 ↓ | 曽 ↓ |
| サ | シ | ス | セ | ソ |
| 多 ↓ | 千 ↓ | 川 ↓ | 天 ↓ | 止 ↓ |
| タ | チ | ツ | テ | ト |
| 奈 ↓ | 仁 ↓ | 奴 ↓ | 祢 ↓ | 乃 ↓ |
| ナ | ニ | ヌ | ネ | ノ |
| 八 ↓ | 比 ↓ | 不 ↓ | 部 ↓ | 保 ↓ |
| ハ | ヒ | フ | ヘ | ホ |
| 末 ↓ | 三 ↓ | 牟 ↓ | 女 ↓ | 毛 ↓ |
| マ | ミ | ム | メ | モ |
| 也 ↓ | 由 ↓ | 與 ↓ | ||
| ヤ | ユ | ヨ | ||
| 良 ↓ | 利 ↓ | 流 ↓ | 礼 ↓ | 呂 ↓ |
| ラ | リ | ル | レ | ロ |
| 和 ↓ | 井 ↓ | 恵 ↓ | 乎 ↓ | |
| ワ | ヰ | ヱ | ヲ | |
| 尓 ↓ | ||||
| ン |
このような変化から生まれたカタカナは、そもそもは学僧たちが漢文を和読するための訓点として使い始めたのが始まりと考えられています。
ですから、ひらがなと比べてみると、カタカナは記号的な性格を持っっているといえるでしょう。
カタカナを作ったのは吉備真備(きびのまきび=奈良時代の学者、公卿)であるという説がありますが、これも現在では俗説に過ぎないとされています。
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