父の日の俳句 30選 -ちちのひ-
父の日は、父親に対する感謝の気持ちを、あらためて深くしてくれる良い機会です。しかし、世の認識としては、母の日より少し弱いような印象を受けてしまいます。
この「父の日」は俳句において夏の季語でもあり、多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、「父の日」が詠まれた俳句を集めました。父親に対する思いに満ちた作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 「父の日」の俳句 30選
- 1.1 朝の蚊を 逐ひつつ 病めり父の日も
- 1.2 孟蘭盆の 鬼燈父の日にも挿す
- 1.3 嘉定喰 忘れて父の 日も忘る
- 1.4 ガニ股に 歩いて今日は 父の日か
- 1.5 父の日と いふ日がありて 子が訪ひ来
- 1.6 父の日の あたりの昏さ 田へつづく
- 1.7 父の日の あらためて見る 脛なりけり
- 1.8 父の日の 贈物とて 麻パジャマ
- 1.9 父の日の 隠さうべしや 古日記
- 1.10 父の日の 竹ひと節を 加へけり
- 1.11 父の日の 父の鴉の 声を聴け
- 1.12 父の日の 夏柑湯など 浴びにけり
- 1.13 父の日の 薔薇の委曲を 尽しけり
- 1.14 父の日の 昼寝セットの プレゼント
- 1.15 父の日の 昼をふんぱつ 勝烈庵
- 1.16 父の日の びろうどの椅子 あるばかり
- 1.17 父の日の 古びてわが名 順三郎
- 1.18 父の日の ほたるぶくろが さきにけり
- 1.19 父の日の 夜に入る煖炉 赤くしぬ
- 1.20 父の日の 老後たのしむ ものに画戯
- 1.21 父の日の 若き父とも 同車せり
- 1.22 父の日の 忘れられをり 波戻る
- 1.23 父の日も 旅やわらびを 少し摘み
- 1.24 提琴に 提弓失せし 父の日よ
- 1.25 波際を 歩いて父の 日なりけり
- 1.26 母の日に 思ひ出せずに 父の日を
- 1.27 姫女苑 どこにでも咲き 父の日なり
- 1.28 日もすがら 雨意あるもよし 父の日は
- 1.29 古き帯 まきて父の日 青芒
- 1.30 落梅の 音父の日の 行方かな
「父の日」の俳句 30選
「父の日」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
どうぞ、ごゆっくりとご鑑賞下さい。
朝の蚊を 逐ひつつ 病めり父の日も
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
【補足】「逐ひつつ」の読み方は「おいつつ(=追いつつ)」です。
孟蘭盆の 鬼燈父の日にも挿す
【読み】うらぼんの ほおずきちちのひにもさす
【作者】山口誓子(やまぐち せいし)
【補足】盂蘭盆は「盂蘭盆会(うらぼんえ)」の略で、いわゆる「お盆」のことです。
嘉定喰 忘れて父の 日も忘る
【作者】百合山羽公(ゆりやま うこう)
【補足】嘉定喰(かじょうぐい:「嘉祥喰」の表記もあり)とは、16個の菓子を食べて疫病除けをする行事です。
ガニ股に 歩いて今日は 父の日か
【作者】能村登四郎(のむら としろう)
父の日と いふ日がありて 子が訪ひ来
【作者】安住 敦(あずみ あつし)
父の日の あたりの昏さ 田へつづく
【作者】長谷川双魚(はせがわ そうぎょ)
【補足】「昏さ」の読み方は「くらさ(=暗さ)」です。
父の日の あらためて見る 脛なりけり
【作者】高澤良一(たかざわ よしかず)
【補足】「脛」の読み方は「すね」です。
父の日の 贈物とて 麻パジャマ
【作者】高澤良一
父の日の 隠さうべしや 古日記
【作者】秋元不死男(あきもと ふじお)
【補足】「隠そうべしや」は「隠そうとしたのだろうか」という意味です。
父の日の 竹ひと節を 加へけり
【作者】岸風三楼(きし ふうさんろう)
父の日の 父の鴉の 声を聴け
【作者】木村蕪城(きむら ぶじょう)
【補足】「鴉」の読み方は「からす」です。
父の日の 夏柑湯など 浴びにけり
【作者】百合山羽公
【補足】「夏柑(なつかん)」は夏蜜柑(なつみかん)を略したものです。
父の日の 薔薇の委曲を 尽しけり
【読み】ちちのひの ばらのつばらをつくしけり
【作者】後藤夜半(ごとう やはん)
【補足】委曲とは、「十分なさま、くわしいさま、くわしいこと」を意味する言葉です。
父の日の 昼寝セットの プレゼント
【作者】高澤良一
父の日の 昼をふんぱつ 勝烈庵
【作者】高澤良一
【補足】勝烈庵(かつれつあん)は、神奈川・横浜にある老舗(しにせ)のレストランです。
父の日の びろうどの椅子 あるばかり
【作者】殿村莵絲子(とのむら としこ)
【補足】「びろうど(天鵞絨、ビロード)」は織物の一つです。
父の日の 古びてわが名 順三郎
【作者】岸田稚魚(きしだ ちぎょ)
【補足】「順三郎」は、岸田稚魚の本名です。
父の日の ほたるぶくろが さきにけり
【作者】安住 敦
【補足】「ほたるぶくろ(蛍袋)」はキキョウ科の多年草で、釣鐘草(つりがねそう)という別名があります。
父の日の 夜に入る煖炉 赤くしぬ
【作者】成田千空(なりた せんくう)
【補足】「煖炉」の読み方は「だんろ(=暖炉)」です。
父の日の 老後たのしむ ものに画戯
【作者】富安風生(とみやす ふうせい)
父の日の 若き父とも 同車せり
【作者】相生垣瓜人(あいおいがき かじん)
【補足】同車(どうしゃ)とは、同じ車に一緒に乗ることをいいます。
父の日の 忘れられをり 波戻る
【作者】田川飛旅子(たがわ ひりょし)
父の日も 旅やわらびを 少し摘み
【作者】堀口星眠(ほりぐち せいみん)
【補足】わらび(蕨)は、シダ植物の一種です。
提琴に 提弓失せし 父の日よ
【作者】松山足羽(まつやま あすわ)
【補足】堤琴(ていきん)とは、弦楽器のバイオリンのことです。なお本来は、胡弓(こきゅう)の一種で二弦あるいは四弦の楽器を「堤琴」といいました。
波際を 歩いて父の 日なりけり
【作者】今井杏太郎(いまい きょうたろう)
母の日に 思ひ出せずに 父の日を
【作者】右城暮石(うしろ ぼせき)
姫女苑 どこにでも咲き 父の日なり
【作者】安住 敦
【補足】姫女苑(ヒメジョオン)はキク科の植物で、白い花を咲かせる越年草です。
日もすがら 雨意あるもよし 父の日は
【作者】能村登四郎
【補足】「日もすがら」は「一日中」という意味です。雨意(うい)とは、雨が降りそうな様子・雨模様を意味します。
古き帯 まきて父の日 青芒
【作者】百合山羽公
【補足】青芒(あおすすき)とは、青々と茂った芒のことで、夏の季語です。
落梅の 音父の日の 行方かな
【作者】百合山羽公
【補足】「行方」の読み方は「ゆくえ」です。
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