榾の俳句 30選 -ほた-
炉や竈(かまど)などで焚く木の枝、木の切れ端、枯木などを「榾(ほた)」という言葉で表現することがあります。
この「榾」は俳句において冬の季語でもあり、多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、「榾」が詠まれた俳句を多く集めました。いかにも冬といった雰囲気に満ちた作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 榾の俳句 30選
- 1.1 あの頃の 榾はりんごの 枝なりし
- 1.2 老ぼれて 目も鼻もなし 榾の主
- 1.3 おとろへや 榾折かねる 膝頭
- 1.4 がたと榾 崩れて夕べ なりしかな
- 1.5 暮方の しづもりに榾 一つ足す
- 1.6 借覧す 甲子夜話あり 榾の宿
- 1.7 惜別の 榾をくべ足し くべ足して
- 1.8 そのなかに 芽の吹く榾の まじりけり
- 1.9 父と子よ よき榾くべし うれし顔
- 1.10 土間に榾 燃えて框に 客一人
- 1.11 化けさうな 茶釜もあるや 榾の宿
- 1.12 はづかしや 榾にふすぼる 煙草頬
- 1.13 ひといろの 火のゆらぎをる 榾の宿
- 1.14 人ひとり ふえてぬくとし 榾の宿
- 1.15 火の飛べば 木の名云ふなり 榾の主
- 1.16 病人に 二更の榾を 焚きにけり
- 1.17 笛吹きし 榾はひつぱり 出されけり
- 1.18 文読んで 烈火の怒り 榾を焚く
- 1.19 榾いぶり 目鼻もあらぬ 涙かな
- 1.20 榾崩れせし音 朝に響きけり
- 1.21 榾たくや 峠の茶屋に いわし売
- 1.22 榾のおき 絶え終るまで 追儺の夜
- 1.23 榾の火に 親子足さす 侘寝かな
- 1.24 榾の火に 背中あぶりや 父と母
- 1.25 榾の火に とろりと酔ひし 眼かな
- 1.26 榾の火や 風あり暗き 日本海
- 1.27 榾燃えて 又鉄瓶の 湯のたぎる
- 1.28 水のよな 月さし入りぬ 榾の宿
- 1.29 味噌焚きの 榾のくづるる 昼深し
- 1.30 老骨を 焚かんばかりに 榾の前
榾の俳句 30選
「榾」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
どうぞ、ごゆっくりとご鑑賞ください。
あの頃の 榾はりんごの 枝なりし
【作者】高木晴子(たかぎ はるこ)
老ぼれて 目も鼻もなし 榾の主
【作者】村上鬼城(むらかみ きじょう)
おとろへや 榾折かねる 膝頭
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
【補足】膝頭(ひざがしら)は、いわゆる「ひざこぞう」のことです。
がたと榾 崩れて夕べ なりしかな
【作者】稲畑汀子(いなはた ていこ)
暮方の しづもりに榾 一つ足す
【作者】上村占魚(うえむら せんぎょ)
【補足】暮方(くれがた、くれつかた)とは、夕方、日の暮れるころのことをいいます。「しづもり」は、「しずけさ、しずまっていること」を意味します。
借覧す 甲子夜話あり 榾の宿
【作者】松本たかし(まつもと たかし)
【補足】 借覧(しゃくらん)とは、書物などを借りて見ることを意味します。甲子夜話(かっしやわ)は、江戸時代後期に松浦静山(まつらせいざん)が著わした随筆集です。
惜別の 榾をくべ足し くべ足して
【作者】高野素十(たかの すじゅう)
そのなかに 芽の吹く榾の まじりけり
【作者】室生犀星(むろう さいせい)
父と子よ よき榾くべし うれし顔
【作者】炭 太祇(たん たいぎ)
土間に榾 燃えて框に 客一人
【作者】京極杞陽(きょうごく きよう)
【補足】框(かまち)とは、玄関や土間などの端に取り付ける化粧材のことです。
化けさうな 茶釜もあるや 榾の宿
【作者】尾崎紅葉(おざき こうよう)
【補足】茶釜(ちゃがま)は、茶の湯に使用する茶道具の一種で、湯を沸かすための釜です。
はづかしや 榾にふすぼる 煙草頬
【作者】上島鬼貫(うえじま おにつら)
【補足】「ふすぼる」とは、「すすける、黒ずむ」という意味です。「煙草頬」の読み方は「たばこづら」です。
ひといろの 火のゆらぎをる 榾の宿
【作者】上村占魚
人ひとり ふえてぬくとし 榾の宿
【作者】幸田露伴(こうだ ろはん)
【補足】「ぬくとし(温とし)」とは、「ぬくい、あたたかい」という意味です。
火の飛べば 木の名云ふなり 榾の主
【作者】金尾梅の門(かなお うめのかど)
病人に 二更の榾を 焚きにけり
【作者】清原枴童(きよはら かいどう)
【補足】二更(にこう)とは、現在のおよそ午後 9時から11時頃の時刻をいいます。
笛吹きし 榾はひつぱり 出されけり
【作者】阿波野青畝(あわの せいほ)
文読んで 烈火の怒り 榾を焚く
【作者】飯田蛇笏(いいだ だこつ)
榾いぶり 目鼻もあらぬ 涙かな
【作者】山口草堂(やまぐち そうどう)
榾崩れせし音 朝に響きけり
【作者】河東碧梧桐(かわひがし へきごとう)
榾たくや 峠の茶屋に いわし売
【作者】泉 鏡花(いずみ きょうか)
榾のおき 絶え終るまで 追儺の夜
【作者】百合山羽公(ゆりやま うこう)
【補足】おき(熾、燠)とは、薪(まき)などが燃えて炭火のようになったもの、赤くおこった炭火のことです。
榾の火に 親子足さす 侘寝かな
【作者】向井去来(むかい きょらい)
【補足】侘寝(わびね)とは、さびしく寝ることをいいます。
榾の火に 背中あぶりや 父と母
【作者】西山泊雲(にしやま はくうん)
榾の火に とろりと酔ひし 眼かな
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
【補足】「眼」の読み方は「まなこ」です。
榾の火や 風あり暗き 日本海
【作者】中村苑子(なかむら そのこ)
榾燃えて 又鉄瓶の 湯のたぎる
【作者】星野立子(ほしの たつこ)
【補足】鉄瓶(てつびん)は、鉄製の湯を沸かすための器具です。
水のよな 月さし入りぬ 榾の宿
【作者】金尾梅の門
味噌焚きの 榾のくづるる 昼深し
【作者】木村蕪城(きむら ぶじょう)
【補足】味噌焚き(みそたき、みそだき)とは、みそを用いた煮物のことをいいます。
老骨を 焚かんばかりに 榾の前
【作者】吉武月二郎(よしたけ つきじろう)
【補足】老骨(ろうこつ)とは、「年老いたからだ、あるいは、その人」を意味します。
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