銀杏の俳句 50選 -ぎんなん、いちょう-
イチョウの木は、神社や寺院の境内に植えられているのを多く見かけます。そして、大風が吹いた後に多くの銀杏(ギンナン=イチョウの実)が落ちているのは、とても秋らしい光景といえるでしょう。
この銀杏は、俳句の季語として多くの作品に取り上げられてきました。
このページには、銀杏が詠み込まれた俳句を数多く集めました。銀杏が散りばめられた秋の情景が目に浮かぶような俳句作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 銀杏の俳句 50選
- 1.1 家中が ぎんなん臭く なり雨日
- 1.2 銀杏散る 兄が駆ければ 妹も
- 1.3 銀杏散る まつたゞ中に 法科あり
- 1.4 銀杏とは どちらが古き 梅の花
- 1.5 銀杏踏みて 静かに児の 下山かな
- 1.6 いてふ葉や 止まる水にも 黄に照す
- 1.7 銀杏咲く 切支丹寺の 化粧ひ妻
- 1.8 いろいろの 紅葉の中の 銀杏哉
- 1.9 うそぶきて 銀杏腹の 曖出し
- 1.10 落葉して 北に傾く 銀杏かな
- 1.11 河童忌の 青実つけたる 銀杏の木
- 1.12 北は黄に 銀杏ぞ見ゆる 大徳寺
- 1.13 ぎんなん落つ そびらにいやに 大きな音
- 1.14 銀杏が 落ちたる後の 風の音
- 1.15 ぎんなん落つ 学生がゆき 教授ゆき
- 1.16 ぎんなんに 旅の心の 荷を下ろす
- 1.17 銀杏の あるとき水に 落つる音
- 1.18 銀杏の 熟れ落つひゞき 嵐くるらし
- 1.19 ぎんなんの 一つころがる 禰宜拾ふ
- 1.20 銀杏の 一つ拾ひに 子の加勢
- 1.21 ぎんなんの へちゃと土打つ 音すなり
- 1.22 ぎんなんの みどり子落ちて 露涼し
- 1.23 ぎんなん拾ふ 外科医にて今日 若き母
- 1.24 ぎんなんも 落るや神の 旅支度
- 1.25 ぎんなんや 黄道の巾 感じをり
- 1.26 銀杏を 洗ひしばらく 庫裡にほふ
- 1.27 ぎんなんを 匂ひて拾ふ 老らくか
- 1.28 ぎんなんを 踏み学生等 講堂に
- 1.29 ぎんなんを むいてひすいを たなごころ
- 1.30 ぎんなんを 焼きてもてなす まだぬくし
- 1.31 ぎんなんを 焼くたらちねの ほの暗し
- 1.32 ぎんなんを 焼く火に酔ひし 童かな
- 1.33 ぎんなんを 焼くゆふぐれの 雪明り
- 1.34 蹴ちらして まばゆき銀杏 落ち葉かな
- 1.35 山茶花の 垣に銀杏の 落葉哉
- 1.36 さみしらに ぎんなん剥けり 忌落し
- 1.37 下闇に 光る銀杏の 落葉かな
- 1.38 杉暗く 中に色つく 銀杏かな
- 1.39 天神様の 祭銀杏が 実を撒ける
- 1.40 天匂ふ 落ぎんなんを ふたつ踏み
- 1.41 とある日の 銀杏もみじの 遠眺め
- 1.42 ぬす人の 住まうたといふ 銀杏哉
- 1.43 歯をもつて ぎんなん割るや 日本の夜
- 1.44 光り騒ぐ ぎんなん越しの 別れの歌
- 1.45 まつさをき 穹にくひこみ 銀杏の木
- 1.46 松杉の 中に黄ばみし 銀杏哉
- 1.47 松葉杖 突いて銀杏 拾ふ人
- 1.48 宮も寺も 遠き裏町 青銀杏
- 1.49 宮守の ぎんなん莚 乾しひろぐ
- 1.50 夕日照る 時雨の森の 銀杏かな
銀杏の俳句 50選
俳句において、銀杏(ぎんなん、いちょう)は秋の季語となります。
家中が ぎんなん臭く なり雨日
【作者】高澤良一(たかざわ よしかず)
銀杏散る 兄が駆ければ 妹も
【作者】安住 敦(あずみ あつし)
銀杏散る まつたゞ中に 法科あり
【作者】山口青邨(やまぐち せいそん)
【補足】法科(ほうか)とは、大学の法学部のことをいいます。
銀杏とは どちらが古き 梅の花
【作者】正岡子規(まさおか しき)
銀杏踏みて 静かに児の 下山かな
【作者】与謝蕪村(よさ ぶそん)
【補足】「児」の読み方は「ちご」です。
いてふ葉や 止まる水にも 黄に照す
【作者】三宅嘯山(みやけ しょうざん)
銀杏咲く 切支丹寺の 化粧ひ妻
【作者】石原八束(いしはら やつか)
【補足】「化粧ひ妻」の読み方は「けわいづま」です。
いろいろの 紅葉の中の 銀杏哉
【作者】正岡子規
【補足】「哉(かな)」は詠嘆を表します。
うそぶきて 銀杏腹の 曖出し
【作者】平畑静塔(ひらはた せいとう)
【補足】「うそぶく」とは、とぼけて知らん顔をすることです。曖(おくび)は、いわゆる「げっぷ」のことです。
落葉して 北に傾く 銀杏かな
【作者】正岡子規
河童忌の 青実つけたる 銀杏の木
【作者】飯田龍太(いいだ りゅうた)
