「悴む」の俳句 50選 -かじかむ-
冬の寒さが厳しい日に、手が悴んでしまうようなことがあると、春が待ち遠しいという気持ちが一層増してきます。
そして、「悴む」は俳句において冬の季語でもあり、多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、「悴む」が詠まれた俳句を多く集めました。身を切るような真冬の雰囲気に満ちた作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 「悴む」の俳句 50選
- 1.1 意志伝へ くれぬ指先 悴みて
- 1.2 運転の 始動悴み 解けるまで
- 1.3 悴みし 海豚のごとき 眼をみたり
- 1.4 かじかみし 顔を写して コンパクト
- 1.5 かじかみし 手をあげてゐる わかれかな
- 1.6 悴みて こころ閉して しまひけり
- 1.7 悴みて 心ゆたかに 人を容れ
- 1.8 悴みて さらにその日の おもひだせず
- 1.9 悴みて 猿の腰かけ 向ひ合ひ
- 1.10 悴みて 少年人の 靴磨く
- 1.11 悴みて 千人針の 糸くくる
- 1.12 悴みて 旅は迎への 人まかせ
- 1.13 悴みて 地にすれすれの よき枝を
- 1.14 悴かみて ちひさな嘘が 言へぬなり
- 1.15 悴みて 瞑りて皇居 過ぎゐしか
- 1.16 悴みて 扉を押す力 余りたり
- 1.17 悴みて 亡き師詠ふを 自戒せり
- 1.18 かじかみて 何をするにも 腹だたし
- 1.19 悴みて 人の云ふこと 諾かぬ気か
- 1.20 悴みて ひとの離合も 歪なる
- 1.21 悴みて 踏みて鶯張は憂し
- 1.22 悴かみて ペン落しつつ 稿つづけ
- 1.23 悴みて 読みつぐものに ヨブ記あり
- 1.24 悴みて よめる句に季の なかりけり
- 1.25 悴みて わかき日ばかり おもふめる
- 1.26 悴みて ゐしそのことを もてあます
- 1.27 悴みの 溶けゆく泪 春煖炉
- 1.28 悴む手 女は千も 万も擦る
- 1.29 悴む身 ほどけて椅子に 深くをり
- 1.30 悴むや 岩に魑魅の 水の音
- 1.31 悴むや 鞄へひとの 金満たし
- 1.32 悴めど また火の粉浴び 鬼が舞ふ
- 1.33 悴めば 遺影は横を 向きにけり
- 1.34 悴める 手は憎しみに 震へをり
- 1.35 悴める 手を暖き 手の包む
- 1.36 悴めば なほ悲しみの 凝るごとく
- 1.37 悴めば 花かと潤み 白きもの
- 1.38 悴かめる この一瞬も われの生
- 1.39 悴んで 聞いて忘れて しまふこと
- 1.40 悴んで ゐる手を垂れて 這入りくる
- 1.41 俥より 下りてかじかむ 手なりけり
- 1.42 死者生者 共にかじかみ 合掌す
- 1.43 心中に 火の玉を 抱き悴めり
- 1.44 すぐ泣く子 今泣きさうに 悴みて
- 1.45 空青し かじかむ拳 胸を打つ
- 1.46 竹馬に 仕上げて青し 悴みぬ
- 1.47 ちゝはゝの 遺せし吾や 悴みて
- 1.48 地の塩の 孤を悴みが呪縛す
- 1.49 妻とのみ なるはいよいよ 悴むなり
- 1.50 屯田の 訛悴む ことやなし
「悴む」の俳句 50選
「悴む」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
どうぞ、ごゆっくりとご鑑賞下さい。
意志伝へ くれぬ指先 悴みて
【作者】稲畑汀子(いなはた ていこ)
運転の 始動悴み 解けるまで
【作者】稲畑汀子
悴みし 海豚のごとき 眼をみたり
【作者】稲垣きくの(いながき きくの)
【補足】「海豚」の読み方は「イルカ」です。
かじかみし 顔を写して コンパクト
【作者】稲畑汀子
かじかみし 手をあげてゐる わかれかな
【作者】吉岡禅寺洞(よしおか ぜんじどう)
悴みて こころ閉して しまひけり
【作者】柴田白葉女(しばた はくようじょ)
悴みて 心ゆたかに 人を容れ
【作者】富安風生(とみやす ふうせい)
【補足】「容れ」の読み方は「いれ」です。
悴みて さらにその日の おもひだせず
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
悴みて 猿の腰かけ 向ひ合ひ
【作者】殿村莵絲子(とのむら としこ)
【補足】猿の腰かけ(さるのこしかけ)は、サルノコシカケ科の菌類の総称です。
悴みて 少年人の 靴磨く
【作者】岸 風三楼(きし ふうさんろう)
