「蕗の薹」の俳句 50選 -ふきのとう-
まだ雪も残っていようかという頃に、鮮やかな緑色の芽を出している蕗の薹を見つけると、いよいよ季節は春になってゆくという印象を受けます。
そして、「蕗の薹」は俳句において春の季語であり、多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、「蕗の薹」が詠まれた俳句を多く集めました。まだ浅いながらも春の雰囲気が強まってくる雰囲気に満ちた作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 「蕗の薹」の俳句 50選
- 1.1 頭出す もの皆採りし 蕗の薹
- 1.2 生きいそぎ 蕗の薹やき 焦したり
- 1.3 息の根に ふれて朝餉の 蕗の薹
- 1.4 一葉の 手紙を添へて 蕗の薹
- 1.5 梅の根や ものあり貌に 蕗の薹
- 1.6 老いぬれば 蕗の薹にも つまづきて
- 1.7 おく如く ころがる如く 蕗の薹
- 1.8 おのがじし 地を占めてをり 蕗の薹
- 1.9 かたまりて 日向を恋へり 蕗の薹
- 1.10 乾きたる 垣根の土や 蕗の薹
- 1.11 かんな屑の かろさよ蕗の薹が出た
- 1.12 このあたり 貝塚つづき 蕗の薹
- 1.13 さゝ啼や 蕗の薹はえて 二つ三つ
- 1.14 自動車の ほこり浴びても 蕗の薹
- 1.15 煎餅と 置かれて蕗の薹不興
- 1.16 杣が瞳に くれてしまひぬ 蕗の薹
- 1.17 誰彼に 無沙汰ばかりや 蕗の薹
- 1.18 つくばひに 蕗の薹のせ 忘れけり
- 1.19 包み紙 しっとり濡らし 蕗の薹
- 1.20 遠く去る ものへ風吹き 蕗の薹
- 1.21 涙目に 見ありく背戸や 蕗の薹
- 1.22 庭の辺の 初のみどりや 蕗の薹
- 1.23 伸び切りて 花と成りゐる 蕗の薹
- 1.24 梅林を 見飽きたる眼に 蕗の薹
- 1.25 母もせし 金網で焼く 蕗の薹
- 1.26 羽二重の 袖から出すや 蕗の薹
- 1.27 夙くくれし 志やな 蕗の薹
- 1.28 日あたりや 蕗より繁き 蕗の薹
- 1.29 日だまりの 茶の木のしげり 蕗の薹
- 1.30 人住むと 知るや知らずや 蕗の薹
- 1.31 蕗の薹 算段もなき 夫婦にて
- 1.32 蕗の薹 泉下の事を 語らすや
- 1.33 蕗の薹 焚火に焼きて 苦さ増す
- 1.34 蕗の薹 小さき壺の 緑かな
- 1.35 蕗の薹 摘むにはじまる 小さかもり
- 1.36 蕗の薹 出て荒れにけり 牡丹園
- 1.37 蕗の薹 泊るときめて 庭に出て
- 1.38 蕗の薹 とらず歩めり 馴れのみち
- 1.39 蕗の薹 採ることもなし 妻の死後
- 1.40 蕗の薹 煮てかんばしき 夕餉かな
- 1.41 蕗の薹 芭蕉の像の 側におく
- 1.42 蕗の薹 はたして期待 せしごとく
- 1.43 蕗の薹 花咲くほどに なりてゐし
- 1.44 蕗の薹 袋より出す 御慶かな
- 1.45 蕗の薹 二つ出てゐし 梅の下
- 1.46 蕗の薹 ふみてゆききや 善き隣
- 1.47 蕗の薹 踏みにじり去り 嫁ぐなり
- 1.48 蕗の薹 ぽこぽこ庭は 野のごとく
- 1.49 蕗の薹 味噌といふもの 少し焦げ
- 1.50 蕗の薹 見つけし今日は これでよし
「蕗の薹」の俳句 50選
「蕗の薹」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
どうぞ、ごゆっくりとご鑑賞下さい。
頭出す もの皆採りし 蕗の薹
【作者】右城暮石(うしろ ぼせき)
生きいそぎ 蕗の薹やき 焦したり
【作者】細見綾子(ほそみ あやこ)
【補足】「焦したり」の読み方は「こがしたり」です。
息の根に ふれて朝餉の 蕗の薹
【作者】細見綾子
【補足】朝餉(あさげ)とは、朝食のことです。
一葉の 手紙を添へて 蕗の薹
【作者】細見綾子
梅の根や ものあり貌に 蕗の薹
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
【補足】「貌」の読み方は「かお(=顔)」です。
老いぬれば 蕗の薹にも つまづきて
【作者】山口青邨(やまぐち せいそん)
おく如く ころがる如く 蕗の薹
【作者】山口青邨
【補足】「如く」の読み方は「ごとく(=~のようで)」です。
おのがじし 地を占めてをり 蕗の薹
【作者】石井露月(いしい ろげつ)
【補足】「おのがじし」とは「それぞれの思いのままに、めいめい」という意味です。
かたまりて 日向を恋へり 蕗の薹
【作者】山口青邨
【補足】「日向」の読み方は「ひなた」です。
