「夏の雲」の俳句 30選 -なつのくも-
夏の空に浮かぶ入道雲は、いかにも夏といった雰囲気を持っており、夏の風物詩にもなっています。
そして、「夏の雲」は俳句において夏の季語でもあり、多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、「夏の雲」が詠まれた俳句を多く集めました。夏そのものといった雰囲気に満ちた作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 「夏の雲」の俳句 30選
- 1.1 朝からの いひあらそひや 夏の雲
- 1.2 あるときは 一木に凝り 夏の雲
- 1.3 あれ夏の 雲又雲の かさなれば
- 1.4 大島に 来て椿なし 夏の雲
- 1.5 画架立って ウェリントンの 夏の雲
- 1.6 帷子に 似せて染るや 夏の雲
- 1.7 機下を飛ぶ 断雲と別に 夏の雲
- 1.8 此の旅の 終りを告ぐる 夏の雲
- 1.9 退院の 握手を医師と 夏の雲
- 1.10 誰も来て 仰ぐポプラぞ 夏の雲
- 1.11 団三郎 術をくらべよ 夏の雲
- 1.12 何処からも 見えて山羊鳴く 夏の雲
- 1.13 夏の雲 朝からだるう 見えにけり
- 1.14 夏の雲 臼碾く音の 消えしまま
- 1.15 夏の雲 槐の幹も 寂びたりや
- 1.16 夏の雲 鸚鵡ひそかに ゐたりけり
- 1.17 夏の雲 かなしき家に 薔薇咲けり
- 1.18 夏の雲 黄なる蝶々 落しけり
- 1.19 夏の雲 工場跡地 まつ平ら
- 1.20 夏の雲 長途の明日を 思ふかな
- 1.21 夏の雲の 移り易きを好みけり
- 1.22 夏の雲 野に働きて 肌さびし
- 1.23 夏の雲 胸に母国を去る願書
- 1.24 夏の雲 女神は海に出て呼べる
- 1.25 ふところに 花こそ匂へ 夏の雲
- 1.26 まつさらな 約束ごとや 夏の雲
- 1.27 真夜 星を見せて閉ざせし 夏の雲
- 1.28 離島より 離島へ船路 夏の雲
- 1.29 連峰の 高嶺々々に 夏の雲
- 1.30 わぎもこの ほ句見て笑まし 夏の雲
「夏の雲」の俳句 30選
「夏の雲」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
どうぞ、ごゆっくりとご鑑賞ください。
朝からの いひあらそひや 夏の雲
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
あるときは 一木に凝り 夏の雲
【作者】原 裕(はら ゆたか)
【補足】「凝り」の読み方は「こり」です。
あれ夏の 雲又雲の かさなれば
【作者】広瀬惟然(ひろせ いぜん、いねん)
大島に 来て椿なし 夏の雲
【作者】高橋淡路女(たかはし あわじじょ)
【補足】伊豆大島(いずおおしま:東京都大島町)の名物は椿(ツバキ)で、椿油が特産品です。早春には「伊豆大島椿まつり」が開催されます。
画架立って ウェリントンの 夏の雲
【作者】坪内稔典(つぼうち としのり)
【補足】画架(がか)とは、キャンバス、画板などを固定するのに用いる台(=イーゼル)のことです。
帷子に 似せて染るや 夏の雲
【作者】森川許六(もりかわ きょりく)
【補足】「帷子」の読み方は「かたびら(裏をつけてない衣服の総称、ひとえもの)」です。
機下を飛ぶ 断雲と別に 夏の雲
【作者】富安風生(とみやす ふうせい)
【補足】断雲(だんうん)とは、きれぎれになった雲、ちぎれ雲のことをいいます。
此の旅の 終りを告ぐる 夏の雲
【作者】高木晴子(たかぎ はるこ)
【補足】「此の旅」の読み方は「このたび」です。
退院の 握手を医師と 夏の雲
【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)
誰も来て 仰ぐポプラぞ 夏の雲
【作者】水原秋桜子(みずはら しゅうおうし)
団三郎 術をくらべよ 夏の雲
【作者】尾崎紅葉(おざき こうよう)
【補足】団三郎狸(だんざぶろうだぬき)は、佐渡に伝わる化け狸です。
何処からも 見えて山羊鳴く 夏の雲
【作者】中村汀女(なかむら あわじじょ)
【補足】「何処」「山羊」の読み方は、それぞれ「どこ」「やぎ」です。
夏の雲 朝からだるう 見えにけり
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
夏の雲 臼碾く音の 消えしまま
【作者】飯田龍太(いいだ りゅうた)
【補足】「臼碾く」の読み方は「うすひく」です。
夏の雲 槐の幹も 寂びたりや
【作者】永田耕衣(ながた こうい)
【補足】槐(えんじゅ)は、マメ科の落葉高木です。
夏の雲 鸚鵡ひそかに ゐたりけり
【作者】加藤秋邨(かとう しゅうそん)
【補足】「鸚鵡」の読み方は「オウム」です。
夏の雲 かなしき家に 薔薇咲けり
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
【補足】「薔薇」の読み方は「ばら」です。
夏の雲 黄なる蝶々 落しけり
【作者】長谷川かな女(はせがわ かなじょ)
夏の雲 工場跡地 まつ平ら
【作者】岡本 眸(おかもと ひとみ)
夏の雲 長途の明日を 思ふかな
【作者】大須賀乙字(おおすが おつじ)
【補足】長途(ちょうと)とは、長い旅路のことです。
夏の雲の 移り易きを好みけり
【作者】尾崎迷堂(おざき めいどう)
夏の雲 野に働きて 肌さびし
【作者】廣瀬直人(ひろせ なおと)
夏の雲 胸に母国を去る願書
【作者】有馬朗人(ありま あきと)
【補足】母国(ぼこく)とは、祖国、自分の国のことをいいます。
夏の雲 女神は海に出て呼べる
【作者】石原舟月(いしはら しゅうげつ)
ふところに 花こそ匂へ 夏の雲
【作者】上島鬼貫(うえじま おにつら)
まつさらな 約束ごとや 夏の雲
【作者】橋 閒石(はし かんせき)
【補足】「まっさら(真っ新)」とは、全く新しいことを表現する言葉です。
真夜 星を見せて閉ざせし 夏の雲
【作者】稲畑汀子(いなはた ていこ)
【補足】真夜(まよ)とは、夜中、深夜のことをいいます。
離島より 離島へ船路 夏の雲
【作者】山田弘子(やまだ ひろこ)
連峰の 高嶺々々に 夏の雲
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
【補足】高嶺(たかね)とは、高い峰(みね)のことです。
わぎもこの ほ句見て笑まし 夏の雲
【作者】原 石鼎(はら せきてい)
【補足】「わぎもこ(吾妹子)」は、自分の妻や恋人である女性を呼ぶときに使う言葉です。ほ句(発句:ほっく)とは、連歌(れんが)の第1句(五・七・五の 17 音からなる句)のことです。
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