犬の俳句 50選 -いぬ-
日本で犬が飼われるようになったのは、縄文時代にさかのぼるともいわれています。
それほど古くから人々は犬と共に暮らしてきたので、俳句の世界でも、四季の風物とあわせて犬が詠み込まれてきました。
このページには、そのような俳句の中に犬が詠まれているものを集めました。犬がとても身近な存在であり、愛らしさが感じられるものばかりですので、是非ともチェックしてみて下さい。
目次
- 1 犬の俳句について
- 2 犬の俳句 50選
- 2.1 赤犬の 欠伸の先や かきつばた
- 2.2 朝がほや 垣にしづまる 犬の声
- 2.3 いつまでも 吠えゐる犬や 木槿垣
- 2.4 犬去つて むつくと起る 蒲公英が
- 2.5 犬つれて 稲見に出れば 露の玉
- 2.6 犬にうつ 石の扨なし 冬の月
- 2.7 犬に迯て 庭鳥上る 柳かな
- 2.8 犬の子の くゝと啼く也 今年竹
- 2.9 犬の子の 草に寝ねたる 熱さ哉
- 2.10 犬の子を 負ふた子供や 桃の花
- 2.11 犬吠て 枯野の伽藍 月寒し
- 2.12 犬行くや 吹雪の中に 尾を立てゝ
- 2.13 岩藤や 犬吼え立つる 橋の上
- 2.14 卯の花や 伏見へ通ふ 犬の道
- 2.15 梅が香や 山路猟入ル 犬のまね
- 2.16 うれしけに 犬の走るや 麦の秋
- 2.17 遠足に 犬つれて行く 袷かな
- 2.18 御火たきや 犬も中々 そゞろ皃
- 2.19 朧夜の 犬を恐るゝ 女かな
- 2.20 顔抱いて 犬が寝てをり 菊の宿
- 2.21 蟷螂に 負けて吼立つ 小犬かな
- 2.22 草枕 犬も時雨るか よるのこゑ
- 2.23 子をつれて 犬の出あるく 月夜哉
- 2.24 山茶花に 犬の子眠る 日和かな
- 2.25 里の子が 犬に付たる さ苗哉
- 2.26 時雨るゝや 犬の来てねる 炭俵
- 2.27 商人を 吼る犬あり もゝの花
- 2.28 少年の 犬走らすや 夏の月
- 2.29 白砂に 犬の寐ころぶ 小春哉
- 2.30 涼しさや 犬の寐に来る 蔵のかげ
- 2.31 七夕や 犬も見あぐる 天の川
- 2.32 繋がれし 犬が退屈 蝶が飛び
- 2.33 としよれば 犬も嗅ぬぞ 初袷
- 2.34 永き日や 鶏はついばみ 犬は寝る
- 2.35 寝た犬に ふはとかぶさる 一葉哉
- 2.36 羽子板を 犬咥へ来し 芝生かな
- 2.37 初蝶の 一夜寝にけり 犬の椀
- 2.38 花菫 がむしやら犬に 寝られけり
- 2.39 春風や 犬の寝聳る わたし舟
- 2.40 春風や 侍二人 犬の共
- 2.41 春を待つ 商人犬を 愛しけり
- 2.42 人うとし 雉子をとがむる 犬の声
- 2.43 煩惱の 犬も吠えけり 鉢叩
- 2.44 三日月や 枯野を歸る 人と犬
- 2.45 むく犬や 蝉鳴く方へ 口を明
- 2.46 むくと起て 雉追ふ犬や 宝でら
- 2.47 名月や ともし火白く 犬黒し
- 2.48 桃の花 隠れ家なるに 吠ゆる犬
- 2.49 山犬の がばと起ゆく すゝき哉
- 2.50 山盛の 花の吹雪や 犬の椀
犬の俳句について
このページには、犬が詠み込まれている俳句を 50句選び、句の文字の五十音順に並べました。
また、それぞれの俳句の季語・季節を記しました。
なお、古くには犬の鳴き声は「べうべう、ひよひよ」などと書き表して「ビョウビョウ」と発音していました。
犬の俳句 50選
赤犬の 欠伸の先や かきつばた