【補足】河童忌(かっぱき)とは、作家・芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ)の命日( 7月24日)のことです。
北は黄に 銀杏ぞ見ゆる 大徳寺
【作者】黒柳召波(くろやなぎ しょうは)
【補足】大徳寺(だいとくじ)は、京都にある臨済宗(りんざいしゅう)の寺院です。
ぎんなん落つ そびらにいやに 大きな音
【作者】高澤良一
【補足】「そびら」とは背中のことです。
銀杏が 落ちたる後の 風の音
【作者】中村汀女(なかむら ていじょ)
ぎんなん落つ 学生がゆき 教授ゆき
【作者】山口青邨
ぎんなんに 旅の心の 荷を下ろす
【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)
銀杏の あるとき水に 落つる音
【作者】高浜年尾(たかはま としお)
銀杏の 熟れ落つひゞき 嵐くるらし
【作者】杉田久女(すぎた ひさじょ)
ぎんなんの 一つころがる 禰宜拾ふ
【作者】山口青邨
【補足】禰宜(ねぎ)は神職の一つで、広く神職のことも意味します。
銀杏の 一つ拾ひに 子の加勢
【作者】平畑静塔
ぎんなんの へちゃと土打つ 音すなり
【作者】高澤良一
ぎんなんの みどり子落ちて 露涼し
【作者】川端茅舎(かわばた ぼうしゃ)
【補足】みどり子とは、生まれたばかりの赤ん坊のことです。
ぎんなん拾ふ 外科医にて今日 若き母
【作者】加藤楸邨(かとう しゅうそん)
ぎんなんも 落るや神の 旅支度
【作者】天野桃隣(あまの とうりん)
【補足】「旅支度」の読み方は「たびじたく」です。
ぎんなんや 黄道の巾 感じをり
【作者】岡井省二(おかい しょうじ)
【補足】黄道(こうどう)とは、地球から見た場合の太陽の運行する大円のことをいいます。
銀杏を 洗ひしばらく 庫裡にほふ
【作者】後藤比奈夫(ごとう ひなお)
【補足】庫裡(くり)とは、寺院の厨房(=台所)のことです。
ぎんなんを 匂ひて拾ふ 老らくか
【作者】平畑静塔
【補足】老らく(おいらく)とは、年を取ること、老年のことを意味します。
ぎんなんを 踏み学生等 講堂に
【作者】山口青邨
ぎんなんを むいてひすいを たなごころ
【作者】森 澄雄(もり すみを)
【補足】たなごころ(掌)とは、手のひらのことです。
ぎんなんを 焼きてもてなす まだぬくし
【作者】星野立子(ほしの たつこ)
ぎんなんを 焼くたらちねの ほの暗し
【作者】佐藤鬼房(さとう おにふさ)
【補足】たらちね(垂乳根)とは、母親のことです。
ぎんなんを 焼く火に酔ひし 童かな
【作者】永田耕衣(ながた こうい)
【補足】「童」の読み方は「わらべ、わらわ」です。
ぎんなんを 焼くゆふぐれの 雪明り
【作者】橋 閒石(はし かんせき)
蹴ちらして まばゆき銀杏 落ち葉かな
【作者】鈴木花簑(すずき はなみの)
山茶花の 垣に銀杏の 落葉哉
【作者】正岡子規
【補足】「山茶花」の読み方は「さざんか」です。
さみしらに ぎんなん剥けり 忌落し
【作者】石塚友二(いしづか ともじ)
【補足】「さみしら」とは、さびしそうな様子を表現する言葉です。「忌落し」は「いみおとし」と読みます。
下闇に 光る銀杏の 落葉かな
【作者】正岡子規
【補足】下闇(したやみ)は、木の下の暗い所のことをいいます。
杉暗く 中に色つく 銀杏かな
【作者】正岡子規
天神様の 祭銀杏が 実を撒ける
【作者】臼田亞浪(うすだ あろう)
【補足】「撒ける」の読み方は「まける」です。
天匂ふ 落ぎんなんを ふたつ踏み
【作者】秋元不死男(あきもと ふじお)
とある日の 銀杏もみじの 遠眺め
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
ぬす人の 住まうたといふ 銀杏哉
【作者】正岡子規
歯をもつて ぎんなん割るや 日本の夜
【作者】加藤秋邨(かとう しゅうそん)
光り騒ぐ ぎんなん越しの 別れの歌
【作者】楠本憲吉(くすもと けんきち)
まつさをき 穹にくひこみ 銀杏の木
【作者】桂 信子(かつら のぶこ)
【補足】「穹」の読み方は「そら」です。
松杉の 中に黄ばみし 銀杏哉
【作者】正岡子規
松葉杖 突いて銀杏 拾ふ人
【作者】高澤良一
宮も寺も 遠き裏町 青銀杏
【作者】中村草田男(なかむら くさたお)
宮守の ぎんなん莚 乾しひろぐ
【作者】石塚友二
【補足】宮守(みやもり)とは、宮の番をする人のことです。「筵」の読み方は「むしろ」です。
夕日照る 時雨の森の 銀杏かな
【作者】正岡子規
【補足】時雨(しぐれ)は、秋の末から冬の初め頃に、降ったり止んだりする小雨のことです。
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