七夕の和歌 20選 【現代語訳】付き
七夕は中国から伝わった行事に由来しますが、日本では古くから多くの歌に詠まれてきました。
織女(おりひめ)と牽牛(けんぎゅう)が一年に一度しか会えないという話の切なさは、強く心に訴えてくるものがあります。
このページには、七夕の和歌というにふさわしいものを集めました。これらはいずれも七夕の雰囲気に満ちあふれたものなので、是非じっくりと味わってみて下さい。
目次
- 1 七夕の和歌について
- 2 七夕の和歌 20選
- 2.1 秋風に 夜のふけゆけば天の川 かは瀬に波の立ちゐこそ待て
- 2.2 秋の夜を 長きものとは星あひの かげ見ぬ人のいふにぞありける
- 2.3 朝戸あけて ながめやすらむ織女(たなばた)は あかぬ別れの空を恋ひつつ
- 2.4 天の川 あふぎの風に霧はれて 空すみわたるかささぎの橋
- 2.5 天の川 いと川波は立たねども さもらひ難し近きこの瀬を
- 2.6 天の川 かは辺すずしきたなばたに 扇の風をなほや貸さまし
- 2.7 天の川 水さへに照る舟泊(は)てて 舟なる人は妹(いも)と見えきや
- 2.8 狩り暮らし 七夕つめに宿からむ 天の川原に我は来にけり
- 2.9 こよひ来む 人には逢はじ七夕の ひさしきほどに待ちもこそすれ
- 2.10 袖ひちて 我が手にむすぶ水のおもに 天つ星合の空を見るかな
- 2.11 織女(たなばた)し 船乗りすらし真澄鏡(まそかがみ) きよき月夜に雲たちわたる
- 2.12 たなばたに かしつる糸の うちはへて 年の緒ながく恋ひやわたらむ
- 2.13 たなばたの たえぬ契りをそへんとや 羽をならぶる鵲の橋
- 2.14 たなばたの とわたる舟の梶の葉に いく秋書きつ露の玉づさ
- 2.15 礫(たぶて)にも 投げ越しつべき天の川 隔てればかもあまたすべなき
- 2.16 契りけん 心ぞつらき織女の 年にひとたびあふはあふかは
- 2.17 ちはやぶる 神も見まさば立ちさわぎ 天の戸川の樋口あけたまへ
- 2.18 照る月の ながるる見れば天の川 いづる湊は海にぞありける
- 2.19 年ごとに あふとはすれど織女の 寝る夜の数ぞすくなかりける
- 2.20 ながむらん 空をだに見ず七夕に あまるばかりの我が身と思へば
七夕の和歌について
七夕に関連するものが詠まれている和歌を 20首を選び、五十音順に並べました。
七夕の美しい情景を見事に表現したものばかりですので、是非チェックしてみて下さい。
なお、現代語訳を付けましたが、これは私の意訳であることをお断りしておきます。何卒ご了承ください。
七夕の和歌 20選
秋風に 夜のふけゆけば天の川 かは瀬に波の立ちゐこそ待て
【現代語訳】秋風が吹いて夜も更けていくので、天の川の川瀬に立ったり座ったりして待つのです
【採録】拾遺和歌集(しゅういわかしゅう)
【作者】紀貫之(きのつらゆき)
【補足】旧暦の 7月 7日は、新暦(現行暦)では 7月末~ 8月末の中の日付となるので、かつての七夕は秋の趣を持ったものでした。
秋の夜を 長きものとは星あひの かげ見ぬ人のいふにぞありける
【現代語訳】秋の夜が長いものだというのは、星合いの悲しさが分からない人の言うことなのだろう
【採録】後拾遺和歌集(ごしゅういわかしゅう)
【作者】能因法師(のういんほうし)
【補足】「星合(ほしあい)」とは、牽牛(けんぎゅう)と織女(しょくじょ=織姫:おりひめ)の二つの星が天の川で会うことを意味します。
朝戸あけて ながめやすらむ織女(たなばた)は あかぬ別れの空を恋ひつつ
【現代語訳】朝戸をあけて織女は眺めているのだろうか、名残り惜しい別れをした空を恋しく思いながら
【採録】後撰和歌集(ごせんわかしゅう)
【作者】紀貫之
【補足】「あけて」と「あかぬ」が対比的に詠み込まれています。
天の川 あふぎの風に霧はれて 空すみわたるかささぎの橋
【現代語訳】天の川は扇の風で霧が晴れて、空が澄わたって鵲(かささぎ)の橋も見える
【採録】拾遺和歌集(ごしゅういわかしゅう)
【作者】清原元輔( きよはらのもとすけ)
【補足】「かささぎの橋」は中国の伝説によるもので、七夕の夜に天の川にかかる橋をいい、鵲(かささぎ)の群が翼でつくるといわれています。
