春愁の俳句 30選 -しゅんしゅう-
春の夕暮れや雨の日などに、言いようのない寂しさを感じることがあります。このような感覚を「春愁」という言葉で表現します。
この「春愁」は俳句において春の季語でもあり、多くの俳人によって作品に詠み込まれてきました。
このページには、「春愁」が詠まれた俳句を多く集めました。華やかな季節でありながら寂しさも併せ持つ春の雰囲気に満ちた作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 春愁の俳句 30選
- 1.1 うすうすと わが春愁に 飢もあり
- 1.2 憶良らは 名を残したり 春愁ひ
- 1.3 家具店に 抽斗あまた 春愁ひ
- 1.4 菓子食べし 口春愁の 海の色
- 1.5 春愁に 香薫きこもる 中納言
- 1.6 春愁に 堪ふる面輪に 灯りけり
- 1.7 春愁に 触れて冷たき かたばみ葉
- 1.8 春愁の いとまなければ 無きごとし
- 1.9 春愁や 着馴れし服の 匂ひにも
- 1.10 春愁の 薬もすこし 嗜みて
- 1.11 春愁の 東洋人で ありにけり
- 1.12 春愁の 中なる思ひ出し笑ひ
- 1.13 春愁の のどをうるほす 旅の夜
- 1.14 春愁の まぼろしにたつ 仏かな
- 1.15 春愁の 吾を写真に 撮るといふ
- 1.16 春愁は ポストの朱さ かへりみる
- 1.17 春愁や 女は物を 抱く癖
- 1.18 春愁や 金槐集を ふところに
- 1.19 春愁や 草を歩けば 草青く
- 1.20 春愁や くらりと海月 くつがへる
- 1.21 春愁や 些細なことに 気落ちして
- 1.22 春愁や せんべいを歯に あててゐて
- 1.23 春愁や 籐のかごにて 飼ふ鸚鵡
- 1.24 春愁や のこして蕎麦の ふた三すぢ
- 1.25 春愁や 覗く鏡に ほつれ髪
- 1.26 春愁や 葉がちとなりし 花の雨
- 1.27 春愁や 派手いとへども 枕房
- 1.28 春愁や 一と日夕空 街に澄む
- 1.29 春愁や 闇に眼のなき 深海魚
- 1.30 春愁や 老医に患者 なき日あり
春愁の俳句 30選
「春愁」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
どうぞ、ごゆっくりとご鑑賞下さい。
うすうすと わが春愁に 飢もあり
【作者】能村登四郎(のむら としろう)
【補足】「飢」の読み方は「うえ」です。
憶良らは 名を残したり 春愁ひ
【作者】行方克巳(なめかた かつみ)
【補足】山上憶良(やまのうえのおくら)は、奈良時代初期の歌人で、万葉集(まんようしゅう)には 78首の歌が選出されています。
家具店に 抽斗あまた 春愁ひ
【作者】鷹羽狩行(たかは しゅぎょう)
【補足】「抽斗」の読み方は「ひきだし」です。
菓子食べし 口春愁の 海の色
【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)
春愁に 香薫きこもる 中納言
【読み】しゅんしゅうに こうたきこもる ちゅうなごん
【作者】筑紫磐井(つくし ばんせい)
【補足】中納言は、太政官(だいじょうかん:律令制にもとづく行政機関)に設置された官職の名称です。
春愁に 堪ふる面輪に 灯りけり
【読み】
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
【補足】「堪ふる」の読み方は「たうる、こらうる」です。面輪(おもわ)とは、顔のことです。
春愁に 触れて冷たき かたばみ葉
【作者】右城暮石(うしろ ぼせき)
【補足】「かたばみ」は、カタバミ科の多年草です。
春愁の いとまなければ 無きごとし
【作者】皆吉爽雨(みなよし そうう)
【補足】「いとま(暇)」とは「ひま、休暇、別れること」などを意味します。
春愁や 着馴れし服の 匂ひにも
【作者】桂 信子(かつら のぶこ)
春愁の 薬もすこし 嗜みて
【作者】後藤夜半(ごとう やはん)
【補足】「嗜みて」の読み方は「たしなみて」です。
春愁の 東洋人で ありにけり
【作者】京極杞陽(きょうごく きよう)
春愁の 中なる思ひ出し笑ひ
【作者】能村登四郎
春愁の のどをうるほす 旅の夜
【作者】阿部みどり女
春愁の まぼろしにたつ 仏かな
【作者】飯田蛇笏(いいだ だこつ)
春愁の 吾を写真に 撮るといふ
【作者】波多野爽波(はたの そうは)
【補足】「吾」の読み方は「われ」です。
春愁は ポストの朱さ かへりみる
【作者】原 裕(はら ゆたか)
【補足】「朱さ」の読み方は「あかさ(≒赤さ)」です。
春愁や 女は物を 抱く癖
【作者】香西照雄(こうざい てるお)
【補足】「抱く」の読み方は「いだく」です。
春愁や 金槐集を ふところに
【作者】高橋淡路女(たかはし あわじじょ)
【補足】金槐集(きんかいしゅう=金槐和歌集)は、鎌倉幕府第三代将軍・源実朝(みなもとのさねとも)の歌集で、『鎌倉右大臣家集』ともいわれます。
春愁や 草を歩けば 草青く
【作者】青木月斗(あおき げっと)
春愁や くらりと海月 くつがへる
【作者】加藤楸邨(かとう しゅうそん)
【補足】「海月」の読み方は「くらげ(水母とも表記)」です。
春愁や 些細なことに 気落ちして
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
【補足】些細(ささい)とは、わずかで取るに足りないことをいいます。
春愁や せんべいを歯に あててゐて
【作者】大野林火(おおの りんか)
春愁や 籐のかごにて 飼ふ鸚鵡
【作者】筑紫磐井
【補足】「鸚鵡」の読み方は「オウム」です。
春愁や のこして蕎麦の ふた三すぢ
【作者】上田五千石(うえだ ごせんごく)
【補足】「蕎麦」の読み方は「そば」です。
春愁や 覗く鏡に ほつれ髪
【作者】高橋淡路女
【補足】「覗く」の読み方は「のぞく」です。
春愁や 葉がちとなりし 花の雨
【作者】日野草城
【補足】「葉がち」とは、花よりも葉が多いことを意味しています。
春愁や 派手いとへども 枕房
【作者】飯田蛇笏
【補足】房(ふさ)とは、たばねた糸の先をバラバラにしたものをいいます。
春愁や 一と日夕空 街に澄む
【作者】中村汀女(なかむら ていじょ)
春愁や 闇に眼のなき 深海魚
【作者】福田蓼汀(ふくだ りょうてい)
春愁や 老医に患者 なき日あり
【作者】五十嵐播水(いがらし ばんすい)
関 連 ペ ー ジ