悴みて 千人針の 糸くくる
【作者】井上 雪(いのうえ ゆき)
【補足】千人針(せんにんばり)とは、出征する兵士の無事を祈るために、千人の女性が一針ずつ、赤い糸で布きれに縫いだまを作って贈ったもののことです。
悴みて 旅は迎への 人まかせ
【作者】皆吉爽雨(みなよし そうう)
悴みて 地にすれすれの よき枝を
【作者】宇佐美魚目(うさみ ぎょもく)
悴かみて ちひさな嘘が 言へぬなり
【作者】香西照雄(こうざい てるお)
悴みて 瞑りて皇居 過ぎゐしか
【作者】石田波郷(いしだ はきょう)
【補足】「瞑りて」の読み方は「つむりて」です。
悴みて 扉を押す力 余りたり
【作者】右城暮石(うしろ ぼせき)
悴みて 亡き師詠ふを 自戒せり
【作者】石川桂郎(いしかわ けいろう)
【補足】「詠ふ」の読み方は「うたう」です。
かじかみて 何をするにも 腹だたし
【作者】右城暮石
悴みて 人の云ふこと 諾かぬ気か
【作者】高浜年尾(たかはま としお)
【補足】「諾かぬ」の読み方は「きかぬ」です。
悴みて ひとの離合も 歪なる
【作者】中村草田男(なかむら くさたお)
【補足】「歪」の読み方は「いびつ」です。
悴みて 踏みて鶯張は憂し
【作者】亀井糸游(かめい しゆう)
悴かみて ペン落しつつ 稿つづけ
【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)
悴みて 読みつぐものに ヨブ記あり
【作者】上田五千石(うえだ ごせんごく)
悴みて よめる句に季の なかりけり
【作者】久保田万太郎
悴みて わかき日ばかり おもふめる
【作者】久保田万太郎
悴みて ゐしそのことを もてあます
【作者】加倉井秋を(かくらい あきを)
悴みの 溶けゆく泪 春煖炉
【作者】殿村莵絲子
【補足】「泪」の読み方は「なみだ」です。
悴む手 女は千も 万も擦る
【作者】山口誓子(やまぐち せいし)
悴む身 ほどけて椅子に 深くをり
【作者】高木晴子(たかぎ はるこ)
悴むや 岩に魑魅の 水の音
【作者】古舘曹人(ふるたち そうじん)
【補足】魑魅(すだま)とは、山林や木石(ぼくせき)の精といわれる怪物のことです。
悴むや 鞄へひとの 金満たし
【作者】皆川白陀(みながわ はくだ)
【補足】「鞄」の読み方は「かばん」です。
悴めど また火の粉浴び 鬼が舞ふ
【作者】友岡子郷(ともおか しきょう)
悴めば 遺影は横を 向きにけり
【作者】古舘曹人
悴める 手は憎しみに 震へをり
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
悴める 手を暖き 手の包む
【作者】高浜虚子
悴めば なほ悲しみの 凝るごとく
【作者】永井龍男(ながい たつお)
【補足】凝る(こる)とは、同質のものが寄り固まることをいいます。
悴めば 花かと潤み 白きもの
【作者】宇佐美魚目
【補足】「潤み」の読み方は「うるみ」です。
悴かめる この一瞬も われの生
【作者】相馬遷子(そうま せんし)
悴んで 聞いて忘れて しまふこと
【作者】稲畑汀子
悴んで ゐる手を垂れて 這入りくる
【作者】京極杞陽(きょうごく きよう)
【補足】「這入りくる」の読み方は「はいりくる」です。
俥より 下りてかじかむ 手なりけり
【作者】久保田万太郎
【補足】「俥」の読み方は「くるま」です。
死者生者 共にかじかみ 合掌す
【作者】西東三鬼(さいとう さんき)
【補足】合掌(がっしょう)とは、両方の手のひらを、顔や胸の前で合わせて拝むことです。
心中に 火の玉を 抱き悴めり
【作者】三橋鷹女(みつはし たかじょ)
すぐ泣く子 今泣きさうに 悴みて
【作者】京極杞陽
空青し かじかむ拳 胸を打つ
【作者】西東三鬼
【補足】「拳」の読み方は「こぶし」です。
竹馬に 仕上げて青し 悴みぬ
【作者】永井龍男
ちゝはゝの 遺せし吾や 悴みて
【作者】杉山岳陽(すぎやま がくよう)
【補足】「遺せし吾や」の読み方は「のこせしわれや」です。
地の塩の 孤を悴みが呪縛す
【作者】石原八束(いしはら やつか)
【補足】「呪縛」の読み方は「じゅばく」です。新約聖書のマタイによる福音書には、「あなたがたは、地の塩である。」という記述があります。
妻とのみ なるはいよいよ 悴むなり
【作者】右城暮石
屯田の 訛悴む ことやなし
【作者】齋藤 玄(さいとう げん)
【補足】屯田(とんでん)は、兵士を辺境に土着させて、普段は農業に従事させ、非常時には従軍させる制度で、明治時代に北海道で行なわれました。「訛」の読み方は「なまり」です。
関 連 ペ ー ジ