小春の俳句 50選 -こはる-
冬の初め頃に耳にする言葉に、「小春日和」や「小春」というものがあります。
これらは俳句において冬の季語となっていて、多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、「小春」が詠まれた俳句を多く集めました。穏やかな冬の初め頃の雰囲気に満ちた作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 小春の俳句 50選
- 1.1 あけ放す 窓は上野の 小春哉
- 1.2 海女の髪 つれなう赭き 小春かな
- 1.3 尼法師に 石蕗の花さく 小春かな
- 1.4 生垣の 上より語る 小春かな
- 1.5 池の水 障子に映る 小春哉
- 1.6 祷り長き 母を待つ子や 小春寺
- 1.7 海の音 一日遠き 小春かな
- 1.8 海の波 小春の藪を 見透しに
- 1.9 浦人に 袈裟掛け松の 小春かな
- 1.10 大寺の 縁広うして 小春かな
- 1.11 廻廊に 銭の落ちたる 小春かな
- 1.12 皮財布 手ずれ小春の 博労が
- 1.13 疵ありて 小春の玉の 愛しけれ
- 1.14 句会ありし 寺覗き見る 小春かな
- 1.15 草枕 小春は替へむ 夢もなし
- 1.16 草山の 重なり合へる 小春哉
- 1.17 暮れそめて 馬いそがする 小春かな
- 1.18 句を愛し 小春を愛し 人愛し
- 1.19 故人と居る 思ひ小春の 白障子
- 1.20 小春とも いひ又春の 如しとも
- 1.21 小春鳴く 鳥籠に蜜柑 入れてあり
- 1.22 小春にも 盛りのあるや 晝の月
- 1.23 口中に 躍る小春の 飴の玉
- 1.24 古稀までの 時雨小春を 生きんかな
- 1.25 ささ栗の 柴に刈らるる 小春かな
- 1.26 書をふせぬ 小春の縁の 日にほうけ
- 1.27 城下町 小春の小鳥 鳴きにけり
- 1.28 宍道湖に 機嫌の波の 小春かな
- 1.29 杉垣に 襁褓干したる 小春哉
- 1.30 先生と 話して居れば 小春哉
- 1.31 竹伐りて 夕日ひらきぬ 山小春
- 1.32 立ち出でて 鶏の雛見る 小春かな
- 1.33 田のへりの 水に蜂鳴く 小春かな
- 1.34 父を恋ふ 心小春の 日に似たる
- 1.35 月の鏡 小春に見るや 目正月
- 1.36 どしどしと 屋根に人居る 小春哉
- 1.37 友垣や 句碑を小春の 寄り辺とし
- 1.38 泥川に 古足袋沈む 小春哉
- 1.39 とんぼうの 帽子に睡る 小春かな
- 1.40 ねがはくは 小春のやうな 句とこころ
- 1.41 ばら黄なり 小春ごころを 波立たせ
- 1.42 はんぺんの 肌かぐはしき 小春かな
- 1.43 ひッきやうは 老いの気弱の 小春かな
- 1.44 人群がる 動物園の 小春哉
- 1.45 深きより 古藻並み立つ 小春かな
- 1.46 不二を背に 筑波見下す 小春哉
- 1.47 ふりわけて 片荷は酒の 小春かな
- 1.48 松の葉に 青き小春の 入日かな
- 1.49 ままかりの 酢の香これまた 小春かな
- 1.50 みぎひだり 分るゝ水の 小春かな
小春の俳句 50選
そもそも「小春」は旧暦 10月の異称なので、「春」の文字が付いていても冬の季語となります。
少し意外な気もしますが、旧暦の時代に 10月は冬とされていました。
その「小春」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。ゆっくりと鑑賞してみて下さい。
あけ放す 窓は上野の 小春哉
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【補足】上野(うえの)は東京・台東区(たいとうく)の地名です。句末の「哉(かな)」は詠嘆を表現します。
海女の髪 つれなう赭き 小春かな
【作者】高橋淡路女(たかはし あわじじょ)
【補足】「海女」「赭き」の読み方は、それぞれ「あま」「あかき(=赤き)」です。「つれなう」は、平然としていたり素知らぬ様子でいることを意味します。
尼法師に 石蕗の花さく 小春かな
【作者】村上鬼城(むらかみ きじょう)
【補足】尼法師(あまほうし=尼)とは、仏門に入った女性のことをいいます。石蕗(つわぶき)はキク科の常緑多年草です。
生垣の 上より語る 小春かな
【作者】夏目漱石(なつめ そうせき)
【補足】生垣(いけがき)とは、樹木を植えて作った垣根(かきね)のことです。
池の水 障子に映る 小春哉
【作者】寺田寅彦(てらだ とらひこ)
【補足】「障子」の読み方は「しょうじ」です。
祷り長き 母を待つ子や 小春寺
【作者】中村汀女(なかむら ていじょ)
【補足】「祷り」の読み方は「いのり」です。
海の音 一日遠き 小春かな
【作者】加藤暁台(かとう きょうたい)
海の波 小春の藪を 見透しに
【作者】西山泊雲(にしやま はくうん)
浦人に 袈裟掛け松の 小春かな
