蜩の俳句 50選 -ひぐらし-
夏の終わり頃の朝夕に聞く蜩(ひぐらし)の鳴き声は、他の蝉のものとは違って、秋の気配を少しながら感じさせてくれます。
そして、「蜩」は俳句において秋の季語でもあり、多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、「蜩」が詠まれた俳句を多く集めました。晩夏から初秋にかけての雰囲気に満ちた作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 蜩の俳句 50選
- 1.1 暁の 夢のきれぎれ 蜩も
- 1.2 一日の雨蜩に 霽れんとす
- 1.3 面白う 聞けば蜩 夕日かな
- 1.4 形見分 蜩やみて 燭灯す
- 1.5 寒いぞよ 軒の蜩 唐がらし
- 1.6 書に倦むや 蜩鳴いて 飯遅し
- 1.7 晨鐘の後蜩の声おこる
- 1.8 濁流に立ちひぐらしを 聞き分くる
- 1.9 濁流や 梅雨の蜩 こゑ止めて
- 1.10 竹藪に 蜩が鳴く 碑をめぐり
- 1.11 たちまちに 蜩の声 揃ふなり
- 1.12 妻ゐねば 蜩ないて 腹減りぬ
- 1.13 農家の子 抱けば蜩 なきにけり
- 1.14 はからずも 蜩鳴ける 門火かな
- 1.15 蜩が 余りに近き 樹に鳴けり
- 1.16 ひぐらしが 鳴いてゐるよと 心太
- 1.17 蜩が 鳴く母の忌の 末明より
- 1.18 蜩が 呼び出せし闇 妻遠し
- 1.19 蜩に 笠着て通ふ 岩湯かな
- 1.20 蜩に 固く成仏 夜泣石
- 1.21 蜩に 十日の月の ひかりそむ
- 1.22 蜩に 一すぢ長き 夕日かな
- 1.23 蜩に タベは長し 荘を去る
- 1.24 蜩に 湯加減すこし 熱きかな
- 1.25 蜩の おどろき啼くや 朝ぼらけ
- 1.26 蜩の かなしき間あり まえうしろ
- 1.27 ひぐらしの こゑのつまづく 午後三時
- 1.28 蜩の こゑ振る山に 汽車停る
- 1.29 蜩の 最後の声の 遠ざかる
- 1.30 ひぐらしの 土にしみ入る 沼明り
- 1.31 蜩の なき代りしは はるかかな
- 1.32 蜩の 鳴き安閑と してをれぬ
- 1.33 蜩の 水にをさめし 言葉かな
- 1.34 ひぐらしや うごかぬ水が 暮れてゐる
- 1.35 ひぐらしや 雲水はいま 何の刻
- 1.36 蜩や 暗しと思ふ 厨ごと
- 1.37 蜩や 茂みの中は 古き池
- 1.38 蜩や 硯の奥の 青山河
- 1.39 蜩や 僧のあとゆく 杉の道
- 1.40 蜩や 誰かに見られゐし夕餉
- 1.41 蜩や 使またせて 書く返事
- 1.42 蜩や どの道も町へ 下りゐる
- 1.43 蜩や 泊るつもりに しづ心
- 1.44 蜩や 乗あひ舟の かしましき
- 1.45 ひぐらしや 祭の笛や 時流る
- 1.46 蜩や 向ひの峯は 夕立す
- 1.47 蜩や 山の施餓鬼の日盛に
- 1.48 蜩や 夕日さし入る ガラス窓
- 1.49 蜩や 幼児は好きな 救急車
- 1.50 蜩や わが影崖に 折れ曲り
蜩の俳句 50選
「蜩」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
どうぞ、ごゆっくりとご鑑賞下さい。
暁の 夢のきれぎれ 蜩も
【作者】大野林火(おおの りんか)
一日の雨蜩に 霽れんとす
【作者】高浜年尾(たかはま としお)
【補足】「霽れんとす」の読み方は「はれんとす(=晴れんとす)」です。
面白う 聞けば蜩 夕日かな
【作者】河東碧梧桐(かわひがし へきごとう)
形見分 蜩やみて 燭灯す
【読み】かたみわけ ひぐらしやみて しょくともす
【作者】福田蓼汀(ふくだ りょうてい)
寒いぞよ 軒の蜩 唐がらし
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
書に倦むや 蜩鳴いて 飯遅し
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【補足】「倦む(うむ)」とは「あきる」という意味です。
晨鐘の後蜩の声おこる
【作者】篠田悌二郎(しのだ ていじろう)
【補足】晨鐘(じんじょう、しんしょう)とは、夜明けに鳴らす鐘(かね)のことです。
