「雁帰る」の俳句 100選 -かりかえる-
日本で冬を過ごした雁は、春になると北へと帰ってゆきます。
その姿は哀れ深いものとして、古くから和歌などの題材ともなってきましたし、多くの俳人たちによって俳句にも詠み込まれてきました。
このページには、「雁帰る」「帰る雁」「帰雁」が詠まれた俳句を数多く集めましたので、是非じっくりと味わってみて下さい。
なお、これらはすべて春の季語となります。
目次
- 1 「雁帰る」の俳句
- 1.1 生れざりせばと思ふとき 雁かへる
- 1.2 往診に 病む身を駈るや 雁帰る
- 1.3 空瓶の 首も砂丘に 雁かへる
- 1.4 雁帰り またすゝみたる 眼鏡の度
- 1.5 雁帰る 明るさに径 つづきをり
- 1.6 雁帰る 一羽や遅れ 定年期
- 1.7 雁帰る 黒服潮の しめり帯び
- 1.8 雁帰る ことも十年の 尋ね人
- 1.9 雁帰る この日古風に 夕焼けて
- 1.10 雁帰る ころやしづまる 二月堂
- 1.11 雁帰る 頃や女院の 塔籠り
- 1.12 雁帰る 卒然明き 六区の灯
- 1.13 雁帰る たつきは吾も 人も苦し
- 1.14 雁帰る 野鍛冶老いても 大男
- 1.15 雁帰る 幕を揚げても おろしても
- 1.16 雁帰る 町に生徒と みやげ選る
- 1.17 雁帰る 三好達治の 三国町
- 1.18 雁かへる 夜半の雨音 いたるとき
- 1.19 下宿屋の 螢雪の灯や 雁帰る
- 1.20 けふもなほ 田家の客や 雁帰る
- 1.21 声立てぬ 赤子の欠伸 雁帰る
- 1.22 琴立てて 曇続きを 雁帰る
- 1.23 書肆いでゝ 雁帰る日の 雨にあふ
- 1.24 千両箱を 見て出し街を 雁帰る
- 1.25 大学生 おほかた貧し 雁帰る
- 1.26 とりかねる 夫の機嫌 雁かへる
- 1.27 菜の花に 田家没して 雁かへる
- 1.28 沼に浮く日のまどかさを雁帰る
- 1.29 バスの灯の 紫遠し 雁帰る
- 1.30 はだら雪 伊吹の襞を 雁帰る
- 1.31 日と海の 懐に入り 雁帰る
- 1.32 ひとりゐの 膝こぶいたく 雁かへる
- 1.33 雪の斑の 澄む甲斐駒へ 雁帰る
- 1.34 雪の嶺 うつろに照れり 雁帰る
- 2 「帰る雁」の俳句
- 2.1 あて人の 田の米くふて 帰る雁
- 2.2 雨だれや 暁がたに 帰る雁
- 2.3 洗ひ髪 つかんて見るや 帰る雁
- 2.4 五百崎や 御舟をがんで 帰る雁
- 2.5 愁ひ人 頭をあげよ 帰る雁
- 2.6 落ちかかる 月をめぐりて 帰る雁
- 2.7 おのづから 花圃にある日や 帰る雁
- 2.8 帰る雁 今不忍を 立ちにけり
- 2.9 帰る雁 沖白う夜は 風寒し
- 2.10 帰る雁 朧に奈良や 見ゆらんか
- 2.11 帰る雁 幽かなるかな 小手かざす
- 2.12 帰る雁 きかぬ夜がちに 成にけり
- 2.13 帰る雁 田ごとの月の 曇る夜に
- 2.14 帰る雁 七艘ならぶ 船の上
- 2.15 帰る雁 風船玉の 行方哉
- 2.16 帰る雁 見し夜の壺に 花満たす
- 2.17 帰る雁 耳に達する 声なき中
- 2.18 帰る雁 行くゆく海波 高みけり
- 2.19 倶利伽藍の 雪やなだれん 帰る雁
- 2.20 こいさんゆけど ゆけど頭上に 帰る雁
- 2.21 白い山 白い山へと 帰る雁
- 2.22 東京の 余白の空を 帰る雁
- 2.23 なまぬるき 水がいやのか 帰る雁
- 2.24 雛の餅 きのふは帰る 雁を見て
- 2.25 非は常に 男が負ひぬ 帰る雁
