蛙の俳句 30選 -かえる-
古くから蛙(かえる)はとても身近な存在であり、その可愛らしい姿からも人々に愛されてきました。
俳句においても、松尾芭蕉の「古池や蛙とび込む水の音」、小林一茶の「やせ蛙まけるな一茶これにあり」という有名な句も残されているように、多くの俳人によって、数多くの作品に取り入れられてきました。
このページには、蛙が詠まれた俳句の中から 30句を選びました。蛙のいる風景が目に浮かんでくるような俳句ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 蛙の俳句 30選
- 1.1 あたらしき 畳匂ふや 夕蛙
- 1.2 枝蛙 喜雨の緑に まぎれけり
- 1.3 大いなる 月に出あひし 蛙かな
- 1.4 押合つて 啼くと聞こゆる 蛙かな
- 1.5 から井戸へ 飛びそこなひし 蛙よな
- 1.6 けたけたと 三老人に 蛙鳴く
- 1.7 こゝかしこ 蛙鳴く江の 星の数
- 1.8 子供等に 夜が来れり 遠蛙
- 1.9 こぼれ雨 恋ひ鳴く秋の 蛙かな
- 1.10 早乙女の 蛙にわたす 日暮哉
- 1.11 さびしさに 馴れて寝る夜の 蛙かな
- 1.12 下向きの 月上向きの 蛙の田
- 1.13 七堂の 風鐸ぬすむ 蛙かな
- 1.14 手をついて 歌申しあぐる 蛙かな
- 1.15 啼き立てゝ 暁近き 蛙かな
- 1.16 なにひとつ なさで寝る夜の 蛙かな
- 1.17 ねむれねば 寝ること捨てぬ 遠蛙
- 1.18 初蛙 いそぎ帰りし 歩がゆるむ
- 1.19 はながみに 心おぼえや 蛙なく
- 1.20 昼蛙 なれもうつつを 鳴くものか
- 1.21 ふと鳴いて 白昼やさし 野の蛙
- 1.22 干し傘を 畳む一々 夕蛙
- 1.23 みどり児と 蛙鳴く田を 夕眺め
- 1.24 明星の またたき強し 初蛙
- 1.25 もういいよ 髭題目に 青蛙
- 1.26 やゝ枯れし 秣にとぶや 青蛙
- 1.27 夕蛙 小さきものに 旅の櫛
- 1.28 夜蛙の 声となりゆく 菖蒲かな
- 1.29 世の中を ななめにみたる 蛙哉
- 1.30 呼びに来て すぐもどる子よ 夕蛙
蛙の俳句 30選
「蛙」「夕蛙」「遠蛙」などが詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
なお、これらは俳句において春の季語として扱われます。
あたらしき 畳匂ふや 夕蛙
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
枝蛙 喜雨の緑に まぎれけり
【作者】西島麦南(にしじま ばくなん)
【補足】枝蛙(えだかわず)は、雨蛙(あまがえる)のことです。喜雨(きう)とは、日照りが続いたときに降る雨のことをいいます。
大いなる 月に出あひし 蛙かな
【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)
押合つて 啼くと聞こゆる 蛙かな
【作者】立花北枝(たちばな ほくし)
【補足】「啼く」の読み方は「なく(=鳴く)」です。
から井戸へ 飛びそこなひし 蛙よな
【作者】上島鬼貫(うえじま おにつら)
【補足】句末の「よな」は、感動や詠嘆を表します。
けたけたと 三老人に 蛙鳴く
【作者】山口青邨(やまぐち せいそん)
こゝかしこ 蛙鳴く江の 星の数
【作者】宝井其角(たからい きかく)
【補足】江(え)とは、海や湖などの一部分が陸地に入り込んだところをいいます。
子供等に 夜が来れり 遠蛙
【作者】山口青邨
【補足】遠蛙(とおかわず)とは、遠くから聞こえてくる蛙の声のことをいいます。
こぼれ雨 恋ひ鳴く秋の 蛙かな
【作者】高橋淡路女(たかはし あわじじょ)
【補足】「蛙」単体であれば春の季語ですが、「夏蛙」「秋の蛙」などはそれぞれの季節のものとなります。
早乙女の 蛙にわたす 日暮哉
【作者】尾崎紅葉(おざき こうよう)
【補足】早乙女(さおとめ)とは、田植えをする若い女性のことです。また、広く「乙女(おとめ)」のこともいいます。
さびしさに 馴れて寝る夜の 蛙かな
【作者】上村占魚(うえむら せんぎょ)
下向きの 月上向きの 蛙の田
【作者】西東三鬼(さいとう さんき)
七堂の 風鐸ぬすむ 蛙かな
【作者】野村喜舟(のむら きしゅう)
【補足】七堂(しちどう)は「七堂伽藍(がらん)」を略したもので、寺院の建物のことです。風鐸(ふうたく)とは、堂や塔の軒の四隅に吊り下げられるものです。
手をついて 歌申しあぐる 蛙かな
【作者】山崎宗鑑(やまざき そうかん)
啼き立てゝ 暁近き 蛙かな
【作者】前田普羅(まえだ ふら)
【補足】暁(あかつき)とは、夜明け・明け方のことです。
なにひとつ なさで寝る夜の 蛙かな
【作者】上村占魚
【補足】「なさで」は「しないで」の意味です。
ねむれねば 寝ること捨てぬ 遠蛙
【作者】及川 貞(おいかわ てい)
初蛙 いそぎ帰りし 歩がゆるむ
【作者】及川 貞
【補足】初蛙(はつかわず)とは、はじめて鳴く蛙、またはその声のことをいいます。
はながみに 心おぼえや 蛙なく
【作者】久保田万太郎
【補足】はながみ(花紙、鼻紙)は「ちり紙」のことをいいます。
昼蛙 なれもうつつを 鳴くものか
【作者】室生犀星(むろう さいせい)
【補足】なれ(汝)は「なんじ、おまえ」という意味です。
ふと鳴いて 白昼やさし 野の蛙
【作者】大野林火(おおの りんか)
干し傘を 畳む一々 夕蛙
【作者】芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ)
みどり児と 蛙鳴く田を 夕眺め
【作者】中村汀女(なかむら ていじょ)
【補足】みどり児(嬰児)とは、二、三歳までの子供のことをいいます。
明星の またたき強し 初蛙
【作者】三橋鷹女(みつはし たかじょ)
もういいよ 髭題目に 青蛙
【作者】阿波野青畝(あわの せいほ)
【補足】髭題目(ひげだいもく)とは、日蓮宗(にちれんしゅう)で「南無妙法蓮華経」のうち「法」を除いた 6文字を、先端を髭のようにわきを伸ばして書いたものです。
やゝ枯れし 秣にとぶや 青蛙
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
【補足】秣(まぐさ)とは、馬や牛などの飼料にする干し草や藁(わら)のことです。
夕蛙 小さきものに 旅の櫛
【作者】鈴木真砂女(すずき まさごじょ)
【補足】「櫛」の読み方は「くし」です。
夜蛙の 声となりゆく 菖蒲かな
【作者】水原秋桜子(みずはら しゅうおうし)
【補足】菖蒲(しょうぶ)は、水辺に咲くサトイモ科の多年草です。
世の中を ななめにみたる 蛙哉
【作者】会津八一(あいづ やいち)
呼びに来て すぐもどる子よ 夕蛙
【作者】中村汀女
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