狐の俳句 30選 -きつね-
野生の狐を見かけることは、なかなか無いでしょうが、人を化かす動物として童話に登場したり、お稲荷様の使いとして良く知られています。
そして、「狐」は俳句において冬の季語でもあり、多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、「狐」が詠まれた俳句を多く集めました。冬らしい雰囲気に満ちた作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 狐の俳句 30選
- 1.1 有明に 狐飼ふ子の 春明くる
- 1.2 うれしさの 狐手を出せ 曇り花
- 1.3 お彼岸の 狐帰り来る 夜道かな
- 1.4 お火焚に 逆立つ狐 灯りけり
- 1.5 掛稲や 狐に似たる 村の犬
- 1.6 かしこくも 粥杖うちぬ 狐つき
- 1.7 火事の夜は 狐の影絵して遊ぶ
- 1.8 かの後家の うしろに踊る 狐かな
- 1.9 枯菊に 来らずなりし 狐かな
- 1.10 巫女に 狐恋する 夜寒かな
- 1.11 狐なく 霜夜にいづこ 煤はらひ
- 1.12 後朝を 狐となりし 中納言
- 1.13 公達に 狐化けたり 宵の春
- 1.14 子狐を 穴へ呼込む のわきかな
- 1.15 児の泣けば はつと飛び退く 狐かな
- 1.16 子守唄 そこに狐が うづくまり
- 1.17 子をあやす それは狐が 喋るなり
- 1.18 ちらちらと 檻の狐に 降る雪よ
- 1.19 月の夜は 狐の檻の 暗かりし
- 1.20 初午に 狐の剃りし 頭哉
- 1.21 初午に 無官の狐 鳴にけり
- 1.22 初冬の 狐の聲と きこえたり
- 1.23 母と子の トランプ 狐啼く夜なり
- 1.24 晴るる日は 霞む狐の 名所かな
- 1.25 梟を なぶるや寺の 昼狐
- 1.26 冬の夜の 狐は親の なくやらん
- 1.27 ままごとの 夢中へ降るは 狐の葉
- 1.28 山焼けば 狐のすなる 飛火かな
- 1.29 ゆく年や 狐のかけし よだれかけ
- 1.30 夜蛙の 名残りきつねの ぼたん咲く
狐の俳句 30選
冬の季語である「狐」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
どうぞ、ごゆっくりとご鑑賞下さい。
有明に 狐飼ふ子の 春明くる
【作者】前田普羅(まえだ ふら)
【補足】有明(ありあけ)とは、夜明けや明け方のことをいいます。
うれしさの 狐手を出せ 曇り花
【作者】原 石鼎(はら せきてい)
お彼岸の 狐帰り来る 夜道かな
【作者】内田百間(うちだ ひゃっけん)
お火焚に 逆立つ狐 灯りけり
【作者】阿波野青畝(あわの せいほ)
【補足】お火焚(おひたき)とは、京阪地方で旧暦の11月に行われる火祭りのことです。「灯りけり」の読み方は「ともりけり」です。
掛稲や 狐に似たる 村の犬
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【補足】掛稲(かけいね)とは、刈り取った稲を乾かすために稲架(はさ:木組み)などにかけること、また、その稲のことです。
かしこくも 粥杖うちぬ 狐つき
【作者】松瀬青々(まつせ せいせい)
【補足】粥杖(かゆづえ)とは、小正月の粥を煮るときに使う棒のことです。
火事の夜は 狐の影絵して遊ぶ
【作者】古館曹人(ふるたち そうじん)
【補足】影絵(かげえ)とは、手・切り抜いた絵・人形などを、灯火などによって障子や壁などに映し出して見せるもののことです。
かの後家の うしろに踊る 狐かな
【作者】黒柳召波(くろやなぎ しょうは)
【補足】後家(ごけ)とは、夫と死別し、再婚しないでいる女性のことをいいます。
枯菊に 来らずなりし 狐かな
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
【補足】「来(きた)らずなりし」は「来なくなった」という意味です。品詞分解すると、「来ら」は動詞「来る」の未然形、「ず」は打消しの助動詞「ず」の連用形、「なり」は動詞「なる」の連用形、「し」は過去の助動詞「き」の連体形となります。
巫女に 狐恋する 夜寒かな
【作者】与謝蕪村(よさ ぶそん)
【補足】「巫女」の読み方は「かんなぎ、みこ」です。
狐なく 霜夜にいづこ 煤はらひ
【作者】炭 太祇(たん たいぎ)
【補足】霜夜(しもよ)とは、霜がおりる寒い夜のことをいいます。煤はらひ(すすはらい:煤払)とは、正月を迎えるにあたって、家内の埃(ほこり)・塵(ちり)・煤(すす)を払うことです。
後朝を 狐となりし 中納言
【作者】筑紫磐井(つくし ばんせい)
【補足】後朝(きぬぎぬ)とは、一夜を共にして契り(ちぎり)を交わした男女が迎える朝のことをいいます。
公達に 狐化けたり 宵の春
【作者】与謝蕪村
【補足】公達(きんだち)とは、親王・諸王など皇族の人々、身分の高い者の子女などを意味します。
子狐を 穴へ呼込む のわきかな
【作者】黒柳召波
【補足】のわき(野分)とは、いわゆる台風のことです。
児の泣けば はつと飛び退く 狐かな
【作者】中村汀女(なかむら ていじょ)
子守唄 そこに狐が うづくまり
【作者】橋本多佳子(はしもと たかこ)
子をあやす それは狐が 喋るなり
【作者】渋谷 道(しぶや みち)
ちらちらと 檻の狐に 降る雪よ
【作者】成瀬正俊(なるせ まさとし)
月の夜は 狐の檻の 暗かりし
【作者】山口青邨(やまぐち せいそん)
初午に 狐の剃りし 頭哉
【作者】松尾芭蕉(まつお ばしょう)
【補足】初午(はつうま)とは、2月の最初の午(うま)の日のことで、各地の稲荷神社(いなりじんじゃ)で祭の日とされます。
初午に 無官の狐 鳴にけり
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
初冬の 狐の聲と きこえたり
【作者】泉 鏡花(いずみ きょうか)
【補足】「聲」は「声」の旧字体です。
母と子の トランプ 狐啼く夜なり
【作者】橋本多佳子
【補足】「啼く」の読み方は「なく」です。
晴るる日は 霞む狐の 名所かな
【作者】会津八一(あいづ やいち)
梟を なぶるや寺の 昼狐
【作者】正岡子規
【補足】「梟」の読み方は「ふくろう」です。
冬の夜の 狐は親の なくやらん
【作者】中 勘助(なか かんすけ)
ままごとの 夢中へ降るは 狐の葉
【作者】渋谷 道
山焼けば 狐のすなる 飛火かな
【作者】河東碧梧桐(かわひがし へきごとう)
【補足】「狐のすなる」は「狐がするとかいう」という意味です。
ゆく年や 狐のかけし よだれかけ
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
夜蛙の 名残りきつねの ぼたん咲く
【作者】羽部洞然(はぶ どうぜん)
【補足】夜蛙(よかわず)とは、夜に鳴く蛙のことをいいます。
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