- 2.26 みちのくは わがふるさとよ 帰る雁
- 2.27 むまさうに 下腹見せて 帰る雁
- 2.28 持ち寄りて 一升足らず 帰る雁
- 2.29 屋根石の 苔土掃くや 帰る雁
- 2.30 山寺や 障子の外を 帰る雁
- 2.31 患ひし 者なきさまぞ 帰る雁
- 3 「帰雁(きがん)」の俳句
- 3.1 仰ぎみし 帰雁のつばさ ゆるやかに
- 3.2 石ありき 帰雁ありし夜 ほの青み
- 3.3 美しき 帰雁の空も つかの間に
- 3.4 馬曳いて 海道行けば 帰雁かな
- 3.5 大風の 凪ぎし夜鳴くは 帰雁かな
- 3.6 大峰に 雨来し宵の 帰雁かな
- 3.7 鏡蔽へば まこと雨あり 帰雁鳴く
- 3.8 家居がちに 帰雁の頃と なりゐたり
- 3.9 傘の中 帰雁ゆたかに 日本海
- 3.10 帰雁見る 賤がたつきの 貝料理
- 3.11 北ぐにの 曇りづめなる 帰雁かな
- 3.12 今年見ぬ 帰雁を見たし あるきをり
- 3.13 残肴に 青き菜のあり 帰雁啼く
- 3.14 死にせれば 雨夜帰雁の 声の数
- 3.15 凍雪踏みも しまひとなりし 帰雁かな
- 3.16 順礼と 打ちまじり行く 帰雁かな
- 3.17 城ヶ島は さびしき島や 帰雁鳴く
- 3.18 白波の 果に帰雁の 空展く
- 3.19 砂風の 橋を落ち行く 帰雁哉
- 3.20 殺生石の 空はるかなる 帰雁かな
- 3.21 僧の死や 草木色添へ 鳴く帰雁
- 3.22 旅人に 並木はづるゝ 帰雁かな
- 3.23 撓みくる 帰雁の下の 無明かな
- 3.24 壺の口 遠し帰雁の 下にして
- 3.25 灯台に 上ればはるか なる帰雁
- 3.26 時経ちぬ 帰雁の声と 知りしより
- 3.27 泥くさき 男女に帰雁 水くさし
- 3.28 乗合と 賭はすまじよ 帰雁啼く
- 3.29 額に手を 当てをり帰雁 曇かな
- 3.30 額よせて かたりもぞすれ 帰雁なく
- 3.31 町なかの 夜の池ひかる 帰雁かな
- 3.32 燐寸しめり 帰雁の閑に 一藁屋
- 3.33 岬の畑 打ちて日々見る 帰雁かな
- 3.34 みちのくの 帰雁に夜風 悲しとも
- 3.35 路地の空 見上げてみても 帰雁なし
「雁帰る」の俳句
まず、「雁帰る」が詠み込まれた俳句をみていきましょう。俳句は、先頭の文字の五十音順に並べてあります。
生れざりせばと思ふとき 雁かへる
【作者】鈴木真砂女(すずき まさじょ)
【補足】「生れざりせば」は「もし生れなかったならば」という意味です。
往診に 病む身を駈るや 雁帰る
【作者】相馬遷子(そうま せんし)
【補足】「駈る(かる)」は「急がせる」という意味です。
空瓶の 首も砂丘に 雁かへる
【作者】百合山羽公(ゆりやま うこう)
雁帰り またすゝみたる 眼鏡の度
【作者】菖蒲あや(しょうぶ あや)
【補足】「眼鏡」の読み方は「めがね」です。
雁帰る 明るさに径 つづきをり
【作者】原 裕(はら ゆたか)
【補足】「径」の読み方は「みち(=道)」です。
雁帰る 一羽や遅れ 定年期
【作者】岸風三樓(きし ふうさんろう)
雁帰る 黒服潮の しめり帯び
【作者】金子兜太(かねこ とうた)
雁帰る ことも十年の 尋ね人
【作者】石塚友二(いしづか ともじ)
【補足】「十年」の読みは「ととせ」です。
雁帰る この日古風に 夕焼けて
【作者】中村苑子(なかむら そのこ)
雁帰る ころやしづまる 二月堂
【作者】松瀬青々(まつせ せいせい)
【補足】二月堂(にがつどう)は、奈良の東大寺(とうだいじ)にある仏堂です。
