汗の俳句 30選 -あせ-
暑さが厳しい夏にあっては、どうしても汗は切り離せないものです。
そして、「汗」は俳句において夏の季語でもあり、多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、「汗」が詠まれた俳句を多く集めました。いかにも「夏」といった雰囲気に満ちた作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 汗の俳句 30選
- 1.1 いきいきと 汗老斑の 体より
- 1.2 うす汗や 行李をくゝる 力業
- 1.3 うづくまり 父の墓前に 汗おとす
- 1.4 売子たち みな美しく 汗かけり
- 1.5 合掌の ぬくさつめたさ 汗のまま
- 1.6 かんばせの 汗うつくしき 祭かな
- 1.7 くろぐろと 汗に溺るる ほくろかな
- 1.8 健康な弟 顔の汗を拭く
- 1.9 今年竹 皮剥ぐころの 汗少し
- 1.10 すでに子の 薄き貧しき 汗の胸
- 1.11 咳込むや 汗と泪に 顔濡らし
- 1.12 全身に 汗して人の 好意うく
- 1.13 千両の 石の重さや 牛の汗
- 1.14 体内に 狂へるものや 往き汗す
- 1.15 たどりきし 道さながらに 汗流る
- 1.16 たわやめや 笑みかたまけし 鼻に汗
- 1.17 乳貰ひ 戻るや汗の目をつむり
- 1.18 つかれ身の 汗冷えわたる 膚かな
- 1.19 呟けば 子が問ひかへす 汗の中
- 1.20 妻の汗 見てわが汗を 拭ひけり
- 1.21 てのひらを 見せよといはれ 汗ばみぬ
- 1.22 友ひそと 来て坐りゐし 汗ばみて
- 1.23 嘆きつゝ ひとのはだへは 汗にじむ
- 1.24 墓の地に 一滴の汗 すぐ乾く
- 1.25 働くも 遊ぶも汗が 身を濡らす
- 1.26 はなやかな 照明しかと 汗を見す
- 1.27 ほのかなる 少女のひげの 汗ばめる
- 1.28 先づ汗の 顔に親しみ 初対面
- 1.29 まつたくの ひとりの汗を 耳の裏
- 1.30 冷房や 汗のけはひもなき少女
汗の俳句 30選
「汗」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
どうぞ、ごゆっくりとご鑑賞下さい。
いきいきと 汗老斑の 体より
【作者】山口誓子(やまぐち せいし)
【補足】老斑(ろうはん=老人性色素斑:ろうじんせいしきそはん)とは、顔・手の甲・腕などにできる「しみ」のことで、「日光性色素斑」とも呼ばれています。
うす汗や 行李をくゝる 力業
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
【補足】行李(こうり)とは、竹、柳、籐などを編んでつくられた籠(かご)の一種です。力業(ちからわざ)とは、強い力にたよって行うわざ、力仕事のことをいいます。
うづくまり 父の墓前に 汗おとす
【作者】大野林火(おおの りんか)
売子たち みな美しく 汗かけり
【作者】安住 敦(あずみ あつし)
合掌の ぬくさつめたさ 汗のまま
【作者】中村草田男(なかむら くさたお)
【補足】合掌(がっしょう)とは、左右の手のひらを胸の前で合わせることをいいます。
かんばせの 汗うつくしき 祭かな
【作者】日野草城
【補足】「かんばせ」とは、「顔、顔つき、顔のようす」を意味します。
くろぐろと 汗に溺るる ほくろかな
【作者】日野草城
健康な弟 顔の汗を拭く
【作者】日野草城
今年竹 皮剥ぐころの 汗少し
【作者】鈴木真砂女(すずき まさじょ)
【補足】今年竹(ことしだけ)とは、今年生えた竹、若竹のことをいいます。
すでに子の 薄き貧しき 汗の胸
【作者】石田波郷(いしだ はきょう)
咳込むや 汗と泪に 顔濡らし
【作者】大野林火
【補足】「泪(なみだ)」は「涙」の異体字です。
全身に 汗して人の 好意うく
【作者】右城暮石(うしろ ぼせき)
千両の 石の重さや 牛の汗
【作者】正岡子規(まさおか しき)
体内に 狂へるものや 往き汗す
【作者】石塚友二(いしづか ともじ)
たどりきし 道さながらに 汗流る
【作者】大野林火
【補足】「さながらに(宛に)」とは、「そっくりそのまま、まるで」という意味です。
たわやめや 笑みかたまけし 鼻に汗
【作者】日野草城
【補足】「たわやめ(手弱女=たおやめ)」とは、たおやかな女性、 なよなよとした女性という意味です。「笑みかたまけし(笑み傾けし)」とは、「笑いを浮かべた、うれしそうににこにこした」という意味です。
乳貰ひ 戻るや汗の目をつむり
【作者】細見綾子(ほそみ あやこ)
つかれ身の 汗冷えわたる 膚かな
【作者】飯田蛇笏(いいだ だこつ)
【補足】膚(はだえ)とは、「はだ(肌、膚)」のことをいいます。
呟けば 子が問ひかへす 汗の中
【作者】加藤秋邨(かとう しゅうそん)
【補足】「呟けば」の読み方は「つぶやけば」です。
妻の汗 見てわが汗を 拭ひけり
【作者】日野草城
てのひらを 見せよといはれ 汗ばみぬ
【作者】星野麥丘人(ほしの ばくきゅうじん)
友ひそと 来て坐りゐし 汗ばみて
【作者】石塚友二
嘆きつゝ ひとのはだへは 汗にじむ
【作者】日野草城
墓の地に 一滴の汗 すぐ乾く
【作者】西東三鬼(さいとう さんき)
働くも 遊ぶも汗が 身を濡らす
【作者】右城暮石
はなやかな 照明しかと 汗を見す
【作者】中村汀女(なかむら ていじょ)
ほのかなる 少女のひげの 汗ばめる
【作者】山口誓子
先づ汗の 顔に親しみ 初対面
【作者】稲畑汀子(いなはた ていこ)
まつたくの ひとりの汗を 耳の裏
【作者】岡本 眸(おかもと ひとみ)
冷房や 汗のけはひもなき少女
【作者】日野草城
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