コートの俳句 30選 / こーと
コートは、冬の防寒服として欠かせないものです。この「コート」は俳句において冬の季語でもあり、多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、「コート」が詠まれた俳句を多く集めました。身が縮むような冬の寒さが伝わってくるような作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 コートの俳句 30選
- 1.1 アイロンを あてて着なせり 古コート
- 1.2 吾妻コート 藁屋の霜は あはれまし
- 1.3 雨がまぶす 婚近き身の 黒コート
- 1.4 色褪せし コートなれども 好み着る
- 1.5 皮コート 天守の闇を 曳き出づる
- 1.6 気づかひや 借りしコートに 夕立ばね
- 1.7 句會にも 着つゝなれにし 古コート
- 1.8 黒コート 身に断ちがたき 一事あり
- 1.9 コート着し 人のそがひや 雪の道
- 1.10 コート着て 財布の位置が 変りけり
- 1.11 コート着て なほ言ひ足して 出かけけり
- 1.12 コート着て 母のさからふ 風も見し
- 1.13 コート著る うかつに羽織 忘れたり
- 1.14 コート脱ぎ 現れいづる 晴著かな
- 1.15 コート脱ぐ日の山窪の 父祖の墓
- 1.16 コート身に 巻きつけなほし 山深む
- 1.17 傘雨忌や 利休ねずみの 雨コート
- 1.18 十字軍 より元気にて 黒コート
- 1.19 洗礼へ 子が雪中を 緋のコート
- 1.20 そのまゝと いはれ会釈し コートぬぐ
- 1.21 抱くやうに 毛皮コートを 脱がせやる
- 1.22 だぶだぶの 黒いコートの 手に椿
- 1.23 道服と 吾妻コートの 梅見哉
- 1.24 波音を 離れコートの 襟を立て
- 1.25 冷えきった コートよ中に 弟が
- 1.26 彼岸過 人のコートの レモンいろ
- 1.27 ボタンとれしコート烏に 啼かれづめ
- 1.28 立冬かと 呟きコート 羽織りけり
- 1.29 老詩人 コートの下の 伊達者ぶり
- 1.30 わがコート 赤し枯野に 点なすや
コートの俳句 30選
「コート」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
どうぞ、ごゆっくりとご鑑賞下さい。
アイロンを あてて着なせり 古コート
【作者】杉田久女(すぎた ひさじょ)
【補足】古語の「きなす(着為す)」は「~となるように着る」という意味です。
吾妻コート 藁屋の霜は あはれまし
【作者】尾崎紅葉(おざき こうよう)
【補足】吾妻(あずま)コートとは、婦人が用いる和服用コートのことです。藁屋(わらや)とは、藁ぶきの家のことで、粗末な家のたとえとしても使われます。句末の「まし」は、推量を意味します。
雨がまぶす 婚近き身の 黒コート
【作者】岡本 眸(おかもと ひとみ)
【補足】「まぶす(塗す)」は「一面になすりつける」という意味です。
色褪せし コートなれども 好み着る
【作者】杉田久女
【補足】「色褪せし」の読み方は「いろあせし」です。
皮コート 天守の闇を 曳き出づる
【作者】鍵和田秞子(かぎわだ ゆうこ)
【補足】「曳き出づる」の読み方は「ひきいづる」です。
気づかひや 借りしコートに 夕立ばね
【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)
句會にも 着つゝなれにし 古コート
【作者】杉田久女
【補足】「會」は「会」の旧字体です。「着つゝなれにし」は「何度も着て身になじんだ」という意味です。
黒コート 身に断ちがたき 一事あり
【作者】岡本眸
コート着し 人のそがひや 雪の道
【作者】原 石鼎(はら せきてい)
【補足】「そがひ(背向)」とは、後方のことをいいます。
コート着て 財布の位置が 変りけり
【作者】能村研三(のむら けんぞう)
コート着て なほ言ひ足して 出かけけり
【作者】中村苑子(なかむら そのこ)
コート着て 母のさからふ 風も見し
【作者】中村汀女(なかむら ていじょ)
コート著る うかつに羽織 忘れたり
【作者】高浜年尾(たかはま としお)
コート脱ぎ 現れいづる 晴著かな
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
【補足】「晴著」の読み方は「はれぎ(=晴着)」です。
コート脱ぐ日の山窪の 父祖の墓
【作者】上田五千石(うえだ ごせんごく)
コート身に 巻きつけなほし 山深む
【作者】岡本 眸
傘雨忌や 利休ねずみの 雨コート
【作者】鈴木真砂女(すずき まさじょ)
【補足】傘雨忌(さんうき)は、俳人・久保田万太郎(くぼた まんたろう)の忌日で 5月 6日です。
十字軍 より元気にて 黒コート
【作者】櫂 未知子(かい みちこ)
【補足】十字軍(じゅうじぐん)は、中世に西欧カトリック諸国が聖地エルサレムを奪還することを目的に派遣した遠征軍です。
洗礼へ 子が雪中を 緋のコート
【作者】松崎鉄之介(まつざき てつのすけ)
そのまゝと いはれ会釈し コートぬぐ
【作者】星野立子(ほしの たつこ)
【補足】「会釈」の読み方は「えしゃく」です。
抱くやうに 毛皮コートを 脱がせやる
【作者】辻 桃子(つじ ももこ)
だぶだぶの 黒いコートの 手に椿
【作者】長谷川 櫂(はせがわ かい)
道服と 吾妻コートの 梅見哉
【作者】夏目漱石(なつめ そうせき)
【補足】道服(どうぶく)とは、道士(どうし:仏道を修める人、道教を修める人)が着る服のことをいいます。
波音を 離れコートの 襟を立て
【作者】高澤良一(たかざわ よしかず)
冷えきった コートよ中に 弟が
【作者】池田澄子(いけだ すみこ)
彼岸過 人のコートの レモンいろ
【作者】山口青邨(やまぐち せいそん)
ボタンとれしコート烏に 啼かれづめ
【読み】ボタンとれしコートからすに なかれづめ
【作者】岡本 眸
立冬かと 呟きコート 羽織りけり
【作者】林 翔(はやし しょう)
【補足】立冬は二十四節気の一つで、毎年 11月 6日頃です。
老詩人 コートの下の 伊達者ぶり
【作者】中村苑子
【補足】伊達者(だてしゃ)とは、伊達(=いきであること、洗練されていること)な服装などを好む者、風流を好む人のことをいいます。
わがコート 赤し枯野に 点なすや
【作者】山田弘子(やまだ ひろこ)
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