乾きたる 垣根の土や 蕗の薹
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
かんな屑の かろさよ蕗の薹が出た
【作者】北原白秋(きたはら はくしゅう)
このあたり 貝塚つづき 蕗の薹
【作者】上村占魚(うえむら せんぎょ)
さゝ啼や 蕗の薹はえて 二つ三つ
【作者】村上鬼城(むらかみ きじょう)
【補足】「さゝ啼(ささなき=笹鳴き)」とは、鶯が冬に鳴声がまだ調わないで舌鼓(したつづみ)を打つように鳴くこと、また、その鳴く声のことです。
自動車の ほこり浴びても 蕗の薹
【作者】寺田寅彦(てらだ とらひこ)
煎餅と 置かれて蕗の薹不興
【作者】亀井糸游(かめい しゆう)
【補足】「煎餅」の読み方は「せんべい」です。
杣が瞳に くれてしまひぬ 蕗の薹
【作者】原 石鼎(はら せきてい)
【補足】杣(そま)とは、材木をとるために木を植えて育てる山、または、「きこり」のことです。
誰彼に 無沙汰ばかりや 蕗の薹
【作者】鈴木花蓑(すずき はなみの)
【補足】無沙汰(ぶさた)とは、訪問や文通が長く絶えていることをいいます。
つくばひに 蕗の薹のせ 忘れけり
【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)
【補足】つくばい(蹲)とは、庭に備えてある手水鉢(ちょうずばち)のことです。
包み紙 しっとり濡らし 蕗の薹
【作者】能村登四郎(のむら としろう)
遠く去る ものへ風吹き 蕗の薹
【作者】桂 信子(かつら のぶこ)
涙目に 見ありく背戸や 蕗の薹
【作者】原 石鼎
【補足】背戸(せど)とは、家の裏口や裏門のことをいいます。
庭の辺の 初のみどりや 蕗の薹
【作者】能村登四郎
伸び切りて 花と成りゐる 蕗の薹
【作者】右城暮石
梅林を 見飽きたる眼に 蕗の薹
【作者】鈴鹿野風呂(すずか のぶろ)
母もせし 金網で焼く 蕗の薹
【作者】細見綾子
羽二重の 袖から出すや 蕗の薹
【作者】井上井月(いのうえ せいげつ)
【補足】羽二重(はぶたえ)とは、絹織物(きぬおりもの)の一種です。
夙くくれし 志やな 蕗の薹
【作者】高浜虚子
【補足】「夙く」の読み方は「はやく」です。
日あたりや 蕗より繁き 蕗の薹
【作者】森 鴎外(もり おうがい)
日だまりの 茶の木のしげり 蕗の薹
【作者】室生犀星(むろう さいせい)
人住むと 知るや知らずや 蕗の薹
【作者】会津八一(あいづ やいち)
蕗の薹 算段もなき 夫婦にて
【作者】皆川白陀(みながわ はいくだ)
【補足】算段(さんだん)とは、何とか方法を考えて都合をつけることをいいます。
蕗の薹 泉下の事を 語らすや
【作者】尾崎紅葉(おざき こうよう)
【補足】泉下(せんか)とは、死んだ人が行くという地下の世界を意味します。
蕗の薹 焚火に焼きて 苦さ増す
【作者】右城暮石
【補足】「焚火」の読み方は「たきび」です。
蕗の薹 小さき壺の 緑かな
【作者】川端茅舎(かわばた ぼうしゃ)
蕗の薹 摘むにはじまる 小さかもり
【作者】皆川盤水(みなかわ ばんすい)
【補足】「摘む」の読み方は「つむ」です。
蕗の薹 出て荒れにけり 牡丹園
【作者】加藤楸邨(かとう しゅうそん)
蕗の薹 泊るときめて 庭に出て
【作者】中村汀女(なかむら ていじょ)
蕗の薹 とらず歩めり 馴れのみち
【作者】及川 貞(おいかわ てい)
蕗の薹 採ることもなし 妻の死後
【作者】右城暮石
蕗の薹 煮てかんばしき 夕餉かな
【作者】富田木歩(とみた もっぽ)
【補足】「かんばしき(芳しき)」は「かおりがいい、こうばしい」の意です。
蕗の薹 芭蕉の像の 側におく
【作者】山口青邨
【補足】「側に」の読み方は「そばに」です。
蕗の薹 はたして期待 せしごとく
【作者】岸風三楼(きし ふうさんろう)
蕗の薹 花咲くほどに なりてゐし
【作者】細見綾子
蕗の薹 袋より出す 御慶かな
【作者】細見綾子
【補足】御慶(ぎょけい)とは、「お祝い、およろこび」のことです。また、新年の挨拶(あいさつ)をいうこともあります。
蕗の薹 二つ出てゐし 梅の下
【作者】細見綾子
蕗の薹 ふみてゆききや 善き隣
【作者】杉田久女(すぎた ひさじょ)
蕗の薹 踏みにじり去り 嫁ぐなり
【作者】久米正雄(くめ まさお)
【補足】「嫁ぐ」の読み方は「とつぐ」です。
蕗の薹 ぽこぽこ庭は 野のごとく
【作者】山口青邨
蕗の薹 味噌といふもの 少し焦げ
【作者】高野素十(たかの すじゅう)
蕗の薹 見つけし今日は これでよし
【作者】細見綾子
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