梅の短歌 75選 -うめ-
古くから梅の花は、数多くの和歌に詠まれているように、人々にとても愛されてきました。
今では「花」といえば桜を指すことも多くなっていますが、万葉の時代には「花=梅」という認識が一般的なものでした。
このページには、「梅の短歌」としてふさわしいものを集めました。これらは梅の花が持つ風情が強く感じられるものばかりなので、是非とも鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 梅の短歌 75選
- 1.1 蒼空を 御笠とけせる御仏の み前の庭に梅の花さく
- 1.2 秋風の はつかに吹けばいちはやく 梅の落葉はあさにけに散る
- 1.3 あさゝらず 立ち掃く庭に散りしける 梅の落葉に秋の雨ふる
- 1.4 尼君の 山のころものねずみ色に さてもたふとししら梅の花
- 1.5 鶯の なく声たえし梅園の おぼろ月夜に笛のねぞする
- 1.6 うつつなき 病床にありて白うめを 見るよろこびのかすかに動く
- 1.7 馬に乗り 湯どころ来つつ白梅の ととのふ春にあひにけるかも
- 1.8 梅が枝に 始めてきなく鶯の 春をしらする法の一聲
- 1.9 梅が香に 人なつかしきこのごろと われまづかきぬ京へやる文
- 1.10 梅咲きぬ 鮎も上りぬ早く来と 文書きてよこす多摩の里人
- 1.11 梅にしのぶ 頭巾なさけの水浅黄 浪速は闇の宵の曾根崎
- 1.12 梅の木かげの かわける砂に蟻地獄 こもるも寂し夏さりにける
- 1.13 梅の花 うすくれなゐにひろがりし その中心にてもの栄ゆるらし
- 1.14 梅の花 紙屑めきて枝に見ゆ われのこころのこのごろに似て
- 1.15 梅の花 さかぬ垣根もなかりけり みちおもしろき春の此頃
- 1.16 梅の花 さやかに白く空蒼く つちはしめりて園しづかなり
- 1.17 椽側に 置きし小瓶に花売が いけてくれたるまばら白梅
- 1.18 おなじくは 朧月夜のかげながら そへてを折らんそのゝ梅がえ
- 1.19 おぼろおぼろ 月はかすみて我が岡の 梅遠じろくみゆる夜半かな
- 1.20 風にだに 匂ひを残せ梅の花 ちりての後も人かとはなん
- 1.21 葛飾の 梅咲く春を見に行かむ たどきも知らず一人こもり居
- 1.22 鎌倉に わが来て見れば宮も寺も 賤の藁屋も梅咲きにけり
- 1.23 神業と 清くたふとき梅の花に 親むあひだ生けりとおもほゆ
- 1.24 木木の芽の 芽ぐみつのぐみ白梅の 花はいよいよ褪せはてにけり
- 1.25 きさらぎや 起きいでて縁に立つ朝の つかれにさびし白梅の花
- 1.26 木のもとに 梅はめば酸しをさな妻 ひとにさにづらふ時たちにけり
- 1.27 九十九里の 波の遠音や降り立てば 寒き庭にも梅咲きにけり
- 1.28 くれなゐの 梅はよろしもあらたまの 年の始に見ればよろしも
- 1.29 暮れぬとて 帰りし友のをしきかな 梅の林は月になりしを
- 1.30 公園に 入れば先づ見ゆ白梅の 塵にまみれて咲けるはつ花
- 1.31 公園の 白けわたれる砂利みちを ゆき行き見たり白梅の花
- 1.32 紅梅に 来居る鶯鳴きやめて やがてぞ下りぬ水鉢の上に
- 1.33 紅梅の 咲けども鎖す片折戸 狂女すむ宿ときくはまことか
- 1.34 紅梅の 咲ける野茶屋に茶を乞へば 茶いまだわかず餅ありといふ
- 1.35 紅梅の 花にふりけるあわ雪は 水をふくみて解けそめにけり
