「息白し」の俳句 50選 -白い息・白息-
冬の寒さが厳しい日に、自分の吐く息が真っ白になるのを見ると、なお一層寒さが増してくるように感じられます。
そして、「息白し」「白い息」「白息」は俳句において冬の季語でもあり、多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、これらが詠まれた俳句を多く集めました。真冬の雰囲気に満ちた作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 「息白し」の俳句 50選
- 1.1 欠伸せし 息白ければ 家思ふ
- 1.2 朝はまだ 白息からまつ 芽ぶくもと
- 1.3 ある夜わが 吐く息白く 裏切らる
- 1.4 家を出る 門を一歩の 息白し
- 1.5 息白き 吾子に別れの 手を挙ぐる
- 1.6 息白き 朝の気配は すぐ失せて
- 1.7 息白き 子のひらめかす 叡智かな
- 1.8 息白く 朝の汽罐車 みて愉し
- 1.9 息白く 生くる限りは 浄土なし
- 1.10 息白く いささか年を 取りながら
- 1.11 息白く 多くを言ふは あはれなり
- 1.12 息白く 幼子の智恵 まとひつく
- 1.13 息白く 吐きぬ欠伸の あとなれども
- 1.14 息白く 皆生きたりし 人の墓
- 1.15 息白く やさしきことを 言ひにけり
- 1.16 息白し しづかに吐いて みても白し
- 1.17 息白し 人こそ早き 朝の門
- 1.18 息白し 行く手のくらむ ごとくなり
- 1.19 息白し 夜の戸探れば ふるゝもの
- 1.20 息白し われとわが袖 かきいだき
- 1.21 今の世の 白息壺の 底に入るる
- 1.22 枯山水 見て白息を 肥しけり
- 1.23 君煙草 口になきとき 息白し
- 1.24 仰臥より 白息高く 立ち騰る
- 1.25 心見せまじく もの云へば 息白し
- 1.26 五十とや 白息吐いて きよろきよろす
- 1.27 小鼓を 打ち終はりても 息白し
- 1.28 古墳出て 白息光る 海の紺
- 1.29 最澄の 書に息あはせ 息白し
- 1.30 さし寄せし 暗き鏡に 息白し
- 1.31 燦爛と 起重機上に 白息す
- 1.32 主婦二人 一人はわかれたき白息
- 1.33 松籟や 白息互みに ながし佇つ
- 1.34 白い息 帰命頂礼 一斉に
- 1.35 白い息 一言主へ 名告りけり
- 1.36 白息と その鼻見えて おのれあり
- 1.37 白息の 浮かびては消ゆ 通夜の灯に
- 1.38 白息の かく乏しくて かく生きて
- 1.39 白息の 駿馬かくれも なき曠野
- 1.40 白息の 人をつつめる 石鼎忌
- 1.41 白息や ひらくてのひら 大きく見ゆ
- 1.42 中年の 華やぐごとく 息白し
- 1.43 地を擦つて 来たりしものら 息白し
- 1.44 包むとき 両掌をこぼれ 白き息
- 1.45 妻恋の 白息に在る 日本海
- 1.46 とどまらぬ 時空の間に 白息す
- 1.47 泣きしあと わが白息の 豊かなる
- 1.48 何おもふ 白息をふと 世に洩らし
- 1.49 橋をゆく 人悉く 息白し
- 1.50 埴輪には 白息もなし 黄泉の民
「息白し」の俳句 50選
「息白し」「白い息」「白息」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
どうぞ、ごゆっくりとご鑑賞下さい。
欠伸せし 息白ければ 家思ふ
【作者】香西照雄(こうざい てるお)
【補足】「欠伸」の読み方は「あくび」です。
朝はまだ 白息からまつ 芽ぶくもと
【作者】大野林火(おおの りんか)
ある夜わが 吐く息白く 裏切らる
【作者】加藤楸邨(かとう しゅうそん)
家を出る 門を一歩の 息白し
【作者】高浜年尾(たかはま としお)
息白き 吾子に別れの 手を挙ぐる
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
【補足】吾子(あこ、あご)とは、自分の子のことをいいます。
息白き 朝の気配は すぐ失せて
【作者】稲畑汀子(いなはた ていこ)
息白き 子のひらめかす 叡智かな
【作者】阿波野青畝(あわの せいほ)
【補足】叡智(えいち)とは、はかりしれない道理を知りうる優れた知恵のことをいいます。
息白く 朝の汽罐車 みて愉し
【作者】西島麦南(にしじま ばくなん)
【補足】「汽罐車」「愉し」の読み方は、それぞれ「きかんしゃ(=機関車)」「たのし」です。
息白く 生くる限りは 浄土なし
【作者】鈴木真砂女(すずき まさじょ)
【補足】浄土(じょうど)とは、仏がいる清らかな国のことを意味します。
息白く いささか年を 取りながら
【作者】京極杞陽(きょうごく きよう)
息白く 多くを言ふは あはれなり
【作者】殿村菟絲子(とのむら としこ)
息白く 幼子の智恵 まとひつく
【作者】松村蒼石(まつむら そうせき)
【補足】「幼子」の読み方は「おさなご」です。
息白く 吐きぬ欠伸の あとなれども
【作者】加倉井秋を(かくらい あきを)
息白く 皆生きたりし 人の墓
【作者】西島麥南
息白く やさしきことを 言ひにけり
【作者】後藤夜半(ごとう やはん)
息白し しづかに吐いて みても白し
【作者】加倉井秋を
息白し 人こそ早き 朝の門
【作者】中村汀女(なかむら ていじょ)
息白し 行く手のくらむ ごとくなり
【作者】石原八束(いしはら やつか)
息白し 夜の戸探れば ふるゝもの
【作者】長谷川かな女(はせがわ かなじょ)
息白し われとわが袖 かきいだき
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
【補足】「かきいだく(掻き抱く)」とは、「だく」を強めていう言葉です。
今の世の 白息壺の 底に入るる
【作者】加藤秋邨
枯山水 見て白息を 肥しけり
【作者】百合山羽公(ゆりやま うこう)
【補足】枯山水(かれさんすい)とは、水を使わない日本庭園の様式です。
【関連】 枯山水とは?