濁流に立ちひぐらしを 聞き分くる
【作者】細見綾子(ほそみ あやこ)
濁流や 梅雨の蜩 こゑ止めて
【作者】百合山羽公(ゆりやま うこう)
竹藪に 蜩が鳴く 碑をめぐり
【作者】山口青邨(やまぐち せいそん)
たちまちに 蜩の声 揃ふなり
【作者】中村汀女(なかむら ていじょ)
【補足】「揃ふ」の読み方は「そろう」です。
妻ゐねば 蜩ないて 腹減りぬ
【作者】加藤秋邨(かとう しゅうそん)
農家の子 抱けば蜩 なきにけり
【作者】百合山羽公
はからずも 蜩鳴ける 門火かな
【作者】篠田悌二郎
蜩が 余りに近き 樹に鳴けり
【作者】右城暮石(うしろ ぼせき)
ひぐらしが 鳴いてゐるよと 心太
【作者】細見綾子
【補足】「心太」の読み方は「ところてん」です。
蜩が 鳴く母の忌の 末明より
【作者】皆川白陀(みながわ はくだ)
【補足】未明(みめい)とは、夜がすっかりとは明けきらない頃のことをいいます。
蜩が 呼び出せし闇 妻遠し
【作者】香西照雄(こうざい てるお)
蜩に 笠着て通ふ 岩湯かな
【作者】金尾梅の門(かなお うめのかど)
蜩に 固く成仏 夜泣石
【作者】百合山羽公
【補足】「成仏」の読み方は「成仏」です。夜泣石(よなきいし)とは、夜になると泣き声が聞こえるという伝説をもつ石のことです。
小夜の中山夜泣石
蜩に 十日の月の ひかりそむ
【作者】川端茅舎(かわばた ぼうしゃ)
【補足】「ひかりそむ」は「光りはじめる(光り初む)」という意味です。
蜩に 一すぢ長き 夕日かな
【作者】正岡子規
蜩に タベは長し 荘を去る
【作者】稲畑汀子(いなはた ていこ)
蜩に 湯加減すこし 熱きかな
【作者】上田五千石(うえだ ごせんごく)
蜩の おどろき啼くや 朝ぼらけ
【作者】与謝蕪村(よさ ぶそん)
【補足】「啼く」の読み方は「なく(=鳴く)」です。
蜩の かなしき間あり まえうしろ
【作者】山口青邨
ひぐらしの こゑのつまづく 午後三時
【作者】飯田蛇笏(いいだ だこつ)
蜩の こゑ振る山に 汽車停る
【作者】百合山羽公
【補足】「停る」の読み方は「とまる(止まる)」です。
蜩の 最後の声の 遠ざかる
【作者】稲畑汀子
ひぐらしの 土にしみ入る 沼明り
【作者】飯田蛇笏
蜩の なき代りしは はるかかな
【作者】中村草田男(なかむら くさたお)
蜩の 鳴き安閑と してをれぬ
【作者】平井照敏(ひらい しょうびん)
蜩の 水にをさめし 言葉かな
【作者】原 裕(はら ゆたか)
ひぐらしや うごかぬ水が 暮れてゐる
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
ひぐらしや 雲水はいま 何の刻
【作者】百合山羽公
【補足】雲水(うんすい)とは、諸国を修行して歩く僧のことです。「刻」の読み方は「とき」です。
蜩や 暗しと思ふ 厨ごと
【作者】中村汀女
【補足】厨(くりや)とは、料理をするところ・台所のことをいいます。
蜩や 茂みの中は 古き池
【作者】野村喜舟(のむら きしゅう)
蜩や 硯の奥の 青山河
【作者】加藤楸邨
【補足】「硯」の読み方は「すずり」です。
蜩や 僧のあとゆく 杉の道
【作者】野村泊月(のむら はくげつ)
蜩や 誰かに見られゐし夕餉
【作者】加藤楸邨
【補足】夕餉(ゆうげ)とは、夕食・夕飯のことです。
蜩や 使またせて 書く返事
【作者】星野立子(ほしの たつこ)
蜩や どの道も町へ 下りゐる
【作者】臼田亜浪(うすだ あろう)
蜩や 泊るつもりに しづ心
【作者】高橋淡路女(たかはし あわじじょ)
蜩や 乗あひ舟の かしましき
【作者】正岡子規
【補足】「かしましい(姦しい)」とは「やかましい、そうぞうしい」の意です。
ひぐらしや 祭の笛や 時流る
【作者】百合山羽公
蜩や 向ひの峯は 夕立す
【作者】寺田寅彦(てらだ とらひこ)
【補足】「峯」の読み方は「みね(=峰)」です。
蜩や 山の施餓鬼の日盛に
【作者】北原白秋(きたはら はくしゅう)
蜩や 夕日さし入る ガラス窓
【作者】会津八一(あいづ やいち)
蜩や 幼児は好きな 救急車
【作者】長谷川かな女(はせがわ かなじょ)
蜩や わが影崖に 折れ曲り
【作者】加藤楸邨
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