鰯雲(いわしぐも)の俳句 30選　－秋雲－

空に鰯雲が広がっているのを見ると、季節は秋になったという実感を強く持ちます。

また、夏の厚くて低い位置にある雲と比べて、鰯雲は空の高さを十分に感じさせてくれます。

このページでは、「鰯雲、鱗雲」が詠み込まれた俳句の中から 30句を選びました。鰯雲の広がる光景が目に浮かぶようなものばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。

鰯雲の俳句 30

鰯雲、鱗雲(うろこぐも)が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。

なお、鰯雲は俳句において秋の季語として扱われます。

あしたより　鰯雲あり　小鳥網

【作者】山口誓子(やまぐち せいし)

【補足】この俳句の「あした」は「朝(あさ)」の意味です。

鰯雲　いが栗の束　手に荒き

【意味】渡辺水巴(わたなべ すいは)

【作者】「束」の読み方は「たば」です。荒き(荒木)とは、切り出したばかりの木のことです。

いわし雲　いづこの森も　祭にて

【作者】水原秋桜子(みずはら しゅうおうし)

鰯雲　鰯いよいよ　旬に入る

【作者】鈴木真砂女(すずき まさごじょ)

いわし雲　おおいなる瀬を　さかのぼる

【作者】飯田蛇笏(いいだ だこつ)

いわし雲　想ひ幼き　日にのみに

【作者】中村汀女(なかむら ていじょ)

鰯雲　この時空の　まろからず

【作者】中村草田男(なかむら くさたお)

【補足】「まろからず」は「丸(円)くない」の意です。

いわし雲　小諸の旅を　こゝろざす

【作者】飯田蛇笏

【補足】小諸(こもろ)は長野県東部の地名です。

いわし雲　天の浮橋　月わたる

【作者】瀧井孝作(たきい こうさく)

【補足】孝作は俳句を河東碧梧桐(かわひがし へきごとう)に師事しました。また、『無限抱擁(むげんほうよう)』をはじめ多くの小説を残しています。

いわし雲　何重たさや　旅鞄

【作者】中村汀女

【補足】「旅鞄」の読み方は「たびかばん」です。

鰯雲　はなやぐ月の　あたりかな

【作者】高野素十(たかの すじゅう)

いわし雲　人はどこでも　土平す

【作者】 西東三鬼(さいとう さんき)

【補足】「平す」の読み方は「ならす」です。

鰯雲　日和いよいよ　定まりぬ

【作者】高浜虚子

【補足】日和(ひより)とは、天気、空模様のことをいいます。

いわし雲　忌日きのふに　過ぎゆける

【作者】橋本多佳子(はしもと たかこ)

【補足】忌日(きにち)は、命日(めいにち)と同義です。

いわし雲　橙青く　鬱と成る

【作者】石田波郷(いしだ はきょう)

【補足】「橙」の読み方は「だいだい」です。

うすうすと　今日仰がれつ　鰯雲

【作者】富安風生(とみやす ふうせい)

海上に　出づ鰯雲　ことごとく

【作者】大野林火(おおの りんか)

外燈の　いまともる上の　鰯雲

【作者】大野林火

こもごもに　帰り仕度や　鰯雲

【作者】中村汀女

【補足】「こもごも(交々)」とは、「かわるがわる」と言う意味です。

児をだいて　日々のうれひに　鰯雲

【作者】飯田蛇笏

三十年　前にもここに　鰯雲

【作者】三橋鷹女(みつはし たかじょ)

空一杯　鰯雲なり　夢の中

【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)

仲秋や　夕日の岡の　鱗雲

【作者】村上鬼城(むらかみ きじょう)

天覆ふ　鰯雲あり　放心す

【作者】山口誓子

天心に　会ふ二ながれ　鰯雲

【作者】皆吉爽雨(みなよし そうう)

【補足】天心(てんしん)とは、空の真ん中のことをいいます。

なにゆゑの　なみだか知らず　鰯雲

【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)

花芒　払ふは海の　鱗雲

【作者】芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ)

【補足】花芒(はなすすき)とは、穂の出たススキのことです。

風紋を　見し目に仰ぐ　鰯雲

【作者】稲畑汀子(いなはた ていこ)

【補足】風紋(ふうもん)とは、風によって砂の上にできる模様のことをいいます。

もう著いて　ゐる刻かとも　鰯雲

【読み方】もうついて　いるときかとも　いわしぐも

【作者】星野立子(ほしの たつこ)

やまびこを　つれてゆく尾根　いわし雲

【作者】飯田蛇笏

　関　連　ペ　ー　ジ　

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