夢の俳句 30選 -泡影-
夢というものは不思議なもので、目が覚めてから「何故こんな夢を見たのだろう」と感じることもしばしばあります。
また、とても楽しい夢だった気がするけれども内容をほとんど覚えていなくて悔しい、といったもどかしい思いをすることも多いのが夢の特徴といえるかもしれません。
そして、そのような夢の不思議さやもどかしさを表現している俳句も数多くあります。
このページには、夢の俳句といえるようなものを集めました。夢について共感を覚えるような俳句も多いので、是非チェックしてみて下さい。
目次
- 1 夢の俳句 30選
- 1.1 覚めぎはに 何か初夢 見しごとし
- 1.2 初夢に 一寸法師 流れけり
- 1.3 初夢に 古郷を見て 涙哉
- 1.4 初夢に 見たり返らぬ 日のことを
- 1.5 初夢の うきはしとかや 渡りゆく
- 1.6 初夢の 扇ひろげし ところまで
- 1.7 初夢の 思ひしことを 見ざりける
- 1.8 初夢の なくて紅とく およびかな
- 1.9 初夢の ほのぼのと子に 遠きかな
- 1.10 初夢の 煩悩穢れ なかりけり
- 1.11 はつゆめや おぼえてゐたき こと一つ
- 1.12 初夢や 金も拾はず 死にもせず
- 1.13 初夢や 額にあつる 扇子より
- 1.14 初夢を 言ひあふに死の 一語あり
- 1.15 初夢を 話しゐる間に 忘れけり
- 1.16 足しびれて 邯鄲の昼寐 夢さめぬ
- 1.17 うつくしい 夢見直すや 花の春
- 1.18 切られたる 夢は誠か 蚤(のみ)の跡
- 1.19 声あげて 夢の師とあふ 春霰
- 1.20 僧坊の 昼寝牡丹を 夢にせる
- 1.21 旅に病んで 夢は枯野を かけ廻る
- 1.22 夏草や 兵共が ゆめの跡
- 1.23 春の夢 つづき煌たり 疲れたり
- 1.24 春の夢 みてゐて瞼 ぬれにけり
- 1.25 ほの~と 鶴を夢みて 明の春
- 1.26 湯の村や 夢ばかりなる 春のゆき
- 1.27 夢涼し 白蓮ゆらぐ 枕上
- 1.28 夢殿の 夢の扉を 初日敲つ
- 1.29 夢人の 裾をつかめば 納豆哉
- 1.30 吾妹子(わぎもこ)を 夢みる春の 夜となりね
夢の俳句 30選
夢について詠んだもの、「夢」が含まれているものを 30句選びました。
前半には「初夢」を詠んだ句を集めています。なお、初夢は冬(新年)の季語です。後半の句は、先頭の文字によって五十音順に並べています。
覚めぎはに 何か初夢 見しごとし
【作者】原 石鼎(はら せきてい)
【関連項目】
初夢に 一寸法師 流れけり
【作者】秋元不死男(あきもと ふじお)
【補足】私たちが知る一寸法師の話は、鎌倉時代末から江戸時代に成立した『御伽草子(おとぎぞうし)』にあるものが元になっています。
初夢に 古郷を見て 涙哉
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
【補足】一茶が32歳のときに詠んだ句といわれています。
初夢に 見たり返らぬ 日のことを
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
初夢の うきはしとかや 渡りゆく
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
【補足】夢の浮橋とは、夢の中の通い路のことで、はかないものの例えとしても使われます。また、『源氏物語』の第54帖の題名にもなっています。
初夢の 扇ひろげし ところまで
【作者】後藤夜半(ごとう やはん)
【補足】扇子の形は「末広がり」に通ずるので縁起のよいものとされています。
初夢の 思ひしことを 見ざりける
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【補足】古くから「一富士 二鷹 三茄子」が縁起の良い初夢と言われてきました。
初夢の なくて紅とく およびかな
【作者】三橋鷹女(みつはし たかじょ)
【補足】「および」とは、指のことです。
初夢の ほのぼのと子に 遠きかな
【作者】中村汀女(なかむら ていじょ)
初夢の 煩悩穢れ なかりけり
【作者】富安風生(とみやす ふうせい)
はつゆめや おぼえてゐたき こと一つ
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
【補足】万太郎は次の句も残しています。
はつゆめの せめては末の よかりけり
初夢や 金も拾はず 死にもせず
【作者】夏目漱石(なつめ そうせき)
初夢や 額にあつる 扇子より
【作者】宝井其角(たからい きかく)
【補足】「あつる」とは、当てるの意です。
初夢を 言ひあふに死の 一語あり
【作者】皆吉爽雨(みなよし そうう)
初夢を 話しゐる間に 忘れけり
【作者】星野立子(ほしの たつこ)
足しびれて 邯鄲の昼寐 夢さめぬ
【季語】昼寐-夏
【作者】正岡子規
【補足】「邯鄲(かんたん)の夢」は、中国の唐時代の小説『枕中記(ちんちゅうき)』に由来する言葉で、人の栄枯盛衰は夢に過ぎないと、その儚さを表します。
同義の言葉として、「邯鄲の枕」、「黄粱の夢」、「一炊の夢」、「黄粱の一炊」など数多くのものがあります。
うつくしい 夢見直すや 花の春
【季語】花の春
【作者】加賀千代女 (かがのちよじょ)
切られたる 夢は誠か 蚤(のみ)の跡
【季語】蚤-夏
【作者】宝井其角(たからい きかく)
【補足】この句をめぐって、其角の師である松尾芭蕉は「かれは定家の卿也。さしてもなき事を、ことごとしくいひつらね侍る。(彼は藤原定家卿だ。ささいな事を、大層なように表現する。)」と評しています。
声あげて 夢の師とあふ 春霰
【季語】春霞
【作者】加藤楸邨(かとう しゅうそん)
僧坊の 昼寝牡丹を 夢にせる
【季語】昼寝-夏
【作者】大野林火(おおの りんか)
旅に病んで 夢は枯野を かけ廻る
【季語】枯野-冬
【作者】松尾芭蕉(まつお ばしょう)
【補足】この句は、芭蕉の最後の創作と言われています。
夏草や 兵共が ゆめの跡
【季語】夏草
【作者】松尾芭蕉
【補足】奥の細道の終点となる平泉(ひらいずみ)で詠んだ句といわれています。
春の夢 つづき煌たり 疲れたり
【季語】春の夢
【作者】中村草田男(なかむら くさたお)
春の夢 みてゐて瞼 ぬれにけり
【季語】春の夢
【作者】三橋鷹女
ほの~と 鶴を夢みて 明の春
【季語】明の春
【作者】尾崎紅葉(おざき こうよう)
湯の村や 夢ばかりなる 春のゆき
【季語】春のゆき
【作者】幸田露伴(こうだ ろはん)
夢涼し 白蓮ゆらぐ 枕上
【季語】涼し-夏
【作者】芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ)
夢殿の 夢の扉を 初日敲つ
【季語】初日-冬
【作者】中村草田男
【補足】法隆寺の夢殿(ゆめどの)には秘仏救世観音像が安置されています。聖徳太子を供養するための殿堂です。
夢人の 裾をつかめば 納豆哉
【季語】納豆-冬
【作者】服部嵐雪(はっとり らんせつ)
吾妹子(わぎもこ)を 夢みる春の 夜となりね
【季語】春の夜
【作者】夏目漱石
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