雁帰る 頃や女院の 塔籠り
【作者】石島雉子郎(いしじま きじろう)
【補足】女院(にょいん)とは、平安時代中期から明治維新まで続いた制度における称号です。
雁帰る 卒然明き 六区の灯
【作者】石塚友二
【補足】卒然(そつぜん)は、「突然」と同意です。六区(ろっく)とは、東京・浅草の歓楽街である「浅草公園六区(あさくさこうえんろっく)」のことです。
雁帰る たつきは吾も 人も苦し
【作者】岸風三楼
【補足】「たつき」とは、生計(せいけい:暮らしをたててゆくための手段・方法)のことをいいます。
雁帰る 野鍛冶老いても 大男
【作者】百合山羽公
【補足】野鍛冶(のかじ)とは、包丁・刃物・農具などを広く扱う鍛冶屋です。
雁帰る 幕を揚げても おろしても
【作者】橋 閒石(はし かんせき)
雁帰る 町に生徒と みやげ選る
【作者】大野林火(おおの りんか)
【補足】「選る」の読み方は「よる、える」です。
雁帰る 三好達治の 三国町
【作者】石原八束(いしはら やつか)
【補足】三好達治(みよし たつじ)は大正末から昭和中期にかけての詩人・作詞家で、福井の三国町(みくにちょう:かつての地名)に居住したことがありました。
雁かへる 夜半の雨音 いたるとき
【作者】及川 貞(おいかわ てい)
【補足】夜半(よわ)とは、「夜、夜中」のことです。
下宿屋の 螢雪の灯や 雁帰る
【作者】山口青邨(やまぐち せいそん)
【補足】蛍雪(けいせつ)とは、苦労して学問をすることです。
けふもなほ 田家の客や 雁帰る
【作者】百合山羽公
【補足】田家(でんか)とは、田舎(いなか)・農家・田舎の家のことをいいます。
声立てぬ 赤子の欠伸 雁帰る
【作者】秋元不死男(あきもと ふじお)
【補足】「欠伸」の読み方は「あくび」です。
琴立てて 曇続きを 雁帰る
【作者】橋 閒石
書肆いでゝ 雁帰る日の 雨にあふ
【作者】長谷川双魚(はせがわ そうぎょ)
【補足】書肆(しょし)とは、書店・本屋のことです。
千両箱を 見て出し街を 雁帰る
【作者】長谷川かな女(はせがわかなじょ)
大学生 おほかた貧し 雁帰る
【作者】中村草田男(なかむら くさたお)
とりかねる 夫の機嫌 雁かへる
【作者】鈴木真砂女
【補足】「機嫌」の読み方は「きげん」です。
菜の花に 田家没して 雁かへる
【作者】百合山羽公
沼に浮く日のまどかさを雁帰る
【作者】金尾梅の門(かなお うめのかど)
【補足】「まどかさ(円かさ)」は「まるい様子、おだやかな様子」を意味します。
バスの灯の 紫遠し 雁帰る
【作者】山口青邨
はだら雪 伊吹の襞を 雁帰る
【作者】久米正雄(くめ まさお)
【補足】「はだら」は「まだら(斑)」と同義です。伊吹(いぶき)はヒノキ科の常緑樹の名前で、「襞」の読み方は「ひだ」です。
日と海の 懐に入り 雁帰る
【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)
ひとりゐの 膝こぶいたく 雁かへる
【作者】角川源義(かどかわ げんよし)
雪の斑の 澄む甲斐駒へ 雁帰る
【作者】堀口星眠(ほりぐち せいみん)
【補足】「斑」の読み方は「ふ、ぶち」です。甲斐駒ヶ岳(かいこまがたけ)は、赤石山脈(南アルプス)にある山です。
雪の嶺 うつろに照れり 雁帰る
【作者】相馬遷子
【補足】「嶺」の読み方は「みね」です。
「帰る雁」の俳句
次に、「帰る雁」が詠み込まれた俳句をみていきましょう。
あて人の 田の米くふて 帰る雁
