牡丹の俳句 30選 -ぼたん-
「立てば芍薬、すわれば牡丹、歩く姿は百合の花」という美人を形容する表現があるように、これらの花の美しさは古くから人々に愛されてきました。
この中でも、牡丹の花は「百花の王」ともいわれるほど際立った存在です。そして、俳句の季語としても多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、牡丹が詠まれた俳句の中から 30句を選びました。その美しい花の姿が目に浮かんでくるような俳句ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 牡丹の俳句 30選
- 1.1 曙に しばし風もつ 牡丹かな
- 1.2 あしたより 大地乾ける 牡丹かな
- 1.3 雨そゝぐ 光の音の 牡丹かな
- 1.4 袷着て 牡丹にむかふ あしたかな
- 1.5 いたづらに 牡丹の花の 崩れけり
- 1.6 押し花の 牡丹は白し 紙よりも
- 1.7 おほぎやうに 牡丹嗅ぐ娘の 軽羅かな
- 1.8 風だちて 花悩ましき 牡丹かな
- 1.9 かんがへて 牡丹をのぼる 蟻の列
- 1.10 きしきしと 牡丹莟を ゆるめつつ
- 1.11 是程と 牡丹の仕方 する子哉
- 1.12 芍薬を 牡丹と思ひ 誤りぬ
- 1.13 雪舟の 達磨の前の 牡丹かな
- 1.14 その寺に つきたる時の 夕牡丹
- 1.15 濡れ縁の 我に近づく 牡丹あり
- 1.16 ねたまるゝ 人の園生の ぼたん哉
- 1.17 低く居て 富貴をたもつ 牡丹哉
- 1.18 一弁を 仕舞ひ忘れて 夕牡丹
- 1.19 美服して 牡丹に媚びる 心あり
- 1.20 広庭の 牡丹や天の 一方に
- 1.21 ぼうたんの ひとつの花を 見尽さず
- 1.22 牡丹いま 活けをはりたる 鋏かな
- 1.23 牡丹切る 祭心は たかぶりぬ
- 1.24 牡丹咲き 芍薬蕾む 浮世かな
- 1.25 牡丹の句 百句作れば 死ぬもよし
- 1.26 満月の 秋のごとくに 白牡丹
- 1.27 見てゐたる 牡丹の花に さはりけり
- 1.28 めつむりて 闇きが中に 白牡丹
- 1.29 破れ傘 めきたる雨の 牡丹あり
- 1.30 累々と 色の重なる 牡丹かな
牡丹の俳句 30選
「牡丹」「ぼたん」「ぼうたん」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
なお、これらは俳句において夏の季語として扱われます。
曙に しばし風もつ 牡丹かな
【作者】松瀬青々(まつせ せいせい)
【補足】曙(あけぼの)とは、夜がほのぼのと明けてくる頃のことです。
あしたより 大地乾ける 牡丹かな
【作者】原 石鼎(はら せきてい)
【補足】この句の「あした」は「朝(あさ)」の意と解します。
雨そゝぐ 光の音の 牡丹かな
【作者】渡辺水巴(わたなべ すいは)
袷着て 牡丹にむかふ あしたかな
【作者】松岡青蘿(まつおか せいら)
【補足】袷(あわせ)とは、裏が付いた着物のことです。
いたづらに 牡丹の花の 崩れけり
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【補足】「いたづらに」は「むなしく、無駄に」という意味です。
押し花の 牡丹は白し 紙よりも
【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)
おほぎやうに 牡丹嗅ぐ娘の 軽羅かな
【作者】飯田蛇笏(いいだ だこつ)
【補足】「おほぎやうに(大仰に、大形に)」は「おおげさに」という意味です。軽羅(けいら)とは、かろやかな薄い絹布のことです。
風だちて 花悩ましき 牡丹かな
【作者】高橋淡路女(たかはし あわじじょ)
かんがへて 牡丹をのぼる 蟻の列
【作者】加藤楸邨(かとう しゅうそん)
きしきしと 牡丹莟を ゆるめつつ
【作者】山口青邨(やまぐち せいそん)
【補足】「莟」の読み方は「つぼみ」です。
是程と 牡丹の仕方 する子哉
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
【補足】仕方(しかた)とは、身振りや手まねのことです。
芍薬を 牡丹と思ひ 誤りぬ
【作者】寺田寅彦(てらだ とらひこ)
【補足】芍薬(しゃくやく)はキンポウゲ科の植物で、その花は牡丹にとてもよく似ています。
雪舟の 達磨の前の 牡丹かな
【作者】野村喜舟(のむら きしゅう)
【補足】雪舟(せっしゅう)は室町時代の禅僧で、水墨画家として活躍しました。
その寺に つきたる時の 夕牡丹
【作者】高野素十(たかの すじゅう)
濡れ縁の 我に近づく 牡丹あり
【作者】阿部みどり女
【補足】濡れ縁(ぬれえん)とは、雨戸の外側につけた縁側(えんがわ)のことです。
ねたまるゝ 人の園生の ぼたん哉
【作者】高井几董(たかい きとう)
【補足】園生(そのう)とは、植物を栽培する、囲いのある地面のことをいいます。
低く居て 富貴をたもつ 牡丹哉
【作者】炭 太祇(たん たいぎ)
【補足】富貴(ふうき)とは、富や名声などがあることを表現する言葉です。
一弁を 仕舞ひ忘れて 夕牡丹
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
【補足】「一弁」の読み方は「ひとひら」です。
美服して 牡丹に媚びる 心あり
【作者】正岡子規
【補足】「媚びる」の読み方は「こびる」です。
広庭の 牡丹や天の 一方に
【作者】与謝蕪村
ぼうたんの ひとつの花を 見尽さず
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
【補足】俳句において「牡丹(ぼたん)」は、「ぼうたん」と 4音で用いられることもあります。
牡丹いま 活けをはりたる 鋏かな
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
【補足】「活けをはりたる」は「活(い)け終わりたる」の意で、「鋏」の読み方は「はさみ」です。
牡丹切る 祭心は たかぶりぬ
【作者】前田普羅(まえだ ふら)
牡丹咲き 芍薬蕾む 浮世かな
【作者】野村喜舟
牡丹の句 百句作れば 死ぬもよし
【作者】原 石鼎
満月の 秋のごとくに 白牡丹
【作者】山口青邨
見てゐたる 牡丹の花に さはりけり
【作者】日野草城
めつむりて 闇きが中に 白牡丹
【作者】山口青邨
【補足】「闇き」の読み方は「くらき(=暗き)」です。
破れ傘 めきたる雨の 牡丹あり
【作者】阿波野青畝(あわの せいほ)
【補足】「めきたる」は「~のような」という意味です。
累々と 色の重なる 牡丹かな
【作者】野村喜舟
【補足】累々(るいるい)とは、重なり合う様子を表現する言葉です。
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