- 1.36 衣を干す 庭にぞ来つる鶯の 紅梅に鳴かず竹竿に鳴く
- 1.37 されば君 梅はつめたき花の名よ 恋は名にあらずなさけと聞きし
- 1.38 品川の いり江をわたる春雨に 海苔干す垣に梅のちる見ゆ
- 1.39 しばしのま 生くるもがきを免れ出でて 梅のはるべに息づく我れは
- 1.40 白梅の 老木のかげのくつきりと 動かぬ芝にたんぽぽ咲けり
- 1.41 しら梅の 夕のしづく苔にしみて ふとさめまさむ夢ならばとも
- 1.42 しら梅の 雪のしづくと君いふか 皆くれなゐの涙とおもふに
- 1.43 白き羽の 鶴のひとむら先づ過ぎぬ 梅に夜ゆく神のおはすよ
- 1.44 棚橋に 駒立てをれば薄月夜 梅がか遠く匂ふ夕暮れ
- 1.45 渓川に あふるる水の匂ひして 山の恋しきしら梅の花
- 1.46 月ケ瀬の 旅籠屋に著きしおもひふかし 土間の手桶にしら梅の枝
- 1.47 つくづくと 憂にこもる人あらむ このきさらぎの白梅の花
- 1.48 劔うつ 小鍛冶が槌の音冴えて 稲荷の梅の眞白に散る
- 1.49 手習の 草紙干すなる寺子屋の 庭の紅梅花咲きにけり
- 1.50 戸のあおく 待つ間もさむき軒の月 ひかり照りそふ白梅のはな
- 1.51 汝がこのむ 梅の花うゑ汝がこのむ 春の水まくうぐひすの塚
- 1.52 名にしおふ 小梅の里にかぐはしき 名をや聞きつつ見ずもこふらむ
- 1.53 並み立てる 椎の梢に風見えて 白梅のはないよよ白きかも
- 1.54 野の道に 咲ける白梅善き人の あたり見まはして枝折りて行く
- 1.55 花いけに いけなんとする紅梅の あたら莟の玉をこぼしつ
- 1.56 春雨に 梅が散りしく朝庭に 別れむものかこの夜過ぎなば
- 1.57 春雨の 露おきむすぶ梅の木に 日のさすほどの面白き朝
- 1.58 春をわれ しら梅の花に恨あり などか風情の君に及ばぬ
- 1.59 人も居らず 女机の硯箱 紅梅さしぬ水入の水に
- 1.60 一人居て 幽暗の世の鬼かとも 身の思はれぬしら梅の花
- 1.61 更くるまで 雨戸をあけて月にむかふ 旅のやどりの軒のしら梅
- 1.62 文寫す 窓の紅梅咲きそめて 紅うつる薄様の上に
- 1.63 古池に 藻の草ふかく沈みたり 寒けくもあるか白梅の花
- 1.64 俎の 魚いきいきと眼をあけり 暮れ蒼みたる梅雨の厨に
- 1.65 都近く 世を隠れ住む草の戸に 柳は植ゑず梅植ゑてけり
- 1.66 見わたしの 林はかすむ春雨に 野みちしめりて梅が香ぞする
- 1.67 睦月七日 寺島村によぎりきて 雪かさきたる梅あるをみつ
- 1.68 山くぼの 畑のなかに茅家を かくむ白梅日は暮れむとす
- 1.69 山の岩に 野ずゑの水にさきなれて 花つめたきは梅のさがなり
- 1.70 闇の夜の 御肩に袖にちるや梅 路ぬかるみて狭き曾根崎
- 1.71 夕されば 東の峯に月いでて 窓にうつれる庭の白梅
- 1.72 雪降りて 寒くはあれど梅の花 散らまく惜しみ出で ゝ來にけり
- 1.73 夜の目にも 峡の家あひ梅おほし 匂のこもる月かげの靄
- 1.74 我が庭の 梅の落葉に降る雨の 寒き夕にこほろぎのなく
- 1.75 わたつみの 死の島の風通ひ来て ちり行くごとししら梅の花
梅の短歌 75選
蒼空を 御笠とけせる御仏の み前の庭に梅の花さく
【作者】伊藤左千夫(いとう さちお)
秋風の はつかに吹けばいちはやく 梅の落葉はあさにけに散る
