長月の俳句 20選 -ながつき-
旧暦の時代から使われてきた、9月の別名である「長月(ながつき)」の由来は、「夜長月(よながつき)」を略したものとする説が有力です。
この「長月」は季語として多くの俳句作品に詠み込まれていて、夜の情景に関する俳句は多くみられます。
このページには、長月が詠み込まれた俳句の中から 20句を選びました。長月という語が持つ雰囲気を見事に表現したものばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 長月の俳句 20
- 1.1 重ね汲むや 菊月の酒 末永う
- 1.2 かへり花 照るや長月 仏の日
- 1.3 菊月の 虻も蜂も 日に酔つて
- 1.4 菊月の ある夜の足の ほてるかな
- 1.5 菊月や 其有明と なる日まで
- 1.6 菊月や 備後表の 下駄買はむ
- 1.7 菊月や 浴衣も入れて 旅鞄
- 1.8 長月の 有明の月や けしの花
- 1.9 長月の 空色袴 きたりけり
- 1.10 長月の 空に亡びん 国人あり
- 1.11 長月の 竹をかむりし 草家かな
- 1.12 長月の 望を上げたり 赤城山
- 1.13 長月の 夜を切る南瓜へ 夕立てて
- 1.14 長月は 十六夜といはで 哀れなり
- 1.15 長月や 豆のまきひげ 黄に枯るゝ
- 1.16 長月や 夜々の薫物 貝の中
- 1.17 長月を 懸けがねさしに 別れかな
- 1.18 長月を よき頃なりし 吉野かな
- 1.19 星もなし 月は長月 十四日
- 1.20 村々や 菊月過ぎし 畑の菊
長月の俳句 20
「長月」「菊月(きくづき:旧暦 9月の別名の一つ)」が詠み込まれた句を集め、俳句の文字の五十音順に並べました。
なお、これらは俳句において秋の季語として扱われます。
重ね汲むや 菊月の酒 末永う
【作者】田上菊舎(たがみ きくしゃ)
【補足】「汲む」の読み方は「くむ(≒酌む)」です。
かへり花 照るや長月 仏の日
【作者】服部土芳(はっとり とほう)
【補足】かへり花(帰り花、返り花)とは、初冬に返り咲く花のことで、冬の季語になっています。
菊月の 虻も蜂も 日に酔つて
【作者】佐藤鬼房(さとう おにふさ)
【補足】菊月(きくづき)も 9月の異称です。「虻」「蜂」の読み方は、それぞれ「あぶ」「すがる」です。
菊月の ある夜の足の ほてるかな
【作者】鈴木真砂女(すずき まさごじょ)
菊月や 其有明と なる日まで
【作者】各務支考(かがみ しこう)
【補足】「其」の読み方は「その:連体詞」です。
菊月や 備後表の 下駄買はむ
【作者】鈴木真砂女
【補足】備後表(びんごおもて)とは、備後地方(広島の東部)で生産される畳(たたみ)の表です。
菊月や 浴衣も入れて 旅鞄
【作者】鈴木真砂女
【補足】「浴衣」「旅鞄」の読み方は、それぞれ「ゆかた」「たびかばん」です。
長月の 有明の月や けしの花
【作者】巒 寥松(みね りょうしょう)
長月の 空色袴 きたりけり
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
【補足】「空色袴」の読み方は「そらいろばかま」です。
長月の 空に亡びん 国人あり
【作者】長谷川かな女(はせがわ かなじょ)
【補足】国人(くにびと、こくじん)とは、「その国の人」という意味です。
長月の 竹をかむりし 草家かな
【作者】増田龍雨(ますだ りゅうう)
【補足】草家(くさや)とは、草ぶきの家のことをいいます。
長月の 望を上げたり 赤城山
【作者】上村占魚(うえむら せんぎょ)
【補足】望(もち)とは、満月のことです。
長月の 夜を切る南瓜へ 夕立てて
【作者】長谷川かな女
【補足】「南瓜」の読み方は「かぼちゃ」です。
長月は 十六夜といはで 哀れなり
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【補足】十六夜(いざよい)とは、旧暦十六日の夜、また、その夜の月のことを意味します。
長月や 豆のまきひげ 黄に枯るゝ
【作者】上村占魚
長月や 夜々の薫物 貝の中
【作者】野村喜舟(のむら きしゅう)
【補足】夜々(よよ、よるよる、よなよな)とは、「毎晩、夜ごと」という意味です。 薫物(たきもの)とは、種々の香を合わせて作った練香(ねりこう)、また、それを焚くことをいいます。
長月を 懸けがねさしに 別れかな
【作者】斯波園女(しば そのめ)
【補足】「懸(か)けがね」とは、戸や門などを開かないようにするための部材のことです。
長月を よき頃なりし 吉野かな
【作者】尾崎迷堂(おざき めいどう)
星もなし 月は長月 十四日
【作者】正岡子規
村々や 菊月過ぎし 畑の菊
【作者】富安風生(とみやす ふうせい)
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