小春日和の俳句 20選 -こはるびより-
冬の初め頃でも、春のようにも思える暖かい陽気になることがあります。これは、小春日和(こはるびより)と呼ばれています。
この「小春日和」は俳句において冬の季語でもあり、多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、小春日和が詠まれた俳句を多く集めました。冬の初めの穏やかな日の雰囲気に満ちた作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 季語の「小春日和」
- 2 小春日和の俳句 30選
- 2.1 明日知らぬ 小春日和や 翁の忌
- 2.2 医師と居て 小春日和の みづすまし
- 2.3 石になる 阿國も小春日和かな
- 2.4 美しき 小春日和や 悲しき日
- 2.5 木蔭まで 小春日和に 包まれし
- 2.6 小春日和 鯉の欠伸に つられけり
- 2.7 小春日和と 同音に言い 別れたり
- 2.8 時雨忌が 小春日和に 終始せり
- 2.9 静かなる 小春日和や 檜葉の揺れ
- 2.10 不忍も 上野も小春日和哉
- 2.11 捨てられし 仔猫に小春日和かな
- 2.12 挿話めく 小春日和と いふがあり
- 2.13 玉の如き 小春日和を 授かりし
- 2.14 汀女ゐる 小春日和の 熊本ヘ
- 2.15 どこよりも 小春日和の 墓地にぎやか
- 2.16 渚澄む 湖北の小春日和かな
- 2.17 友逝きぬ 小春日和の 夜のしじま
- 2.18 念力の ゆるみし小春日和かな
- 2.19 ふんだんに 小春日和を 賜はらむ
- 2.20 繿縷を干す 小春日和や 鮫ヶ橋
季語の「小春日和」
「小春(こはる)」は旧暦の 10月の異称です。
ですから、「春」の文字が入っていますが「小春日和」は冬の季語となります。
「小春日」「小春」「小六月」なども、すべて冬の季語とされます。
小春日和の俳句 30選
小春日和が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
選んだ句は、有名俳人による俳句から厳選しています。
明日知らぬ 小春日和や 翁の忌
【作者】井上井月(いのうえ せいげつ)
【補足】翁(おきな)とは、年をとった男、または老人の敬称です。女性の場合は「媼(おうな)」となります。「翁の忌(おきなのき)」は、俳人・松尾芭蕉(まつお ばしょう)はの忌日・旧暦の 10月12日で、「翁忌(おきなき)」とも呼ばれます。
医師と居て 小春日和の みづすまし
【作者】飯田龍太(いいだ りゅうた)
【補足】みづすまし(水澄まし)はちいさな昆虫の名前で、「あめんぼ」「まいまい」と呼ばれることもあります。
石になる 阿國も小春日和かな
【作者】飴山 實(あめやま みのる)
【補足】阿國(おくに)は安土桃山時代から江戸時代前期にかけての女性で、「かぶき踊り」の創始者といわれています。「出雲の阿国」「出雲のお国」などと表記されます。
美しき 小春日和や 悲しき日
【作者】山口青邨(やまぐち せいそん)
木蔭まで 小春日和に 包まれし
【作者】稲畑汀子(いなはた ていこ)
【補足】「木蔭」の読み方は「こかげ」です。
小春日和 鯉の欠伸に つられけり
【作者】河野南畦(こうの なんけい)
【補足】「欠伸」の読み方は「あくび」です。
小春日和と 同音に言い 別れたり
【作者】金子兜太(かねこ とうた)
時雨忌が 小春日和に 終始せり
【作者】相生垣瓜人(あいおいがき かじん)
【補足】時雨忌(しぐれき)も前出の「翁の忌(おきなのき)」と同様に松尾芭蕉の忌日で、この他に「芭蕉忌(ばしょうき)」や「桃青忌(とうせいき)」ともいわれます。
静かなる 小春日和や 檜葉の揺れ
【作者】高浜年尾(たかはま としお)
【補足】檜葉(ヒバ)は樹木・翌檜(アスナロ)の変種で、「ヒノキアスナロ」という別名があります。
不忍も 上野も小春日和哉
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【補足】不忍(しおのばず)、上野(うえの)は東京の地名です。句末の「哉(かな)」は詠嘆を表します。
捨てられし 仔猫に小春日和かな
【作者】飯田龍太
【補足】「仔猫」の読み方は「こねこ(=子猫)」です。
挿話めく 小春日和と いふがあり
【作者】相生垣瓜人
【補足】挿話(そうわ)とは、文章や話の途中に挟み込まれる短い話(=エピソード)のことをいいます。
玉の如き 小春日和を 授かりし
【作者】松本たかし(まつもと たかし)
【補足】「如き」の読み方は「ごとき」です。
汀女ゐる 小春日和の 熊本ヘ
【作者】星野立子(ほしの たつこ)
【補足】中村汀女(なかむら ていじょ)は、大正時代から昭和末期にかけての女流俳人です、星野立子(ほしの たつこ)・橋本多佳子(はしもと たかこ)・三橋鷹女(みつはし たかじょ)とともに 四Tと呼ばれます。
どこよりも 小春日和の 墓地にぎやか
【作者】右城暮石(うしろ ぼせき)
渚澄む 湖北の小春日和かな
【作者】右城暮石
【補足】湖北(こほく)は、滋賀の地域の名称です。
友逝きぬ 小春日和の 夜のしじま
【作者】松崎鉄之介(まつざき てつのすけ)
【補足】「逝きぬ」の読み方は「ゆきぬ」です。
念力の ゆるみし小春日和かな
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
ふんだんに 小春日和を 賜はらむ
【作者】相生垣瓜人
【補足】「賜はらむ」の読み方は「たまわらむ」です。
繿縷を干す 小春日和や 鮫ヶ橋
【作者】正岡子規
【補足】襤褸(ぼろ)とは、きたならしい衣服や使い古した布のことです。鮫ケ橋(さめがはし)は東京・新宿の地名で、かつて架けられていた橋にもこの名前があります。
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