【作者】長塚 節(ながつか たかし)
あさゝらず 立ち掃く庭に散りしける 梅の落葉に秋の雨ふる
【作者】長塚 節
尼君の 山のころものねずみ色に さてもたふとししら梅の花
【作者】与謝野鉄幹(よさの てっかん)
鶯の なく声たえし梅園の おぼろ月夜に笛のねぞする
【作者】樋口一葉(ひぐち いちよう)
うつつなき 病床にありて白うめを 見るよろこびのかすかに動く
【作者】中村憲吉(なかむら けんきち)
馬に乗り 湯どころ来つつ白梅の ととのふ春にあひにけるかも
【作者】斎藤茂吉(さいとう もきち)
梅が枝に 始めてきなく鶯の 春をしらする法の一聲
【作者】正岡子規(まさおか しき)
梅が香に 人なつかしきこのごろと われまづかきぬ京へやる文
【作者】与謝野鉄幹
梅咲きぬ 鮎も上りぬ早く来と 文書きてよこす多摩の里人
【作者】正岡子規
梅にしのぶ 頭巾なさけの水浅黄 浪速は闇の宵の曾根崎
【作者】与謝野晶子(よさの あきこ)
梅の木かげの かわける砂に蟻地獄 こもるも寂し夏さりにける
【作者】斎藤茂吉
梅の花 うすくれなゐにひろがりし その中心にてもの栄ゆるらし
【作者】斎藤茂吉
梅の花 紙屑めきて枝に見ゆ われのこころのこのごろに似て
【作者】若山牧水(わかやま ぼくすい)
梅の花 さかぬ垣根もなかりけり みちおもしろき春の此頃
【作者】樋口一葉
梅の花 さやかに白く空蒼く つちはしめりて園しづかなり
【作者】伊藤左千夫
椽側に 置きし小瓶に花売が いけてくれたるまばら白梅
【作者】正岡子規
おなじくは 朧月夜のかげながら そへてを折らんそのゝ梅がえ
【作者】樋口一葉
おぼろおぼろ 月はかすみて我が岡の 梅遠じろくみゆる夜半かな
【作者】樋口一葉
風にだに 匂ひを残せ梅の花 ちりての後も人かとはなん
【作者】正岡子規
葛飾の 梅咲く春を見に行かむ たどきも知らず一人こもり居
【作者】長塚 節
鎌倉に わが来て見れば宮も寺も 賤の藁屋も梅咲きにけり
【作者】正岡子規
神業と 清くたふとき梅の花に 親むあひだ生けりとおもほゆ
【作者】伊藤左千夫
木木の芽の 芽ぐみつのぐみ白梅の 花はいよいよ褪せはてにけり
【作者】若山牧水
きさらぎや 起きいでて縁に立つ朝の つかれにさびし白梅の花
【作者】若山牧水
木のもとに 梅はめば酸しをさな妻 ひとにさにづらふ時たちにけり
【作者】斎藤茂吉
九十九里の 波の遠音や降り立てば 寒き庭にも梅咲きにけり
【作者】伊藤左千夫
くれなゐの 梅はよろしもあらたまの 年の始に見ればよろしも
【作者】斎藤茂吉
暮れぬとて 帰りし友のをしきかな 梅の林は月になりしを
【作者】樋口一葉
公園に 入れば先づ見ゆ白梅の 塵にまみれて咲けるはつ花
【作者】若山牧水
公園の 白けわたれる砂利みちを ゆき行き見たり白梅の花
【作者】若山牧水
紅梅に 来居る鶯鳴きやめて やがてぞ下りぬ水鉢の上に
【作者】正岡子規
紅梅の 咲けども鎖す片折戸 狂女すむ宿ときくはまことか
【作者】正岡子規
紅梅の 咲ける野茶屋に茶を乞へば 茶いまだわかず餅ありといふ
【作者】正岡子規
紅梅の 花にふりけるあわ雪は 水をふくみて解けそめにけり
【作者】島木赤彦(しまき あかひこ)
衣を干す 庭にぞ来つる鶯の 紅梅に鳴かず竹竿に鳴く
【作者】正岡子規
されば君 梅はつめたき花の名よ 恋は名にあらずなさけと聞きし
【作者】与謝野鉄幹
品川の いり江をわたる春雨に 海苔干す垣に梅のちる見ゆ
【作者】長塚 節