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【補足】「あて人」とは、身分が高い人のことをいいます。
雨だれや 暁がたに 帰る雁
【作者】上島鬼貫(うえじま おにつら)
【補足】「暁がた(あかつきがた)」とは、夜明けに近い頃のことをいいます。
洗ひ髪 つかんて見るや 帰る雁
【作者】正岡子規
五百崎や 御舟をがんで 帰る雁
【作者】小林一茶(こばやしいっさ)
【解説】この句は、一茶が江戸の隅田川(すみだがわ)で将軍・家斉(いえなえり)の御遊(ぎょゆう)の船を見た際に詠んだもので、五十崎(いおざき)はその一帯を指す地名です。
愁ひ人 頭をあげよ 帰る雁
【作者】野村泊月(のむら はくげつ)
【補足】「愁ひ人」の読み方は「うれいびと」です。
落ちかかる 月をめぐりて 帰る雁
【作者】飯田蛇笏(いいだ だこつ)
おのづから 花圃にある日や 帰る雁
【作者】中村汀女(なかむら ていじょ)
【補足】花圃(かほ)とは、花園(はなぞの)・花畑(はなばたけ)のことです。
帰る雁 今不忍を 立ちにけり
【作者】正岡子規
【補足】不忍池(しのばずのいけ)は、東京・上野(うえの)にある池の名前です。
帰る雁 沖白う夜は 風寒し
【作者】藤野古白(ふじの こはく)
帰る雁 朧に奈良や 見ゆらんか
【作者】正岡子規
【補足】「朧」の読みは「おぼろ」です。
帰る雁 幽かなるかな 小手かざす
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
【補足】「幽か」の読み方は「かすか」です。小手(こて)は、手先・腕先のことです。
帰る雁 きかぬ夜がちに 成にけり
【作者】炭 太祇(たん たいぎ)
帰る雁 田ごとの月の 曇る夜に
【作者】与謝蕪村(よさ ぶそん)
帰る雁 七艘ならぶ 船の上
【作者】正岡子規
【補足】「七艘」の読み方は「しちそう」です。
帰る雁 風船玉の 行方哉
【作者】正岡子規
【補足】「行方」の読み方は「ゆくえ」です。「哉(かな)」は詠嘆を表現します。
帰る雁 見し夜の壺に 花満たす
【作者】菖蒲あや
帰る雁 耳に達する 声なき中
【作者】中村草田男
帰る雁 行くゆく海波 高みけり
【作者】飯田蛇笏
倶利伽藍の 雪やなだれん 帰る雁
【作者】内藤鳴雪(ないとう めいせつ)
【補足】「倶利伽藍」の読み方は「くりから」です。
こいさんゆけど ゆけど頭上に 帰る雁
【作者】八木三日女(やぎ みかじょ)
白い山 白い山へと 帰る雁
【作者】正岡子規
東京の 余白の空を 帰る雁
【作者】加藤楸邨(かとう しゅうそん)
なまぬるき 水がいやのか 帰る雁
【作者】正岡子規
雛の餅 きのふは帰る 雁を見て
【作者】百合山羽公
【補足】「雛」の読み方は「ひな」です。
非は常に 男が負ひぬ 帰る雁
【作者】加藤楸邨
【補足】「負ひぬ」の読み方は「おいぬ」です。
みちのくは わがふるさとよ 帰る雁
【作者】山口青邨
むまさうに 下腹見せて 帰る雁
【作者】岩田凉菟(いわた りょうと)
持ち寄りて 一升足らず 帰る雁
【作者】永井龍男楸
屋根石の 苔土掃くや 帰る雁
【作者】室生犀星楸
【補足】「苔土掃くや」の読み方は「こけつち はくや」です。
山寺や 障子の外を 帰る雁
【作者】高浜虚子
【補足】「障子」の読み方は「しょうじ」です。
患ひし 者なきさまぞ 帰る雁
【作者】高田蝶衣(たかだ ちょうい)
【補足】「患ひし」の読み方は「わずらいし」です。
「帰雁(きがん)」の俳句
そして、「帰雁」が詠まれた俳句です。
仰ぎみし 帰雁のつばさ ゆるやかに
【作者】高浜年尾(たかはま としお)
