新緑の俳句 30選 -しんりょく-
5月、6月の晴れた日射しの中で目にする鮮やかな緑の葉は、私たちをとても清々しい気持ちにしてくれます。
そして、このような時期には、青く晴れわたった空に浮かぶ雲からも、夏がそれほど遠くないことが感じられます。
このページには、新緑が詠まれた俳句の中から 30句を選びました。初夏の爽やかな雰囲気に満ちあふれた風物・光景が目に浮かぶような作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 新緑の俳句 30選
- 1.1 いくつかの 部屋新緑の 椅子の部屋
- 1.2 からびたる 髪膚新緑 しんしんと
- 1.3 新緑と いふしづけさと 明るさと
- 1.4 新緑に 命かがやく 日なりけり
- 1.5 新緑に 電燈点きし 音はせず
- 1.6 新緑の あの木この木の 欝々と
- 1.7 新緑の あひびき汚れ たりとせず
- 1.8 新緑の 雨やいそげる 川の波
- 1.9 新緑の 風にゆらるる おもひにて
- 1.10 新緑の 風吹きかはる 夢のなか
- 1.11 新緑の 香に新緑の 風を待つ
- 1.12 新緑の 五月に障子 さす日あり
- 1.13 新緑の 椎の最も 昂れる
- 1.14 新緑の 空わたりゆく 蝶々かな
- 1.15 新緑の 中黄に近き 緑あり
- 1.16 新緑の なかまつすぐな 幹ならぶ
- 1.17 新緑の 庭より靴を 脱ぎ上る
- 1.18 新緑の 映ゆるにあらず 鐘蒼し
- 1.19 新緑の 最も新は 今年竹
- 1.20 新緑の 柳の木ある やさしさよ
- 1.21 新緑の 山に黒木の 樅多し
- 1.22 新緑や うつくしかりし ひとの老
- 1.23 新緑や かぐろき幹に つらぬかれ
- 1.24 新緑や 暁色到る 雨の中
- 1.25 新緑や たへにも白き 琴弾く像
- 1.26 新緑や 薔薇の花びら 地に敷きて
- 1.27 新緑や 夜まで遊ぶ 鹿を見し
- 1.28 新緑を 追ふ旅をして もどりけり
- 1.29 塔仰ぐ とき新緑に 染まりつゝ
- 1.30 まほろばの 膽澤新緑 水明り
新緑の俳句 30選
「新緑」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
なお、新緑は俳句において夏の季語として扱われます。
いくつかの 部屋新緑の 椅子の部屋
【作者】山口誓子(やまぐち せいし)
【補足】「椅子」の読み方は「いす」です。
からびたる 髪膚新緑 しんしんと
【作者】山口青邨(やまぐち せいそん)
【補足】「からびる(乾びる)」とは、かわいて水気がなくなることをいいます。髪膚(はっぷ)は、髪の毛と皮膚のことです。
新緑と いふしづけさと 明るさと
【作者】稲畑汀子(いなはた ていこ)
新緑に 命かがやく 日なりけり
【作者】稲畑汀子
新緑に 電燈点きし 音はせず
【作者】山口誓子
【補足】「点きし」の読み方は「つきし」です。
新緑の あの木この木の 欝々と
【作者】山口青邨
【補足】「鬱々(うつうつ)」は、草木が美しく生い茂る様子を表現する言葉です。
新緑の あひびき汚れ たりとせず
【作者】山口誓子
【補足】「あひびき(=あいびき:逢引)」とは、男女がひそかに会うことをいいます。
新緑の 雨やいそげる 川の波
【作者】山口誓子
新緑の 風にゆらるる おもひにて
【作者】飯田蛇笏(いいだ だこつ)
新緑の 風吹きかはる 夢のなか
【作者】飯田龍太(いいだ りゅうた)
新緑の 香に新緑の 風を待つ
【作者】稲畑汀子
新緑の 五月に障子 さす日あり
【作者】山口誓子
【補足】「障子」の読み方は「しょうじ」です。
新緑の 椎の最も 昂れる
【作者】百合山羽公(ゆりやま うこう)
【補足】椎(しい)はブナ科の常緑高木です。「昂れる」の読み方は「たかぶれる」です。
新緑の 空わたりゆく 蝶々かな
【作者】山口青邨
新緑の 中黄に近き 緑あり
【作者】山口誓子
新緑の なかまつすぐな 幹ならぶ
【作者】桂 信子(かつら のぶこ)
新緑の 庭より靴を 脱ぎ上る
【作者】山口誓子
新緑の 映ゆるにあらず 鐘蒼し
【作者】水原秋桜子(みずはら しゅうおうし)
【補足】「映ゆる」「蒼し」の読み方は、それぞれ「はゆる」「あおし」です。
新緑の 最も新は 今年竹
【作者】山口誓子
【補足】今年竹(ことしだけ)とは、今年生えた竹、若竹のことをいいます。
新緑の 柳の木ある やさしさよ
【作者】高野素十(たかの すじゅう)
新緑の 山に黒木の 樅多し
【作者】高野素十
【補足】樅(もみ)はマツ科の常緑大高木です。
新緑や うつくしかりし ひとの老
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
新緑や かぐろき幹に つらぬかれ
【作者】日野草城
【補足】「かぐろい(か黒い)」は「黒い」と同じです。
新緑や 暁色到る 雨の中
【作者】日野草城
【補足】暁色(ぎょうしょく)とは、夜明けの空の色、明け方の景色のことをいいます。
新緑や たへにも白き 琴弾く像
【作者】山口青邨
【補足】「たへにも(=たえにも:妙にも)」は、「言いようもなく優れて」という意味です。
新緑や 薔薇の花びら 地に敷きて
【作者】日野草城
【補足】「薔薇」の読み方は「ばら」です。
新緑や 夜まで遊ぶ 鹿を見し
【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)
新緑を 追ふ旅をして もどりけり
【作者】原 石鼎(はら せきてい)
塔仰ぐ とき新緑に 染まりつゝ
【作者】稲畑汀子
まほろばの 膽澤新緑 水明り
【作者】佐藤鬼房(さとう おにふさ)
【補足】「まほろば」は古語で、「素晴らしい場所、住みやすい場所」という意味です。膽澤(いさわ:胆沢)は岩手の地名です。
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