俳句で『月』を詠んだもの 35選 -名月- 【有名俳人の名作から厳選】
月を見ていると何かしらの思いが浮かんできて、つい時間を忘れて見入ってしまうことがあります。
月には人の心を惹きつける力があり、古くから人々は和歌、短歌、俳句などにそれを好んで詠み込んできました。
このページでは、「月」「三日月」「名月」「今日の月」などが詠み込まれた俳句を選んでご紹介しています。月をゆっくりと眺めてみたくなるような俳句ばかりなので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 『月』を詠んだ俳句 35
- 1.1 藍色の 海の上なり 須磨の月
- 1.2 暁や 夢のこなたに 淡き月
- 1.3 井戸からも ひとつ汲けり けふの月
- 1.4 今しもや さしのぼるらし けふの月
- 1.5 大空の 月の歩みの やや斜め
- 1.6 大空の 真ただ中や けふの月
- 1.7 影ちるや 葛の裏葉の 三日の月
- 1.8 影法師 月に並んで 静かなり
- 1.9 枯れ松の 頂白き 月夜かな
- 1.10 雲去れば 月の歩みの ゆるみつつ
- 1.11 雲の中の 明るさうれし 月を待つ
- 1.12 これこそは 月をあるじや 水の色
- 1.13 父のなき 子に明るさや 今日の月
- 1.14 月出でて 月の色なる 妻の髪
- 1.15 月清し 遊行のもてる 砂の上
- 1.16 月の前 しばしば望 よみがへる
- 1.17 月の山 大國主命かな
- 1.18 月はやし こずゑはあめを 持ながら
- 1.19 ともし火も 置わするるや けふの月
- 1.20 何事の 見たてにも似ず 三かの月
- 1.21 盗人の 首領歌よむ けふの月
- 1.22 遙かにも 彼方にありて 月の海
- 1.23 灯を消すや 障子の裾に 及ぶ月
- 1.24 ふしぎ也 生れた家で けふの月
- 1.25 三日月の 隙にてすゝむ 哀かな
- 1.26 三日月の 船行かたや 西の海
- 1.27 湖に うつりし月の 大きさよ
- 1.28 観ることの かなはぬ月の 裾明り
- 1.29 名月の たかだかふけて しまひけり
- 1.30 名月や 大路小路の 京の人
- 1.31 名月や 雲限りなく 敷き連ね
- 1.32 名月や 何所までのばす 富士の裾
- 1.33 名月や 松にかゝれば 松の花
- 1.34 蜀黍の 穂首になびけ 三日の月
- 1.35 山の月 さすや閂 せゝこまし
『月』を詠んだ俳句 35
俳句の文字の五十音順に並べてあります。まずは、子規の俳句からみていきましょう。
藍色の 海の上なり 須磨の月
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【補足】藍色(あいいろ)は、少し緑がかった暗い青です。
暁や 夢のこなたに 淡き月
【作者】夏目漱石(なつめ そうせき)
【補足】「こなた(此方)」は「こちら、こっち」の意と解します。
井戸からも ひとつ汲けり けふの月
【作者】横井也有(よこい やゆう)
【補足】「汲みけり」の読み方は「くみけり」です。
今しもや さしのぼるらし けふの月
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
【補足】「今しも」は「今まさに、ちょうど今」という意味です。
大空の 月の歩みの やや斜め
【作者】富安風生(とみやす ふうせい)
大空の 真ただ中や けふの月
【作者】正岡子規
影ちるや 葛の裏葉の 三日の月
【作者】杉山杉風(すぎやま さんぷう)
【補足】葛(くず)は秋の七草の一つです。裏見草(うらみぐさ)という別名もあります。
なお、秋の七草とは次の 7つをいいます。
- 女郎花(おみなえし)
- 尾花(おばな)
- 桔梗(ききょう)
- 撫子(なでしこ)
- 藤袴(ふじばかま)
- 葛(くず)
- 萩(はぎ)
影法師 月に並んで 静かなり
【作者】夏目漱石
【補足】影法師(かげぼうし)とは、物に映っている人の影のことです。
枯れ松の 頂白き 月夜かな
【作者】前田普羅(まえだ ふら)
雲去れば 月の歩みの ゆるみつつ
【作者】松本たかし(まつもと たかし)
雲の中の 明るさうれし 月を待つ
【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)
これこそは 月をあるじや 水の色
【作者】加賀千代女(かがのちよじょ)
父のなき 子に明るさや 今日の月
【作者】竹下しづの女(たけした しづのじょ)
月出でて 月の色なる 妻の髪
【作者】加藤楸邨(かとう しゅうそん)
【補足】「出でて」の読みは「いでて」です。
月清し 遊行のもてる 砂の上
【作者】松尾芭蕉(まつお ばしょう)
【補足】遊行(ゆぎょう)とは、僧が諸国を巡り歩くことをいい、行脚(あんぎゃ)と同義です。
月の前 しばしば望 よみがへる
【作者】加藤楸邨
月の山 大國主命かな
【作者】阿波野青畝(あわの せいほ)
【補足】大國主命(おおくにぬしのみこと)は、歴史書の『古事記(こじき)』『日本書紀(にほんしょき)』に登場する神の名前です。
月はやし こずゑはあめを 持ながら
【作者】松尾芭蕉
ともし火も 置わするるや けふの月
【作者】加賀千代女
何事の 見たてにも似ず 三かの月
【作者】松尾芭蕉
【補足】「見たて」とは、ある物を他の物になぞらえることをいいます。
盗人の 首領歌よむ けふの月
【作者】与謝蕪村(よさ ぶそん)
【補足】「盗人」の読みは「ぬすびと」です。
遙かにも 彼方にありて 月の海
【作者】中村草田男(なかむら くさたお)
【補足】「彼方」の読みは「かなた」です。
灯を消すや 障子の裾に 及ぶ月
【作者】阿部みどり女
【補足】「障子の裾」の読み方は「しょうじのすそ」です。
ふしぎ也 生れた家で けふの月
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
【補足】「也」の読みは「なり」です。
三日月の 隙にてすゝむ 哀かな
【作者】山口素堂(やまぐち そどう)
【補足】「哀」の読み方は「あわれ」です。
三日月の 船行かたや 西の海
【作者】炭 太祇(たん たいぎ)
湖に うつりし月の 大きさよ
【作者】星野立子(ほしの たつこ)
観ることの かなはぬ月の 裾明り
【作者】日野草城
名月の たかだかふけて しまひけり
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
名月や 大路小路の 京の人
【作者】正岡子規
【補足】「大路小路」の読みは「おおじこうじ」です。
名月や 雲限りなく 敷き連ね
【作者】高野素十(たかの すじゅう)
名月や 何所までのばす 富士の裾
【作者】加賀千代女
【補足】「何所(=何処)」の読みは「どこ」です。
名月や 松にかゝれば 松の花
【作者】松岡青蘿(まつおか せいら)
蜀黍の 穂首になびけ 三日の月
【作者】加藤暁台(かとう きょうたい)
【補足】「蜀黍」の読みは「もろこし」です。
山の月 さすや閂 せゝこまし
【作者】西山泊雲(にしやま はくうん)
【補足】閂(かんぬき)とは、門や戸をしっかりと閉めるための横木(よこぎ=バー)のことです。
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