石ありき 帰雁ありし夜 ほの青み
【作者】加藤楸邨
美しき 帰雁の空も つかの間に
【作者】星野立子(ほしの たつこ)
馬曳いて 海道行けば 帰雁かな
【作者】尾崎迷堂(おざき めいどう)
【補足】「曳いて」の読み方は「ひいて」です。
大風の 凪ぎし夜鳴くは 帰雁かな
【作者】河東碧梧桐(かわひがし へきごとう)
【補足】「凪ぎし」の読み方は「なぎし」です。
大峰に 雨来し宵の 帰雁かな
【作者】吉田冬葉(よしだ とうよう)
鏡蔽へば まこと雨あり 帰雁鳴く
【作者】久米正雄
【補足】「蔽へば」の読み方は「おおえば」です。
家居がちに 帰雁の頃と なりゐたり
【作者】村越化石(むらこし かせき)
【補足】家居(かきょ)とは、家にこもっていることを意味します。
傘の中 帰雁ゆたかに 日本海
【作者】古舘曹人(ふるたち そうじん)
帰雁見る 賤がたつきの 貝料理
【作者】阿波野青畝(あわの せいほ)
北ぐにの 曇りづめなる 帰雁かな
【作者】桂 信子(かつら のぶこ)
今年見ぬ 帰雁を見たし あるきをり
【作者】加藤楸邨
残肴に 青き菜のあり 帰雁啼く
【作者】久米正雄
【補足】残肴(ざんこう)とは、食べ残したもの・残り物のことをいいます。
死にせれば 雨夜帰雁の 声の数
【作者】千代田葛彦(ちよだ くずひこ)
凍雪踏みも しまひとなりし 帰雁かな
【作者】金尾梅の門
【補足】「凍雪」の読み方は「しみゆき、いてゆき」です。
順礼と 打ちまじり行く 帰雁かな
【作者】服部嵐雪(はっとり らんせつ)
【補足】巡礼(じゅんれい)とは、聖地や霊場を参拝してまわること、またその人のことをいいます。
城ヶ島は さびしき島や 帰雁鳴く
【作者】村山故郷(むらやま こきょう)
【補足】城ヶ島(じょうがしま)は、神奈川・三浦半島の南端の島の名前です。
白波の 果に帰雁の 空展く
【作者】桂 信子
【補足】「展く」の読み方は「ひらく」です。
砂風の 橋を落ち行く 帰雁哉
【作者】内田百間(うちだ ひゃっけん)
殺生石の 空はるかなる 帰雁かな
【作者】正岡子規
【補足】「殺生石」の読み方は「せっしょうせき」です。
僧の死や 草木色添へ 鳴く帰雁
【作者】原 月舟(はら げっしゅう)
旅人に 並木はづるゝ 帰雁かな
【作者】尾崎迷堂
撓みくる 帰雁の下の 無明かな
【作者】斎藤 玄(さいとう げん)
【補足】「撓みくる」の読み方は「たわみくる」です。
壺の口 遠し帰雁の 下にして
【作者】加藤楸邨
灯台に 上ればはるか なる帰雁
【作者】清崎敏郎(きよさき としお)
時経ちぬ 帰雁の声と 知りしより
【作者】中村汀女
【補足】「時経ちぬ」の読み方は「ときたちぬ」です。
泥くさき 男女に帰雁 水くさし
【作者】橋 閒石
乗合と 賭はすまじよ 帰雁啼く
【作者】久米正雄
額に手を 当てをり帰雁 曇かな
【作者】皆川白陀(みながわ はくだ)
額よせて かたりもぞすれ 帰雁なく
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
町なかの 夜の池ひかる 帰雁かな
【作者】米沢吾亦紅(よねざわ われもこう)
燐寸しめり 帰雁の閑に 一藁屋
【作者】古舘曹人
【補足】「燐寸」の読み方は「マッチ」です。
岬の畑 打ちて日々見る 帰雁かな
【作者】尾崎迷堂
みちのくの 帰雁に夜風 悲しとも
【作者】高木晴子(たかぎ はるこ)
路地の空 見上げてみても 帰雁なし
【作者】鈴木真砂女
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