案山子の俳句 30選 -かがし-
秋の田畑に立つ案山子(かかし)からは、何ともいえない愛嬌(あいきょう)とともに寂しさが感じられます。
この「案山子(かかし、かがし)」は俳句において秋の季語でもあり、多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、「案山子」が詠まれた俳句を多く集めました。いかにも秋といった雰囲気に満ちた作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 案山子の俳句 30選
- 1.1 足腰の 立たぬ案山子を 車かな
- 1.2 あたたかな 案山子を抱いて 捨てにゆく
- 1.3 稲の波 案山子も少し 動きをり
- 1.4 案山子から 苗一筋や 秋の雨
- 1.5 案山子にも うしろ向かれし 栖かな
- 1.6 刈株に 倒れ伏したる 案山子哉
- 1.7 借りて寝ん 案山子の袖や 夜半の霜
- 1.8 試みに 案山子の口に 笛入れん
- 1.9 しる人に なりてわかるゝ 案山子かな
- 1.10 其許は 案山子に似たる 和尚かな
- 1.11 空高く 林檎を守る 案山子哉
- 1.12 倒れたる 案山子の顔の上に天
- 1.13 竹竿を 横に案山子の もろ手哉
- 1.14 たそがれて 顔の真白き 案山子かな
- 1.15 立つてゐる ことが案山子で ありしかな
- 1.16 提灯を 提げし案山子に 言問はん
- 1.17 どう見ても 案山子に耳は なかりけり
- 1.18 はろばろと 潮に流るる 案山子かな
- 1.19 日あたるや 案山子の顔の 大きくて
- 1.20 灯ともすや 案山子の影の 消ゆる時
- 1.21 ふる里や 一揆の形の 案山子ども
- 1.22 耳遠く 目のかすみたる 案山子かな
- 1.23 めりやすの 襯衣を著てゐる 案山子哉
- 1.24 山の家 見えて案山子の 日和哉
- 1.25 山びこに 耳かたむくる 案山子かな
- 1.26 夕空の なごみわたれる 案山子かな
- 1.27 夕焼の あへなく消えし 案山子かな
- 1.28 横ざまに 殆ど倒れ 案山子かな
- 1.29 わが目にも 真に迫らぬ 案山子立つ
- 1.30 輪ばかりの 笠をかぶりし 案山子かな
案山子の俳句 30選
「案山子」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
どうぞ、ごゆっくりとご鑑賞下さい。
足腰の 立たぬ案山子を 車かな
【作者】夏目漱石(なつめ そうせき)
あたたかな 案山子を抱いて 捨てにゆく
【作者】内藤吐天(ないとう とてん)
稲の波 案山子も少し 動きをり
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
案山子から 苗一筋や 秋の雨
【作者】高井几董(たかい きとう)
案山子にも うしろ向かれし 栖かな
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
【補足】「栖」の読み方は「すみか」です。
刈株に 倒れ伏したる 案山子哉
【作者】寺田寅彦(てらだ とらひこ)
借りて寝ん 案山子の袖や 夜半の霜
【作者】松尾芭蕉(まつお ばしょう)
【補足】夜半(よわ)とは、「よる、夜更け(よふけ)」を意味します。
試みに 案山子の口に 笛入れん
【作者】正岡子規(まさおか しき)
しる人に なりてわかるゝ 案山子かな
【作者】広瀬惟然(ひろせ いぜん)
其許は 案山子に似たる 和尚かな
【作者】夏目漱石
【補足】其許(そこもと)とは、同等または目下の者に用いる人称代名詞で、「そなた」と同意です。
空高く 林檎を守る 案山子哉
【作者】寺田寅彦
【補足】「林檎」の読み方は「りんご」です。
倒れたる 案山子の顔の上に天
【作者】西東三鬼(さいとう さんき)
竹竿を 横に案山子の もろ手哉
【作者】森 鴎外(もり おうがい)
【補足】「もろ手」とは、両手(りょうて)という意味です。
たそがれて 顔の真白き 案山子かな
【作者】三橋鷹女(みつはし たかじょ)
立つてゐる ことが案山子で ありしかな
【作者】稲畑汀子(いなはた ていこ)
提灯を 提げし案山子に 言問はん
【作者】福田蓼汀(ふくだ りょうてい)
【補足】「提灯」の読み方は「ちょうちん」です。
どう見ても 案山子に耳は なかりけり
【作者】正岡子規(まさおか しき)
はろばろと 潮に流るる 案山子かな
【作者】吉武月二郎(よしたけ つきじろう)
【補足】「はろばろ」は「はるばる」と同じ意味です。
日あたるや 案山子の顔の 大きくて
【作者】臼田亜浪(うすだ あろう)
灯ともすや 案山子の影の 消ゆる時
【作者】原 月舟(はら げっしゅう)
【補足】「灯」の読み方は「ひ」です。
ふる里や 一揆の形の 案山子ども
【作者】皆川白陀(みながわ はくだ)
耳遠く 目のかすみたる 案山子かな
【作者】飯田蛇笏(いいだ だこつ)
めりやすの 襯衣を著てゐる 案山子哉
【作者】内田百間(うちだ ひゃっけん)
【補足】めりやす(メリヤス)とは、綿糸・毛糸などを用いた織物の名称です。襯衣(しんい)とは、いわゆる「シャツ」のことです。
山の家 見えて案山子の 日和哉
【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)
【補足】日和(ひより)とは、晴れてよい天気のことをいいます。
山びこに 耳かたむくる 案山子かな
【作者】飯田蛇笏
夕空の なごみわたれる 案山子かな
【作者】富安風生(とみやす ふうせい)
夕焼の あへなく消えし 案山子かな
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
横ざまに 殆ど倒れ 案山子かな
【作者】京極杞陽(きょうごく きよう)
【補足】「殆ど」の読み方は「ほとんど」です。
わが目にも 真に迫らぬ 案山子立つ
【作者】相生垣瓜人(あいおいがき かじん)
輪ばかりの 笠をかぶりし 案山子かな
【作者】京極杞陽
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