【作者】飯田蛇笏(いいだ だこつ)
【補足】日蓮(にちれん:鎌倉時代の仏教僧)にゆかりのある「袈裟掛け松(けさがけまつ)」と呼ばれる遺跡は各地にあります。
- 神奈川県鎌倉市
- 静岡県伊東市
- 東京都大田区
- 千葉県南房総市
- 大阪府大阪市
大寺の 縁広うして 小春かな
【作者】正岡子規
廻廊に 銭の落ちたる 小春かな
【作者】正岡子規
【補足】廻廊(かいろう=回廊)とは、長くて折れ曲がった廊下のことです。
皮財布 手ずれ小春の 博労が
【作者】河東碧梧桐(かわひがし へきごとう)
【補足】手ずれ(手擦れ)とは、何度も手が当たって擦れることをいいます。博労(ばくろう)は、牛や馬の仲買商人です。
疵ありて 小春の玉の 愛しけれ
【作者】橋 閒石(はし かんせき)
【補足】「疵」の読み方は「きず」です。
句会ありし 寺覗き見る 小春かな
【作者】西山泊雲
【補足】「覗き見る」の読み方は「のぞきみる」です。
草枕 小春は替へむ 夢もなし
【作者】水原秋桜子(みずはら しゅうおうし)
草山の 重なり合へる 小春哉
【作者】夏目漱石
暮れそめて 馬いそがする 小春かな
【作者】高井几董(たかい きとう)
句を愛し 小春を愛し 人愛し
【作者】星野立子(ほしの たつこ)
故人と居る 思ひ小春の 白障子
【作者】村越化石(むらこし かせき)
小春とも いひ又春の 如しとも
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
小春鳴く 鳥籠に蜜柑 入れてあり
【作者】鈴木花蓑(すずき はなみの)
【補足】「とりかご」「みかん」の読み方は、それぞれ「とりかご」「みかん」です。
小春にも 盛りのあるや 晝の月
【作者】井上井月(いのうえ せいげつ)
【補足】「晝」は「昼」の旧字体です。
口中に 躍る小春の 飴の玉
【作者】相生垣瓜人(かいおいがき かじん)
古稀までの 時雨小春を 生きんかな
【作者】京極杞陽(きょうごく きよう)
【補足】古希(こき)とは、七十歳のことです。
ささ栗の 柴に刈らるる 小春かな
【作者】上島鬼貫(うえじま おにつら)
書をふせぬ 小春の縁の 日にほうけ
【作者】上村占魚(うえむら せんぎょ)
城下町 小春の小鳥 鳴きにけり
【作者】吉武月二郎(よしたけ つきじろう)
宍道湖に 機嫌の波の 小春かな
【作者】石塚友二(いしづか ともじ)
【補足】宍道湖(しんじこ)は、島根県の松江市と出雲市にまたがる湖です。
杉垣に 襁褓干したる 小春哉
【作者】寺田寅彦
【補足】「襁褓」の読み方は「むつき、おしめ」です。
先生と 話して居れば 小春哉
【作者】寺田寅彦
竹伐りて 夕日ひらきぬ 山小春
【作者】金尾梅の門(かなお うめのかど)
立ち出でて 鶏の雛見る 小春かな
【作者】加舎白雄(かや しらお)
【補足】「鶏の雛」の読み方は「とりのひな」です。
田のへりの 水に蜂鳴く 小春かな
【作者】原 石鼎(はら せきてい)
父を恋ふ 心小春の 日に似たる
【作者】高浜虚子
月の鏡 小春に見るや 目正月
【作者】松尾芭蕉(まつお ばしょう)
【補足】目正月(めしょうがつ)とは、美しいものなどを見て楽しむことをいいます。
どしどしと 屋根に人居る 小春哉
【作者】会津八一(あいづ やいち)
友垣や 句碑を小春の 寄り辺とし
【作者】中村汀女
【補足】友垣(ともがき)とは、友だち・友のことをいいます。
泥川に 古足袋沈む 小春哉
【作者】寺田寅彦
【補足】「古足袋」の読み方は「ふるたび」です。
とんぼうの 帽子に睡る 小春かな
【作者】幸田露伴(こうだ ろはん)
ねがはくは 小春のやうな 句とこころ
【作者】河野静雲(こうの せいうん)
ばら黄なり 小春ごころを 波立たせ
【作者】三橋鷹女(みつはし たかじょ)
はんぺんの 肌かぐはしき 小春かな
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
ひッきやうは 老いの気弱の 小春かな
【作者】久保田万太郎
【補足】ひっきょう(畢竟)とは、「つまるところ、結局」という意味です。
人群がる 動物園の 小春哉
【作者】寺田寅彦
深きより 古藻並み立つ 小春かな
【作者】五十崎古郷(いかざき こきょう)
不二を背に 筑波見下す 小春哉
【作者】正岡子規
【補足】不二(ふじ)は富士山(ふじさん)のことです。
ふりわけて 片荷は酒の 小春かな
【作者】芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ)
松の葉に 青き小春の 入日かな
【作者】高桑闌更(たかくわ らんこう)
【補足】入日(いりひ)とは、夕日・落日のことを言います。
ままかりの 酢の香これまた 小春かな
【作者】飯田龍太(いいだ りゅうた)
【補足】「ままかり(飯借)」はニシン科の魚・鯯(さっぱ)の別名です。
みぎひだり 分るゝ水の 小春かな
【作者】石塚友二
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