百人一首の「冬の歌」 6首 - ふゆ -
百人一首に収められた歌の中で「冬の歌」といわれるものは少なく、一般的に 6首とされています。
これらには「雪」や「白」という字句が含まれるものが多く、いずれも冬の印象的な風景が詠まれています。特に山部赤人の「田子の浦に…」の歌は有名であり、百人一首を代表する歌といってもよいでしょう。
このページには、百人一首の歌から「冬の歌」を選び、それぞれの派生歌も集めました。いずれの歌も名作ですので、是非ともゆっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
百人一首の「冬の歌」
朝ぼらけ 有明の月と見るまでに 吉野の里に降れる白雪
【現代語訳】
夜が明ける頃に、有明の月のように思えるほどに吉野の里に降る白雪
【歌番号】31
【作者】坂上是則(さかのうえのこれのり)
【採録】古今和歌集、定家八代抄など
【補足】
是則は三十六歌仙の一人です。
【派生歌】
み吉野の み雪ふりしく里からは 時しもわかぬ有明の空
(藤原定家:ふじわらのさだいえ)
淡路島 かよふ千鳥の鳴く声に 幾夜ねざめぬ須磨の関守
【現代語訳】
淡路島に行き来する千鳥(ちどり)の鳴く声に、幾夜目を覚ましたのだろうか、須磨の関守(せきもり=関所の番人)は
【歌番号】78
【作者】源 兼昌(みなもとのかねまさ)
【採録】金葉和歌集、定家八代抄など
【補足】
兼昌は平安時代後期の歌人です。
【派生歌】
淡路島 千鳥とわたる声ごとに 言ふかひもなく物ぞかなしき
(藤原定家)
かささぎの 渡せる橋におく霜の 白きを見れば夜ぞ更けにける
【現代語訳】
かささぎ(鵲)が(天の川に)渡すという橋に置かれた霜のような白さを見れば、夜も(すっかり)更けてしまったことだ
【歌番号】6
【作者】大伴家持(おおとものやかもち)
【採録】新古今和歌集、家持集など
【補足】
七夕の夜に織女が天の川を渡れるようにと、かささぎが翼を並べて橋を架けるという伝説にもとづいた歌です。
【派生歌】
月影の 白きを見ればかささぎの わたせる橋に霜ぞ置きにける
(源実朝:みなもとのさねとも)
心あてに 折らばや折らむ初霜の おきまどはせる白菊の花
【現代語訳】
あてずっぽうに折るならば折ってみよう、初霜と紛らわしい白菊の花を…
【歌番号】29
【作者】凡河内躬恒(おうしこうちのみつね)
【採録】古今和歌集、新撰和歌集など
【補足】
躬恒は三十六歌仙の一人で、『古今和歌集』の撰者でもあります。
【派生歌】
いづれをか わきて折るべき月影に 色みえまがふ白菊の花
(大弐三位:だいにのさんみ、紫式部の娘)
田子の浦に うち出でて見れば白妙の 富士の高嶺に雪は降りつつ
【現代語訳】
田子の浦に出てみれば、富士の高い嶺に真白い雪が降り積もっている
【歌番号】4
【作者】山部赤人(やまべのあかひと)
【採録】新古今和歌集、定家八大抄など
【補足】
赤人は奈良時代の歌人で、三十六歌仙の一人です。柿本人麻呂とともに歌聖(かせい)と呼ばれます。「富士の高嶺」とは富士山のことを意味します。
【派生歌】
田子の浦に いでましありて富士の嶺の 雪みそなはす時もあらなむ
(佐久良東雄:さくら あずまお)
山里は 冬ぞ寂しさまさりける 人目も草もかれぬと思へば
【現代語訳】
山里は冬こそ寂しさがまさるなあ、人を見ることも(なくなり)草も枯れてしまうと思えるから
【歌番号】28
【作者】源 宗于(みなもとのむねゆき)
【採録】和漢朗詠集、三十六人撰など
【補足】
宗于は三十六歌仙の一人です。
【派生歌】
山里は しらぬ人目もいまさらに 霜にかれゆく庭の冬草
(藤原為家:ふじわらのためいえ)
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