天の川 いと川波は立たねども さもらひ難し近きこの瀬を
【現代語訳】天の川は大きな川波は立たないけれども、近いこの瀬を訪れるのが難しいのです
【作者】山上憶良(やまのうえのおくら)
天の川 かは辺すずしきたなばたに 扇の風をなほや貸さまし
【現代語訳】天の川の川辺が涼しい七夕に、扇の風をさらに貸しましょうか
【採録】拾遺和歌集
【作者】中務(なかつかさ)
天の川 水さへに照る舟泊(は)てて 舟なる人は妹(いも)と見えきや
【現代語訳】天の川は水底まで照っている。舟を泊めて舟人は恋人と会ったのだろうか
【作者】柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)
狩り暮らし 七夕つめに宿からむ 天の川原に我は来にけり
【現代語訳】狩りをして日が暮れたから七夕姫に宿を借りよう。天の川の河原に私は来てしまったから
【採録】古今和歌集(こきんわかしゅう)
【作者】在原業平(ありわらのなりひら)
【補足】「たなばたつめ(棚機つ女)」は、はたを織る女性を意味します。
こよひ来む 人には逢はじ七夕の ひさしきほどに待ちもこそすれ
【現代語訳】今夜来る人には会うのをやめよう。七夕の話のように長いこと待つようになってしまうから。
【採録】古今和歌集
【作者】素性法師(そせいほうし)
袖ひちて 我が手にむすぶ水のおもに 天つ星合の空を見るかな
【現代語訳】袖を濡らして私が手にすくった水に、天上の星が出会う空が映っているなあ
【採録】新古和歌集
【作者】藤原長能(ふじわらのながよし、ながとう)
織女(たなばた)し 船乗りすらし真澄鏡(まそかがみ) きよき月夜に雲たちわたる
【現代語訳】織女が船に乗ったらしい。真澄鏡のように清らかな月夜に雲が出てきた
【採録】家持歌日記
【作者】大伴家持(おおとものやかもち)
【補足】真澄鏡とは、くもりなく澄んでいる鏡のことです。
たなばたに かしつる糸の うちはへて 年の緒ながく恋ひやわたらむ
【現代語訳】織女にお供えした糸のように、長い年月にわたる恋となるのだろうか
【採録】古今和歌集
【作者】凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)
たなばたの たえぬ契りをそへんとや 羽をならぶる鵲の橋
【現代語訳】織女のいつまでも続く契りを添えようというのだろうか、羽を並べて橋をつくる鵲は
【作者】藤原俊成(ふじわらのとしなり)
たなばたの とわたる舟の梶の葉に いく秋書きつ露の玉づさ
【現代語訳】七夕に(天の川)を渡る舟の梶の葉に何度も秋には書いた、露のような手紙を
【採録】新古今和歌集
【作者】藤原俊成
礫(たぶて)にも 投げ越しつべき天の川 隔てればかもあまたすべなき
【現代語訳】小石でもなげれば越えられそうな天の川でも、隔てれらているから全く(会う)手段がない
【作者】山上憶良
契りけん 心ぞつらき織女の 年にひとたびあふはあふかは
【現代語訳】契ったのであろう心が辛い織女が、年に一度会うのは会うといえるだろうか
【作者】藤原興風(ふじわらのおきかぜ)
ちはやぶる 神も見まさば立ちさわぎ 天の戸川の樋口あけたまへ
【現代語訳】神様も(日照りを)ご覧になったら、急いで天の川の水の出口をあけて下さい
【作者】小野小町(おののこまち)
【補足】「ちはやぶる」は「神」の枕詞(まくらことば)です。「天の戸川」は天の川と同意です。
照る月の ながるる見れば天の川 いづる湊は海にぞありける
【現代語訳】照る月が流れているのを見ると、天の川が出てくる港は海にあったのだなあ
【採録】後撰和歌集
【作者】紀貫之
年ごとに あふとはすれど織女の 寝る夜の数ぞすくなかりける
【現代語訳】毎年会ってはいるけれど、織女が寝る夜の数は少ないのだなあ
【作者】凡河内躬恒
ながむらん 空をだに見ず七夕に あまるばかりの我が身と思へば
【現代語訳】七夕の空であっても眺めたくありません。余るほどの(想いがある)私のことを考えると
【採録】和泉式部集
【作者】和泉式部(いずみしきぶ)
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