鴨の俳句 30選 -かも-
河川や池などで見かける鴨は、体も小ぶりで可愛らしさが感じられる鳥です。
そして、「鴨」は俳句において冬の季語でもあり、多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、「鴨」が詠まれた俳句を多く集めました。鴨がいる冬の情景が目に浮かんでくるような作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 鴨の俳句 30選
- 1.1 一羽にて いそぎおよいでゐる鴨よ
- 1.2 打入りて 先づあそぶなり 池の鴨
- 1.3 うねうねと 船に筋かふ 鴨の声
- 1.4 押しあひて へしあひて鴨らしからぬ
- 1.5 かきくらす 雪より鴨の 下りにけり
- 1.6 かれ芦や 鴨見なくせし 鷹の声
- 1.7 寒菊や つながれあるく 鴨一つ
- 1.8 けごろもに つつみて温し 鴨の足
- 1.9 月光を 葦に沈めて 鴨のこゑ
- 1.10 けふよりぞ 冬をかこへり 池の鴨
- 1.11 この池の やがて引くべき 鴨ならめ
- 1.12 さみしさの いま聲出さば 鴨のこゑ
- 1.13 ただ二羽で 帰る鴨らし 見送りぬ
- 1.14 次の間に きのふの鴨の 吊しある
- 1.15 つるされて 尾のなき鴨の 尻淋し
- 1.16 天籟や 山のなぞへを 鴨の群
- 1.17 到来の 鴨をながめて 一夜あり
- 1.18 怒濤うち 鴨を砂丘へ 追い上げぬ
- 1.19 永き日の 月山よぎる 番鴨
- 1.20 はぐれ鴨 夜半を鳴くなり 芦の中
- 1.21 一息に 母を訪はめや 鴨の声
- 1.22 一つ家に 鴨の毛むしる 夕かな
- 1.23 日は遠くなり捲き返す 鴨の群
- 1.24 太き尻 ざぶんと鴨の 降りにけり
- 1.25 まだ去らぬ 鴨を浮べて 浦晴れて
- 1.26 未明より 海も動きて 鴨啼ける
- 1.27 宮の船 来ますと鴨の 波うつり
- 1.28 ゆく鴨に 一つの小鴨 鳴きいそぐ
- 1.29 夜がらすを そやし立けり 鴨のむれ
- 1.30 寄り寄りに 水輪つくりて 月の鴨
鴨の俳句 30選
「鴨」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
そうぞ、ごゆっくりとご鑑賞下さい。
一羽にて いそぎおよいでゐる鴨よ
【作者】京極杞陽(きょうごく きよう)
打入りて 先づあそぶなり 池の鴨
【作者】立花北枝(たちばな ほくし)
【補足】「打ち入る」とは、勢いよく中へ入ることをいいます。「先づ」の読み方は「まず」です。
うねうねと 船に筋かふ 鴨の声
【作者】上島鬼貫(うえじま おにつら)
【補足】「筋かふ(=筋交う、筋違う)」とは、斜めに交差することを意味します。
押しあひて へしあひて鴨らしからぬ
【作者】行方克巳(なめかた かつみ)
【補足】「押し合い圧し合い(おしあいへしあい)」とは、大ぜいの人が集まってごった返すことをいいます。
かきくらす 雪より鴨の 下りにけり
【作者】水原秋桜子(みずはら しゅうおうし)
【補足】「かきくらす(掻き暗す)」とは、雨や雪が、空が暗くなるほど強く降ることをいいます。
かれ芦や 鴨見なくせし 鷹の声
【作者】炭 太祇(たん たいぎ)
【補足】芦(あし、よし)は、水辺に生えるイネ科の多年草で、「葦」「蘆」「葭」とも表記されます。
寒菊や つながれあるく 鴨一つ
【作者】渡辺水巴(わたなべ すいは)
けごろもに つつみて温し 鴨の足
【作者】松尾芭蕉(まつお ばしょう)
【補足】「けごろも(毛衣)」とは、毛皮でつくった衣服のことです。
月光を 葦に沈めて 鴨のこゑ
【作者】松村蒼石(まつむら そうせき)
けふよりぞ 冬をかこへり 池の鴨
【作者】室生犀星(むろう さいせい)
この池の やがて引くべき 鴨ならめ
【作者】高浜年尾(たかはま としお)
【補足】句末の「ならめ」は、「であるのだろう、なのだろう」という意味で、断定の助動詞「なり」の未然形に推量の助動詞「む」の已然形が付いたものです。
さみしさの いま聲出さば 鴨のこゑ
【作者】岡本 眸(おかもと ひとみ)
【補足】「聲」は「声」の旧字体です。
ただ二羽で 帰る鴨らし 見送りぬ
【作者】篠田悌二郎(しのだ ていじろう)
次の間に きのふの鴨の 吊しある
【作者】京極杞陽
つるされて 尾のなき鴨の 尻淋し
【作者】正岡子規(まさおか しき)
天籟や 山のなぞへを 鴨の群
【作者】文挟夫佐恵(ふばさみ ふさえ)
【補足】天籟(てんらい)とは、風の音のことをいいます。「なぞえ」は斜面のことです。
到来の 鴨をながめて 一夜あり
【作者】八木林之介(やぎ りんのすけ)
怒濤うち 鴨を砂丘へ 追い上げぬ
【作者】水原秋桜子
【補足】怒濤(どとう)とは、激しく荒れ狂う大波のことです。
永き日の 月山よぎる 番鴨
【作者】堀口星眠(ほりぐち せいみん)
【補足】月山(がっさん)は、山形の中央に位置する火山で、日本百名山の一つです。「番鴨」の読み方は「つがいがも=対(つい)の鴨、雄と雌の鴨の意」です。
はぐれ鴨 夜半を鳴くなり 芦の中
【作者】水原秋桜子
【補足】夜半(よわ、やはん)とは、「夜、夜中」を意味します。
一息に 母を訪はめや 鴨の声
【作者】永田耕衣(ながた こうい)
【補足】「訪(と)はめや」は、「おとずれるようなことがあるだろうか、いや、おとずれることはない」という意味です。
一つ家に 鴨の毛むしる 夕かな
【作者】正岡子規
【補足】一つ家(ひとつや)とは、一軒屋のことをいいます。
日は遠くなり捲き返す 鴨の群
【作者】臼田亞浪(うすだ あろう)
太き尻 ざぶんと鴨の 降りにけり
【作者】阿波野青畝(あわの せいほ)
まだ去らぬ 鴨を浮べて 浦晴れて
【作者】上村占魚(うえむら せんぎょ)
【補足】浦(うら)とは、海や湖が陸地に入りこんだ所、入り江のことをいいます。
未明より 海も動きて 鴨啼ける
【作者】百合山羽公(ゆりやま うこう)
【補足】未明(みめい)とは、夜がまだすっかり明けきらない頃のことをいいます。
宮の船 来ますと鴨の 波うつり
【作者】五十嵐播水(いがらし ばんすい)
【補足】「宮(みや)」は、皇族を敬って言う語です。
ゆく鴨に 一つの小鴨 鳴きいそぐ
【作者】篠田悌二郎
夜がらすを そやし立けり 鴨のむれ
【作者】内藤丈草(ないとう じょうそう)
【補足】「そやす」とは、「はやす、おだてる、そそのかす」という意味です。
寄り寄りに 水輪つくりて 月の鴨
【作者】臼田亜浪
【補足】「寄り寄り(よりより)」とは、「しばしば」という意味です。水輪(みずわ)とは、水面にできる円形の波紋のことをいいます。
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