神無月の俳句 20選 -かんなづき-
旧暦の時代から使われてきた、10月の別名である「神無月(かんなづき)」の由来は、「神の月」を略したものとする説が有力です。
この「神無月」は秋の季語でもあり、多くの俳句作品に詠み込まれてきました。
このページには、神無月が詠み込まれた俳句の中から 20句を選びました。神無月という語が持つ雰囲気を見事に表現したものばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 神無月の俳句 20選
- 1.1 赤々と 朝日卒寿の 神無月
- 1.2 朝市に 磯もの多し 神無月
- 1.3 うらむべき 便もなしや 神無月
- 1.4 柿熟るゝや 臥して迎へし 神無月
- 1.5 影踏みは 男女の遊び 神無月
- 1.6 拍手も かれ行森や 神無月
- 1.7 風寒し 破れ障子の 神無月
- 1.8 神あそび せし庭ひろし 神無月
- 1.9 神無月 飴いろなして 火吹竹
- 1.10 神無月や 雨月の傘に 散る紅葉
- 1.11 この神の もと仏なり 神無月
- 1.12 砂糖壺 つかふことなし 神無月
- 1.13 山妻や 髪たぼながに 神無月
- 1.14 参道の 松に透く田や 神無月
- 1.15 椎の樹の 雨はらはらと 神無月
- 1.16 捨ぶねに 雨たまりけり 神無月
- 1.17 石室に 大黒天や 神無月
- 1.18 禅寺の 松の落葉や 神無月
- 1.19 空狭き 都に住むや 神無月
- 1.20 大根の 青き頭や 神無月
神無月の俳句 20選
「神無月(かんなづき:旧暦 10月の別名の一つ)」が詠み込まれた句を集め、俳句の文字の五十音順に並べました。
なお、神無月は俳句において秋の季語として扱われます。
赤々と 朝日卒寿の 神無月
【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)
【補足】卒寿(そつじゅ)とは、90歳のことを意味します。
朝市に 磯もの多し 神無月
【作者】水原秋桜子(みずはら しゅうおうし)
【補足】磯もの(磯物)とは、磯の近くでとれる小魚・貝・海草などの総称です。
うらむべき 便もなしや 神無月
【作者】杉山杉風(すぎやま さんぷう)
【補足】「便」の読み方は「たより」です。
柿熟るゝや 臥して迎へし 神無月
【作者】杉田久女(すぎた ひさじょ)
【補足】「臥して(ふして)」は「横になって、寝て」の意味です。
影踏みは 男女の遊び 神無月
【作者】坪内稔典(つぼうち としのり)
【補足】影踏み(かげふみ)とは、鬼となった者が他者の影踏むと、踏まれた者が次の鬼になるという遊びです。
拍手も かれ行森や 神無月
【作者】横井也有(よこい やゆう)
【補足】「拍手」の読み方は「かしわで(=神様を拝むときに、両方の手のひらを打ち合わせて鳴らすこと)」です。
風寒し 破れ障子の 神無月
【作者】山崎宗鑑(やまざき そうかん)
【補足】「障子」の読み方は「しょうじ」です。
神あそび せし庭ひろし 神無月
【作者】阿波野青畝(あわの せいほ)
【補足】神あそび(神遊び)とは、神前で歌や舞を行うことをいいます。
神無月 飴いろなして 火吹竹
【作者】飯田龍太(いいだ りゅうた)
【補足】飴いろ(飴色)とは、半透明のやや明るい褐色です。火吹竹(ひふきだけ)とは、吹いて火をおこすための、先に穴があいた竹筒のことです。
神無月や 雨月の傘に 散る紅葉
【作者】西山泊雲(にしやま はくうん)
この神の もと仏なり 神無月
【作者】阿波野青畝
砂糖壺 つかふことなし 神無月
【作者】石田波郷(いしだ はきょう)
山妻や 髪たぼながに 神無月
【作者】飯田蛇笏(いいだ だこつ)
【補足】山妻(さんさい)とは、自分の妻をへりくだっていう言葉で、田舎育ちの妻という意味が込められています。たぼ(髱)とは、日本髪の後方に張り出た部分のことです。これが長いものを「たぼなが」といいます。
参道の 松に透く田や 神無月
【作者】尾崎迷堂(おざき めいどう)
椎の樹の 雨はらはらと 神無月
【作者】山口誓子(やまぐち せいし)
【補足】椎(しい)は、ブナ科の常緑高木です。
捨ぶねに 雨たまりけり 神無月
【作者】桜井梅室(さくらい ばいしつ)
石室に 大黒天や 神無月
【作者】阿部みどり女
【補足】大黒天(だいこくてん)は、七福神(しちふくじん)の一柱です。石室(せきしつ)とは、石を積んで作った部屋のことです。
禅寺の 松の落葉や 神無月
【作者】野沢凡兆(のざわ ぼんちょう)
【補足】禅寺(ぜんでら)とは、禅宗の寺院のことをいいます。
空狭き 都に住むや 神無月
【作者】夏目漱石(なつめ そうせき)
大根の 青き頭や 神無月
【作者】野村喜舟(のむら きしゅう)
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