春の月の俳句 50選 -春月-
俳句で単に「月」とした場合は秋の季語となり、他の季節では「春の月」「夏の月」「冬の月」として句に詠み込まれます。
このうち「春の月」に関するものは数も多く、好まれて使われているように感じられます。
このページには、春の月が詠まれた俳句の中から 50句を選びました。月のある春らしい情景が目に浮かぶような俳句ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 春の月の俳句 50選
- 1.1 会ふ人も もとよりあらね 春の月
- 1.2 うち仰ぐ 古き都の 春の月
- 1.3 大いなる 春の月あり 山の肩
- 1.4 大ぞらに かりがねくらし 春の月
- 1.5 大空に 春の月あり 樹々の影
- 1.6 風出でて 傾きそめぬ 春の月
- 1.7 ガラス透く 春月創が 痛み出す
- 1.8 教会の 塔の上なり 春の月
- 1.9 くらき方は けぶるがごとし はるの月
- 1.10 小蔀に 人のけはひや 春の月
- 1.11 子の言葉 こころにおきて 春の月
- 1.12 子を負へる 影に昔を 春の月
- 1.13 婚礼の 乗物多し 春の月
- 1.14 さきほどの 違へし道も 春の月
- 1.15 下町や 女もまじる 春の月
- 1.16 春月に 木登りするや 童達
- 1.17 春月の 赤きが枝に かかりけり
- 1.18 春月の 坂ゆるやかに したがへる
- 1.19 春月の さす古本を 漁りけり
- 1.20 春月の したにて村の 火事やみし
- 1.21 春月の 出たとも知らず 東山
- 1.22 春月の 照らせるときに 琴さらふ
- 1.23 春月や 謡をうたふ 僧と僧
- 1.24 春月を 浴び来し衣を 衣桁かな
- 1.25 せゝらぎの 三段ばかり 春の月
- 1.26 高楼に 鼓打つなり 春の月
- 1.27 菜畑の 風にうるめり 春の月
- 1.28 蛤を 買うて重たや 春の月
- 1.29 春の月 馬酔木の花を 照らしけり
- 1.30 春の月 枯木の中を 上りけり
- 1.31 春の月 岸にかゞみて 水を見る
- 1.32 春の月 雲洗はれし ほとりとも
- 1.33 春の月 くもりて冴えて 更けにけり
- 1.34 春の月 けふも枯木の うしろより
- 1.35 春の月 米磨ぐ音の 中に出る
- 1.36 春の月 さし入る門を ひらきけり
- 1.37 春の月 さしこむ膳の ひつそりす
- 1.38 春の月 さすがに障子 一重かな
- 1.39 春の月 さはらば雫 たりぬべし
- 1.40 春の月 城の北には 北斗星
- 1.41 春の月 簾の外に かかりけり
- 1.42 春の月 上りて暗き 波間かな
- 1.43 春の月 ふけしともなく かかやけり
- 1.44 春の月 ふたゝび昏き 行手かな
- 1.45 人影の にはかに遠し 春の月
- 1.46 人だかり した跡ぬくし 春の月
- 1.47 ひらひらと 春月の中 貝泳ぐ
- 1.48 文旦を 抱くや春月 さながらに
- 1.49 ぼろぼろと 尺八吹くや 春の月
- 1.50 松原や 夕ベの過ぎて 春の月
春の月の俳句 50選
「春の月」「春月」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
これらは、俳句において春の季語とされます。
会ふ人も もとよりあらね 春の月
【作者】中村汀女(なかむら ていじょ)
【補足】「あらね」は「いない」の意味です。
うち仰ぐ 古き都の 春の月
【作者】富安風生(とみやす ふうせい)
大いなる 春の月あり 山の肩
【作者】杉田久女(すぎた ひさじょ)
大ぞらに かりがねくらし 春の月
【作者】加藤曉台(かとう きょうたい)
【補足】「かりがね」は「かり(雁)」のことです。
大空に 春の月あり 樹々の影
【作者】前田普羅(まえだ ふら)
風出でて 傾きそめぬ 春の月
【作者】前田普羅
【補足】「傾きそめぬ」は「傾きはじめた」という意味です。
ガラス透く 春月創が 痛み出す
【作者】橋本多佳子(はしもと たかこ)
【補足】「創」の読み方は「きず」です。
教会の 塔の上なり 春の月
【作者】寺田寅彦(てらだ とらひこ)
くらき方は けぶるがごとし はるの月
【作者】加藤暁台
小蔀に 人のけはひや 春の月
【作者】内藤鳴雪(ないとう めいせつ)
【補足】小蔀(こじとみ)とは、蔀(しとみ=格子の裏に板を張った戸)のある小さい窓のことです。