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
【季語】かきつばた - 夏
【補足】「欠伸」の読み方は「あくび」です。
朝がほや 垣にしづまる 犬の声
【作者】加舎白雄(かや しらお)
【季語】朝がほ(朝顔) - 秋
いつまでも 吠えゐる犬や 木槿垣
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
【季語】木槿 - 秋
【補足】木槿(むくげ)はアオイ科の落葉低木で、ハチスと呼ばれることもあります。
犬去つて むつくと起る 蒲公英が
【作者】夏目漱石(なつめ そうせき)
【季語】蒲公英(たんぽぽ) - 春
犬つれて 稲見に出れば 露の玉
【作者】上嶋鬼貫(うえじま おにつら)
【季語】稲、露 - 秋
犬にうつ 石の扨なし 冬の月
【作者】炭 太祇(たん たいぎ)
【季語】冬の月 - 冬
【補足】「扨」の読み方は「さて」です。
犬に迯て 庭鳥上る 柳かな
【作者】高井几董(たかい きとう)
【季語】柳 - 春
【補足】「迯て」の読み方は「にげて」です。
犬の子の くゝと啼く也 今年竹
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【季語】今年竹(ことしだけ) - 夏
【補足】「啼く」の読み方は「なく」です。
犬の子の 草に寝ねたる 熱さ哉
【作者】正岡子規
【季語】熱さ - 夏
【補足】「寝ねたる」の読み方は「いねたる」です。哉(かな)は、感動や詠嘆を表わします。
犬の子を 負ふた子供や 桃の花
【作者】正岡子規
【季語】桃の花 - 春
犬吠て 枯野の伽藍 月寒し
【作者】正岡子規
【季語】 枯野 - 冬
【補足】伽藍(がらん)とは、寺院の建物のことです。
犬行くや 吹雪の中に 尾を立てゝ
【作者】前田普羅(まえだ ふら)
【季語】吹雪(ふぶき) - 冬
岩藤や 犬吼え立つる 橋の上
【作者】村上鬼城(むらかみ きじょう)
【季語】岩藤 - 夏
【補足】「吼え」の読み方は「ほえ」です。
卯の花や 伏見へ通ふ 犬の道
【作者】小林一茶
【季語】卯の花 - 夏
梅が香や 山路猟入ル 犬のまね
【作者】向井去来(むかい きょらい)
【季語】梅が香 - 春
【補足】「猟入ル」の読み方は「かりいる」です。
うれしけに 犬の走るや 麦の秋
【作者】正岡子規
【季語】麦の秋 - 夏
遠足に 犬つれて行く 袷かな
【作者】正岡子規
【季語】袷 - 夏
【補足】袷(あわせ)とは、裏付きの着物のことです。
御火たきや 犬も中々 そゞろ皃
【作者】与謝蕪村(よさ ぶそん)
【季語】御火たき - 冬
【補足】御火たき(おひたき:御火焚)は、江戸時代から京都を中心として行われてきた神事です。「皃」の読み方は「がお(=顔)」です。
朧夜の 犬を恐るゝ 女かな
【作者】正岡子規
【季語】朧夜 - 春
【補足】朧夜(おぼろよ)とは、朧月(おぼろづき=ぼんやりとかすんだ月)の出ている夜のことをいいます。
顔抱いて 犬が寝てをり 菊の宿
【作者】高浜虚子
【季語】菊の宿 - 秋
蟷螂に 負けて吼立つ 小犬かな
【作者】村上鬼城
【季語】蟷螂 - 秋
【作者】「蟷螂」の読み方は「とうろう(=かまきり)」です。
草枕 犬も時雨るか よるのこゑ
【作者】松尾芭蕉(まつお ばしょう)
【季語】時雨る(しぐるる) - 冬
【補足】草枕(くさまくら)とは、旅の仮寝(かりね=旅に出て泊まること)のことです。