君煙草 口になきとき 息白し
【作者】星野立子(ほしの たつこ)
【補足】「煙草」の読み方は「たばこ」です。
仰臥より 白息高く 立ち騰る
【作者】山口誓子(やまぐち せいし)
【補足】仰臥(ぎょうが)とは、あおむけに寝ることです。「騰る」の読み方は「あがる、のぼる」です。
心見せまじく もの云へば 息白し
【作者】橋本多佳子(はしもと たかこ)
【補足】「心見せまじく」は「決して、心を見せないつもりで」の意です。
五十とや 白息吐いて きよろきよろす
【作者】石塚友二(いしづか ともじ)
小鼓を 打ち終はりても 息白し
【作者】井上 雪(いのうえ ゆき)
【補足】「小鼓」の読み方は「こつづみ」です。
古墳出て 白息光る 海の紺
【作者】角川源義(かどかわ げんよし)
最澄の 書に息あはせ 息白し
【作者】宇佐美魚目(うさみ ぎょもく)
【補足】最澄(さいちょう)は、平安時代初期の仏教僧です。
さし寄せし 暗き鏡に 息白し
【作者】中村汀女
燦爛と 起重機上に 白息す
【作者】加藤秋邨
【補足】「燦欄」の読み方は「さんらん(=美しくきらめき輝くさまを表現する言葉)」です。
主婦二人 一人はわかれたき白息
【作者】加藤秋邨
松籟や 白息互みに ながし佇つ
【作者】石田波郷(いしだ はきょう)
【補足】松籟(しょうらい)とは、松に吹く風、また、それが立てる音のことです。
白い息 帰命頂礼 一斉に
【作者】阿波野青畝
【補足】帰命頂礼(きみょうちょうらい)とは、自分の頭を仏の足につけて敬礼し、帰命(=身命を投げ出して仏の教えに従うこと)の意を表すことです。
白い息 一言主へ 名告りけり
【作者】阿波野青畝
【補足】「名告りけり」の読み方は「なのりけり」です。
白息と その鼻見えて おのれあり
【作者】能村登四郎(のむら としろう)
白息の 浮かびては消ゆ 通夜の灯に
【作者】右城暮石(うしろ ぼせき)
白息の かく乏しくて かく生きて
【作者】能村登四郎
白息の 駿馬かくれも なき曠野
【作者】飯田龍太(いいだ りゅうた)
【補足】駿馬(しゅんめ)とは、足の速い馬、すぐれた馬のことを意味します。
白息の 人をつつめる 石鼎忌
【作者】原 裕(はら ゆたか)
【補足】石鼎忌(せきていき)は、俳人・原 石鼎(はら せきてい)の忌日で 12月20日です。また、「石鼎忌」は冬の季語です。
白息や ひらくてのひら 大きく見ゆ
【作者】加藤秋邨
中年の 華やぐごとく 息白し
【作者】原 裕
【補足】「華やぐ」の読み方は「はなやぐ」です。
地を擦つて 来たりしものら 息白し
【作者】栗林千津(くりばやし ちづ)
包むとき 両掌をこぼれ 白き息
【作者】稲畑汀子
【補足】「両掌」の読み方は「りょうて(=両手)」です。
妻恋の 白息に在る 日本海
【作者】角川源義
とどまらぬ 時空の間に 白息す
【作者】岸田稚魚(きしだ ちぎょ)
泣きしあと わが白息の 豊かなる
【作者】橋本多佳子
何おもふ 白息をふと 世に洩らし
【作者】加藤秋邨
【補足】「洩らし」の読み方は「もらし」です。
橋をゆく 人悉く 息白し
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
【補足】「悉く」の読み方は「ことごとく」です。
埴輪には 白息もなし 黄泉の民
【作者】平畑静塔(ひらはた せいとう)
【補足】「埴輪」の読み方は「はにわ」です。黄泉(よみ)とは、「あの世」のことをいいます。
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