しばしのま 生くるもがきを免れ出でて 梅のはるべに息づく我れは
【作者】伊藤左千夫
白梅の 老木のかげのくつきりと 動かぬ芝にたんぽぽ咲けり
【作者】若山牧水
【補足】「老木」の読み方は「おいき」です。
しら梅の 夕のしづく苔にしみて ふとさめまさむ夢ならばとも
【作者】与謝野鉄幹
しら梅の 雪のしづくと君いふか 皆くれなゐの涙とおもふに
【作者】与謝野鉄幹
白き羽の 鶴のひとむら先づ過ぎぬ 梅に夜ゆく神のおはすよ
【作者】与謝野鉄幹
棚橋に 駒立てをれば薄月夜 梅がか遠く匂ふ夕暮れ
【作者】正岡子規
渓川に あふるる水の匂ひして 山の恋しきしら梅の花
【作者】与謝野晶子
【補足】「渓川」の読み方は「たにがわ」です。
月ケ瀬の 旅籠屋に著きしおもひふかし 土間の手桶にしら梅の枝
【作者】中村憲吉
つくづくと 憂にこもる人あらむ このきさらぎの白梅の花
【作者】斎藤茂吉
劔うつ 小鍛冶が槌の音冴えて 稲荷の梅の眞白に散る
【作者】正岡子規
手習の 草紙干すなる寺子屋の 庭の紅梅花咲きにけり
【作者】正岡子規
戸のあおく 待つ間もさむき軒の月 ひかり照りそふ白梅のはな
【作者】中村憲吉
汝がこのむ 梅の花うゑ汝がこのむ 春の水まくうぐひすの塚
【作者】与謝野鉄幹
【補足】「汝」の読み方は「な」です。
名にしおふ 小梅の里にかぐはしき 名をや聞きつつ見ずもこふらむ
【作者】正岡子規
並み立てる 椎の梢に風見えて 白梅のはないよよ白きかも
【作者】若山牧水
野の道に 咲ける白梅善き人の あたり見まはして枝折りて行く
【作者】正岡子規
花いけに いけなんとする紅梅の あたら莟の玉をこぼしつ
【作者】正岡子規
春雨に 梅が散りしく朝庭に 別れむものかこの夜過ぎなば
【作者】長塚 節
春雨の 露おきむすぶ梅の木に 日のさすほどの面白き朝
【作者】長塚 節
春をわれ しら梅の花に恨あり などか風情の君に及ばぬ
【作者】与謝野鉄幹
人も居らず 女机の硯箱 紅梅さしぬ水入の水に
【作者】正岡子規
一人居て 幽暗の世の鬼かとも 身の思はれぬしら梅の花
【作者】与謝野晶子
更くるまで 雨戸をあけて月にむかふ 旅のやどりの軒のしら梅
【作者】中村憲吉
文寫す 窓の紅梅咲きそめて 紅うつる薄様の上に
【作者】正岡子規
古池に 藻の草ふかく沈みたり 寒けくもあるか白梅の花
【作者】島木赤彦
俎の 魚いきいきと眼をあけり 暮れ蒼みたる梅雨の厨に
【作者】島木赤彦
都近く 世を隠れ住む草の戸に 柳は植ゑず梅植ゑてけり
【作者】正岡子規
見わたしの 林はかすむ春雨に 野みちしめりて梅が香ぞする
【作者】樋口一葉
睦月七日 寺島村によぎりきて 雪かさきたる梅あるをみつ
【作者】長塚 節
山くぼの 畑のなかに茅家を かくむ白梅日は暮れむとす
【作者】中村憲吉
山の岩に 野ずゑの水にさきなれて 花つめたきは梅のさがなり
【作者】与謝野鉄幹
闇の夜の 御肩に袖にちるや梅 路ぬかるみて狭き曾根崎
【作者】与謝野晶子
夕されば 東の峯に月いでて 窓にうつれる庭の白梅
【作者】正岡子規
雪降りて 寒くはあれど梅の花 散らまく惜しみ出で ゝ來にけり
【作者】長塚 節
夜の目にも 峡の家あひ梅おほし 匂のこもる月かげの靄
【作者】中村憲吉
我が庭の 梅の落葉に降る雨の 寒き夕にこほろぎのなく
【作者】長塚 節
わたつみの 死の島の風通ひ来て ちり行くごとししら梅の花
【作者】与謝野晶子
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