子をつれて 犬の出あるく 月夜哉
【作者】正岡子規
【季語】月夜 - 秋
山茶花に 犬の子眠る 日和かな
【作者】正岡子規
【季語】山茶花(さざんか) - 冬
【補足】日和(ひより)とは、天候・空模様のことをいいます。
里の子が 犬に付たる さ苗哉
【作者】小林一茶
【季語】さ苗 - 夏
時雨るゝや 犬の来てねる 炭俵
【作者】芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ)
【季語】時雨、炭俵 - 冬
商人を 吼る犬あり もゝの花
【作者】与謝蕪村
【季語】ももの花 - 春
少年の 犬走らすや 夏の月
【作者】黒柳召波(くろやなぎ しょうは)
【季語】夏の月 - 夏
白砂に 犬の寐ころぶ 小春哉
【作者】正岡子規
【季語】小春 - 冬
【補足】「寐ころぶ」の読み方は「ねころぶ」です。小春(こはる)は、旧暦 10月の異名です。
涼しさや 犬の寐に来る 蔵のかげ
【作者】村上鬼城
【季語】涼しさ - 夏
七夕や 犬も見あぐる 天の川
【作者】正岡子規
【季語】七夕、天の川 - 秋
繋がれし 犬が退屈 蝶が飛び
【作者】高浜虚子
【季語】蝶 - 春
【補足】「繋がれし」の読み方は「つながれし」です。
としよれば 犬も嗅ぬぞ 初袷
【作者】小林一茶
【季語】初袷- 夏
永き日や 鶏はついばみ 犬は寝る
【作者】加舎白雄
【季語】永き日 - 春
【補足】「鶏」の読み方は「とり」です。
寝た犬に ふはとかぶさる 一葉哉
【作者】小林一茶
【季語】一葉(ひとは) - 秋
羽子板を 犬咥へ来し 芝生かな
【作者】高浜虚子
【季語】羽子板 - 冬(新年)
【補足】「咥へ」の読み方は「くわえ」です。
初蝶の 一夜寝にけり 犬の椀
【作者】小林一茶
【季語】初蝶 - 春
【補足】「椀」の読み方は「わん」です。
花菫 がむしやら犬に 寝られけり
【作者】小林一茶
【季語】花菫(はなすみれ) - 春
春風や 犬の寝聳る わたし舟
【作者】小林一茶
【季語】春風 - 春
【補足】「寝聳る」の読み方は「ねそべる」です。
春風や 侍二人 犬の共
【作者】小林一茶
【季語】春風 - 春
春を待つ 商人犬を 愛しけり
【作者】前田普羅
【季語】春を待つ - 冬
人うとし 雉子をとがむる 犬の声
【作者】宝井其角(たからい きかく)
【季語】雉(きじ) - 春
煩惱の 犬も吠えけり 鉢叩
【作者】正岡子規
【季語】鉢叩 - 冬
【補足】鉢叩(はちたたき)とは民俗芸能・大道芸の一種で、近世まで行われていました。「煩惱」の読み方は「ぼんのう」です。
三日月や 枯野を歸る 人と犬
【作者】正岡子規
【季語】枯野 - 冬
【補足】「歸」は「帰」の旧字体です。
むく犬や 蝉鳴く方へ 口を明
【作者】小林一茶
【季語】蝉 - 夏
【補足】むく犬とは、むくげ(=ふさふさとした毛)の犬のことをいいます。
むくと起て 雉追ふ犬や 宝でら
【作者】与謝蕪村
【季語】雉 - 春
【補足】京都・宝積寺(ほうしゃくじ)の別名が「宝寺(たからでら)」です。
名月や ともし火白く 犬黒し
【作者】正岡子規
【季語】名月 - 秋
桃の花 隠れ家なるに 吠ゆる犬
【作者】夏目漱石
【季語】桃の花 - 春
山犬の がばと起ゆく すゝき哉
【作者】黒柳召波
【季語】すすき - 秋
山盛の 花の吹雪や 犬の椀
【作者】小林一茶
【季語】花 - 春
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