子の言葉 こころにおきて 春の月
【作者】松村蒼石(まつむら そうせき)
子を負へる 影に昔を 春の月
【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)
婚礼の 乗物多し 春の月
【作者】正岡子規(まさおか しき)
さきほどの 違へし道も 春の月
【作者】中村汀女
【補足】「違へし」の読み方は「たがえし」です。
下町や 女もまじる 春の月
【作者】正岡子規
春月に 木登りするや 童達
【作者】村上鬼城(むらかみ きじょう)
【補足】「童達」の読み方は「わらべたち」です。
春月の 赤きが枝に かかりけり
【作者】久保田万太郎(くぼ まんたろう)
春月の 坂ゆるやかに したがへる
【作者】中村汀女
春月の さす古本を 漁りけり
【作者】長谷川かな女(はせがわ かなじょ)
【補足】「漁りけり」の読み方は「あさりけり」です。
春月の したにて村の 火事やみし
【作者】百合山羽公(ゆりやま うこう)
春月の 出たとも知らず 東山
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
春月の 照らせるときに 琴さらふ
【作者】山口誓子(やまぐち せいし)
【補足】「琴さらふ」は「琴を繰り返し練習する」という意味です。
春月や 謡をうたふ 僧と僧
【作者】前田普羅
【補足】「謡」の読み方は「うたい(=謡曲、うたいもの)」です。
春月を 浴び来し衣を 衣桁かな
【作者】野村喜舟(のむら きしゅう)
【補足】衣桁(いこう)とは、着物などを掛けておく家具です。
せゝらぎの 三段ばかり 春の月
【作者】西山泊雲(にしやま はくうん)
高楼に 鼓打つなり 春の月
【作者】寺田寅彦
【補足】「高楼」の読み方は「たかどの」です。
菜畑の 風にうるめり 春の月
【作者】上村占魚(うえむら せんぎょ)
【補足】「うるむ(潤む)」とは、湿りを帯びたようになることをいいます。
蛤を 買うて重たや 春の月
【作者】松本たかし(まつもと たかし)
【補足】「蛤」の読み方は「はまぐり」です。
春の月 馬酔木の花を 照らしけり
【作者】山口青邨(やまぐち せいそん)
【補足】馬酔木(あしび、あせび)は、ツツジ科の常緑低木です。
春の月 枯木の中を 上りけり
【作者】正岡子規
春の月 岸にかゞみて 水を見る
【作者】阿部みどり女
春の月 雲洗はれし ほとりとも
【作者】飯田蛇笏(いいだ だこつ)
春の月 くもりて冴えて 更けにけり
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
春の月 けふも枯木の うしろより
【作者】渡辺水巴(わたなべ すいは)
春の月 米磨ぐ音の 中に出る
【作者】大野林火(おおの りんか)
【補足】「磨ぐ」の読み方は「とぐ」です。
春の月 さし入る門を ひらきけり
【作者】久保田万太郎
春の月 さしこむ膳の ひつそりす
【作者】大野林火
春の月 さすがに障子 一重かな
【作者】松岡青蘿(まつおか せいら)
【補足】「障子」「一重」の読み方は、それぞれ「しょうじ」「ひとえ」です。
春の月 さはらば雫 たりぬべし
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
春の月 城の北には 北斗星
【作者】中村草田男(なかむら くさたお)
春の月 簾の外に かかりけり
【作者】正岡子規
【補足】「簾」の読み方は「すだれ」です。
春の月 上りて暗き 波間かな
【作者】後藤夜半(ごとう やはん)
春の月 ふけしともなく かかやけり
【作者】日野草城
春の月 ふたゝび昏き 行手かな
【作者】篠田悌二郎(しのだ ていじろう)
【補足】「昏き」「行手」の読み方は、「くらき」「ゆくて」です。
人影の にはかに遠し 春の月
【作者】高浜年尾(たかはま としお)
人だかり した跡ぬくし 春の月
【作者】桜井梅室(さくらい ばいしつ)
ひらひらと 春月の中 貝泳ぐ
【作者】平井照敏(ひらい しょうびん)
文旦を 抱くや春月 さながらに
【作者】阿波野青畝(あわの せいほ)
【補足】文旦(ぶんたん)は柑橘類の一種で、「ボンタン」「ザボン」「ジャボン」と呼ばれることもあります。
ぼろぼろと 尺八吹くや 春の月
【作者】正岡子規
松原や 夕ベの過ぎて 春の月
【作者】尾崎迷堂(おざき めいどう)
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